永い時を生きてきたプライド
【詠ま星学園】
《オカルト研究会の部室》
創立者に言われた通りオカルト研究会の部室だけは怪異の攻撃や侵入を弾き、寄せ付けていなかった。
「オレはとんでもない間違いを犯したかもしれない」
「今からでも譜月とクローネに迎えに行かせれば良いよ」
「だな」
サニカとルウカは譜月とクローネを呼び出し迎えに行かせた。
「コレで大丈夫だよな?」
「なるようになるさ」
「そう信じるしかないな」
「…もう創立者を呼んでも?」
「おう、起こしてやれ」
サニカは手記を本棚から取り出しテーブルの上に置いて創立者を呼び出した。
「おや…随分と早い呼び出しじゃな」
「理事長室の合わせ鏡はどうなってやがる」
「…ワシが生きている間は大丈夫だったんじゃがな」
「鏡を使い何を祀っているんです?」
「アレは学園が…人々の意識が手作り上げた【神】じゃ…実体がないからただそこに居るだけのじゃかな」
「…人工の神か」
「あれは物質世界に干渉するために肉体を欲し、常に心身を鍛えている本物の魔術師や修行僧でないと魅了されてしまう。
どれだけ注意してもアレの管理をする時に覗く者が現れ廃人になる…数年に一度な」
「最後の七不思議は…」
最後の七不思議を創立者が答えた。
「この次元の最後の七不思議は【現人神の創造】じゃ」
「やべぇ事やってんな。……よく世界の理に処されないな」
「表では封じているだけじゃ…もしも裏側が大変なことになれば裏側だけを消せばいいからの」
「……単刀直入に聞く、本当に表に帰る方法はあるのか?」
「ある。七不思議の合わせ鏡じゃ」
「…でもアレは御神体」
「そうじゃ、御神体として祀っているが…表と裏を繋ぐ物でもあるのじゃよ。歴代の学園長の中でもワシのように魔術の存在を知っていた者が「コレやべぇな」としめ縄を使い道を閉じて封じたみたいじゃがな」
「……それと一つ気になる七不思議があるのですが」
「【巫女の封じた異界の扉】じゃな?」
「そうです」
「アレは駄目じゃ、触れてはならん。当時のオカルト研究会の部長に一人じゃ封じられない無理だなとワシ叩き起こされ馬車馬の如く働けとパシられたんじゃよ」
「……もしかして裏側に引きずり込んだり系とか出会ったら確実に即死系だったりヤバメな感じだったりします?」
「それを含めてのヤバい怪異が集まってな…流石のワシも肝が冷えたわ。ガッハッハ!」
「笑い事じゃないわよぉ!!」
少しボロボロ状態の詩子とまつりと紫蘭とミネコがオカルト研究会の部室に入って来ていた。
譜月とクローネはサニカとルウカの目線を外し明後日の方向を見ていた。
「よかった…皆一応は無事みたいだな」
「ルウカ、アンタから貰った鍵では錆びてて駄目だったわ」
「えっ!?」
「鍵穴には入ったんだけど……錆びてて」
「……それで大丈夫だったの?」
「えぇ、紫蘭が影分身を作って食屍鬼たちを相手して時間を稼いでいた時に譜月とクローネが来てくれたから」
「その割には詩子…」
「詩子が譜月に乗ろうとして一悶着あってこうなったから」
「その辺りは聞かないで…」
すべてを見たであろう現場にいた者が目線を下げたのを見たルウカとサニカは聞かないことにした。
「おう…」
「…それでどうなの?」
「やっぱり、理事長室の合わせ鏡からみたい」
「「「「え"っ」」」」
「紫蘭が見るのを避けたのは【人工の神様】出そうだ。人々の意識から作られたもんで大元だとよ」
「よりによって【人工の神様】か…それでふたりは何か思いついた?」
「サニカには言ってないが今思いついたのがある」
「…一応は話を聞こう」
「【人工の神様】の中に無敵の宿屋を一時的に火天の宿屋に繋げて眠りについてるラブナシカの力の一部を降ろせないかと思ってな…やっぱり人間を捨てきれないオレたちだと限界が来ると痛感したしな」
「なんと!」
「…形が定まってないからか……失敗したら終わるよ?ルウカ」
「まつりの心配もわかるがな。だからこそラブナシカと一番接点があるオレとサニカのふたりでやろうかなと」
