事態の収拾
【パーフェクト・ユートピア・ワールド】
《とある場所にある重鎮会議室》
「何があったの!世界が巻き戻ってると思ったら力も失って!」
「落ち着け」
「落ち着けるわけないでしょ!煮え湯を飲ませた強者達がすぐ近くまで迫ってきてるのよ!?」
「ついさっきまではイケイケだったけど……まさか【始まりの至りし竜】が手のひら返しするなんてね…恨みを買った者の末路としては当たり前じゃない?」
「全面降伏は無理だろうな」
「ここに集まってる強者達たちは降伏したとしても確実に我々を消す前提で動いてるみたいだしな」
「理想郷を創るのに数多の世界を巻き込みすぎたのもあるからね…さてどうしようか?」
「逃げられないの?太古の勇者様」
「うん、今はもうボクもそこまでの力はないからね。それこそボクがこれまでの時間をかけて培ってきた魔法しかない。
それにボクレベルの魔術師ならそこら中にいるし、欲をかきすぎたのかもしれないね」
「せめてこの地に暮らす者たちの助命をしなくては」
「だね…珍しい種族を集めた楽園計画があと一歩で完成したんだけどな…竜を信頼しすぎたね」
「そもそも太古の勇者様はどうして珍しい種族を集めた楽園を作りたかったの?」
「……珍しい種族を集めて交流させて其処から血が交じわって新しい種族の生まれる瞬間を見たかった。
後は地球人の肉体を捨てて新しく強い肉体が欲しかったから…地球人だと限度があって一線を踏み越えられないんだよ」
「…地球人に拘ってる輩もいるようだがな」
「物好きがいるからね……さてとそろそろここを出ようか…異界の強者達が侵入してきたみたいだし」
それだけいうと集まっていた者たちは椅子から立ち上がると異世界の強者達と交渉する準備と迎える準備を始めた。
【禁じられし神域】
《禁足地》
五人の神族が神秘な光を放っている竜を囲っていた。
「始まりの至りし竜よ」
『覚悟の上だ』
「…どうしてこんな事をしたのです」
『…遥か昔、共に旅した者達の為だけに何かしてやりたくなった…ただそれだけの話だ』
「やり方っちゅうもんがあったでしょうに」
『お前たちにも【特別】は居るだろう?』
「………あんまりそういうのは持たないようにしてる。持てば貴殿のような事をするかもとふと頭によぎるのでな」
「相変わらず、お主は硬いのう」
「…貴女が緩すぎるのだよ」
「話し込んでいる場合ではありませんよ。
始まりの至りし竜よ、貴殿にはこれから貴殿が乱した時空の乱れが治るまでの悠久の時を柱として支えてもらいます。
さぁ…始めましょう」
五人の神族は力を合わせるのではなく一人一人作り出した封印の仕組みを【始まりの至りし竜】の体に刻みこの地に封じた。
『こっコレはっ!……力が吸われるっ?!』
「死にはしないでしょうが…柱以外にも力を使わせていただきます」
『きっ貴様ら!』
「罪には罰を……我々よりも強い力を得た貴殿の力が欲しかったんです、悪いようには使いません。
有効活用させていただくだけですのでね」
「貴方様も中々エグいことをするものだ」
「さて…一部の太古の勇者の力を弱体化させる事には成功したけどさ…自世界創って引きこもってるのとかどうするの?」
「放っておきなさい。アレらは狡猾で我々が今、行っている事を何処からか覗いていることでしょうからに」
「これでまた呑気にしてられるかしらね」
「……手伝いが終わったようなので帰ります」
「そうさな、我も帰ろうかの」
「気まぐれ、面白そうなオモチャを久しぶりに手に入れたと言ってたけど?」
「悪いがアレは我のものじゃから報告せんし、共有しないぞ?……またの」
ここに集まった神族たちは現地集合、現地解散してこの地から離れて言った。
【クレイバール島】
《火天の宿屋》
「…さてとこれからの事を話し合おうか」
「そうね」
悠珂たち3人は自身が生まれた地球から転移させられクレイバール島の中心街に放置された。
少し散策した後にいつの間にか【火天の宿屋】ごと転移させられてた紫蘭たちにも再会し情報を共有してから【無敵の宿屋】向かったが、ラブナシカが【時の呪い】を放った直後だったのか島民たちが眠っている状態で目覚める気配も無かった。
ひとまず【火天の宿屋】で話し合いをすることにしたのだった。
「少し散策したんでしょ?クレイバール島の様子はどうだったの?」
「前と同じだと思いたいけど少し、違和感があってね…転生したからだと思いたいんだけど」
「…時が戻されたとしても何もかもが元通りにならないわ。一度この島自体が消された影響もあるかもしれないもの」
「……ラブナシカなんだよね?」
「魂はそうだけど、今は人間としての愛丸って呼んでちょうだい」
「体が2つある状態って中々に…カオスね」
「ラブナシカの本体は眠ったままだもんな」
「不思議なこともあるものよねー」
「本人がそう言うとなんだかなぁ……ボクもラブナシカ…愛丸同様に人間のままだし」
「転生した事実だけはそこの二人と同じように変えられなかったのかもね…元旅神様」
まつりは【火天の宿屋】にある図書室の禁書の間で倒れている所を賀実により発見され、まつりが姿を消してた理由もほぼ同時に判明した。
七夕の前日にまつりは禁書がねじ込まれている場所に呼ばれるようにして入っていた。
そこで呼ばれた本の元に好奇心で向かい、本に触れた瞬間に本の中に閉じ込められたそう。
なにもない真っ白い場所に転移し閉じ込められて気が狂いそうになったがその場所でやんごとなき事をしたことで現実に帰ってこれたらしい。
やんごとなき事情はプライバシーの事もあるので言えないそうである。
「賀実はもふもふたちにぎゅーぎゅーされてるけど暑ぐるしくないの?」
「大丈夫、良い毛ざわりだよ」
賀実の顔面にへばりつく蓬、賀実の背後を取って耳元でヘッヘッヘと興奮しているが自身の感情を抑えている風に見える譜月がべったりとくっついていた。
「悠珂の所はなんか…」
「素直じゃないのが多くてなー」
素直じゃないと言いつつも椅子に座っている悠珂の腹に顔を埋めている天藍と背中と背中をくっつけているベルネクローネの姿があった。
「太古の勇者たちは割り切った人たちに任せておいて大丈夫そうだからオレ達は【時の呪い】を解くために頑張んないとな」
「解く方法とかを調べ始めるその前にあなた達のつもり話とかしても良いのよ?」
「詩子…」
「どんな生活してたのか気になるねぇ」
「ロクなことになってないぞ?」
「転生してもロクなことになってないんかい!」
「結局、ファンタジー世界に行ったしな」
「行ったね」
「アレは楽しかったわ〜」
「「「え」」」
「まぁ…こういった話するくらいは良いか」
「聞いて後悔しないでね」
クレイバール島へ戻って来るまでの話を始め、終わる頃には夜になっていて、これからの事は明日の自分たちに任せることにしたのだった。
話を聞いた紫蘭たちは話を聞き終えた後はスンッと言った表情になっていた。




