【リバンティエル】と空から不審者が…
「おはよう、ばあちゃん」
「よく眠れた見たいで良かったよ」
「ミストルとカフェルネは?」
「ふたりには外で木の枝と薪を作って貰ってるよ」
「オレが手伝えることない?」
「リバンティエルに行くとかなり疲れるから今のうちに休んでおきなさい」
…ミストルとカフェルネ何をしたんだ?ばあちゃんから般若見たいなオーラが出てるぞ?
「今戻った!」
「サニカさん薪と木の枝どこに置いとく?」
「今日の朝食作るのに使うから窯に入れておいてくれる?」
「わかりました」
◇◇◇
「「ごちそうさまでした」」
「少し休んだらリバンティエルへ行くからね」
「美味しいのだ~」
「ティルクス、ミストル【素空宝玉】の色を見てくれないか」
急にどうしとんだろうばあちゃん…オレとミストルはアイテムボックスから【素空宝玉】を取り出して見た。
「あれ?昨日は透き通った空の色をしていたのに今日は夜空の色をしている…」
「…そうか」
「なんかヤバイの?」
「どす黒くないから平気だろうよ」
「どっどす黒…」
「夜空の色をした時は約569年前のテムルとリシアとカリーナの時以来だね」
「えっ」
「ラミーの時は空色のままで順調に進んだよ」
「テムル兄さんたちの時はどんな事が有ったの…」
「確か…カリーナのストーカー(マクスウェル)とテムルのストーカーがリバンティエルまで来て結構な修羅場になったな…リシアがキレてストーカーズにとある花を使ってボッコボッコにして…トラウマを植え付けてたのをテムルとカリーナのふたりは震えながら終わるまで見ていたみたいだね」
「おう…」
「ニコニコ笑顔のリシア姉さんがか…」
あらあらうふふな穏やかでおしとやかなお姉さんだと思っていたがリシア姉さんは意外に過激な部分があるのか…。
「だからマクスウェルは麓の村に来ないだろ?」
「確かにカリーナ姉さんにガンガン行ってるけど行動には移してないね」
「トラウマを植え付ける位の事か…」
「夜空色で平気なら早く行かないか?」
「そうだね、カフェルネの言う通り行くか」
どうしたんだ?カフェルネの奴…故郷が気になって早く済まして戻りたいのか?
「外に陣は出来てるから行こうか」
ぞろぞろと外の陣の中に四人で入ってリバンティエルへ向かった。
◇◇◇
【封印されし魔大地】
《リバンティエル》
「ここがリバンティエル」
そこは暗く、太陽の光が入らない場所らしい…なんか気味が悪い場所だな…【素空宝玉】が柔らかい光を放ちオレを包んでいる。
「目的地は直ぐそこだよ…私に着いてきなさい」
ばあちゃんは妖精モードにならず普段のばあちゃんの体に光を纏っていた、ばあちゃんの後を着いていきながら話を始めた。
「サニカさんは妖精モードにならなくても体を光らせられるんだね」
「私は幽光の妖精の先祖返りだからね…妖精モードにならなくても妖精の力を使えるよ…こっちの方が馴染むけど力を押さえながら使うには妖精の姿の方が楽なんだよ」
「ミストルの眼にはリバンティエルの景色が鮮明に見えるか?」
「僕でも見えないよ…何だろうね…こう嫌な感じがするんだよ…麓の村の安らぐ暗さと違うんだよね」
「ばあちゃんカフェルネが居ないんだが…」
「カフェルネはリバンティエルには来れないよ、魔族の中でも資格がないからね」
「でも宿屋一族の人は行けたって言ってたよ?」
「あぁ…それは…偽装した土地の方だね」
「偽装した?」
「【リバンティエル】は2つあるんだ、1つは条件なしで行ける名物の地竜が忙しなく動いている砂漠地帯の【リバンティエル】もう1つは【素空宝玉】がないと入れない【リバンティエル】がね」
「もしかしてカフェルネに嘘ついてわざと作らせなかったの?サニカさん」
「そうだね、カフェルネには悪いけど連れてきていたらせっかく施した封印が解けるからね」
「まさか…魔神関係か?」
「正解……ここは3000年前の人魔竜戦争の中でも激戦区で多くの者が死んだ場所で元々は魔族たちの住みかであり【魔神の心臓】が封印されている場所だよ」
「「!!」」
まさか…ここが3000年前の人魔竜戦争の中心の場所でオレとミストルはそんな場所に立っているのか。
「ここが…」
「だから嫌な感じがするんだ…」
「怨念とか漂っているからね、リバンティエル以外にも左腕、右腕、左足、右足、胴体、頭とそれぞれを切り離してそれぞれの場所に封印してある」
「何でここに向かうのが麓の村の風習として作ったんだ?」
「麓の村の子供たちは小さいうちに闇に会わせて深淵を見せ強い心を育ませるから、リバンティエルで異常が起こってないか見に行って貰うんだ。大人になってからも闇に打ち勝つことが出来るようにね」
「どこに魔神の心臓があるの?」
「心臓が眠る場所は魔神教にバレてるから教えるよ、この大陸の中心の土深くに妖精の秘術と天使の秘術を施し封印してある…この空気に耐えられないであろう魔族が入ったら封印が弱まるから連れていけないんだよ。……入れるけどね」
ん?…なんだあれ…空から光の粒が降ってくる?
