明日の準備を~怪しいふたり~
「………………」
ゴリゴリ…ジャリジャリ…
「………………」
ガリガリ…
空気が重い…皆無言だよ…お喋りなじいちゃんですら無言だ…いつもの雰囲気に戻ったと思ったのに。
「ミストル少し右に寄ってるよ」
「あっ…」
「何で我までやらなければならない…」
ジャリジャリ…ジョリジョリ…
「ひとりでも出来るけど協力した方が早いからね」
「………………」
「ルトラウス、年甲斐なく拗ねるな」
「テスとサニカの繋がりが知りたいんだもん!」
「話せないと言っているだろ」
ガリガリ…ガリガリ…
「それに俺ですら感じ取れなかった封印術など初めてだ!」
「私もティルクスからキーワードが出なかったら知らないままだったよ」
ジョリジョリ…ガリガリ…
「サニカばっかりズルい…」
「ならルトラウスの隠している過去を吐けや」
「俺は過去を語らない男だ!」
「威張るな」
ゴリゴリ…ガリガリ…
「じいちゃん、うるさい」
「はっ!テスの反抗期が始まったぞ!」
「確かに…光の妖精の血族でもないのに体が発光するとは…なかなか興味深い」
ガリガリ…ジャリジャリ…
「ミストルもう少し左の方を削って」
「うん」
ジャリジャリ…ジョリジョリ…
「後は研磨石で擦ってミストルの【素空宝玉】は出来上がりだよ、ティルクスはもう少し削ろうか」
「わかった」
そのあと三時間で削りきり、研磨石で擦る工程まで行きオレの【素空宝玉】が出来上がった。
「これでリバンティエルに行けるね」
「俺はやることがあるから残るがな」
「我輩は【素空宝玉】を使わなくても入れるのか?」
「元々は魔族が暮らしていた場所だからね、純血の魔族なら入れるよ」
「えっ」
「カフェルネは知らないのか?」
「そんな事は伝えられていないぞ、我輩は魔族が入ったら死ぬと教わったぞ」
「変だな?必ず伝えられているはずだぞ」
「魔族にも厄介なのが入っていたのかも知れないね」
「サニカ、後で詳しくこっそり教えてくれ…テスの家族枠の父親としてな」
「無理!」
ばあちゃんが笑いながら「無理!」って言ったよ…そんなにオルシェルア王国の事を口に出しちゃダメなんだろう。
「今夕方になっちゃったけど…」
「今日はこのままここで泊まって明日の朝にリバンティエルに向かうよ」
「我輩…ウィリアと兄上が心配になってきたぞ」
「あの魔王なら平気だろう、オカマたちと宜しくやっているみたいだしな」
「えっ」
「ウィンウィンな関係だよ」
「例のオカマたちは無理に襲わないからな安心しろ」
「ますます心配になってきた」
「邪魔はしてこないだろ」
「してきたら私が…ね?」
「怖いよ~…」
「冗談は止めて…久しぶりに私が夕飯の料理を作るから準備をしておいて欲しいな」
「わかった」
「外で食べるの?」
「……室内の方がいいかな」
「テス準備をしに行こう」
「あぁ」
ミストルに誘導され部屋に入っていった、カフェルネはばあちゃんに頼まれて薪を切っていた。
久しぶりに食べたばあちゃんのグラタンとか美味しかったな。
◇◇◇
「ついに親同伴だけどリバンティエルに行くのか…ほのぼの旅出来ると思っていたけど出来なかったな激動な日々だ…風呂も入ったし寝るか…今日はいろいろばあちゃんに聞かされて疲れた……グー…」
ガタガタ…ガチャン…
「……寝るの早くね?」
ガタガタ…ガチャ…
「疲れたって顔してたからね」
ミストルとカフェルネはティルクスが風呂に入っているときにそれぞれの場所に忍び込んで居た。
「カフェルネはどうして居るの」
「ソナタが妙な事をしないように見張るためだ」
「……邪魔だよ?」
「なぜ薄着なんだ」
「別に…」
「別に…ではない」
「僕が何をしようと勝手でしょう」
「なんだー
「誰か居るのかい…」
「「!」」
ガチャ
「気のせいかな?………」
ガチャン
「……ぷは」
「殺されるところだったぞ…」
ティルクスのベッドの下に隠れていたが、カフェルネは震えていた…サニカがランタンを右に持っていて左には鈍器を持っていたからである。
「見つかったら…やばかったかもね…僕は自分の部屋に戻るよ、サニカさんに嫌われたくないからね」
「…我輩も自室に帰る…死にたくない」
いそいそと帰っていった。
「分身を徘徊させて正解だったね…妖精モードになって鏡の中からティルクスの部屋の様子を見に来たけど…よく眠ってるね、私も部屋に帰ってもう休もうかな」
こうして夜が更けていった。