世界の管理をしていた元魔王の目醒
【賢人の隠れ里】
「………家とかが爆散してる…」
「本当にここで修行してたん?」
「燃えた後と言うよりは爆破によって破壊された感がでてる」
「…ここでも爆発か」
「隠れ里と呼ばれてるのにそうそう来れる場所じゃないと思うし、どうしてこうなったか焼け焦げた場所を捜索して調べるしかないと思う」
二人が話し込んでいる裏で真澄は爆発の被害に巻き込まれていない所もあるんじゃないかと調べていると結界が張られている一冊の本を見つけた。
真澄が結界に触れると結界が消え、真澄は結界で守られていた本を手に取りページを捲った。
【異界の勇者と繁栄の神】
ある日、突然異界から来た勇者だと名乗る輩を【繁栄の神グアウル様】が連れてやって来た。
魂の劣化と欠損について調べるためにグアウル様を訪ねてやってきて実験に使う設備や術式については全て異界の勇者が資金や諸々を出すという。
この実験はこの世界で既に行われていて、数万もの時間をかけていたそうで協力者が寿命で死にこの実験を手伝う労働力が欲しくこの話を持ってきたそうだ。
僕は聞かなかったことにしようと話を断ろうとしたがこの世界の仕組みを…数千年単位で行われている【人類存亡を賭けた戦い】について詳しく教え、この世界の歪みを教えてやると言われた。
確かに数千年単位で行われている戦があるのは歴史書を漁れば出でくるものだし、それが起こるのは後数百年後だしその頃には寿命で死んでるし特に気にならないと思っていた。
【不老不死】に憧れ【不老不死】の研究をしていた所にこの話を持ってきたと言うことは自身でも作れるのではないかと思った。
一旦は保留にしてもらい自身で【不老不死】となるべく研究を更に進める。
【了承】
あれから月日が立ち僕も老人になった…あれから進展もなく【不老不死】の研究が行き詰まった。
だけどあの腐れ勇者と勇者について行った奴らが暗殺されたと聞いた時はスカッとした、やつらの血を引く子や孫は最果ての地で暮らし苦しんでいるそうだ愉快だ。
……一人淋しく死ぬのは仕方のないことだろう…僕は交流を断って暮らしていたのだから…
だが暫くしてグアウル様がやって来た。
この世界を創造した三柱の中でも【生と死を司るアグフリート】に裏で色々とやってたのがバレ、特定はされずにすんだが永遠に逃げ続けなればいけないらしい。
そこで不老不死にするからこれまで培った数万年分の資料を託したいと頼まれた。
結構前に…アルリタリカ様の使徒にならないかと言われ了解したばかりなのになぁ…
でも一部の資料を見せられ引き受けることにした。
それはもう自身でやっていた研究が子どものお遊び程度のものだったと理解できてしまうほどに…恐ろしくも素晴らしいものだった。
真澄はこの本を読んでいたが、この先は何かの力が働き読めず、もしかしたらと悠珂と賀実のもとへ向かっていった。
「おーい」
「どうした真澄」
「なんかヤバいもん見つかったで」
「ヤバいもんって…その左手にある奴か?」
「多分、日記かなんかやな…少し読んだけど先が読めなくなったねん」
「それでオレらにってことか」
「ほれ」
真澄から日記を受け取った悠珂はぺらぺらとその場で読み始めた。
「他に何かあった?」
「いや、あの本くらいしか残ってなさそうやったで」
「……でもまぁ…日記だけでも見つかったから結果オーライだったね」
「身内に敵がいるっていうのはどこの世界も同じなんやな〜…だとしても敵が攻めて来なかったのはなんでなん?」
「愛丸の体の中に潜んでるラブナシカが自身よりも弱い対神族をしてるからかな」
「えっそんなんあるん?」
「ある。永い時を生きてるって事はそれだけ幸福を感じる機会があるけど嫌なことも平等に経験するから対策とかも取れるようになったりするってポロッと言った時があってね。
それでも神さまは万能じゃないから変えられない因果もあるそうだよ」
「へぇ」
「何か他にないか調べようか」
「わかった」
賀実と真澄は地下室とかないか調べるために焼け焦げ、爆散した家だった建物跡地に入った。
家探しをして結構な時間が経った時に「キャァァアア!!」と悲鳴が聞こえた。
賀実と真澄は二手に分かれることなく近くで家探しをしていたために悲鳴を上げたのは悠珂だと直ぐに気付いた。
「賀実っ」
「うん」
二人は一斉に建物跡地から飛び出し、悠珂の元へ向かうと高密度な魔力が悠珂から溢れ賀実ですら近づけなかった。
「なっ何が起きてるんや!」
「魔力が暴走してる。こんなこと初めてだよ」
「どっどうするんや!」
「そういえば日記がなくなってる……真澄が読めなかったページを見て何か魔法陣が仕掛けられてたのかも…真澄は私の体にしがみついて!」
「えっどうし「良いから早く!」
真澄が賀実の腰をガシッと強く掴むタイミングで魔力暴走を起こした悠珂から閃光と共に衝撃波が放たれ、賀実は吹き飛ばされないように地面に戦斧を突き刺し耐えて見せた。
真澄も全力で賀実にしがみついて吹き飛ばされずに済んだ。
すると悠珂の姿が大きく変わっていた。
「………あの姿は……魔族?……えらいイケメン…」
「…アレは悠珂としての記憶の転生が始まった魔王だった時の姿…」
「へっ」
ラブナシカから私と悠珂の転生人生の始まりの記憶の一部しか見れなかったけど…見させてもらっておいて良かったと賀実は思っていたが悠珂は特に二人を気に掛ける事なく空を見ていたが。
「絶望の世界を……全て零へ」
その言葉が紡がれると一瞬にして……。




