不審者撃退と村に帰還
「さぁ!ウェルベルト王子!私と共に!」
「結構です、そんな国知らねぇす」
「えっ…」
「オレは確かにばあちゃんたちに拾われて育てられたけど、オレの身元がわかる物は置いてなかったので確証はないですよね?」
「ですが!」
「しつこい人だね」
「この魔力!なぜ吸血鬼がここにいる!」
「……ばあちゃんどうしてやろうか?」
「ティルクスここにもう一本釣竿あるけど使う?」
「ばあちゃん気が利くな、ちょうどオレも釣りしたい気分なんだ」
オレはばあちゃんから釣竿を受け取り空から降ってきた不審者に向けて針と糸を投げつけ巻き付けた。
「ウェルベルト王子!何をするのです!」
「ティルクス上手いねぇ~私も魚釣りでもしようかね」
「下民が何をする!」
ばあちゃんはオレが巻いた糸の上にさらに引っ掻けた。
「ティルクスやることはわかってるね?」
「あぁ、ミストルを貶したのとばあちゃんを罵倒したの許さねえから」
「おっお止めください!ウェルベルト王子!」
「死にはしないから安心しろや」
「「天誅!」」
ばあちゃんとオレは共同作業で不審者を川らしき場所に浸けその川らしき場所に浸けている間にオレが穴を作り、ばあちゃんがネバネバしている何かを穴に入れていた。
「準備出来たから入れようか」
「おう!」
不審者を川らしき場所から上げオレが掘った穴に入れ、熊がよく作っている土饅頭風に仕上げた。
「息は出来ているから平気だろう」
「そうだなばあちゃん…清浄石を置いていってやるから感謝しろ」
「ねぇ…その人気絶してるよ」
「そろそろ帰ろうか【素空宝玉】が割れそうになってるからね」
「ホントだ」
「割れると何かあるの?」
「魔素を大量に吸い込んで死にかける位かな?普通の人間なら死ぬけど」
「えっ」
「この人ほっておいていいの?」
「大丈夫、清浄石が割れた瞬間に祖国に強制送還するように設定しておくから」
「それにテスの関係者ぽいっ感じが…」
「ミストル、オレはこんな奴は知らないし、かかわり合いはない」
「…テスがそう言うならいいや」
「ふたりとも陣が出来たから帰ろう」
「何かこっちに来てない?」
「えっ」
巨大な骨の化け物がこちらに向かってきている。
「おや、動き出す時期には早いねぇ…ティルクス、ミストルあれを倒すには私たちでは人数が足りない。
私でも1体の相手にルトラウスと協力しないと勝てない相手でね、3000年前の人魔竜戦争の時大量に発生して苦労した魔物だよ」
「なら今のうちに倒さないと危ないぞ!」
「…外に出たら出たでヴァンが【レイドボス】として厳選された冒険者を集めて討伐するだろう」
「出来るの?」
「まっ出来なかったら私たちを召集するだろうさ」
「そんな呑気に…」
「ティルクスとミストル行ってみたかったら行ってもいいよ、かすり傷は作るだろうが大怪我はしないだろうからね」
「どうする、テス」
レイドボスなんて初めて見た…前回の時は直ぐに魔王の元に向かえとさっさと送られたもんな。
「ミストル行ってみないか?」
「わかった…僕もなんかワクワクしているんだ、テスもワクワクしてるでしょ?」
「あぁ…」
「ガシャドクロとの距離は約50キロは常に離れているようにするんだよ?攻撃範囲スッゴく広いからね」
「わかったよ」
◇◇◇
「…地響き凄いね」
「100キロ離れているのに響くもんな」
大きさもヤバイ、オレたちが戦ってきた中でもこんな巨大なの初めてだ…さっきのワクワクがどこかに無くなったよ!
「…そろそろサニカさんに言われた50キロに入るよ」
「あぁ…入れられたら一撃入れてばあちゃんの元にダッシュ」
ガシャドクロの鳴らす音は不気味でどこか人間なら出せない音が響いていた。
「鳥肌立ってきたね」
「オレもだミストル」
「多分だけど僕とテスは同じ事を思ってるよ」
「そうだろうな」
「「……【ハイブースト】逃げるか勝ちぃ!」」
オレとミストルは一斉にばあちゃんが待っている場所に向かって全力疾走で走り出した。
「あぁ!やっぱりそうか!この辺り3000年前の亡くなった者達の骨が転がってるんだな、走る度にバキバキしてる!」
「回収出来なかったんだろうね!それだけ大変な戦いだったんだ!」
ばあちゃんの警告通りにして正解だった、オレたちの場合は50キロでいいが、一般の冒険者たちだったらまず無理だろうな!意外と動きが早いし足元が人間の足なんだけど数千の足がわさわさしてキモい!!
「ばあちゃん!無理だった!」
「サニカさん、帰ろう!」
◇◇◇
「かっ飛んで来るね……オルシェルアの者よ、ウェルベルト王子と呼ばれているあの子に何か仕掛けてきたら【サニカ・ルミナレス】がたたじゃ済まさないと屑どもに伝えなさい…今回は【ガシャドクロ】が現れたから帰すけどね」
「くっ!ウェルベルト王子を拾ったのが帝国の栄光を奪った者だったとは!」
「【帝国至上主義者】か…もし何か仕掛けてきたら今でもオルシェルア帝国に恨みを持っている【ランディ・フラクタル】を放って駆逐させるからね」
「まだ生きているのか【救済の冒険者】が!?」
「私たちと同じ長生き組だからねぇ」
「ふん!ウェルベルト王子が…オルシェルア帝国の継承者が居るのにそんな事言ったら!」
「それなら大丈夫だ、ランディに見せに行って「この子供はお前達に育てられるのであれば平気だろう」と太鼓判貰ってるから平気だよ」
「!?」
「上司(今代の国王)によろしく言っておいてね?」
◇◇◇
「あれ?不審者がいない」
「ガシャドクロがうろうろしているから帰したんだ、脅してね」
「そっか、ばあちゃん帰ろうぜ?」
「それにしても…少しだけ削っておこうかね?」
ばあちゃんがオレでも見たことがない刀を出して構えていた。
「ティルクス、ミストルよく見ておきなさい3000年前の時はこれくらいの実力がなければ魔神やエンシェントドラゴンにひとりで挑めなかったからね?」
「「えっ」」
ばあちゃんは構えていた型からオレたちですら見えない速さでガシャドクロに向かっていった。
「…テス」
「どうしたミストル」
「サニカさんが居た所を見てよ」
ミストルの言われた通り見たら地面がかなりえぐれていた。
「オレもあそこまで強くなれるか?」
「僕たちもきっといつか」
ばあちゃんがガシャドクロにある程度の距離に近付いて刀を振った、すると巨大なガシャドクロが一刀両断の真っ二つになった。
「…コアに届かなかったか…まぁ後は現在の冒険者たちに押し付ければいいか…それにしてもコアの有る所が変だねぇ…ヴァンに連絡を入れておこうか」
◇◇◇
「……オレには出来ない芸当だな」
「…3000年前の人魔竜戦争はどれだけ激しく残酷だったんだろうね」
「ティルクス、ミストル帰ろうか…ここにいても悪い影響しかないからね」
オレたちはばあちゃんの所有する空島に帰っていった。




