波乱の高校生活の始まり
【秘都ノ高校】
《2ー1》
広い教室には教師用の机と椅子と生徒用の机と椅子が計4つしかなくそれぞれ思い思いの場所に配置されている。
「点呼…もう取らなくて良い?人いないし」
「流石にそれは駄目だろ」
「えー…だって生徒が3人しか居ないし、馴染んでて誰ひとり欠けることなくちゃんといるんだもん」
「だとしてもだぞ」
「私は点呼取らなくて良い派かな」
「そうね」
「お前らなぁ?」
「山本さんは新聞を読みながら返事しないの。…さっきからなんの記事見てるの?」
「先生にも言ったけど前通ってた学校が取り上げられてたから見入ったんだよ」
「………君たちはトンデモ強豪校に小中って通ってたんだけ?」
「あぁ、仕方ない事だったが、中学の時に変なのに絡まれるようになったから外部の学校の受験を受けてここに来たんだけどな」
「強豪校にいたのにもったいないなーって思うけどもね。それで山本さんが見てるどんな内容なんだい?」
賀実は自身が見ていた新聞を教室にいる全員が見れるように黒板に貼った。
書かれていた内容はこうである。
【強豪校で暴力事件が発生か!?】
当事件は約1年前の11月頃から突如として現れたとされる学生たちによるカルトじみた集団が今年の卒業式の最中に暴力事件を起こし、式が中断された。
卒業生に虐められていた男子生徒がいたらしく、事件を起こす原因となったとされる崇拝されていたこちらも卒業生であった女子生徒の身柄が警察署に移され話を聞いている。
殴られたのは男子生徒で複数の生徒に殴られ意識不明の重症となり、病院に搬送された。
詳しい内容は捜査中である。
「カルトじみた集団……2人は知ってた?」
「「知らない」」
悠珂と賀実は流した。
「そんなことになってたの…」
ラブナシカは愛丸として存在するために神族としての力を使い、これまでの履歴を捏造してこの学校に入学していた。
新聞の内容を見て、あちらで色々やった後の中学での生活をなんとなくだが察した。
「へぇ〜…なんか知ってそうな感じがするけど…やぶ蛇になりそうだから聞かないことにするよ」
「先生のそういうところ好感持てるぞ」
「さて、この話は終わりにして授業を始めようか」
「「「はーい」」」
何事もなく順調に授業が進み放課後になった。
「今さっき連絡あったけど秘都の山で熊が出たから山とか登るの今日は禁止だからね」
「久しぶりに聞いたなそれ」
「体育館とか使えないわよね」
「うん、今日は危ないから駄目だよ」
「ならこのまま寮に直行しないとかな?」
「だろうな…」
「そういえば…鍛冶屋敷は今も悪夢を見るの?色っぽい男に乳揉まれたりするやつの」
「聞かないでくれ…」
ニヤニヤしている先生と引き攣った表情をしている悠珂を見た賀実は真顔になった。
「魔王化してた時の記憶が悪夢として出てるのね」
「影響でとりますやん…愛丸、覚えてないんじゃないの?」
「人間の意識って面白いわよねー」
「…少しは反省しなさいな」
「わかってるわよ♡」
(反省してないね…全く。だから仲間内での恋愛とかは変なふうに影響が出たりするからあんまり好ましく思えないんだよね。
島の子供たちみたいに一生この人だけ、仲間内での男女間でドロドロとしたトライアングラーな恋煩いがない友好と一対一の恋愛なら良いと思うけど…こういうのが偏見なのかな?それとも理想論なのか?…恋は病と昔の人が言ってるのって結構的を得てるよねぇ)
キーンコーンカーンコーンとチャイムがなり先生に挨拶して3人は学校から出て行った。
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【秘都の山】
「オレたちが言いつけを守るわけないっつうの」
「そのセリフを言う前にアナタに無理やり連れて行かれるアタシ達の身にもなってちょうだい…見つかったらめちゃめちゃ怒られるし」
「山狩してる人たちを避けながら移動も結構きついからね…相変わらず険しい道…」
「賀実の体力と体幹を鍛えるのに良いだろう?戦士が先にバテる問題の解決になるし」
※山は怖い場所です。この3人のように気軽に行こうなど思わないでください。
熊が藪から現れた。
『おや…いつもの三人組が現れたか』
「よぉ、熊五郎」
『熊五郎じゃない』
「何かあったの?熊が村に出たと少し騒ぎになってたわよ?」
『ここの村人以外の人間が入って来ていてね…それでいて何か怪しいことをやってるみたいなんだ』
「場所はわかってるの?」
『あぁ……少し様子を見てくれないか?』
「了解した」
熊五郎との出会いはこの高校に入学してすぐにファーストコンタクトが起こったが、直後に賀実と愛丸にぶん投げられてわからせた為に人怖いになり人里に降りてこなくなっていた。
だが何度も山で遭遇していく内に悠珂と賀実がいつの間にか【従魔契約】を自然に覚えていて、それをきっかけに意識をすれば熊五郎と話せるようになっていた。
愛丸は二人が従魔契約を覚えていて動物と話すようになったのを機に自身も話せるように処置した。
※熊は怖い生き物です。
見かけてもこの3人のように話したり近づいたりしてはいけません。
熊が危害を加えずにカワイイのはアニメやマンガの中だけです。
熊五郎の案内で気になる場所へ向かっていった。
「あらあらまぁまぁ……丑の刻参りしてるわ」
「こういったぶっとい五寸釘をどこで見つけてくるかねぇ……なんか気持ち悪くなってきた」
「…思ってたよりヤベーな」
3人と1匹は一定の距離をとって様子を見ている。
『しかも呪いに使われている木はこの山に生える木の中でも長く生きている方の木でな…ちゃんとこういったのをわかったうえでやってるようなら余計にたちが悪いものだ』
「確実にわかっててやってるわよ」
「この呪いを辿って犯人探るの?」
「下手に探らないほうがいい。縁が出来ちまうからな…熊五郎、本当にここの村の者じゃないんだな?」
『あぁ、ここの村の者ではないと断言できる。熊の嗅覚なめるなよ』
「何箇所か監視カメラ付けてみるかー…隠せる場所が多そうだしな」
「どこで見る?寮母さんに迷惑かけたくないから今日 は寮では休めないよね?」
「えぇ、見つかったら確実にこちらに来そうだから……学校でみる?隠れる場所も多いし、アタシたちが通ってる学校は変な場所に建てられてて表門しかないから校庭に侵入したら分かるし、少し時間稼げていざとなったらアタシの転移で逃げ回ってもいいわね」
「なら学校だな!雰囲気もあっていいし!」
「………私は見なくて良い?」
「一蓮托生」
「連帯責任」
「……わかったよ…」
『この件はお前らに任せていいか?』
「いいぞ」
『自分はこの山に住む者たちを避難させるとしよう』
「ここ1年は何もなかったのにー」
「つかの間の平穏ね」
「怖いこと言わないでよー」
「賀実、いざとなった時のために簡単に折れない竹刀と刺股を用意しておくぞ」
「殿は君がやれ」
「魔法使いに殿やらせる戦士なんて聞いたことな……いやいるか」
「アタシが最初に出るから安心なさいな」
「こういう時の君は本当に頼りになるね」
「ウフフフ…なら帰ってやることやりましょ!」
「そうだな」