「あぁ…ようやく見付けることができー「空から不審者が降ってきたね、お呼びじゃないから消えてくれる?」
ばあちゃんが釣竿を装備し降ってきた光輝く何かを言いかけた男性を針に引っ掛けて勢いよく釣竿を振ってどこかに飛ばした。
「サニカさん何か言いかけてたけど」
「あれは空島に住む人拐いだよ、時々降ってくるんだ」
「ようやく見付けたって嬉しそうだったけど…」
「ティルクスとミストルは気にしなくていいよ、オネェさんのボスが遣わした変態だよ」
「えぇ…」
「…何を話していたっけ?」
「魔族がここにはいると体を奪おうと厄介なのが動き出すと言う話」
「そうだった…僕たちでも相手出来る?」
「…テムルたちですら来た当初は結構な痛手を受けていたみたいだよ」
「あのテムル兄さんたちでも勝てなかったの?」
「そうだったけど、今のテムルたちはどうだろうね?」
「あっなんか来た」
ばあちゃんがまた釣竿を使いオレたちの眼でも追えない速さで釣り上げ今度は川らしき場所にポチャンと浸け始めた。
「ばあちゃんあれって…」
「ここの空を飛ぶ魚は水を探し求めているから戻してあげないとね」
「サニカさん…さっきからバッシャンバッシャンと暴れてるよ」
「それにがぼぼぼ!って溺れてるけど…」
「泳ぎ方を忘れたんだね」
ばあちゃんが鬼畜の所業を…。
「ティルクスとミストルは気にしなくていいよ?」
「気になるわ!」
「サニカさん止めてあげて」
「…わかったよ」
ばあちゃんは釣竿を上げて川らしき場所から引き上げ糸をほどき陸上に放置した…打ち上げられた男性の口には魚が詰まっていたが魚が暴れ口からポン!と抜け出して「こいつの口クセェな」と捨て台詞を吐いて川に戻っていった。
「何あれ…」
「オレにもわからね」
「…珍しいね人面魚か…絶滅危惧種を見れるとは」
「あれが絶滅危惧種なのか?」
「とある女性が狩りに狩りまくって絶滅したんじゃね?ってなってたんだけど、まだ生息していたみたいだね」
「……何の話してたっけ?」
「ミストルもか…魔族がなぜここに入るとヤバイのかとテムル兄さんたちでも勝てない奴の事だよ」
「そうだった」
「テムルたちでも勝てない相手は…やっぱり私が居るから出てこないか…正体は【死を運ぶ者】と呼ばれている最上位の死霊さ」
「今は会いたくないな」
「うん」
「あと、魔族がこちらの【リバンティエル】に入るとここで亡くなった魔族の怨念が体を奪って魔神の封印を解こうとするんだよ、私もひとりに構ってられないからね」
「はっ!死ぬかと思った!?」
「あっ起きた」
「見付けました!ウェルベルト王子!」
突然飛び起きた男性にウェルベルト王子と呼ばれたけど…オレの名前はティルクスなんだけどな。
「やはりそうだ!あの女に拐われてから約20年ようやく、ようやく見付けました!」
「誰?」
「覚えていないのは当たり前です、私はオルシェルア王国王子捜索を任されているホクエトラと言うものです!」
「人違いじゃないですか?」
「いいえ!見間違えるわけありません!」
「どなたか知れないが私の息子に近づくの止めてもらえる?」
「なんだと!下民ごときが!!」
「オレの親に向かってなんて事を言うんだ!」
「いいえ、そんな下民を庇うとは…あなた様はオルシェルア王国に戻り王位を継ぐのです!」
オルシェルア王国の人間は外の人たちを下民って差別するのか、嫌な国だな、それにばあちゃんはオルシェルア王国の国王と面識があると言うことはコイツも知っているはずだよな?…キナ臭いな。
「ホントの事ならオレを拐った女性はどうなったんだ」
「牢獄に繋ぎ閉じ込めております」
「なら父親はどうしてる?」
「あの女に騙されましたが私たちの説得によって元にお戻りになられました」
…オルシェルア王国は腐敗した貴族たちに主権を奪われたのか?……母ちゃんと顔も知らない親父には悪いけど、コイツキモいと思ったから麓の村で末永く暮らすわ。オルシェルア関係はばあちゃん見たいにしらを切らせてもらう…何してやろうか?オレの育ての親を見下した事を後悔させてやるわ!