詩子、モテ期到来?
【秘都の集落】
《鎌倉武士のリーダー宅》
「……どうなるものかと思ったが…な」
「ここでの生活は我々が昔暮らしていた場所よりも遥かに水準が高いですしね」
「飯も美味い、酒もある、近くに温泉がある、地形的にも攻めづらい場所にある故に賊が近くに来ていたら奇襲しやすい…こんな極楽のような場所があったなんてな」
「…………………」
「三郎太殿、どうした?」
「いやなに…このまま行けば後3年もすれば稽古は終わるだろう」
「あの小僧たちに捕まり早2年…お給料代わりの金銀財宝を頂いてるが…加工技術がな…」
「刀鍛冶のお前が引くくらいか…そういえば小娘の方のあの漆黒の刀だったと言っていた破片はどうなってる?」
「アレは今現在の我々刀鍛冶の技術を結集しても作れるかどうかの代物でっせ。
形だけは直そうと思えば直せそうだがまだまだ掛かる。
黒刀を直すついでに給与として受け取っている【金の延べ棒】と小僧どもは言ってたが正しく本物の純金だぞ…どうやってアレだけの量の金やらを……」
「十蔵それ以上はよせ何も言うな。
我々はあの小僧どもの指示に従い稽古を付けてやればいいだけの事だ…深く考えるのはやめろ」
「わっ悪かったよ」
「それでいい。…さて我々も小僧どもに負けぬように研鑽を続けるぞ」
「「「はっ」」」
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
【火天の宿屋】
《食事処(鎌倉バージョン)》
「………鎌倉武士のリーダー宅での話し合いの内容は特に謀反とか下克上とかじゃなさそうだよ。
ネズミさんありがとう」
まつりの右手に乗っていた真っ白いネズミにお礼のサケトバを渡すと真っ白いネズミはキュッと鳴いてトンとまつりの右手から降りてそそくさと【火天の宿屋】から出て行った。
「まつりもいつの間にか動物と話せるようになってただと…!」
「火天の宿屋の図書室に【動物と話そう!】って本があってナニコレ面白そうって最後まで読んだら話せるようになってた」
「【木を隠すなら森の中】の通りに普通の本の中に魔術本をいくつかに混ぜてるから…まつりが当たりを引くなんて」
「アレ魔術本だったんだ…」
「なんか面白そうな奴ね…あたしも図書室を巡ってるけど出会ったことないわよ?」
「意思のある魔術本は読む人を選ぶ傾向にあるからかもしれないね」
「えっ、本に意志なんてあるの」
「魔術本と魔導書は似て非なるものだから」
「なんか複雑……そういえば一つ聞きたかった事があるんだけど」
「なんだ?」
「金の延べ棒とかどうやったらあんなに用意できるわけ?」
「異世界には枯れない鉱脈やら火山があって、そこで採掘とかして金鉱石とかをかなり集めまくったりしたからだ。
金属での武器の生成や防具とか作ったりにハマってた時期があってだな」
「あー…今の言葉で大体わかったわ…そういうのを貴方たちの生まれた時代の地球で売ったりしなかった理由はなんなの?大金持ちに慣れたでしょうに」
「物質の本質は変わらないかも知られないけど一応、異世界の物質でしょ?
現在だと技術力やらとかがあるから、そこから色々と読み解かれたりするから下手に流せないんだ。
こういった時代でなおかつ日本ならばそういった読み解かれる心配がないから流せる」
「そうなのね」
「場合によってはオーパーツになりかねないしな」
「あぁ…」
「明日も早いしそろそろ寝るぞ」
コチラもぞろぞろと自身の寝室に向かっていった。
翌日
《鍛錬場》
「小娘!お前は力があるだけの木偶の坊になりたいか!?」
「そもそも当たらんわ!400先の的に当てられるわけないでしょうが!」
「やれ!我々武士は400先の的に矢を当てられてようやく一人前と言われているのだから!お前の相方はやり遂げたぞ!」
わーぎゃーわーぎゃーと賀実は弓に長け稽古を付けてもらっている武士と言い争いをしていた。
それをまつりは引いた表情でみていたが他にも観察していた。
その両脇には譜月と天藍が控えていた。
「鎌倉武士やべー」
『……日本人はホントに摩訶不思議な生物じゃな』
「悠珂は弓の稽古はやらないんだね〜」
『悠珂は賀実と違って確実に魔法やらをちゃんと当てるから一発で400先の的に当てて合格貰ったから。
今は鎌倉武士のリーダーに槍の稽古をつけてもらってるぞ』
「……なんか規格外過ぎて…悠珂の猛攻に耐えたり逆に一発入れたりしてる鎌倉武士リーダーやばっ」
『身体能力がホントに高い…異界の強者とヤリ合えるぞアレら』
「ねぇ…詩子の方を見てご覧よ」
『『ん?』』
するとまつりが見ている方へ視線をズラし詩子が置かれている状況をみてブフォッとむせた。
何故なら詩子は悠珂と賀実に稽古を付け終え暇を持て余した鎌倉武士たちによってチヤホヤされているのが見えたから。
「川辺でキャッキャウフフしてる」
『……大人の女が詩子しか居ないからチヤホヤされてるのに本人は気づいておるのかの』
『…アレだけの益荒男どもだそういった欲求も強かろうが……詩子自身、身持ちが硬くて本当に良かった』
「ホントだよね…」
悠珂と賀実が稽古をしている横目でキャッキャウフフしている詩子と暇を持て余した鎌倉武士を見てまつりと譜月と天藍はなんとも言えない表情をしていた。




