ゲテモノ神族
【火天の宿屋】
《食堂》
「フリルデーモンたちも島民たちと共に眠ってると思ってたから、島に潜んでいたとは思わなかった」
「宿屋の中に潜んでいたみたいだけど、眠ってる子供たちには手出しできないから大人しくしてたみたい」
「……フリルデーモン…アレがねぇ…ラブナシカの配下だって聞いてたのもあるけども、まさか想像どおりなんて誰も思わないわ」
「ガチムチにゃ…ごっついにゃ」
「ミネコがマスコット時代の口調に戻ってるわ」
「ねぇ外に出ても大丈夫?」
「大丈夫だと思うぞ。何か外に用でもあるのか?」
「無敵の宿屋で寝てる子達が心配でね」
「オレも着いてくよ」
「ならば偵察として我が今一度、外に出てみようではないか!」
天藍(人型)がシュッと悠珂の隣に現れたと思ったら偵察に行くといって宿屋から飛び出して行った直後に「ギャァァァ!!」と悲鳴を上げて即座に宿屋の中に戻ってきた。
「何があった!?」
「外に出ては駄目っ!絶対ダメ!!」
「なっ何を見たの?」
「見ちゃダメっ!!」
天藍がここまで言う事自体が珍しく、外に行くと言っていた紫蘭と悠珂は怯んだ。
「天藍、毒の霧とか命の危機系だったりする?」
「色々とヤバい!」
「色々か…」
その様子を見て賀実が椅子から立ち上がった。
「少し私が様子を見てくる」
「おっおい」
スチャっとガスマスクを装着してスタスタと宿屋から出て行ってしまった。
天藍が出先で叫んだのに対し賀実は悲鳴を上げることなく戻ってこなかった。
数分後に蓬がドアをガチャと開けて戻ってきた。
「えっ…蓬?」
『天藍が叫んだ原因は賀実とわたちで取り除いたからもう大丈夫!』
「「「「えっ」」」」
『アレは一般の常識人が見ても絶対に悲鳴を上げるわ』
「何があったというんだ…」
『ん〜…悠珂しゃんがみたら気絶して、紫蘭ちゃんが見たらドン引きすると言ったらわかる?』
蓬のこの発言にこの場にいた全員察しスンッとなった。
「…ゲテモノ神族」
『ヤッたのはフリルデーモンだって賀実言ってたよ。多分だけど仕向けて監修したのは愛丸しゃんだとも言ってたの』
「…何やってんだ…愛丸は」
「蓬はヤバいの片付けたって言ってたけどフリルデーモンたちは?」
『愛丸しゃんとの再開に熱い抱擁を交わしてからアレを引きずりながら【星明かりの森】の中に消えていったの』
「外にでたとしても星明かりの森には近づいたら後悔するやつだな。
蓬、外に出てもう大丈夫なんだな?」
『うん。匂いとかも消せたから大丈夫だと思う』
「賀実が帰ってこないけど?」
『賀実はこの島にアイテムを使っての結界を張り直す為にふーちゃんと一緒に島の重要な場所に行くって言ってたよ』
「……そうだよな。オレも愛丸も転生したばかりの人間だからそこまでの結界を張れないもんな」
『アイテムを使って張るけど、愛丸との会合が終わったらフリルデーモンさんたちと紫蘭ちゃんに結界をさらに張ってもらうっていってた』
「その前に島の子供たちの様子を見に行こう」
「おう」
火天の宿屋から悠珂と紫蘭も出て行った。
「アタシたちはどうしようかしら?」
「まだ読めてない魔導書があるからそれを読んでましょう」
「その心は?」
「もしかしたらまだ、忍耐強いのが潜んでいるかもしれないからよ」
『そうだね〜フリルデーモンさんが潜んでいたぐらいだもんね』
「確かに…ボクも表に出ようかなと思ったけど大人しくしてよう…」
「完全な安心が保証されたらでましょうか」
「賛成」
それだけいうとまつりと詩子とミネコは図書室に向かっていった。
【星明かりの森】
《最深部》
「至りし竜が時を戻し、冥界では名簿などの対応で忙しいという時に…」
「んも〜そんな事言わないで♡」
「半径30……いいえ、せめて半径5メートル以内に近づくな」
愛丸に呼び出された冥界の鬼人は愛丸の顔に怒りの青筋を立てながら愛丸の顔に金棒をグリグリと押し付けていた。
「それで要件とは?」
「フリルデーモンにシッチャカメッチャカにされたこの食屍鬼を引き取って欲しいの」
「このモザイク処理された物体が食屍鬼だと…」
流石に鬼人でもドン引きした。
「そういえば紅凰ちゃんは?」
「紅凰様はこうなった事の元凶たちの元に落とし前を数人引き連れて行きました」
「相変わらず血の気が多いわね〜」
「この間までは至りし竜の事があり手が出せませんでしたが、突如として手を引いたのでコレを好機にと」「…しばらく冥界も忙しくなるわよ〜なんていったって数億年ぶりに太古の勇者がそちらに行くんだから」
「わかってます…そこの食屍鬼に関してはコチラでも手を尽くしますが…紅凰様によって返却されても私は知りませんからね」
「そうなったらそうなったらでコチラで処理するわ」
帰る寸前に愛丸の表情をちらっと見た鬼人はゾクッと寒気を模様しさっさとモザイク処理された食屍鬼を金棒を使い掴むとさっさと冥界に帰っていった。




