始まりは突然に
修行僧と書いてたと思ったらイタコになってましたが修行僧に直しておきました。
【とある並行世界の地球にある日本】
《とある並行世界の恐山》
「タシュケテ…体が重くて動けない」
「縋り憑かれているのに縋り付くな鬱陶しい」
「相変わらず酷いっ」
修行の最中ですと醸し出している金髪だが何処か日本人にも見える者がルウカに縋りついていた。
「なんで旅神が地球人に生まれ変わってるん?」
「【迷わずのコンパス】を使ってここに来てみれば…ラブが言ってたもって……」
「君たちも酷いっマジでヤバイのに狙われたから最終手段を使ったまでだよ!」
「最終手段使ってこの体たらく」
「地球人って本当に不憫っ…魔法使えないっ」
「当たり前だろうが。ここは本来なら魔法が存在しない地球だぞ。………確保しといたほうがいいよな」
「うん…」
「…一体どんな問題に巻き込まれるやら…不安だよ」
取り敢えず紫蘭がサニカから渡された【聖なる言葉が書かれた本】を開いて金髪の修行僧の足に縋りついているナニカを祓った。
「あ~…ようやく開放された」
「修行してる意味あるのか?」
「ありますとも!例のパラダイスどもに捕まりそうになって最終手段を使ったのは良いものの…焦りすぎて記憶の継承と見極めスキルを取ってたら転生する時間が来ちゃって他の神力を全て失っちゃったから鍛えるのにイイヨ!」
元神族のその言葉を聞いた3人は呆れすぎて暫く開いた口がふさがらなかった。
「反応の仕方が酷くない〜?」
「………酷くはない。お前ほどの神族が転生したらまさか神力を全て失ってるとは思わなかったんだ」
「そこの輩を不老不死にして鍛えなきゃ」
「……それにしてもよくパラ……ユートピアの連中に狙われなかったね」
「ここの地球は他の並行の地球と違って原初の地球の本筋の世界に近い世界だからパラダイスたちも下手に手を出せずに手をこまねいてたんだよ」
「手駒とエンカウントとかは?」
「それもないよ」
「…ルウカも紫蘭も保護する体で動いてるけど…保護対象の君はどうするの?」
「えっ?特に何もしないよ?せっかく短命の人間に転生したんだからこのまま短い人生を走り切ろうかと」
「コイツ…」
「まずはこの場所からは移動しない?また修行中の修行僧が足を引っ張られるのが見える」
取り敢えず修行場から離れ保護対象がお世話になってる宿場に向かった。
【青の森のお宿】
《借りてる部屋》
「……あ~…それで二人して弱くなったけど、あの宿屋だけは過去を改変したとしても奪えなかったんだ」
「…どうにかこうにか私達が見守ってきた子供たちとラブナシカの首の皮一枚繋がってる状態」
「宿屋が機能してるなら大丈夫だよ。また穏やかな日々を送りたければ今の状況をどうにかしないとだけど。……それにしても神族の領域にも攻め入るとは怖いもの知らずだなー」
「君はとても余裕そうだけど?」
「そりゃあ…神族からただの人間に成り下がって力もないから狙われたとしても全盛期の力はもうないから。
ごうもんとかされて情報を吐いたとしても向こうさんは使えないから」
金髪の修行僧こと【蓮城まつり】は落ち着いている。
「ならもう構うことはないな」
「そうだね下手に関われば逆に巻き込む」
「ならコレからどうする?」
「今からいくつかの異界に渡って過去を改変された後の他の世界がどうなってるか知りたいから行くか。
こちらからの話は終わったし…今日分の宿代は払ってやるから修行頑張れよ」
ルウカが立ち上がったのを見てサニカと紫蘭も立ち上がり蓮城まつりが泊まっている部屋から出ていこうとした時に大きな揺れが突如として始まった。
「わっ!」
「机の下や丈夫そうな家具の下に隠れろ!」
「えっえっ!」
「紫蘭!こっち!」
ルウカはまつりと共に机の下に隠れサニカは紫蘭の手を引っ張り鉄製のベットの下に潜り込んだ。
程なくして何か嫌な感覚を感じったまつりが「今張れる中で一番強い結界を」と瞬時に言い放ち3人それぞれがまつりが泊まっている部屋に結界を張った。
するとますます部屋の揺れが強くなり電気も消えて真っ暗になった。
真っ暗な中で息を潜め落ち着くのを待っていたが突如としてドアを開けようとガチャガチャと音がなったが強い揺れの影響なのか開かなくなっていた。
暫くしてドアを破壊しようとしたのかまたまた大きな音が鳴り響いたがそれでも開けられることはなかったが誰かが転けた音が響いた。
「ぶふっ」
「笑うんじゃねぇ」
「暗中摸索で揺れてるのに今やることじゃないのに……ぷふふふふっ」
「…なかなか揺れが収まらないな」
いくら待っても揺れが収まらずに身を潜めていたが突然ラジオが流れ始め外からサイレンの音もなり始めた。
『緊急速報です!日本のいくつもの活火山がほぼ同時に噴火をはじめ各地で大きな地震が起きました!
