命の創造
【星明かりの森】
《星の泉の湖畔》
勝負がついたことでプロレスリングは片付けられた。
島民たちは顔を下げて沈んでいる為にただ風が吹き草木が揺れている音だけが響いている。
「終わったのか?」
「第1段階は」
「第1段階ってどういうこと?」
「……四季・永劫回帰が情けを出したから…ほら」
サニカは黒い結晶をルウカとラブナシカに見せた。
「これは…オレも初めて見るな。ラブはどうだ?」
「アタシは知ってるわ。コレは【命の結晶】よね?」
「大正解。私も本の中でしか見たことないけど」
「【命の結晶】ってなんだ?」
「不確かなものを新しく命あるのもとして新たに生み出せる奇跡の結晶よ」
ギゴギコしている音は既に止んで3人のもとに強者3人組がやって来た。
「それじゃ黒結晶樹は3等分にして貰っていくからな」
「どうぞ持ってて。この世界で黒結晶樹を加工したら悲惨なことになりそうだから」
「それよりも【命の結晶】を創り出すとは凄い刀ね…その刀は誰に作ってもらったの?」
「もう寿命で居ないし、その世界も滅んでるけど…【ソードファクト】って言えばわかる?」
「あ〜魔剣を製造量産しまくったせいで滅んだ世界だな。
確か滅んだ後に魔剣たちは数多の異世界に散っていったんだっけか」
「良くもまぁ…【ソードファクト】の頑固な職人に作ってもらえたわね」
「【ソードファクト】の旅する鍛冶師と大昔にとある世界の旅先で仲良くなってからその職人を贔屓させてもらってたからな」
「サニカの刀とルウカの大剣を作った職人とは別の【ソードファクト】の職人達の血をこの島で生まれた子は全員引いてるわよ」
「えっ!マジでか!」
「【ソードファクト】が滅んだときに一部の職人を受け入れたからだな」
「だからとある山の奥の【村】で暮らしていた頃になるけど…一時期に村が職人だらけになってヤバいもんばっか作られて冷や汗かいてた時期が…」
「だから子孫であるこの島の子供達はモノ作りに関してはぶきっちょな子が生まれないの。ここで生まれた子はみんな器用なのよ」
「へぇ~…いいなー」
「そうやって血が残ってたりするもんなんだな」
「欲しいと言われても絶対に渡さないぞ」
ルウカは自身の持つ魔力を使い強者たちに牽制した。
「ちっ」
「流石に舌打ちはないでしょ?酷いわねぇ」
「あははっ…この世界の子供達は珍しい血統を持ってるね…一定の馬鹿から狙われるわけだ。
力を取り戻したサニカとルウカが居るなら平気そうだね」
「だと嬉しいんだがな」
「サニカが持ってる【命の結晶】からまだ禍々しい力を感じるから浄化させるのを協力してやるよ。貸してみ」
「それならアタシもやるわ」
「僕もね」
○問大好き強者3こと【拷血】【拷拳】【拷○具職人】はサニカから渡された真っ黒い【命の結晶】を順番に浄化魔法を掛けた。
すると真っ黒かった【命の結晶】が無色透明な美しい結晶に変化していた。
「よし、コレでいいだろう。かなり大きく育った黒結晶樹を貰う対価として釣り合うな」
「島全体に仕掛けられた罠とか解いて貰ったからそこまでしてもらわなくてもと思ったんだけど」
「この黒結晶樹はそれだけの価値があるから良いのよ」
「悪さに使うんじゃないわよ?」
「大丈夫、この黒結晶樹で次のご…尋問に使う道具をいくつか作るだけだから」
「さらっと凄い事を言った気がするんだが」
3人は3等分した黒結晶樹をアイテムボックスにしまってそれぞれの世界に帰っていった。
「さてと…ホントはもっと時間が掛かるはずだったけど、すぐにでも第2工程に移れそうだね」
「それで次は何をするの?」
「工程をわかってて君は聞くのか」
「えぇ、聞くわよ」
「今から行うのは【命の結晶】を使って私に成り代わっていた靄だった存在を正しき命のある者を造りかえる」
サニカの発言を聞いた全ての島民と長生き組とハノンとレシェットとタヌ治郎達は一斉に顔を上げた。
