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元勇者の転生人生記録  作者: 冬こもり
【クレイバール島の日々】
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最初で最後の不老不死と過去話

【無敵の宿屋】



《食堂》



「話に付いてけない。頭の中がパンクしそう」



忙しい合間を縫って陽雲が深夜帯だが、無敵の宿屋にやって来ていた。

キグルミ姿の知らない人物を見て当初は警戒していたが紫蘭から何があったかの話を聞いてなんとなく理解したようだ。



「まっとにかく、キグルミの人が本来のサニカで宝石人になったのがボクが知り合った方だったて事だね」

「その認識でひとまずあってる」

「底が知れない魔法使いを見たのボクは初めてだよ……進化してない普通の人間でもその領域まで鍛えられるんだ」

「雰囲気から…君は仙人になったのか」

「あっはい。人間としての限界が来て仙人になりました」

「不老不死になったばかりだと仙人やら魔人やらに進化したがるよな」

「ボク、カレコレ500年は生きてるけど」

「俺達みたいな転生を繰り返しながらの数十万年生きた生物に取っては瞬きするくらいの速度だな」 

「…私はそんな瞬間的な感覚ではないよ。長く生きる種族に変わればそう思える様になるけども」

「キグルミ先生に一つ聞きたいんだけど良い?」

「…私が答えられるのであれば」

「異世界に落ちて頑張って魔法を極めたのに、どうして不老不死にならなかったの?不老不死になれば帰れる方法を見つけられたかも知れないのに」



「「………………(そういえば…聞いたことなかったな)わ)」」と心のなかで呟きルウカとラブナシカはサニカを見た。

キグルミ姿のサニカは少し考えてから言った。



「……魔法を極めて満足した事と、永い時を生きる事でたくさんの幸せを味わえるけど、たくさんの不幸も味わうことになると考えだしたら怖くなったからかな」

「えっ…それだけの理由で不老不死にならなかったの?」

「不老不死になるもならないも個人の自由だから。それにルウカのやらかしに巻き込まれるのも嫌だったし、ちょうどその頃【ブラックアニラム】と言われるヤバい魔物が誕生してたのもあるかもね」



サニカから【ブラックアニラム】の名前を聞いて陽雲はギョッとした表情をしてガタガタ震えだし、ルウカとラブナシカと紫蘭は乾いた笑いが出ている。



「アレねー…」

「オレもその辺りの記憶はサニカが魔法を取り戻したタイミングで代償として渡したはずの記憶をオレも思い出したからな。

【ブラックアニラム】は当代最強魔王と呼ばれてたオレでも勝てなかった…休眠するしか逃れる方法はなかったぞ。

魔王の位よりも大切なナニカを護っていたみたいなんたが…そこの記憶は戻らなかったな」

「……私はサニカのいくつかの記憶は覗いたから知ってるけどその辺りのだけは見られなかったな。図鑑で見たことあるけど、とにかくヤバいしか書いてなかったし」

「知らないほうが良いこともあるから気にしないのよ。この世界を作るのに【記憶を辿る旅神】にルウカとサニカが1番大切にしていた記憶を渡して手伝ってもらったみたいだし」

「アイツケチだよな。一番大切にしていた記憶だけは返してくれなかったし」

「二人で世界を創造するのに1番大切な記憶を対価にしたんでしょ?それに記憶と杖とかで済んだのならかなり良いほうなんだからケチって言わないのよ」

「天地創造ってそんなにヤバいの?」

「本来は神族と至竜にしか天地創造が出来なかったわ。

でもとある世界のとある魔法使いが神の領域に至った事で真理を悟り、至竜へその身を変化させたことによって地球以外の魔法がある世界の理が変わったの。

至れば世界を人間やエルフといった亜人でも創造できるようになっちゃったのよ」



ラブナシカは苦虫を噛み潰したような表情をしていた。



「当時のいくつもの神族の領域では天地がひっくり返った様に騒がしくて凄かったわよ。

お互いに責任の押し付け合いが凄かったわ」

「うわぁ…」

「【大いなる始まりの魔法使い】に関しては?」

「あらあら!ルウカも【大いなる始まりの魔法使い】を知ってるのね!」

「おっ!ラブの反応からして有名人か!」

「世界創造成し遂げ至竜になった魔法使いのお師匠様よ。

真理や理を替える怖さを魔法を極める過程で知っていたから時空間を好き勝手に移動できる手段を作っただけだったわ。

最後の弟子が仕出かした責任を取らずに神々から転生という裏技を使ってトンズラした問題児よ」

「逃げたんか」

「えぇ、逃げたわ。アタシたち神族でも見つけられないの。一体何処にいるやら…今でも魔法が使える種族に転生しているのはわかってるんだけど…特定できた試しがないわ」

「…その最後のお弟子さんはどうなったの?」

「理を替えた弟子は事態が落ち着くまで責任を取らせるために馬車馬の如く働かせて落ち着いた頃に元の時代と生まれた世界に解放したわね」

「それが妥当だろうな」

「とんでもない古い時代の話を聞いちゃったよ。

話を脱線させたのボクだけど……こどもの日に侵入者してきた輩の特定は済んでるの?」

「【流れ者】だったよ。自世界から飛び出したは良いけど戻れなくなった輩が大半だった」

「それで処遇は?」

「こちら側に被害がなかったから、執行猶予付きでこの次元とは別の次元に解き放たれたわ」

「報復とかの心配はないの?」

「早々簡単に来れないくらいの低い次元に放置プレイされたが、また来たとしても何度でも追い払うぞ」




これからのことを考えたサニカとルウカとラブナシカと紫蘭は「コレからも来るだろうから嫌になるねぇ~」と心を一つにしてため息をついたのだった。




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