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元勇者の転生人生記録  作者: 冬こもり
永い旅路
427/569

サバトバレンタイン事件

【闘島小中高一校の本校舎】


《第1の校庭がよく見える屋上の庭園》



「相変わらず私の友人たちはモテてますな〜」



蘇芳が女子に囲まれているのを遠目に見ながら賀実は呑気にお昼休憩をしていた。



「山本先輩!」

「どうしたの?後輩ちゃん」

「永城先輩と鍛冶屋敷先輩が女子から追い剥ぎに遭ってますぅ!!」

「ブフォっ!」



賀実は飲んでた牛乳を吐いた。



「科学部がまたやらかしたみたいです!」

「科学部は何を作って使用したら集団追い剥ぎ事件が起きるの…真澄は女子なのに追い剥ぎ」

「惚れ薬?作ったみたいっすよ。山本殿」



すると今度は少しボロボロの格好になっているイケてる男の後輩が現れた。



「君も被害受けてる…」

「もうやばいっすよ…イケメンと認識されたらこうですからね…チョコをくれるのではなく物理的に私物を奪う側になってます」

「先生たちはどうしてるの?」

「先生たちもイケメンは例外なく追い剥ぎに遭ってます。それと暴走状態の女子に付き従ってる男子生徒が居ます!」

「遭ってるんかい!協力者もいるんかい!」

「いつものモテない男子生徒か……今回は惚れ薬?とやらの効果が落ち着くまで隠れるか逃げ切るしかないね」



賀実が校庭の方を見るように手信号をした。

すると後輩✕2も校庭の様子を見ると悠珂がパルクールを使い生徒をかわし真澄も上手いこと逃げ回っていた。

女子生徒に囲まれていた蘇芳はいつの間にかパンイチ姿で【イケメン許すマジ】というタスキを装着した男子生徒たちによって簀巻きにされ、イケメンたちが集められている場所にINされていた。


そしてINされている周辺は魔女集会場の感じになっている。



「イケメンたちが…パンイチ……よりによってパンイチ……」

「頭の中で創作活動するのは良いけど打開策考えるっす」

「…ひとつ良かった事は小学生組が帰省中で本当に良かった」



賀実の一言に後輩たちは頷いた。



「科学部の人達は何をしているのか様子を見てこようかな」

「あぁ……今回の元凶ですもんね」

「生徒指導の先生も動いているだろうけど…一応ね」

「えっおれは?」

「イケメン狩りの集団に捕まらないように悠珂たちみたいに逃げるしかない」

「おすすめの隠れ場所はあります?」

「自室に籠っていれば良いと思うよ。男子寮の寮母さん…怖いし女の子に物怖じしない人だから通さないでくれると思う」

「……実はその寮から逃げ出しておれ…この惨状なんすよ」

「えっ寮母さんは?」

「今日に限って朝から買い物に出ていてまだ帰ってないっ」

「あー………取り敢えず行ってくる。もし隠れるなら【忍者同好会】の部屋に行くと良いよ。部屋改造しまくってヤバいことになってるみたいだけど」

「えっにっ忍者同好会?」

「なんすかそれ!」

「そもそも見つけられると良いね」



賀実は後輩たちから離れて科学室に向かっていった。





【闘島小中高一校の本校舎】



《科学室の近く》



賀実は科学室の近くにたどり着くと科学室には既に生徒指導の厳つい先生が科学部員たちを叱り飛ばし愛の指導を行っていた。



「お前らぁ!やって良いことと駄目なことくらいわかるじゃろがい!反省してるんだが!」

「そもそも惚れ薬なんてファンタジー小説とかじゃなきゃまずねーよ」

「だったらどうして科学部が惚れ薬作ったなんて話が今出ているんだ!」

「たぶん……そうなったの私が関係していると思います……」



科学部に所属している可愛い女子が申し訳無さそうに手を上げた。



「花城さん?どういう事か教えてもらえるか?」

「私…昨日忍者同好会の部長さんから告白…受けまして……私は正直でありたいのでお断りしたんです」

「忍者同好会……」

「そしたら後ろに振り返って走りながら「明日、覚えてるでござるー!」って言いながら居なくなったんです」

「……そもそも惚れ薬は?」

「今回に限ってそんなの作ってもないですよ。2年前に前部長が惚れ薬騒動をバレンタインでやらかしたの知ってますから」

「それじゃ本当に今回は関わってないんだな?」

「「「「「やってません」」」」」

「取り敢えず忍者同好会の部屋に行って聞いてこないとだな…疑いが消えたわけじゃないから事件の真相がわかるまでは変な動きをしないように」

「「「「「はい」」」」」



それだけいうと生徒指導の先生は「校長っ!…あの忍者の末裔だとか言ってる日夜教師や生徒にたいしてイタズラしまくってる輩どもに部屋を与えたんかっ!どこに同好会の部室を作ったんだっ!」と言いながら科学室から出ていき忍者同好会の部室を探しに向かった。


