なら……アイツは誰なんだ?
【エ※※※ウ※※世界】
《ヘル厳ハラの丘》
「ど田舎に籠もって……いて…弱いんじゃないのか…よ」
眼の前に広がるは所狭しに広がる激しい戦闘の跡地、戦闘が中断されたてもなお空から血の雨が止めどなく降り注ぎ地面を赤く染めている所に、大剣を片手で持ちさっきまで命のやり取りをしていた男が数十人。
「誰のことを言っているんだ?オレは弱くはないぞ」
「ここにナチュラルサイコパスがおるぞや、【叡悠の賢者】が表情を変えずにサラッと言い放ちおったぞ」
「なにがナチュラルサイコパスだ。お前がサイコパスだろう…【韋駄天の衛生兵】」
「お互いにサイコパス、サイコパス言い合ってても無駄な体力を消費するだからさっさと帰るわよ。
戦場に流れる血を吸ったり肉を食らったりする厄介な魔物が現れるから【ナンフェーゼの英雄】様に撤収って言われてなかった?」
「……お前は昔っから「何か?」
「なんでもありません」
「かっかかか!相変わらず【剛烈の女拳王】は圧が強いのう!コレで少しは向こう側は大人しくなるじゃろうて」
「いきなり大声出すな【魂喰の人狼王】それにしても切り替えが早いな…あんなほのぼのしている場所からいきなりここに飛ばされたのに」
「いや、最近はそこまでほのぼのしてないぞ。ついに魔物が発生するようになったかなら」
「ついにお前たちの世界でも魔物が発生するようになったのか!【叡誓の忍】が特に気にかけてたのに」
「その当たりも帰ったらちゃんと根源を調べるつもりだ」
「なら生き残らなきゃ行けないね?それじゃ次の戦場で逢いましょう」
「またな」
現地解散して異界の強者達とルウカはそのままバラバラに散っていって近くの街に移動した。
「さてと……オレは何処で過ごそうか……サニカの宿屋で済ましていたツケが今来たか?……安宿に泊まれるか…」
たくさんの人混みの中を歩いているとすれ違ったフードを深く被った者にぶつかった。
「おっと…済まない」
「いや…コチラこそ」
お互いに謝り歩き出したが。
「………ちょっと待て」
ルウカはつい先程のフードを深く被った者の肩を掴んだ。
「………何でお前がここに居るんだ?……………サニカ」
「…………………………」
「そのフード付きのマントは姿を隠すための魔法が付けられているが、オレがお前を見破れないわけがないだろう」
「……本物のルウカなのかい?」
「本物のオレ?」
「私を信頼して着いてきてくれるなら話すよ。ここだと話しづらいからこっち来て」
するとフードを深く被ったサニカ?が人混みから離れ街の外に出て行った。
それからすぐ近くの林の中に入って行くと深くフードを被ったサニカ?が少し広い所で立っていた。
「久し振りだね、ルウカ」
「オレからしたらつい5時間前まで一緒にいたんだがな…そろそろフードを取ったらどうだ」
サニカ?はフードを取り姿を現した。
ルウカが見知っているサニカままであったが。
「私からしたら2000年ぶりなんだけどもね」
「……………どういうことだ?」
「お互いに何がどうなったかの話を飲み食いしながら詰め合おうか……拠点にしている良い場所があるんだ」
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
【悠凪の都の跡地】
《サニカの拠点》
「…………………そうか」
サニカ?から話を聞いたルウカは深いため息がでた。
サニカ?はクレイバールの歴史からして2000年前のクレイバール島でモーリンの件が解決して浜辺でラブナシカと別れて一人で海辺の森林に居たときに【イタズラの神キロイス】の駒によってスキル封じされてこの世界に飛ばされていたそうである。
時空間を移動させられている時にどこからか現れた黒い靄に姿をマネられ、ありとあらゆるスキルやアイテムを持っていかれここに留まるしかなかったそうである。
何故か不老不死に関してだけは奪われなかった。
「不老不死も奪えば私が寿命で逝って証拠隠滅も出来たのにしなかったからね」
「スキルを奪うスキルの特性でお前が生きてなきゃ行けないという代償とかあるんじゃないか?それにしても2000年か……かなりの時間をココで過ごしたんだな」
「大変だったけどいい経験になったよ。今のクレイバールの子供達も元気そうで良かったよ」
「…もしお前の話が本当なら今いるクレイバール島の子供達とはファーストコンタクトになるな」
「そうだね………それにしても千太郎さんか」
「……お前を見ているともしかすると生きているのでは?と思えるな」
「私みたいにコピーされてスキルを奪われてどこかの異界に追い出されているってことでかい?」
「あぁ、それで宿屋召喚はどうなってる。魂に刻まれたスキルまでコピーされて奪われたのか?」
「いや、使えてるよ。火天と無敵の宿屋との接点を切って新たに作り直す形でね」
「なら何故使ってこなかった」
「宿屋の召喚系のスキルは結構珍しいから狙われたりしたら今の私では強者達に対して対応が出来ないからと表立って使うと面倒事に巻き込まれるからコッソリ使ってた」
「…最近のサニカがイケイケだった理由がわかった気がするぞ…お前は事なかれ主義で積極的に魔物やらと戦うなんて目の前のお前はしないもんな」
「うん、なるべくであれば争いは嫌だねー…最近の私はイケイケだったんかい」
「……譜月達の契約とかもどうなってるんだ?なぜタヌ治郎達は気付かないんだ」
「たまに主人を間違えるワンコとか居るからそれじゃない?」
「おい!」
「大丈夫だよ。私に成り代わっている輩からタヌ治郎達の従魔契約を返してもらえばいい。
もし私から成り代わっている奴に乗り換える宣言したなら今まで通りに成り代わっている輩ごと追い返せばいい」
「サニカ、お前は…それでいいのか?」
「あんまし感情的に嫌だけど…無理やり従わせて再契約していても駄目じゃない?」
「………それでコレからどうするんだ?」
「ルウカが帰るタイミングで便乗しようかと」
「……変装とかして俺の身の回りの世話してくれ、そっちの方がお前を確実に護れるから」
「えー………わかったよ」
サニカ?は渋々ルウカの提案に乗った。
「それと……サニカ、この花の種を育てろ」
「……コレってもしかしてだけど?」
「そうだ宝石花だ」
「……………鉢植えあったけ」
「ここに錬金術で作った育成キッドがあります」
「……………………」
サニカ?は無言で鉢植えセットを受け取り真ん中に宝石花の種を植えるとグングン成長して咲いたのはボケの花で色は…黒であった。
「魔法に適正なしか………取り敢えず、この世界から早く出るためにやることやらないとな(サニカの事情を話してあいつらにサニカを1から鍛えてもらうか)」
「ルウカが何か悪巧みしてる……」
こうして本当に久し振りに親友兼悪友の二人だけの冒険が始まった。




