七夕の願い
【火天の宿屋】
《エントラスラウンジ(左)》
「あの本マニアはどれだけの本を集めたのよ…読んでも読んでもきりがないっ!」
『良いではないか…それだけ過ごせるものよな』
『うー……体動かすの飽きたー』
「蓬もだいぶ喋れるようになってきたわね」
『譜月に読み書き教えてもらってるですので』
「…魔法少女のマスコットたちの苦労話がまとめられてる本があることに驚いたわ」
「十人十色よ。真面目な魔法少女がいれば花畑な魔法少女、やさぐれ魔法少女なんてのもいるんだから」
「真面目な魔法少女を持つマスコットの方が苦労してる話が多かったわ…フォローとか…ね」
「あ~…」
すると食堂の方から紫蘭とベルネクローネが大量に料理を運んでやってきた。
「今日は年に一度の七夕だから七夕料理作ってみた」
「あら、もう七夕なのね」
「…目の前のトチ狂ってる現人神がいなければいい風情なんだけど…」
「あれも一種の風情だと思えばいい…それにしても譜月と蓬はどうして人に化けない?」
『我はこの姿の方が気に入ってるからの』
『わたちは…人間や多種多様の動物や魔物に性的指向を向けられたくないのです』
「……蓬って知識を得たらなんかー『何か様です?』
「イイエ、ナンデモナイデス」
「それにしてもこれまた豪華ね」
「とんでもないほどの備蓄品があって…ホントにどれだけ溜め込んだのって言いたくなるくらい」
「サニカは変なとこ心配性だったりして無限に貯めれるなら無限に溜め込むっ!て言ってたくらいだもの」
「食べちゃだめって紙が貼ってある食料もあるよ」
「「え」」
『そういうのはマジでヤバイからの』
「……それを食べて大変な思いをした過去の子供たちがチラホラいたものねぇ」
「……ホントにな」
「哀愁が…」
どれほどヤバいのか詩子とミネコは思ったが、譜月やベルネクローネたちの哀愁を漂わせるオーラを見て聞いちゃアカンなと思った。
「それなら七夕の笹を飾って願い事を描きましょ」
「それいいな!」
「まずは食事をとってからね?」
『はーい』
和気あいあいと食事を取った後は皆で七夕の願い事を各々書いた。
譜月の短冊は『肉球スタンプ』といった感じである。
「譜月のやつは肉球スタンプだけじゃない…なんて書いてあるか分からないじゃないの」
『その為に肉球スタンプで書いてあるのだよ』
「ズルじゃない?」
「それならアタシでも読めるから通訳するわよ」
「えっ読めるの?」
「従魔の中での連絡を取り合うに肉球スタンプや足跡スタンプを使うからな…我の主人であるルウカとサニカと紫蘭…いや島の子供たちでも獣人の血が出てる子達は全員読めるな」
「へぇー」
『ふむふむ………譜月って乙女チックなのね。
我が最愛の主の帰りが早い事を願うって書いてるー』
『なっ!よっ蓬っ』
「なら蓬はなんて書いてあるんだ?」
天藍とベルネクローネと紫蘭は好奇心で蓬の短冊に書いてあるのを見た。
まさかこの後すぐに後悔するなんて思わなかったが。
『サニカと永遠の番サニカと永遠の番サニカと永遠の番サニカと永遠の番サニカと永遠の番サニカと永遠の番サニカと永遠の番サニカと永遠の番サニカと永遠の番サニカと永遠の番サニカと永遠の番サニカと永遠の番サニカと永遠の番サニカと永遠の番サニカと永遠の番サニカと永遠の番サニカと永遠の番サニカと永遠の番サニカと永遠の番サニカと永遠の番サニカと永遠の番サニカと永遠の番サニカと永遠の番サニカと永遠の番サニカと永遠の番サニカ・ア・イ・シ・テ・ル♡』
表と裏にびっしりと書いてあったとても闇深い深淵を見てしまった3人は固まった。
蓬はそんな3人に対してシュッと短冊を回収し『えへへー』と言って紫蘭が用意した笹に括り付けに行った。
表情を強張らせ固まった3人を見た譜月と詩子とミネコは一体何を見たのだと戦慄した。
「何を見たの…?」
「聞かないでくれ…」
「死にたくない…」
「ワタシハナニモミテイナイ」
『本当に何があったのじゃ…』
譜月が見に行こうとしたがガシッと3人が譜月を止めた。
「特に譜月は見るのをやめろ」
「これからサニカが不老不死を止めて天命を終えるまでの一生を共に仕えて歩むんだからよしなさい」
『……そうか、お主等がそこまで言うのであれば仕方あるまい…我は読まぬとしよう(後でこっそりと読むとするかの)』
その他の人たちの短冊はというと…。
ミネコの短冊『詩子が真っ当な人生を全うできますように』
詩子の短冊『ミネコと共に最後まで歩めますように』
紫蘭の短冊『私として始まったばかりの先の人生に実りが多くありますように』
天藍の短冊『主の足としてさらなる飛躍が見込めますように』
ベルネクローネの短冊『眠っている島の子供たちや転生した主人とサニカとちゃんと再会できますように』
この短冊を笹に括り付けた。
「次の食事の時間まで各々やりたい事に戻ろうか」
「そうね」
「笹に関してどうする?」
「時期が終わったら私が責任持って後処理するよ」
「任せた!」
それぞれやりたい事をするために散っていった。
頃合いを見て譜月は誰も居ないことを確認して人に化けてから笹にむかっていった。
「ふむ…蓬の奴は真ん中くらいに飾っておったな?」
ガサガサと笹に付けられている短冊の中から蓬の短冊を見つけて読んだ。
蓬の短冊『サニカだーい好き♡早く帰ってきてね♡』と書かれていた。
「特に変ではないではないか…全く人騒がせな」
そうつぶやいて譜月もこの場から離れていったが。
『譜月ったら抜け目ないですね。すり替えておいて良かったです…サニカ…賀実はわたちと譜月が仲悪かったら悲しむからパーソナルスペースを今この時の時間を使って譜月本人と確認しながら距離感を測るですの。
それに今はまだこの感情を二人に知られたくないですし隠しますの……わたちにとって賀実は…あの地獄から救ってくれた人で大好きなのです♡』