地震が収まり次第避難を開始してください!繰り返します!』
何度も何度も避難誘導の指示がラジオから流れているが揺れも少し収まり家具の下から出ても大丈夫になった。
「おい聞いたか!」
「スマホのライトつけるけど大丈夫だよね」
「あっそれなら某も付けるよ」
するとサニカとまつりはスマホのライトを着けてあたりを確認した。
「ふぃー…本とか買わずに古本屋に行ってて良かった〜」
「あれ?紫蘭は?」
「私ならベットの下に……腰が抜けて歩けない……」
「紫蘭は地震は初めてか。クレイバール島…私達が暮らしていた世界では地震は起きないから」
「……肩を貸して……いや背負い込んだほうが早いか」
ルウカはベットの下にいる紫蘭をズルズルと引っ張り出したが異変を感じた。
「…………紫蘭お前なんか縮んでないか?」
「それなら貴方もだけど」
「えっ」
ルウカはライトに照らされた紫蘭を見て今度はライトを照らしているサニカとまつりを見た。
サニカもまつりらしき金髪のショタが幼い姿でそこに立っていた。
「……なんかオレたち縮んでね?」
「それも11〜12歳の頃の姿だね……もしかしてだけど異界関連に巻き込まれた?なんか窓の外の景色が赤い」
「炎に包まれてる…?」
「それはないよ。熱くなってないから…でも何かしらの要因が起きてることは確かだね……ひとまず外に」
「異空間に巻き込まれたなら出ないほうが良いんじゃ…?」
「さっきサニカのスマホからラジオが流れてただろ?サニカのスマホはアンチマジックが掛けられてるから通信妨害とか効かないんだよ。
だからさっき流してたラジオの内容は本物だよ…日本中がパニックになってるみたいだな」
ルウカの発言を聞いて紫蘭は緊張に包まれた。
「どうして子供の姿になったのかはひとまず置いといて外に出て状況を確認するしかないな」
「うへぇ〜…」
「異世界へ渡るにもこの姿では東京か京都の某所にある異界の門を通らないとだから青森から移動しないとだね」
「徒歩で?」
「馬車で移動したいけど道路とかボロボロになってそうだから徒歩と人気が無い場所なら天藍と私が持ってるメフィリーネのヌイグルミの背に乗って移動だね」
「……治安悪化とかありそう」
「子供三人旅になるから心無い大人たちに食糧を寄越せと襲われたりするだろうな」
「子供三人旅じゃなくて子供四人旅だよ」
「なんだお前も行くのかよ」
「うん、このままだと…子供旅に慣れてるサニカとルウカに付いてかなきゃボクチン死んじゃう…それにこんな緊急事態でもサニカの【火天の宿屋】が使えるから」
「いざとなったら宿屋を使いながらの移動だね」
四人はこれからの困難を容易く想像できてしまうために深いため息をついてまずはまつりが泊まっている部屋の窓から外へ出たのだった。




