変態の大量発生の犯人はオメェだ
【煙火の森】
《茂み》
「運転手殿…ここも世紀末化しておられるのですが」
「うーん…変ですねぇ…この森は火の精霊たちが森に危害を加える輩やらを追い払ったりして比較的治安が良好なはずなのですが……結構な惨劇を見たあとにコレだと精神がゴリゴリ削られてヤバいですね」
「ソウデスネ」
運転手と賀実の眼の前では下半身のとある一部に大きな葉っぱを装着しているのみの男達が踊り狂っていた。
「変態が大量発生してるなど私も初めてです」
「私もここまでなのは初めて。この森を抜ける以外で我々が目指している街の行き方はないんですか?」
「無いです。我々が目指している街はこの森に恩恵を受けて発展してきた街なのでね」
「……………………」
こうして二人は黙り込み、近くで踊り狂っている男達が居なくなるまで動けずにいた。
「オラ!もっと腰を使わんかい!」
「これ以上は無理です!」
「お前たちはあの三人を見習え!」
踊り狂っている男たちの中でも一際艶かしく踊っているのが3人おった。
「すっ凄い…!」
「なんて情熱的なんだ!」
「我々もあやかりたいものだ」
「あの3人のように踊り、炎の精霊の加護を得たら我らも真なる魔王の元へ突撃するのだ!!」
「「「「「おう!」」」」」
賀実は目の前で行われている事に頭痛がしていたが、ラブナシカが分身して艶めかしく踊ってると思い込むようにすると少しは頭痛が落ち着いたが、賀実は自身が毒されているのにげんなりとした。
「彼らは炎の精霊の加護を得てから真なる魔王に挑むようですよ」
「そのようで」
「少し下がって迂回しましょう…情熱的な踊りに魅入っている今がチャンスでしょうから」
「了解です」
少しずつ少しずつ踊り狂っている変態たちと距離を取り二人はこの場から離れていった。
迂回ルートを使い歩いていたがそこら中で変態が大量発生していた。
「あの街から近いと選んだのはいいのですが…この森を抜けての街に行くのをやめませんか?まさかここまでとは…」
「同感です」
「即答ですか…冒険者殿は原因を調べようとしないのですね」
「変に首を突っ込むと痛い目に遭いますから……それにここまでヒドイのはちょっと…」
「ですね」
「それで次はどのあたりを巡りますか?」
「………もし、よろしければ本来入る筈だった街に潜入しませんか?」
「…何か気になることでも?」
「そこら辺の話はこの森を出て落ち着いたら、お話しますのでまずはこの森から出ましょう」
二人は周囲を警戒しながら入り口付近にまで一気に向かって行ったが……。
「ファイアー!!」
「フォーッ!!」
森の出入り口付近にたどり着くと新たな変態が現れた。
「………ここは無法地帯なのでしょうか」
「…………………」
「おや?旅人……いや護衛の戦士ともう一人は…一般人…【パラノリアの街】から外へ向かう者達か」
(パラノリア…?……向かっていた街の名前か)
「……どうして葉っぱ1枚」
「葉っぱ1枚?……これはだな素肌がより多くでた格好で情熱的な踊りをここで踊ると炎の精霊から加護を授かって真なる魔王の元へ向かうのに炎のトラップ魔法に掛からなくなるのだよ」
その話を聞いた賀実は脳裏に電流が走った。
素肌がより多くでた格好をして情熱的に踊り、初めて立ち寄った村で見た手配書の内容に書いてあったアルリタリカの暴挙の全てが一つに繋がった。
脳裏に浮かんだのは悪いことを企てているモザイク処理されたラブナシカのヤバい表情である。
何してんだと思ったが口には出さずに引きつった表情をした。
「それで実際どうなのでしょう?」
運転手殿がド直球に聞いた。
「確かに炎のトラップに引っかからずに、五体満足でここへ戻って来ることが出来たぞ」
「試しにいったんかい」
「最初は我々も何かの冗談だと思ったんだがな」
「その話はどこから始まったんで?」
「この森を抜けた先にある【パラノリア】の町長の夢に現れたそうだぜ。
町長の息子さんが一般兵として駆り出される日の3日前に見たらしいからな」
「……………」
「恥ずかしがった息子さんの尻を叩き、踊らせてから行かせたら息子さんだけが炎のトラップを逃れて生き残って戻ってきたんだとよ」
「……でも真なる魔王の元へは行けなかったのか」
「炎のトラップを逃れたとしても次から次へトラップ地獄だからな」
「その様子だと坊主も魔王の元へ行くのか…ならここで一旦踊ってから行くと良いかもな」
「大丈夫、この地域からは絶対に魔王の攻略はしないから」
「フハハハ!」
「それと皆さん、お一つお聞きしても良いでしょうか?」
「どうした」
「我々はコレから【シンペルアの街】に向かうのですが…」と運転手殿が聞くと雰囲気が変わった。
「死にたくなければあの街に行くのはやめろ。あの街は死んだ、すでに街として機能してないし、お前たちみたいに事情を知らずに来たものを殺したり、受け入れたフリをして略奪行為を行っている」
「内情を知っている理由は?」
「……我々は元々ペンシルア街の治安を守る守備兵だったんだが……国の命令で魔王討伐へ向かっている途中、親族から戻って来るなと言う手紙が急に送られてきてな…真意を確かめたいと抜け出し…そこで俺達は見ちまった……」
「それでも行くなら俺たちは止めねえよ」
「さようですか…ご忠言感謝します。行きましよう」
「はい」
二人は軽く会釈して情報料として銀貨を数枚渡して森から去っていった。
この日の夜の野営の時に賀実の夢にラブナシカが現れたが直ぐに賀実はラリアットを仕掛けてから「変態の大量発生の犯人はオメェだな?」と言った。
ラブナシカはだって!と言い訳しようとしたが賀実は言い訳を言わせずに卍固めを仕掛けた。
なぜならこう言うときはろくなことを言わないからである。
しばらくしてラブナシカを卍固めから解放したら、ラブナシカは開口一言めに結構な爆弾を落とした。
「ええそうよ!✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕たいの!人間の体でも思春期は✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕なのよ!ほぼ✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕良いじゃない!ちゃんと悠珂が仕掛けたトラップで死者が出すぎないように神力を貸してるんだから!」
↑
ラブナシカの威厳を守るために賀実はかなりイッチャッテルヤバい発言を聞かぬようにオフにしてる。
「開き直らないんだよ」
「この体に宿っても溜まるもんは溜まってるんだから仕方ないじゃないの」
「……それで夢枕に立った理由は?」
「賀実が向かっている街には近づきすぎないで欲しいそうよ…あの街は既に子供を好んで食べる魔族たちが占拠してこの世界で一番混沌として目に余るようならアルリタリカ様が天罰を使って滅ぼすそうよ」
「………ありとあらゆる残酷な事が起きてるのか」
「それともう一つ…貴女と行動をともにしてる運転手から気づかれない様に今からそっと離れて別行動を取りなさい」
それだけ言うとラブナシカはすぅ~と消えていって賀実は目を覚まし行動を開始した。