しばらくして科学室から部員たちの話が聞こえてきた。



「部長、名演技でした。あの教師には効きませんでしたが惚れ薬の効き目凄いですね。イケメン共が泣きっ面に蜂ですぞ」 

「当たり前よ。なんてたって2年前、姉が我が家に伝わる秘伝の惚れ薬をこの部室で作ってバレンタインパニックを起こしたんだから」

「あの教師、頭に血が上ってて気づきませんでしたな。まさか科学室自体が我らが忍者同好会の部室だと思わなかったようですぞ」

「それに部長を股がけしコケにしたイケメンの輩に天誅、お見事でございます」

「半年前に私の初恋を粉々にした奴に……この学校に通う調子に乗ってるイケメン共に報復じゃぁ!!」

「犯人ミツケタ」

「何奴…!!」



賀実は話し声を聞いた瞬間に目出し帽を被り、ヘリウムガスを使いボイスチェンジしてそろそろと科学室に侵入しようとしたがガシッと突然肩を掴まれゆっくりと振り返ると悠珂がボロボロの状態かつ無表情で現れた。


すると賀実が装着していた目出し帽を奪いそれを自身が被り、ヘリウムガスも吸ってボイスチェンジしてそろそろと科学室に侵入し科学部の部長らしきをを人質に取った。



「コンカイノハンニンハオマエラカ…ヒトサワガセナニンジャドモ」

「誰なのよ!あんたは!……って動けないっ!」

「コウミエテキタエテルノデ…フクシュウスルナラ、コジンニフクシュウシロ。ミナヲマキコムナヒトサワガセドモ」

「イケメンが…イケメンが憎いのよっ!」

「ソンナノカンケイナイ。モシホレグスリガホンモノデ、ホレグスリノ解毒ヲシテクレルナラバ、ワタシガコジンテキナフクシュウノシカタト、トアル【トラウマ必須ノチョコレート】ノレシピヲテイキョウシテヤル」

「何ですって」

「ドウスル?ヤルカ?ヤラナイカ?」

「その個人的な復讐って効くのかしら?」

「……ヒトカラモラッタチョコレートガタベラレナクナルクライニハキク」



その内容を聞いて科学部員もとい忍者同好会の面々はヤバい奴と取引をしているのではないかと思った。



「もし効かなかったらどうするのかしら?」

「ソウナッタラ…ワガヤニツタワルホンモノノニンジャガノコシタヒデンノ書ヲワタソウ」

「それって」

「アンマリセンサクハシテホシクナイ……ワガヤニツタワルヒデンノ書ヲカケルノダカラ…ホントウニジッコウシタトコロト、ホントニキイタカヲ、ワタシモズイジカンシサセテモラウガナ」

「……良いわよ乗ってやろうじゃない!アナタは私に個人的な復讐の仕方と例のチョコレートのレシピを渡しなさい!そしたら惚れ薬の解毒をするわ!」

「リョウカイシタ」


























【闘島小中高一校の本校舎】



後に【サバトバレンタイン事件】として残ったバレンタインから数カ月後の《第1の校庭がよく見える屋上の庭園》



屋上の庭園で悠珂と賀実と真澄と蘇芳の四人でいつもの場所で寛いでいると噂好きの女子生徒達がとある噂話を話しだした。



「ねぇ知ってる?」

「なになに?」

「うちの学校の上位のイケメンが付き合ってた本命の女子と別れたんだって!」

「えっ?そんなのこの学校ではよくある話じゃない」

「それが違うのよ!そのイケメンさん【手作りチョコレート】だけは食べられないんだって!五股してた女性たちからあの【バレンタインの日】に色々あったんだって!」

「はー五股と来ましたかー…恐ろしいわ」

「最近まで本命さんは知らなかったみたいだけど【手作りのチョコレート】を渡してイケメンがとんでもない拒否反応してどういうこと?って迫ったらしいわ!」

「それで修羅場になったと」

「そう!そのイケメンと本命さんの痴話喧嘩してた所を風紀委員に見つかって風紀委員の部屋に連行して洗いざらい話をさせたんだって!」

「ひゃ〜…」








少し離れたテラス席で。



「悠珂…君は何をあの忍者同好会の者に渡したの?」

「さぁな?」

「……あれってホンマに惚れ薬だったんか?」

「本物だったんじゃないか?解毒するって言って解毒したわでもとに戻って男の素肌に慣れてない女子生徒がさっきまでウキウキしながら追い剥ぎしてたのに「きゃぁぁぁあ」って本気の悲鳴を上げたんだからな」

「……それで惚れ薬と惚れ薬のレシピはどうしたんだ?」

「それに関しては情報通の俺の知人と協力して生徒指導の日野先生の机に惚れ薬と惚れ薬のレシピの在り処と科学部が忍者同好会兼任でやってることバレンタインの日何してたかの証拠を提出しといた」

「それでこの間、科学部員たちが生徒指導室に呼び出されてカミナリ落とされてたんやな」

「……君も怒るんだね」

「オレも被害に遭ってやられたからな。それに喧嘩両成敗ポイ落とし所にしておいたし結果オーライだろ?」

「……日野先生は惚れ薬とレシピをちゃんと処理してくれたよね?」

「あの人は非科学的なの信じてないって日頃から言ってるから大丈夫なんじゃないか?」

「そっか(……後で日野先生に探りを入れないとかも…)」




こうしてひとまず悠珂達が中等部2年の時に起きたバレンタインは幕を閉じたのであった。


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