愛の伝導神から天災へ舞い戻った古き神 ※バイオレンスでグロテスクな場面があるためご注意を。
【情報部】
《モニタリング室》
「会長に辺境の魔法使い殿も申し訳ない。今回ばかりは会合が終わってからでは遅いと思い、呼び出しをさせてもらいました」
「お前さんが会合の途中て呼ぶときは申し訳なくない、次元を揺るがす大事件になりそうになる事が多いからな。それで話とはなんだ?」
「魔法使い殿、会長も心して聞いてください」
モニタリング室のトップスは何が確認されたのかを話し始めた。
「最近、やたら大人しいと思っていた性に奔放すぎる兎人でありながら女帝である【ラビリア・ラビッツ・ラピスライト】が異界を旅している旅人に対して運命の番だと告げたと報告が上がりました」
「えっ……あの性に奔放すぎて子沢山の兎人が運命の番と認定したのが現れたと?」
「はい、その相手と言うのが…辺境の魔法使い殿の世界に居られるラブナシカ様の最愛でありながら使徒をしているアスチル殿です」
「うわぁ…」
「…………うちのハイエルフを攫ってから貞操を奪って子供を設けるという犯罪を起こしておきながら次はラブの最愛の使徒にも手を出そうというのかあの性欲の権化は?」
「辺境の魔法使い殿に取ってはそうなりますよねぇ」
「まだ手は出されてないよね?」
「はい。アスチル殿に持たされているラブナシカ様とナオハル殿の手作りのお守りによって近づけていませんが、よりによって性欲の権化に狙われてますから…時間の問題かと」
「それでその報告が上がったのは何分前だ?」
「10分前です」
「サニカ殿、悪いがこのままラビリアのバカの元へ行こう。
アスチル殿がラブナシカ様の最愛で使徒をしているのを知っているのにも関わらず指定したみたいだから」
「うん。手遅れでないと良いんだけど…」
間髪入れずにアイネイアが転移魔法を発動して会合会場からラビリアの元へ向かって行った。
【ウルガンリィー・ベーテ世界】
《とある大国の玉座の間》
部屋の所々に近衛騎士と思わしき者達が鎧が凹んでいる状態で転がされている。
「ラビリア、これが最後の警告だ……君自身がアスチルの身柄をこちらに引き渡すんだ」
「………悪いけど、サニカと番嫌いの会長様の指示であろうとも渡せないわ。あの子はワタシの番よ」
「頭の中が花畑になってやがる。サニカ殿、あのバカ兎の発言からしてアスチル殿は」
「言わなくていいよ。譜月にアスチルを捜索させてるけど簡単にみつけられないって事は手遅れだろうからさ」
「うふふ…」
「笑い事じゃない…おい、バカ兎。ことの重大性をお前は理解してないだろ?」
「ラブナシカについてでしょ?それなに関しての策なら考えているわ。
それにしても……ワタシの育て上げた近衛騎士があっさりしてやれているとなると鍛え直さないとかしら」
「(バカ兎と言っても言い返さない、いつもならアイネイアに言い返してるのに何も言わないか…)カーウェンとその娘になんて言えばいいのか…」
「あぁ……そんなのが居たわね。生まれてすぐにハイエルフに連れて行かれたから気にもしてなかったわ。
あっそうだどうしてワタシがサニカ達が暮らす世界に行けないか教えてくださらない?」
「教える義理はないから教えない。私はラビリアに貸しはあっても借りはないから」
サニカとアイネイアはラビリアを簀巻きにしながら話していたが、玉座の間に入るための扉が開くと簀巻きされたアスチルを伴った人に変化している譜月が現れた。
「なっ!どうしてワタシの番の場所がっ!」
「…サニカ、場合によってはそこのバカ兎をこの場で斬り捨てた方が平和に終わるぞ」
「何があったか譜月の発言でだいたいわかったからその先は言わなくていいよ。
アスチル…ラブナシカのお守りはどうしたんだ?」
「それなら燃えてなくなりました」
「…アスチル。うまく誤魔化しているつもりだろうけど、君は一人で異界を旅しているとき、実は何回かしてるだろ?」
「何のことでしょう?」
「実は数多の世界の強者達から公然わいせつ罪被害がいくつもの出されていると、ルウカやラブナシカには知らせないように細心の注意を払って貰いながら時空維持系列の組織から連絡が私宛に来てたんだが?」
「見覚えないですよ」
「白を切るか…この真実を写し出すカメラで撮られた異世界で逢引している写真はどう説明するつもりだい?」
サニカはアイテムボックスからパラパラといくつもの写真をアスチルの近くとラビリアの近くにばら撒いた。
その写真は以下省略。
「自然の中のパラダイスやー……サニカ殿はいつからこの卑猥な写真を持ってた」
「……実は一週間前から…デス」
「……時空裁判所の執行官からどうしろって言われたんだ?」
「この件は我々が裁くよりもラブにヤらせたほうが確実に罰になるから本人たちが白を切るならラブナシカに伝えろと言われた。
カーウェンとその娘になんて言えばいいのかねぇ」
