過去にしくじった話〜いろんな事が時すでに遅し〜
【とある隠れ家】
ふたりが動いた瞬間にカズハを連れてきた信者が力を解放したらしくビリビリいやーんしてパンイチになったのを見たルウカはブホッと吹いた。
カズハとサニカは引いていた。
「なんで私たちの周辺はボディービルダーもどきしか居ないんだろう?」
「筋肉の神様に呪われてんじゃね?…それじゃ援護よろ」
「…出来たらね」
ルウカが走り出しアイテムボックスから少し長い木刀を取り出した。
サニカはコンポジットボウを取り出した。
「ナニあの弓!?」
「…自己流に改造されてるね」
※改造している弓は銃刀法で捕まるから現実で所持しては行けないし、人や動物に向けて放っては駄目です。
弓をたしなむ場合は然るべき場所で嗜みましょう。
「殺傷能力がなるべく低いやつを選んだよ。当たったら確実に痛いけどね」
サニカが放った矢は教祖の頬をかすめた。
「ひゅー…あえて外したね」
「教祖様っ!」
「大丈夫、大丈夫。彼女たちでも僕はころせないから…こんな所に居ないで……僕の魂を取ってきてよ」
「はっはひ!」
ルウカはカズハに向かって行ったが信者達がゾロゾロゾロゾロ現れて迎えていなかった。
「サニカ!援護!援護頼む!」
「ルウカ!ジャンプして浮遊っ!」
ルウカはサニカの指示通りジャンプして浮かんだ。
サニカはリュックから大量のローションを取りだし、フタを取り床に撒くと床をぬめぬめさせると信者達が転け始めた。
「良し!」
「良し!じゃないわよっ!」
カズハもサニカが床に撒いたローションの影響を受けて生まれたてのシマウマになっていた。
「フハハハ!」
ルウカは木刀を使い信者たちを上手く捌いてカズハにズンズン近づいて行ったが。
「ぐはっ!」
ルウカは見えない壁に打つかりダメージを受け、手に持っていた木刀が見えない壁を超えてカズハに向かって飛んでいき、生まれたてシマウマ状態でみぞおちとういう急所に当たった。
「はうっ」
カズハはローションにまみれた床に静かに倒れた。
「サニカ!見えない壁を壊せないか!」
「壁壊しのハンマーがアレば出来そうだけど持ってないから無理っ!君の魔法では駄目なのか!」
「コレはオレでも……無理だ!」
高みの見物をしていた教祖の布袋音猫がふたりのやり取りを見て指を鳴らした。
「……1ラウンドで決められちゃった。…ならばこうだね」
「そうはさせないわよ!」
とある隠れ家の天井を破壊しながら真っ赤なフリフリのエプロンを装着しているラブナシカが降ってきた場所がちょうどカズハが倒れている場所だった。
「もう!ルウカたら女の子に木刀を当てるなんて何を考えてるの?!」
「手が滑っちゃったんだよ!」
「だとしても回収できたでしょ?」
ラブナシカはそっとカズハをお姫様抱っこした。
「布袋音猫……いいえ、這い寄る混沌。今回の件から今ならまだ手を引けるから引きなさい」
「君は…僕の楽しみを奪うのかい?」
「アナタは様々な地球系列のパラレルワールドで様々な人種を玩具にして楽しんでるんだから今回くらい良いじゃない」
「んー…でも…やっぱり………君たちとも遊びたいな」
ラブナシカが姫様抱っこしていたカズハに黒いモヤがかかり始めて黒いモヤはラブナシカも包み羽交い締めにした。
サニカは確実に救うためにラブナシカを羽交い締めしていた黒いモヤに対して【破魔の矢】を放つと黒いモヤは散った。
「……カズハ、どうして親友の命を奪った輩を信仰したのか聞いてもいいかい?」
サニカの問に対して黒いモヤに包まれながらもカズハは抱擁しながら言った。
「あらバレてたの。ナギサはニャル様の礎になったの。その瞬間を見てとてもキレイだったのを覚えている」
「……君は…当時あの現場にいたのか?」
「えぇ……とても楽しかったわ…特に自身が起こした問題を揉み消し、威張っていた上級国民がゼツボウに叫ぶ瞬間なんて……あたしから家族を奪ってその事件を揉み消した奴とその家族の悲鳴は特に甘美だったわ」
