イシェーラさんの過去と女王を止めた理由
オレたちはアフタヌーンティーを楽しみながら女王陛下と会話をしている…カフェルネは二日酔いでダウンしているために床に寝かせておいた。
「本当にそっくりですな!」
「クラウス…落ち着かんか」
「ハッスルが止まりませんぞぉ!」
ご老人…宰相様がめっちゃハッスルしてる。
「敬語で話さなくてもよい…今は身内でのパーティーなのじゃから」
「ミストルがですよね?」
「堅いのう…ルトラウス殿に鍛えられたわらわはソナタに取って姉弟子なのじゃ遠慮するな」
「はぁ…」
「母の昔の話を聞いても良い?」
「良いぞ…でも面白かったな普段は屈強な城の兵士どもがミストルを見てパニック起こしておったぞ」
「イシェーラ様の教育の賜物ですぞ」
「さてどこから話せば良いかのう?」
「イシェーラ様はミストル様に話してないようですからな」
「うむ困ったのう…私も姉上に叱られたくないからな」
「話してあげるわ…ミストル」
「この声は!」
「姉上!」
イシェーラさんが普段の動きやすい格好ではなく軍人の服を着ていた……ん?軍人の服?王族の装いじゃない…だと。
「母さん何で軍人の服なの?」
「少し兵士が弱くなってたら調き…教育してあげようと思ったのじゃ」
「今調教って言おうとしたよね?」
「ふふふふ」
「シェザーナとクラウスも元気そうで良かったのじゃ」
「姉上!」
「イシェーラ様!」
女王陛下が駆け出しイシェーラさんに飛び付いた…うん姉妹だってわかる…高貴オーラ半端ねぇ。
「まったくこんな姿他の者に見せるでないぞ?」
「わかっておるが!」
「ミストルわらわの昔話は少し待って欲しい」
「大丈夫だよ、久しぶりにあったんでしょう?」
抱擁が終わってイシェーラさんと女王陛下はお互いに近くの椅子に座り、昔話を語りだした。
「わらわがまだ10歳の年に父上と母上がとても平和で安定しているとある国に訪問している時にその国で革命に巻き込まれたのじゃ」
「革命が起きた?平和なんじゃないの?」
「そう、苦しい税を強いてるわけでもなく、治安が悪いわけでもないなのに突然貴族達によって引き起こされたのだ。その場所が国際的な会議をする場所でな、数多の王族が人質に取られ我々こそ世界の王であると宣言してな、数多の国が王を取り戻そうとしたがことごとく失敗していたが、その時人質に取られた王達は覚悟を決め、本来なら命乞いしろと命じられていたがこの国を滅ぼせと演説してその場で自ら命を絶ったのじゃ」
「えっ人質に取られた王達全員がやったの?」
「そんな事はないが、国を混乱させるぐらいなら退けば良いと話し合ったと生き残った若い王が手紙を各地に送って来たのじゃ。それぞれの王の遺言付きでな…最後の方に自分は王たちに生かされたその恩に報いる為に私の国の一部を永久中立の土地として用意し会議場を作ると書いてあったのじゃ」
「そのとある国は王を人質に取られた国の王たちが徹底的に滅ぼしたんだね」
「そうじゃ…その国の痕跡を徹底的に潰した上で名乗ってはいけないと取り決めたのじゃ」
「だからとある国か…母さんは十歳で継いだって事なの?」
「そうじゃ…わらわが十歳の時に国を継いだのじゃ…そんなわらわを支えてくれたのがそこに居るクラウスでシェザーナはその時まだ二歳だったかならな…貴族がわらわを傀儡にしようとしたがわらわこんなんだったからな無理!となってシェザーナを使おうとしたがわらわたちが拒んだのじゃ」
確かにイシェーラさんってオラオラ!ガンガン行こうぜ!的な漢前な所があるもんな。
「母さんは十歳で国民の命を預かる立場になったんだ」
「そうじゃ……ティルクス何か失礼な事を思わなかったか?」
「思ってないっす」
「…まぁ良い…そしてわらわが年相応の娘になった頃に王配を早く決めろと言うようになってきたのじゃ…王族はわらわとシェザーナしか居なかったからな、じゃがこの国の貴族と結婚は絶対に嫌だと思っていたからわらわは決心した。わらわより強い者と結婚すると貴族連中に宣言したのじゃ」
「えっ…でもどうやって強くなったの?」
「王家秘伝があってのう…それを使ったのじゃ」
「それで軍人の服か」
「そうじゃ…そしてわらわに挑んでくる貴族!騎士!兵士!わらわは軽く捻る感じでボッコボッコにし勝ったのだ。そしてわらわは思ったコイツら弱くね?とそんな兵士と騎士と貴族を屈強な人物にするために訓練をわらわが行うことに事にしたのじゃ」
「主な内容は?」
「渓谷で綱渡りデスマッチ、寝られない休めない三日連続マラソン、魔物の大群の討伐、長距離遠征、強い魔物が住む山で1ヶ月生活、紅白に別れての対抗戦罰ゲームありとかまだまだあるのじゃ」
