しばしの休憩とさまよう魂とクレイジーベジタブルズ
【クレイバール学校迷宮】
《第8階層(裏)結晶の鉱脈の宝物鉱床》
「……あれ?階層がまだ8なんだけど…」
「ホントだわ」
「譜月、翡翠、この階段の近くで休んでも大丈夫そうですか?」
『大丈夫じゃ、今のところは嫌な感じはしないからな』
『ミーと譜月で感知しているから異変が起きたら即刻教えるにゃ』
「それじゃそろそろサニカ先生に貰ったお菓子と水筒に入っているお茶を飲んだりして休みましょウ?」
「そうですね」
子供たちはそれぞれのリュックからレジャーシートを敷いて寛ぐ体制を取った。
「あー……疲れた〜」
「ルニカがオッサンになっタ…」
「一応ですが…ようやく心を落ち着かせられる場所に出ましたからね」
「お茶うめぇ~」
「…………小さいオッサン…」
「譜月と翡翠も飲んだりしますか?」
『ミー達はいいにゃ、気持ちだけ受け取るにゃ』
『ここで英気を養っておくのじゃぞ』
『玖寿、あーしにはお茶とお菓子を頂戴〜。ずっと彷徨ってて喉乾いたの〜』
「えっ」
「「「ん?」」」
『『おっふ』』
声がする方を見ると階段からひょこっと顔を出し半透明で浮かんでいるコナルヴィアが居た。
それを見た玖寿たちはその場で固まった。
一方その頃の日葵達は……。
【星明かりの森】
《星の泉へ続く道》
『じゃんじゃがじゃ~んクレイジーベジタブルズが現れた』
「タヌ治郎!そんな事言ってる暇はないわよ!」
『そんな事言ってる暇はないと言いながら僕を肉盾に使うとは莉糸は恐ろしいねぇ』
莉糸はタヌ治郎の両脇を掴んで盾にしていたがタヌ治郎は右から向かって来ている蔓を魔法を使い切り刻んでいたが莉糸はタヌ治郎を左側から迫りくる蔓に向けて投げた。
『酷いじゃないかー…あぁ〜ぶっとい蔓に絡まれるぅ〜』
『たっタヌ治郎っ!』
エルシィローがタヌ治郎を回収しに向かった。
「あっタヌ治郎を投げた!」
「サニカ先生っ!何なのよこのクレイジーな野菜たち!さっきから【知的生命体発見】って脳内に響くんだけど!」
「(タヌ治郎の事を気にすることなく容赦なく投げた)……私の方にも響いてるよ。野菜たちを見るとブラッディーハロウィンを思い出すけれども……もしかしてだけどこの霧の影響で魔物化したんかね?」
「えっ野菜って魔物化するの?!あっヴァリラ!左からスイカのぶっとい蔓の攻撃が来るよ!」
「警告ありがとう日葵……ウヒヒヒ!来たらこのポーションで溶かしてやるわっ!」
ヴァリラはマジェリルカとニヴァから託されたポーションを自身に近付いてきた蔓に投げて当てると見る見るうちに枯れていった。
「野菜がなにかの要因で魔物化したのはコレで2回目か…あれからちゃんと野菜が魔物化したとき用のアイテムを作っていたみたいだね」
「…………魔物化した野菜」
「莉糸の元に今度は苺の蔓が近づいてる!」
「いゃぁあ!あの苺大きい口がある?!気持ち悪っ!」
「ディーシェ!危ないぞメロンの細い蔓がっ!」
「これくらい何ともないワ!」
ディーシェは母親から教えられた自己流のサーベル剣術を使い蔓をバッサバッサ切っている。
そこへパカラッパカラッとメフィリーネが海馬の姿で現れた。
『サニカ!子供らと共に結界魔法の中へ!』
「わかった」
サニカは左手で魔法の鎖を作りその鎖で子供らを確保して近くに寄せてから右手に持っていた杖を地面に突き刺し唱えた。
少し離れた場所にいたエルシィローはサニカの作った結界内に入れないと瞬時に感じ取りタヌ治郎を嘴で掴むとサニカとは違う結界を張った。
「宇宙からの攻撃を防ぐ結界を発動せん!【ガイアースサンクチュアリ】!」
『星の力よ我らを護りたまへ!【スターライトバリアー】』
『行くぞ!サテライトビッグブラスター!!』
すると巨大な赤い稲妻がゴロゴロピシャッとあたり一面に落ちると半径8メートルから植物が消し飛んだ。
子供らはすぐ近くで起きたことに呆然としていた。
『少々やり過ぎたか?』
「ここでのビッグブラスターはないね」
『僕達を殺すつもりかい?メフィー?』
『悪いなタヌ治郎……エルシィローの結界は流石だ』
『ほっ褒めても何も出ませんよ?……ちゃんと攻撃後の事を考えて使ってください…植物たちが消し飛びました……』
「マジェリルカちゃんが本気を出せばコレと同様…もしくはこれ以上の魔法が使えるのよね……メフィリーネの魔法…」
