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元勇者の転生人生記録  作者: 冬こもり
【クレイバール島の日々】
313/569

目出し帽と仙人

【火天の宿屋】


《エントランスラウンジ東(囲炉裏いろりがある方)》



「ふぅ~…どうにか戻れたな~…」



【熟成させたほねっこ?】を手に入れたのは良かったが…フェイースに見つかって追いかけ回されるとは…。

前は入れたのにフェイースはやはりというか…どちらの宿屋に入れなくなっている。



「ルウカ先生、今日は火天の宿屋の方に来たんですね」

「マナリオか」

「今日は騒がしい方ではなく静かな方で過ごしたくってこちらの方に来ました」

「そうか」

「ルウカ先生が宿屋のドアを破壊して入って来たのは……それにフェイースはどうしたのですか?宿屋に入れなくなってますが?」

「実はかくかくしかじかでな」

「それはそれは…まぁ…契約更新に失敗したんですね」

「はっきり言うなぁ」

「えぇ、魔女は契約だとかについてには煩いので。

それに破壊されたドアの前でフェイースが野生化したであろう姿になった大きなオオカミがハイライトのない目でコチラを見てきてますし」



ルウカとマナリオは野生化したであろうフェイースをなんとも言えぬ表情で見ていたが野生化したであろうフェイースの背後に目出し帽を被ったムキムキノッポと平均の身長を持った二人組がいつの間にか立っていた。




「邪魔よ、そこを退きなさい。なんかこの大きなオオカミから濡れた雑巾の匂いがして嫌ねぇ〜」

「なんだと?人間ごと…き」

「サニカ…アタシ、この小汚いオオカミから人間ごときって言われたわ」



ムキムキノッポ……ではなく目出し帽を被ったラブナシカの口が動いた。



「多分、この魔力を隠すのに使える目出し帽を被っているからだと思う」

「やっぱり凄いわねぇ…この可愛くない目出し帽は」

「縫い物の神様が作っただけはあるけども……もしかしてだけどフェイースが野生化してる?」

「あらやだっフェイースだったの!?なんか外から来た小汚いオオカミだと思ったわ!」

「グルルルルル…」



フェイースは貶してきたラブナシカではなくサニカに対して噛みつこうとしたがラブナシカが手のひらで本来の姿となったフェイースにビンタすると結構な距離をゴロゴロと転がった。



「グォっ?!」

「オイタはダメよ〜」

「ルウカは契約更新に失敗したんだね。

だとしても怒れないね…キロイスとのゴタゴタが片付いたばかりだし…こうなったからにはさ……」



するとサニカはとてつもないほど嬉しそうな表情で「フェンリルの素材を集めるチャンスだね」と言い放ったが、目出し帽被っているので見えなかった。

だが声音から嬉しそうだとわかりフェイースは毛を逆立て直ぐに体勢を整え去っていった。



「あら逃げたわ」

「でも知恵はまわるようだったね。目出し帽を被っていると魔力が抑えられてるって瞬時に感じ取って私を狙って来たし」

「嫌ねぇ」

「私達も今日は火天の宿屋の方に行こうか」

「えぇ!」




目出し帽を被ったサニカとラブナシカが火天の宿屋に入ろうとしたがラブナシカだけが透明な壁に防がれ入れなかった。



「なんか拒まれてるわよ」

「目出し帽を取りなよ」



サニカは目出し帽を着けたまま宿屋に入っているがラブナシカだけが拒まれている。



「閉店ガラガラですよ〜っと…悪いけどラブナシカ様はあっちの方に泊まっー」

「おい、いい加減にしろよ?仙人が生意気な」

「オカマってや~ね…怒るとドスを効かせてくるし」



とある世界線の地球からやって来た【明けの仙人】がラブナシカに肩をガッと思いっきり掴まれている。



「あら、久し振りに現れたわね〜明けの仙人様が」

「居たのか…宿屋に」

「きゃ~タツケテー」

「タツケテーじゃないから…明けの仙人殿」

「今のラブナシカ様だけは通したくないのだー」

「何がダメなのよ…」

「存在自体が怪しくって…」

「いてこますぞコラ」

「マナリオは知ってたようだね…ルウカが驚いているということは…仙人殿が居ることは知らなかったんだね」




取り敢えず中で話し合う事になり【明けの仙人】は結界を解き酒なども取り出してテーブルに着き飲み始めた頃に【無敵の宿屋】の方から子供達がルウカたちを呼びに来た。



「あー…先生たちお酒飲んでる〜」

「それに知らない方がいらっしゃいます…」

「おや、君たちがこの世界の今の子供たちか〜…時間が経つのが早くない?」

「研究ばっかして引き籠もってるとそうなるわな」

「サニカ先生たち…誰その人…」

「そこの酔っ払いはルウカ達とは異なる地球生まれで元勇者した【明けの仙人】と呼ばれている強者のひとりよ」

「地球人…」

「……あっそっか…そう呼ばれるんだよね…僕たちって」

「ルウカ先生達は特別だから地球人なんて言わないけどな」

「いいな~ボクの所だと爺って言われるだけだぜ〜大人になると先生って呼ばなくなるんだよな〜」

「私達と共に過ごしてきた血筋に刻まれている力によるものだろうね」

「先生たち夕ご飯どうするノ?もう出来てるわヨ」

「もうそんな時間か…皆、何事もなく帰ってきたの?」

「うん……」

「なんか返事が曖昧だね……どうしたの?」

「それが…とーちゃんたちがフェイースに襲われかけたらしいんだよ」

「怪我は?」

「皆、未遂で終わったってさ」

「そうかい……夕食には顔を出そうかね」



サニカは椅子から立ち上がり影に潜んでいた従魔たちに命令した。



「悪いけどフェイースを囲っといてくれる?今は様子を見るだけでいいから」

『サニカ、遊んでもいい?』

「殺さない程度なら」

『……結界を張るのは私ですね』

『……我と翡翠は追い込みじゃな』

『にゃ』

『我も譜月たちと追い込みだな』



従魔達は元の姿のままニタァと笑い宿屋から出て行った。



「怖いよー」

「見事なまでに棒読み…」

「ルウカ達はどうする?話し合いは食事を取ってからにするかい?」

「えっボクも良いの?」

「構わないぞ。子供達に悪影響を与えない限りは客人として扱うのがここのルールだし」

「うわ〜なんかここってアットホーム感があって良いなぁ……この世界が夏休みとかの長期休暇に入ると客人として来たくなるのわかるな〜…」

「それじゃ早く行きましょうか、待たせるのも何だし」




今のところは問題を置いておいてサニカとラブナシカは子供達の無事を確認してから食堂で賑やかに食事を取った。


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