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元勇者の転生人生記録  作者: 冬こもり
永い旅路
477/569

鎌倉武士よ……お前たちもかっ!

【秘都ノ森の泉】


「あーふたりはもう来てたか」

「少し待たせたかしら?」

「いや、刀鍛冶の元から今さっきちょうど来たから大丈夫だ」

「賀実が手に持ってる鞘に入っているのがあの時に欠けた黒刀だよね?」

「うん…まさかここまで綺麗に修復されるとは思わなかったよ。

特にこの時代の鋼鉄は質が良いとも言われてるけど、流石に黒刀の色が少し薄くなるかなと思ってたんだけど見事に黒刀のままだったよ」

「ホントにこの時代の刀鍛冶たちは…」

「現実逃避したくなるのはわかるが…時は満ちた」

「ということは太古の勇者に派遣された強者たちがついに動いたの?」

「おう、ベルネクローネには歩き巫女に化けてもらって全国を行脚してもらってたんだが…結構な早い段階でそいつらを見つけられてな。

オレと賀実みたいに縮んでいて日本の歴史をどうやら知らないから体格差によって鎌倉武士に捕まって身売りされたりやばかったらしい」

「わぁ…」

「でしょうね…あたしたちも鎌倉武士の習性を見て、同じように過ごしてきてコイツら人間か?っておもってたもの」

「玄米生活と獣肉生活でキツかったよね…よくこんなにも肉を食えるなって思ってたし」

「質素な生活してるのにはキツかったかもな。

…向こうもどうにか腕っぷしで成り上がることができたみたいで結構な人数を部下にしてこの時代にいるであろうと想定してオレらを探してるみたいだぞ」

「だから奴らを隙を見て奇襲しようかなと思ってるんだが」

「先手必勝ね…向こうも妖術使いが居そうだからそっちはあたしがミネコとやるわ」

「奇襲する時、まつりと詩子はベルネクローネの背に乗って行動してね」

「えっどうして?」

「鎌倉武士たちの体力と足に勝てる?」

「「無理です」」



まつりと詩子の即答を聞いたベルネクローネと天藍と譜月はぐふっとなっていたが蓬はそんなふたりの頭をちっちゃい手でよしよし素直でよろしいと交互に撫でていた。



『飛びならが…鬼門遁甲で位置とかバレないようにしなきゃかしら。

この時代の弓矢に当たったら一発でKOね』

『槍にみたいな弓矢を放ち、現在の長弓と長さや太さが全然違うし飛ぶ距離が段違いすぎて…』

「奇襲でダメだったら宿屋から攻撃になるよね」

「それは最終手段」

「…そろそろ時間だ…まだ時間は少しあるから奇襲に関してはあとでな。

先に鎌倉武士たちとの話し合いの決着つけないとな」






◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇







【集会場所】



《大広間》



「さて、オレたちの稽古は終わり、貴殿らをこの地から解放する手筈になっているが。

今となってこの場所も大所帯になってきてる等などの話をしたい」

「それに関しては……お世話になってる」

「一つ言っておきたいことがあってな、数日の後にここは戦場になる。

5年前より何度も言ってるがオレたちは決着を付けなくては行けない相手がいるからだ」

「……この場所でないとダメか?」

「ここは天然の要塞として最高の場所だから奇襲や罠を仕掛けての勝負だと有利に持ってい行きたい……何かズバッと意見があるなら言ってくれ」

「我々は5年住み続けたこの地を終の棲家にしたいと思っている。

だからお前たちの宿敵と別の場所で戦ってもらえないだろうか?」

「あー…やっぱりそうきたか…この件に関しては二通りのやり方があってな。

まず1つ目は貴殿らはオレたちの決着がつくまでは一時的な拠点に移ってもらい、戦が終わったら綺麗に修復するから戻って来て生活をつづける。

2つ目はこの地の様な天然の要塞のような場所の目星があるならその場所をオレらが教えて貰うことの二つに一つだと思ってもらいたい」

「…それならいい場所がある」

「本当か?」

「あぁ、ここから離れた場所にあるが似たような地形をしている場所がある」

「ならこの場所は5年前にした約束の報酬と一緒にオレたちはこの場所を提供しよう」

「感謝する」

「コチラこそ稽古をしっかりと付けてもらったしな。

オレたちはここから出立したらこの地へ戻ってくることはないと今のうちに言っておく」

「……なんだか淋しくなりますなぁ」

「もともとそういう約束だったからね」

「それと各家々にこれまでの5年間の報酬を渡すからそれぞれ出てきてくれ」



悠珂とまつりは各々に用意しておいた金銀財宝をそれぞれ個別に渡していった最後の別れを惜し見ながら。 

歩き巫女だった奥方たちにも手渡された金銀財宝を触ったりして本物だと顔を引きつっていた。  



「ホントにこんな金銀があるなんて…仙人や妖魔の類なのでは?」

「残念ながら僕らは人間だよ」

「本当によくもまぁ…」

「その金銀は正真正銘、オレたち手で用意した物だから好きにしてくれ。

出どころは聞かないで欲しいし、安心してほしいのはその金銀はまだ血に染まってないれっきとした現物だと言うことだ」

「ありがたく頂戴する」

「それでその場所に案内してくれるのは誰だ?」



するとスッと刀鍛冶夫婦が手を挙げた。



「それなら儂らが案内することに決まっている」

「夜が明けたら案内するべ」

「わかった」



すると賀実と詩子は宴会の準備をしていた二人がやって来てドンチャン騒ぎが始まり夜が更けていった。








【秘都の隠れ里】


《出入り口》



「あっけなく契約は終わったな〜」

「宴会で出した酒はかなり強いのを出したから追ってくることは出来ないよ」

「かなりベロンベロンに出来てたわ」

「……僕としては複雑だなぁ」

「何がだ?」

「ホントにあの鎌倉武士たち…裏切ってたの?」

「そこの刀鍛冶夫婦に呼ばれて私と悠珂と一緒に遠くから目視したよ。

ところで刀鍛冶夫婦は私たちが裏で用意していた場所に送るので大丈夫なの?」

「それで頼んます」

「まさか太古の勇者に派遣された強者に情報とか渡す事になった理由が捕まえて売ろうとしたらなんとやらなんてね……どうして刀鍛冶夫婦はあたしたちを売らなかったの?」

「ここまで良くしてくれて、ちゃんと報酬も用意してくれるような雇用主に出会えた事自体が奇跡みたいなもんでっせ。

綺麗な歩き巫女は美貌やらに自信がよほどあるらしくてぁ…儂の嫁を見下してたのも相まって奴らから離れることにしたのさ」

「女の世界怖っ僕たちの目の前では仲良しアピールしてたのに」

「それで奇襲作戦とかどうするもりなんだべ?」



さらっとまつりの話を流した刀鍛冶の愛らしい嫁っ子の質問に賀実が答えた。



「君たちを送り次第、鎌倉武士たちが暮らしている場所の近くに潜んで「いつまで経っても私たちが来ないんだけど?!」って後に合流するだろう輩と言い合いになってギスギスしだして仲違いが始まるだろう場面になったら漁夫の利をします」

「…なかなかエグいべ」

「鎌倉武士たちは本当に強いから真正面から行くのはちょっとな。

そレに向さんもタダじゃぁ済まないだろうからな」

「これからは忍耐勝負になるんだよね」

「おう、一応終わったら刀鍛冶夫妻に危害を加えるのは居なくなったと知らせるよ」

「相わかった」 




スタコラサッサと四人と刀鍛冶夫婦はさっさと第二の【秘都の隠れ里】にトンズラこいたのだった。



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