「すっすげー……最高位の魔法を間近で見れるなんて…」
「何を感心しているのよ?日葵とヴァリラは…当たったら確実に死んでたわよ?」
「サニカ先生に引き寄せられた瞬時に日葵の背後に隠れ人間の盾を発動した莉糸の方が怖いぞ」
「人で無しが居るワ……」
「人で無しではないわ。賢い選択をしたと言いなさいよ」
「言い争いはまた後で存分にやりなさい。今は先を急ごう」
「ところでサニカ先生、走ってもいい?もう200メートルもすれば星の泉でしょ?」
「………嫌な気配もないから大丈夫かな?…メフィリーネ頼める?」
『わかった、我が先導しよう!付いてこい!』
メフィリーネが先頭を軽く走りその後を日葵と莉糸が走り、ディーシェとヴァリラはサニカと手を繋ぎタヌ治郎とエルシィローは最後尾から周囲を警戒しながら向かった。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
【星あかりの森】
《星の泉》
『………ここだけは霧の影響を受けていないとはな』
「ここはいつ来てもキラキラしててキレイだな…」
「水面に反射する光もキレイね」
「……サニカ先生、結晶の大木は異変がなさそうなノ」
「そうみたいだね」
「サニカ先生、ここで一旦休憩しよ?」
「治郎、エルシィ後ろは大丈…!…メフィリーネ!子供たちも泉の中にダイブしなさい!後ろを振り返らずそのまま!」
「えっ!」
「振り返っちゃだめ!そのまま行きなさい!」
子供たちとメフィリーネはサニカの指示に従いそのまま星の泉に向かって飛び込んでから後ろを向いた。
人型のナニカが泉との距離が離れていたがそこに存在していてサニカは瞬時にワンショルダーバックから【オリハルコン製の盾】を取り出してナニカの攻撃を防いだが思った以上に力が強くそのまま吹き飛ばされてそのまま泉の中心に入水した。
『サニカ!治郎とエルシィは?!』
「呼び掛けに答えないからダウンさせられて私の影の中にある【友情の広場】に戻った!」
子供たちはサニカの側に泳いでやって来てガシッと肩を掴みメフィリーネもゆっくりと近付いた。
「サニカ先生あっアレから嫌な感じがするっ!」
「その感は間違いないよ日葵…でも【星の泉】の中には入ってこれないと言うことは邪悪な精神体だね」
「精神体…?」
「そう、精神体だよ。物理が効かない厄介な奴さ…オリハルコン製の盾を取り出して正解だった」
「精神体ってことは浮かんでここで来るんじゃっ!」
『落ち着けイオン。来ているならもう既にここに来ているぞ……サニカ、対処できそうか?』
「…このまま結界を張るよ、私でも流石にあれは浄化出来ない【結晶の大木】がきっと…【スペースバリアースペイルト】」
サニカが杖無しで結界を張ると結界を作ったサニカと子供たちは丸い円状の結界に包まれ星の泉の水面の上に浮かんだ。
そしてすぐにその邪悪な精神体が結界に向けて攻撃を加え用としたが結界に届く前に精神体の伸ばした黒いモヤが消し飛んだ。
「えっ触手が消えたわ」
「皆、見て!結晶の大木がものスッゴク光ってル!」
子供たちは一斉に泉の湖畔に生える結晶の大木を見ると大木が光り輝き強烈な光の衝撃波を放つた。
「わっ!眩しっ!」
「めっ目が開けられないっ!」
「何が起きたんだ!」
「ここまで眩しいの初めてでス!」
ザワザワと草木が揺れる音だけが流れ少しの沈黙が訪れた。
「…………子供たちもう目を開けても大丈夫だよ」
「えっ?」
「ひっ!?」
「なっ何が起きたのだ?!」
「随分と存在次第が穢れていたのはひと目見てわかっていて此処までとはね」
「星の泉ガ……それに結晶の大木が枯れかかってるワ」
結晶の大木は薄っすらと光を纏っていたが、その輝きを失い枯れかかり星の泉は輝きを失い赤黒く濁っていた。
『サニカ……星の泉と大木は大丈夫か?』
「…………神聖な力を約3000年間も貯めていたけど一瞬で全て失うとは思わなかったよ。
キロイスが本物の厄介なのを消しかけてくるとは……玖寿たちが心配……でもまずはこれから宿屋に戻ってハルフォリエルとトエルレジアに頼んで神聖な光と神聖な闇の魔力を泉に分け与えてもらって調和させてみる」
『そうか』
「結晶の大木はまだ生きてる…その生命力に掛けるとして、今はこの結界を維持したまま宿屋に入るまで移動しようか」
『わかった』