「そして母さんに結婚しろと言ってくる貴族は居なくなったと」
「言ってこなくなったのう…あとは先人たちが作った良い法を残しつつ改革をしたから言えなくなったのじゃ」
「凄い半生だね」
「そうじゃなよくよく考えるとそうじゃな」
「そして姉上が二十歳になったとき事件が起きたのじゃ」
「わらわを亡き者にしようとした者によって呪いを掛けられたのじゃ」
「どんな呪いを掛けられたの?」
「だんだん衰弱して最後にはゾンビになる呪いじゃ」
「私も数多の解呪をしたのですが…とても強力で解けずにただ時が経つだけでした…それでもイシェーラ様は呪われている素振りを見せずに王座に座り公務を行い続けていましたが3年の月日がたった頃についには動けなくなったのです」
「わらわも姉上の公務を十歳の時から手伝い始めたから多少は出来るようになっていた。貴族連中が姉上が弱っているときに改革を行おうとしていたがその時ルトラウス殿とアルーヴ義兄上がこの国を訪れたのじゃ」
「父さんも一時旅してたって言ってたけこの時がそうなんだね」
ばあちゃんも確かティアさんとシカナさんを連れてじいちゃんたちとは違う場所を旅してたって言ってたな。
「この国の女王が呪いによって床に伏せていると噂を聞いたと訪ねて来たと言ってなクラウスが最後の伝として呼んだのだったな」
「私はこう見えてルトラウス先生に十歳の時に弟子入りして10年間修行したものです」
この屈強なご老人じいちゃんの弟子だったのかよ…でもなんかわかる気がする…カリス村長と知り合いか?
「そう言えば…カリスは元気でしょうか?…お互いに年を取りました…たまには会って飲みたいものです」
「村長なら元気だよ、相変わらずドラゴンを一人で狩ってくるよ」
「ドラゴンとな…恐ろしいのだな…」
「シェザーナ様も一人で狩れるでしょう」
「そうだが…」
現役女王様も狩れるんかい!ギルドの白金冒険者意味ねぇ!
「クラウスも少し運動してくると言って狩ってくではないか」
「少し運動しないと鈍ってしまいますからな!」
「貴族たちは絶対に歯向かってこないな無理だもん勝てないよ」
「大人しいものですぞ」
「…話がそれておるぞ」
「すまぬ姉上。こう言った話は後が良いな…さっきの続きを話すぞ。クラウスが呼んだルトラウス殿とアルーヴ義兄上が姉上の呪いを調べたら建国当時からある名門貴族の当主が魔神教の呪術に手をだし中途半端だったためにクラウスでも解けなかったとわかってな、その貴族の一族はこの国の北にある不死者の山の管理者として追放したのだよ。今は十代の息子たちだけになったのと報告があったな」
不死者の山…確かネクロマンサーの兄弟が暮らしている山で前回オレは勇者として向かったな、ゾンビ狩りが嫌で空から清水降らして浄化した山だな。
「ルトラウス先生とアルーヴ殿にイシェーラ様の呪いを解いてもらい事なきを得たのですが…病み上がりなのにイシェーラ様がアルーヴ殿に決闘を申し込んだのです」
「懐かしいのじゃ…わらわは始めて完敗した上で負けてのうアルーヴに婿になるように迫ったのじゃがスパッと笑顔で断られたのじゃ」
「父さんのんびり田舎生活が良いと言ってるもんね」
「ルトラウス殿とアルーヴ殿がカフロルトから旅立ち少ししてイシェーラ様が恋煩いにかかり公務も出来なくなりルトラウス殿たちを呼び戻し相談しましたな」
「アルーヴが吸血鬼という事や村の事を聞いたがわらわにはまったくそんなの関係ない、わらわは嫁ぐ!と宣言してなそれから義父上に連絡し婚礼の許可を得てシェザーナに王位を譲り、異国に嫁ぐと国民に宣言して国をあげての婚礼を行い村に来たのじゃ」
「国民は姉上の婚礼を見て号泣しておったな」
「凄い無責任な感じがするよ…母さんらしいけど」
「わらわが押しきったからのう、確かに王位をわらわの都合で降りて押し付けたがシェザーナの方が統治するのは向いていてな、小競り合いはシェザーナが女王になってから起きてないから王位を譲ったのは間違いではないと確信しておるのじゃよ」
「最初は苦労したがわらわに何かある度に姉上が帰って来て例の訓練を始めるからな反抗してこなくなったのう…わらわは姉上が笑っていてくれるだけで幸せなのじゃ、だから心配しなくて良いぞミストル」
「シェザーナさんや国民が納得いってるんだったらいいや」
多分国民はイシェーラさんが嫁いだ事によってヤバい特訓がなくなり平和が来ると思ったんだろうな…ミストルも変なところ強引なところがあるけどイシェーラさんほどじゃないな。
こんなこと考えちゃダメなんだろうけど…前回の時はイシェーラさんが亡くなってそこからカフロルト王国は荒れてあんなんだったんだな…前回の時はどうしてイシェーラさんは助からなかったんだろう?