「そう言えば…カーウェン殿の貞操をそこの発情兎が奪ったんだっけか…」
「アスチルも大人としてちゃんと責任を取らせたいからこのふたりはこのまま確保させて貰うことにする」
「サニカ殿の所には発情兎対策を施されてるのでは?」
「今回ばかりは私の持つ権利を使って特例として入れる」
「ご愁傷さまです」
アイネイアはサニカの肩に手をポンっと置いた。
「あっそうだ、カーウェン殿とその娘さんには【生命の守護神】への紹介状を書こう。父娘にすべてを話してから渡してくれや」
サニカはアイネイアから【生命の守護神】の神秘体験の紹介状を受け取った。
「本来なら…禁忌だが番問題をかなりの短期間で解決するのにDNAや魂を弄るのが一番早いからな。
それに最近の番問題に関してなら特例だが許される件がいくつも出ている。
この番の事で頭いっぱいの発情兎の子供ポンポコの件は問題視されてたからオレの紹介状で今回の件は引き受けてくれるだろう」
「ありがとう」
「本来なら慰謝料の方で決着を付ける方が良いんだろうけど、ラブナシカ様の使徒であり、お気に入りに発情兎から手を出した写真があるみたいだしな」
「……暴走がすぐに終れば良いけど」
「そうだな……それじゃオレは会合会場に戻って暴走状態のラブナシカ様から身を守るための避難やらを始めるとする」
それだけ言うとアイネイアはラビリアの拘束を更に強めるための札をラビリアに貼ってからこの世界から会合会場に転移していった。
「本当に君たちはやらかしてくれたよ」
「…別にそこまで深刻にならなくても良いじゃない」
「君たちはラブナシカの本当の怖さを味わえばいい。味わってから同じセリフが吐けるといいね」
現代に戻り、火天の宿屋では。
【火天の宿屋】
《エントランスラウンジ》
「………………………………………………そうなの」
「……ゴクリっ」
「それで写真は何処にあるのかしら?」
「ここに全部あるよ」
サニカは数多の世界で取られた写真をラブナシカの座っている席の机の上に全て晒した。
ラブナシカは1枚1枚写真を確認し始めるとラブナシカから禍々しい魔力が溢れ出し始めた。
「ラブナシカ、バカをしでかしたふたりはこの宿屋の【5の8号室】の部屋に閉じ込めてあるからラブナシカが直々に裁くといい。時空裁判所からも許可が出ているよ」
サニカは【5の8号室の鍵】をラブナシカの眼の前に置いた。
「………………サニカ、ルウカ、イダルベールはこの宿から出なさい、でないとアタシの狂気に巻き込んじゃうから……」
「ラブ先生…」
「ごめんなさいね」
「ひっ」
ラブナシカがサニカ達三人を見るとイダルベールはラブナシカのキレた表情を見てその場に倒れ込んだ。
「手加減出来ると良いのだけど…………さあ、行きなさい」
ルウカがイダルベールをお姫様抱っこして三人は火天の宿屋から飛び出した。
すると火天の宿屋からとんでもない音が響き出し急いで無敵の宿屋に向かって行った。
ルウカはイダルベールをエントランスラウンジで三人の帰りを待っていたハルディオラに託してから、エントランスラウンジに残っていた島の子供たちをはやし立ててそれぞれの部屋に向かわせた。
宿屋全体はどんなモノにも破壊することが出来ないとわかっていても、サニカとルウカは島の子供たちに内側から鍵をかけさせて、更に外側からも鍵を掛けながら自身が籠もる部屋に向かって行ってギリギリセーフのタイミングで籠もる部屋に入った。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
【六月一日家が泊まる2の1号室】
《居間》
「ルウカ先生たちは心配症す……!?」
「「ひぇっ…!」」
「なっ何でしょう……この心が不安になるような魔力は…」
「…………………何なんだあれはっ!」
白虎が一定の距離を取りながらも窓の外を見ていると天気が急変して嵐が吹き起こり、髪を逆立てどす黒いオーラに包まれた赤いエプロンを着た何者かが島中の木を素手や足で破壊しながらこちらに向かってきているのが見えた。
そして右手の素手で木を引っこ抜き無敵の宿屋へいくつも投げていたが宿屋の結界が全てを弾いていた。
すると左手に持っていた鎖をグルングルンと回し出し、宿屋の方へ投げた瞬間に、白虎は嫌な予感がしていたので目を瞑ったが衝撃的な現象を見た子供たちはパニックになった。
「イヤャァァァ!!」「わぁあぁあ!!」
「あっ………………ぁあ……っ!」
「玖寿!クーナ!クート!見てはいけません!目を瞑りなさい!白虎もそのまま目を閉じていてください!絶対に!」
「キユクは大丈夫なのか!」
「ボクは背を向けたので大丈夫です!」
「とっ父さんっ!」
玖寿がオレの胸に飛び込んできたので抱きしめた。
キユクもオレの背中に自身の背中を押し付けクーナとクートを抱きしめてながら震えているのがわかった。