「そんなことが可能なの?」
マジェリルカとカーウェンがサニカ達の元に来た。
「うん。だからお前は甘いなって○問大好き達に言われてたでしょ?」
「………誰かが産んだりとかするんか?」
「それはない、この場で新しく造りだす。……もしかしたら【時空維持委員会】からお説教を喰らうかもだけど」
「えっ」
「それだけのことをするのか」
「ホムンクルス作ったら怒られるのと一緒」
「それでどんな術式を使うんだ?」
カーウェンは少し興奮気味に聞いてきた。
「(言葉遣いが昔に戻ってる)…【始祖魔術式】か【最新式】のどちらかと思ってる」
「魔法が使えていたサニカは凄かったってルウカが昔から言ってたけど…」
「……それでどっちにしようか」
「再生が早い方にすることは出来ませんか?」
ポーリアもやって来た。
「それは島長の印…君が今の島長だね」
「はい。そうです」
「それで早めが良いと言ってたけど何か理由があるのかい?」
「島民たちを安心させる為にもお願いしたいのです」
「なら始祖魔術の方か。…【魔の理を書き記す魔導書の写本】よ来い」
何処からともなく一冊の本がサニカの前に現れた。
「なんだか物凄い力をその魔導書から感じる…」
「【大いなる始まりの魔法使い】が作った【魔導書】の写本でね。本物はコレよりも凄まじいらしいよ。
悪いけどルウカ達も島の子供たちの元に行ってくれる?」
「わかった」
ルウカ達が島の子供たちと従魔たちが居る場所に向かったのを確認してサニカは写本を手に取りページを捲って唱えた。
「我は魔導の始まりの地を訪れ魔導の根源を垣間見たものなり、我が命ずる【命の結晶】に閉じ込められし意志を呼び覚まし新たな生命の創造をここに至る」
サニカを中心とする場所にシンプルな魔法が現れ手に持っていた【命の結晶】が液体となり丸い形を作り出し、星の泉が輝きその煌めきが丸い形となった液体に吸い込まれていった。
さらにサニカはアイテムボックスから赤い液体が入った瓶と何かの宝石を2つ取り出し丸い形をしている液体の中に吸い込ませた。
丸い形となった液体は固形になり金色に輝きサニカの手に落ちた。
「ふぅ~…コレで第2工程が終了した」
星の泉はキラキラとしていた輝きを失ったが澄み渡っている。
サニカはルウカ達がいる方に歩いて向かった。
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【クレイバール学校】
全島民たちごとサニカは引き連れて校庭に来た。
《校庭》
「次の工程でもう奴は新生と言う形で記憶を保ったまま再誕するよ」
「えっもうですか」
「うん、早めがいいって言ってたから」
島民たちは「1か月は最低でも掛かるはず」と思っていたのか…恐竜のキグルミを纏っているサニカを見て本物マジやべぇという表情をした。
「何かの宝石と瓶を投げてたけど中身は?」
「…エリクサーとラブラドライトとメテオライト。希少なのを組み込んどけば希少な種族として再誕するかなーと」
「うわー…どれも希少な石と薬の名前が出たぞ」
「それで次は何を…?」
「私が完成させた【命の核】に魔力を注げば再誕するよ。
ルウカとラブが魔力を注いでね。再誕させるけど今回みたいに悪さできないように魔力の序列で縛りたいから」
「…必要か?」
「もし必要じゃなくなったら権限を取ればいい」
「権限を取れるなら良いんじゃない?」
「…そうだな」
「私はやることやったから宿屋の様子を見に行かせて。宿屋の権利を取られたからどうなってるか調べたい」
「行ってこい」
サニカは完成させた【命の核】をラブナシカに渡してから従魔達を集めて耳打ちしてから宿屋のある方へ向かって行った。
そしてタヌ治郎達は困った様にうーんとなんとも言えない表情をしてから円状を作り話し合いを始めた。