「………既に君は…出逢った時から狂っていたんだね」
「うふふふふ……ニャル様からアナタ達に近づいて友となり知覚で様子を見ていて欲しいと頼まれて共にいたけど………苦痛だったわ」
「そうか」
「反応が薄いわね」
「そりゃね。私とルウカが纏っている君が作ってくれたキグルミから受け取って直ぐに嫌な感じがしたと思ったら、知り合いに勝手に改造されたんだもの…なにかあるなと思うさ」
「だから他の信者みたいにニャル様のお人形さんに幾度まってもならなかったのね」
「(場合によってはオレもサニカも施設跡地に居たアレになってたのかよ)…まさかここまでとは思わなかったけどな」
「………そう」
「カズハ」
「はい。ニャル様それでは」
「うん。バイバイ」
すると黒いモヤに完全に包まれカズハはその辺に倒れている信者をドンドン吸収していき大きな黒い塊になっていった。
ラブナシカはいつの間にかルウカの首根っこを掴みサニカの側まで来てその様子を見ていた。
「……既に救えなかったのね」
「さっきルウカも言ったけど…まさかここまでとは思ってなかったよ」
「…もう無理なんだな?」
「繭になったのならばアタシでも戻せないわ。それにしてもルウカたら良く刺されなかったわね〜…頭の中に貴方が女の子に刺されるのが見えてたけど」
「透明な壁に阻まれてカズハの近くに行けなかったんだ」
「……それで意識取り戻してすぐにアタシに刺したのね」
「「えっ」」
ふたりはラブナシカが指し示した所を見ると短剣が刺さっていた。
「大丈夫なの…?」
「筋肉で受け止めたから無傷よ♡」
フンッとラブナシカがチカラを入れるとカランカランと折れた曲った短剣が床に落ちた。
「……良く見たらなんか塗られてるぞ…この短剣」
「でも血とかついてないから本当に大丈夫なんだね」
「えぇ♡」
「それでどうするんだ?」
「そのキグルミに仕掛けられてる仕掛けを発動させるの」
「一体何が仕込まれてるんだ……このキグルミに」
「元は相手側の物だったから色々と仕込まれてたのを利用してどんな事にも対抗できるように魔改造したの」
「……オレ達が怪物になっても戻れるよな?」
「勝てたなら大丈夫よ。アタシも一緒に合体するから♡」
「「え"っ」」
「ほら、ふたりとも良く見ておきなさい。邪神に魂を売ったものの末路を」
吸収し終えた巨大な黒い繭にから見たこともない怪物が現れ隠れ家の天井を破壊して飛び去っていった。
「……ポージングがスフィンクス?」
「その割には顔ないしグロいな」
「アレは這い寄る混沌の化身の一つ。無謀の神と呼ばれる奴よ…ほら変身するわよ。こうなったら最終手段を使うしかないんだから!」
「ちょいタンマ!」
「タンマは無しよ!」
ラブナシカはふたりが着ているキグルミの背中に隠されていたボタンをポチッと押した。
「ギャァァァ!合体したくねぇ!!」
「大丈夫よ。合体と言っても特撮ヒーローのロボットの様に合体するだけだから♡」
「それでも嫌だァァァ!!」
「諦めな……時すでに遅しだよ…」
「オメェも抵抗しろ!諦めるな!!」
「ルウカ、自身の両足を見てご覧よ」
「へっ」
ルウカは自身の両足を見て粒子状になっていくのが見えた。
「ギャァァァ!手遅れになる!もうお嫁にいけないっ!!」
「君の場合は婿。もうお嫁にいけないは私の方さ…ははっ」
「だーから大丈夫よ。……アナタたちの貞操は無事よ」
「無事でも嫌なもんは嫌だぁ!!」
「もー酷い人たちね~ほら特撮ヒーローの様に言うわよ。生身の人間からヒーロースーツに着替える時に言う言葉あるでしょう?」
「「変身?」」
「そうそれよ、その言葉を待ってたわ!…変身っ!」
「「あっ!」言っちまった〜〜!!」
すると粒子状になっていくのが早まり意識が飲まれていった。