「何を見たんだ」
「みっ見ては…いけない…ものです……サニカ先生が言ってたのはこういうことに…なるからなの…でっですね」
「キユクや玖寿が震えているってことはよっぽどのことが起きてるんだな」
『ひえっ……やばいんよ〜…コレが天災と呼ばれていた神の怒りなんよー』
『かー…ラブナシカがここまでキレたのって久し振りやなー』
「音が響かないのは宿屋がやってくれているのか」
『この宿屋も特殊やからな…宿屋に泊まっている者に悪影響が出る場合に限って音を消したりするんやけど、昔から外でナニが起きてるかとかは見せてくるんや』
『実況するならするんよー…』
「「しなくて良い!」です!」
白虎とキユクは宿屋の大人向けの店内放送を聞いていたので番騒動とラブナシカがキレて暴走している事を知っていて、浮気をしたアスチルとアスチルを運命の番認定して関係を迫って持った兎人がどうなっているのか想像出来てしまうためにフクコの実況を拒んだ。
「うぅ……こっ怖いです…っ」
「玖寿、大丈夫だ。この宿屋の部屋に泊まってれば何も心配はないから」
「わっわかってます……奇妙な魔力が宿屋の全体を覆ってるんです」
玖寿は自身の顔を白虎の胸にぐりぐり押し付けて震えていた。
家族で震えながら固まり刻々と時間が進んでいるように感じていたが子供たちはいつの間にか意識を手放し眠りについていた。
だが白虎とキユクは目を瞑っていても緊張しているのか眠れていなかった。
「なぁキユク、少しいいか?キユクが背を向ける前に何を見たんだ?」
「……子供たちはいつの間にか眠ってしまったようなので話しても大丈夫そうですね。
…僕が見たのは鎖に繋がれた原型を留めていない赤黒いナニカをラブ先生が僕たちが過ごしている部屋の窓に投げつけた瞬間です」
白虎は鎖に繋がったナニカが誰の物か想像してぞぞぞぞっと鳥肌が立った。
「………悪い……グロテスクな事を思い出させたみたいだ」
「僕は今以上のもっとグロいのを映像で見たことあるので大丈夫です」
「えっ」
間髪入れずにフクコが近くに来て『サニカ達からの通信が入ったから繋げるんよー』と言って通信を繋げた。
『あー…聞こえるか?』
「聞こえてます」
『……幾人かは起きてたか。定期連絡をしたくて連絡を取った次第だが…オレとサニカが予想していた以上にラブナシカがキレ散らかしてるな』
『泊まってる部屋の外出たらどうなル?』
『アスチル達のようになるぞ。ラブナシカの奴、自身のコピーを増殖して徘徊させてるみたいだからな』
『えっ……それじゃ俺の泊まってる部屋の窓にぴとって貼り付いてる赤いエプロンを着たサイ○人モドキって……ラブ先生のコピーか?』
『正解だ』
『正解だじゃないわ…こっちなんて夫と息子がガンギまったラブ先生のコピーを見て気絶したわ』
「ヒペリカ姉さんは見ても大丈夫だったんですか?」
『ガンギまってるだけだもの別にそこまで怖くないわ。とんでもイケメンも時と場合によってはこんなふうにキモくなるんだなーって思ったくらいかしら?』
『ふふふふ……ガンギまってる…キモい……くくくく…酷い言われようだねっ!』
『ロディンナのツボに入っタ』
『ふははは…!』
『ロッカさんの笑いのツボにも入った』
『『『『ガッハッハ!』』』』
『孫ラブたちのツボにも入ったようだ』
笑い声を聞いて暗かった雰囲気が少し和らいだ気がした。
『アンタ達、よく平気で笑ってられるわね…それで先生達、どれぐらいで出られそう?』
『すぐには出られないよ。ラブのコピー体複数がこの宿屋の廊下とか彷徨いてるみたいだから』
『えっ……侵入されてる。……悪意を持った輩とか追い出したり入れないように出来てるはずじゃないのか?』
『暴走状態であろうともラブナシカは私達に敵対心を持ってるわけじゃないから入れるんだよ。
今は精神をやんでの暴走状態だから見るのも全て敵とみなして攻撃してくるけど』
『狂戦士や』
『部屋、入ってこないわよね?』
『ドアは攻撃されるだろうけど、泊まっている部屋の中にいれば大丈夫。
泊まっている部屋に関しては泊まっている者がいる場合、どんな危険なモノからも守るために部外者は入れないから』
『…ひえっ!早速ドアパンされたわ!』
『フラグを建てたからな。狙われたのはポーリアか』
『一人で心細いのにこれ以上恐怖を与えないで欲しいわ!』
『……正直ラブ先生の暴走状態について舐めてたけど、まさかここまでとは思わなんだ』
『だよなー』
「いつ頃終わるんだろ…ずっとは目を瞑ってられないよ」
『白虎は目を瞑っている感じか』
「僕が目を開けてはいけないと言ったんです」
『うン…その判断でいいんじゃないカ?白虎と子供達には刺激が強すぎるしナ』
雑談を繰り返して時間を潰していたが段々と眠くなったから寝る宣言をして減っていき俺とキユクも寝具の元へ向かい夢の中に入っていったのだった。