「サニカを巻き込まなくてもアンタ一人で良いじゃない」
「それもありなんだが…もし失敗してもオレとサニカの肉体を吸収して肉体を得させたなら紫蘭でも肉体を得た【人工の神】をチャンスが来れば縛れると思ってな」
「東京にある…転移の門は?もともとそこを目指していたけれども」
「あっそういえばサニカとまつりに共有してなかったわね。実はあたし達も学園に来る前に隠れながら移動してた時に【異界の門】を見に行ったんだけど…と跡形もなく破壊されてたの」
「それでルウカは私にハイリスクハイリターンの方法を提案したのか」
サニカは絶句していたが覚悟を決めるた表情をした。
「そんなに絶句するものなの?」
「【異界の門】は【地球系列の太古の勇者】が作ったものだから簡単に壊れないし、表に居ようが裏に居ようが異界に渡れるんだよ。
だからこそ門を目指してたんだけど………ルウカ、私とした約束は覚えてる?」
「もう次の記憶の持ち越し転生はしないってやつだろ?」
「うん」
「それに関しては前言撤回。オレも本気を出す」
「…君って人は」
「それに関しては昔からだろう?相棒」
「だね……譜月たち…待っててくれる?」
『いつでも待つぞ…蓬の事は任せるのじゃ』
「クローネ」
『その先は言わなくて良いわ。待ってるから』
「ルウカ、邪魔はされない?」
「人工の神の一部を使う、だからといって昔みたいにオレ達の大切な物を犠牲にしての転生は二度としないと約束したからな」
「この部屋に火天の宿屋の扉を設置して置く。それともし人工の神が校庭に出ていたらすぐにでも宿屋の中に飛び込んでね。宿屋の中に食べ物や水分は数万年分は貯蓄してあるから安心して過ごすこと…いいね?」
「この場所が破壊されたとしても安心しろ。表の世界には影響が出ないように隔離されとるからな」
ルウカとサニカは天藍と蓬をさらに召喚し一時的に召喚権を紫蘭に渡した。
事情を主人の中で見ていた蓬は少し駄々をこねたが少しして「(失敗して転生したとしても)必ず帰ってこなきゃ探し出して一生縛るです」と言った。
それにサニカは苦笑いして必ず来ると約束し、宿屋の中の時間を一番時が経つのを遅くしてサニカが作ったミサンガをそれぞれにいくつも渡し、ルウカとサニカはそれぞれにハグして部屋から出ていった。
……まつりと詩子とミネコは足手まといになるからと先に宿屋の中に避難し紫蘭と従魔達は窓を覗いていたが。
『紫蘭!宿屋へ飛び込め!』
「わかった!」
「やっぱり怖いっワシも連れてって!」
紫蘭はテーブルの上の手記を手に取り火天の宿屋のドアを開けて飛び込んだ。
その直後オカルト研究会の部室が揺れて壁にヒビが入ったが従魔たちも火天の宿屋の中へ入っていった。
【火天の宿屋】
【エントランスラウンジ】
「………失敗しちゃったみたい…」
『うぅ~…賀実〜』
『本当の名を言うでないぞ…蓬』
『…何年待つことになるかしらねぇ』
『なに…あの者たちは帰ってくると言ったのだ。帰ってくるまで待てば良い』
自然に鍵がガチャッとかかった。
【エントランスラウンジ(左)】でのんびりしていた詩子とミネコとまつりも集まってきた。
「……紫蘭と従魔達のこの慌てよう…駄目だったかー」
「そうみたい」
「帰ってくるまで暇ね。なにしようかしら?」
「……この宿屋には訓練所があるからそこで魔法の修行でもやってればいいと思う。元々やるつもりだったんでしょ?」
「そうだけどもねぇ」
「詩子やりなさい。紫蘭がここまで言うってことは魔術本とかが潤沢なんでしょうから」
「……はい」
「まつりも訓練」
「うん、ぼくも…本格的にやるよ……あっと驚かせたいし…その前にここからなら窓を通して外を見ても大丈夫だよね?」
「うん」
まつりは宿屋の窓を覗き外を見れるようにした。
するとちょうどまつりが覗いた窓に肉体を得た【人工の神】と偶然にも目線があって「キャァアア!!」とまつりは悲鳴を上げて腰を抜かし人化した天藍に回収され、精神安定の魔法を紫蘭に掛けられてひとまず休んでこれからの永い時をどうやって過ごすかの話し合いが行われたのだった。




