常識外れの強者達
【火天の宿屋】
「サニカ先生がスッキリした表情して帰ってきたわ」
「まるで長年溜まっていた物を捨てられた時のようね」
「そりゃ長年この島にいた愛玩犬が自ら愛玩犬を卒業したからね」
「……それでイルミナット島はどうだった?」
「もうカオスよカオス。結構な異世界から来て水面下での領地の取り合いがあったみたいで凄かったわ」
「リアルキャットファイトを見ていたけど「こうなったのはアンタのせいよ!」とか擦り付け合いがね」
「それでお前らは表に出たのか?」
「出るわけないじゃない。ニヤニヤして見てるだけにしたわよ〜…だってねぇ?」
「イルミナット島の自治権は好きにしろって住んでいる子供らにあげてたけども世界の一部をあげるなんて言ってないから」
「異界の強者たちが派遣していたみたいだけどさ。文句とか言ってこないの?」
「……仙人殿は例えばだけど自身が世界を創造したとして友人やその親族と好き勝手暮らしていたけど、途中でそりが合わないから分裂して一部の土地を奪われその一部をあげるって言うかい?」
「嫌だよー何をされるかわかったもんじゃないし……でも住み着いて帰る場所がないって言うなら仕方ないから暮らす権利は渡すけど世界の一部はあげない……あっ自治権はあるけど一部の土地をあげると言ってないのか。
だからこの世界の自治権を取れと裏で糸を引いて送りこんでいたけども三人が渡すのは自治権だけだと言ってたから強者たちは文句を言ってこないんだ」
「それで先生達はその人達を帰すの?」
「うん、心の底から帰りたいと願うならね」
「クレイバール島に返ってくるときに【送還の魔法】をイルミナット島全体に仕込んでおいたわ」
ラブナシカがヤレヤレといった感じで言ったが。
「それにもしイルミナット島から人々が居なくなったとしても表の世界に戻したくないわ…絶対に島自体が消えるわよ」
「えっ………何かあったのイルミナット島に?」
「…イルミナット島が魔改造されまくってボロボロなんだよ…この島と同様に【賢者の石】で作られていたけれども【賢者の石】が異世界の人々によって採掘され尽くして一部の区画が既に崩壊しだしていたんだよ」
「それってもう島じゃなくって人工島じゃないか?」
「そうなの既に人工島になってたの。
土地を利用されるとは思っていたけどもそもそも本気で【賢者の石】を採掘するなんて…強欲すぎよね」
「だからこそ、島が分裂したときにこっそり様子を見に行ってバレないようにイルミナット島の【賢者の石】を細工しておいて良かったと思ったね」
「確か…島を形作る【賢者の石】を採掘して異界に持っていったらその世界に合った魔石になるようにだっけか?」
「うん……クレイバール島の【賢者の石】は採取できないように何重にも魔法を重ねてあるからマジモンの強者が採取に来なければ採取される心配はない。
……そもそも採取出来るレベルの強者は自力で【賢者の石】を素材無しで作れるレベルの人達だからいちいちここ来て採取する必要ないよね」
「えっ………あの有名な【賢者の石】を材料が無いのに作れちゃう人達がいるの?」
「かなりぶっ飛んだ工程だけど作れるんだよな。
確か自身の【純粋な魔力】をコレでもかと濃縮する工程を繰り返して無から代償もなしに【賢者の石】を作るんだ」
「でも普通はその世界に合った魔石じゃない?」
「その普通が通じない人達だからな?」
「あっ…ソウデスネ……ルウカ先生達は作れないの?」
「オレもサニカもそこまでは流石に魔法を極めてないから作れないぞ「そもそも私は極めた魔法を捨てたから魔法に関しては特殊系統の【生活魔法】と【時空間魔法】と【封印術】と至りし竜が使えるようにしてくれた【魔法】しか使えないから」……そうだったな」
「この世界を天地創造したのに?」
「全てを1から作ったわけではないからな…もしかしたらだがかなり前の転生前なら作れたかもしれないが…」
「まぁ…このメンバーなら言っても大丈夫だからぶっちゃけるけど、残念ながら色々あって記憶が無くなっている所のルウカ達は変態レベルの錬金術師たちと違って錬金術に関して便利な術以外は興味を持ってなかったわ。
それに【世界の創造】と錬金術を極めた強者流の【賢者の石】を造る術式は別物だもの」
「そうなの?」
「そうなのよ」
「…ボクもそこまでは良いかな…万能薬やスクロールや便利なアクセサリーを作れればいいよね錬金術に関しては」
「私もそう思う」
「さっきから話がそれてるけど…一応あたしたちと同じくこの世界で生まれ育ったイルミナット島の人達はどうするの?
それと反転世界の影響が表の世界に出ているのかしら?」
「イルミナット島の子供らには水晶玉で様子を確認して落ち着いてきたら新たな世界を自分らで創造して移住するか聞いてみようかなと」
「反転世界の影響は今のところは出てないわ」
「その時の交渉はどうするんだ?」
「ルウカにも今度は着いてきてもらうよ。クレイバール島の子供らにはお留守番してもらうつもりでいる」
「ならあたし達はクレイバール島の警備とかの準備かしら……後は街の回覧板の資料を作ったりしないと…」




