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元勇者の転生人生記録  作者: 冬こもり
【クレイバール島の日々】
296/556

挫ける心 

【クレイバール学校迷宮】


《1の階層》



「……………………あれ?……翡翠が前を歩いていた筈ですが…」

「えッ?あレ?」

「…何が起きたの?…翡翠……何か罠を踏んだの…?」

『えっ?……何かを踏んだ感触とかないにゃよ?』

『……………………』

「訃報があるわよ3人共……」



ルフェルニカがぼそっと言った。



「どうしたノ?ルニカ」

「さっそく、サニカ先生に持たされた【身代わり石のネックレス】の石が一つ砕けてるわ」



「えっ」と言って直ぐにルフェルニカ以外の三人は首に掛けているネックレスに振れると石がギューギューに吊るされていた筈なのに糸が触れるようになっていた。



「………さっそく死んだって事ですか?」

「そうなんでしょう?」



ルフェルニカは表情を青くしながら言っていたのを見た玖寿は残りの二人を見ても顔を青くしていた。



(僕も顔を青くしてますね……きっと)

「……呑気に喋りながらは無理そうね…さっきから譜月が喋らないけど何か見たの……?」

『………何も見ていないぞ……我と翡翠が先頭を歩く、もう歩きながら話そうぞ』



今度は譜月が先頭を早歩きで歩き始めたので玖寿達も歩き出した。



「…もしかしたら魔物か何かに見つかって…ランタンが目印になってしまったんですかね?」

「その可能性もあるけどこの階層のクリア条件ってなんだろうネ」

「ラローネルは真っ暗だけど見えてるの?」

「見えてるわヨ、あたしは犬型だけどハイビーストは鳥型であろうと必ず【夜目】を生まれ持って生まれるノ」

「…エトシェはどうですか?」

「わたし?……エルフは持ってる人と持ってない人が居いてわたしは持ってるわ…母親の方から受け継いだから…」

「そうでした…すみません…」

「便利な物だもの聞かれても別になんてことないわ……もしかして玖寿とルフェルニカは見えてないの…?」

「はい、残念なことに僕は見えてません…母から引き継ぎませんでした」

「あたいも見えないわ」

『……皆、静かに……念話に変えて……』



玖寿とルフェルニカはラローネルに手を引かれながら歩いていたが、エトシェリカが急に立ち止まりゴンとラローネルにぶつかったが譜月と翡翠が玖寿とルフェルニカの服に噛みつき引っ張りエトシェリカがラローネルを受け止め音を立てずに済んだ。



『……あッ……あゥ……筋肉…』

『何が見えたんですか?』

『………………ルニカと玖寿はそのまま気にしないで……』

『先程はアレに殺られたみたいじゃな……本気で我々を殺しに掛かってきておるわ……子供相手にも容赦ないのう』

『にゃ〜…弱くなる前なら簡単に倒せたけど今の姿では難しいにゃ〜……暗闇に特化した魔物にゃね〜』



玖寿は頭を回転させて思い出した。

無敵の宿屋の方にある【夜に特化した魔物図鑑】に載っていた魔物を。



『………もしかしてゴブリンの中でも夜に特化した【アンヤゴブリン】ですか?』

『惜しいな玖寿。【アンヤオーガ】じゃ』

『………勝ち目なくないですか?』

『確かにな…B級冒険者5人が夜に【アンヤオーガ】に出逢ってしまったら勝ち目がない魔物だな』

『うひャー……』

『アレに勝たないと上に行けないってことかしらね?』

『いきなり詰んだわ……』

『そんなことないにゃ』

『『『『えっ』』』』



翡翠は結構ぶっ飛んだことを言ってのけた。



『【アンヤオーガ】の頭に弓矢をクリーンヒットさせれば一撃にゃ!弓なら子供であろうと大人であろうと威力は変わらないにゃ!』

『………魔物をまだ一度も倒したことないわ…』

『6年生になってから武器を使った訓練を始めるからの……!?…子供ら!今すぐそれぞれ左右に避けて逃げろ!我々が少しでも良いから時間を稼ぐ!!』

『えっ!』



譜月の指示に従いラローネルはルフェルニカを左に軽く押しエトシェリカは玖寿を右に軽く押した。



「玖寿は体勢を整えたその方向のまま走って!」

「ルニカもヨ!」



玖寿たちはそれぞれが音を立てて走り出した。

譜月と翡翠が背後をを襲って来たであろう魔物に向かって攻撃を加えているだろう獣の唸り声が聞こえた。




(どうしてこんな事になったんですか!……どうやらぼの方には来てないみたいですね)



玖寿は走りながらサニカから託された特殊なランタンに火を付け明るくして何処か隠れる場所を探していると譜月と翡翠の悲鳴が聞こえた。



(!………譜月、翡翠…!はっ早く隠れる場所を見つけなければ!)



玖寿は必死に隠れる場所を探し自分だったら入れそうな場所を見つけることが出来て、その場所の周辺にカーウェンから貰った臭い消しを使ってから隠れる場所に入りそこでまた臭い消しを使ってからランタン火を消した。


それから暫くしてルフェルニカの悲鳴が最初に聞こえ次はラローネルの悲鳴が聞こえて直ぐに何者かが破壊しながら近づいて来ていたがだんだんと音が小さくなっていた。



(どっどうやら巻いたみたいですね……もっもう少しだけこの場に……………ぁ…れ?……)



玖寿はそろそろ動こうとしたが体が動かず腹部に痛みが走り出した。

玖寿は痛みが走る場所を触れようとしたら何かが自身の腹を貫いていた。



「ぇ………刃物…………」



すると玖寿が隠れている場所が突然思い切り乱暴に開かれるとエトシェリカのランタンを持った【アンヤオーガ】が立っていた。


そして玖寿は【アンヤオーガ】の武器である巨大な刃物に貫かれたまま持ち上げられた。

声にならない声を出したのを見たオーガがニヤニヤと笑っているのが見えた。


刺された場所から血が大量に流れ刃物を赤黒く染めその血を【アンヤオーガ】が舐めた瞬間に目を大きく開くと抱擁した表情になった。

そして【アンヤオーガ】が口を思いっきり開き噛み付かれたのを最後に意識が途絶えた。







◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇










【クレイバール学校迷宮】


《1の階層》



玖寿は目が覚めると同時に玄関から校庭に飛び出した。

するとラローネル、ルフェルニカ、エトシェリカが外に出ていて顔を青くしてうずくまっていた。


そして譜月と翡翠も同時にピヨーンと出てきた。

そして一斉に帰還の鈴を使かおうとしたが鈴が何故か壊われていた。



「壊れてル!」

「なっなんで…!」



すると背後から物凄いけたたましい咆哮が聞こえ、女子と子狼と仔猫はほぼ同時に走り出したがさっきの出来事がフラッシュバックして玖寿は腰が抜けた。



「こっ腰が抜けっ……!」



すると表玄関から【アンヤオーガ】✕2が出てきた。



「玖寿!走ってェ!」

「誰かっ!」

「助けてぇ!」



アンヤオーガはゆっくりと大股で歩きながら腰が抜けた玖寿に近づき手を伸ばし首を締めた。

玖寿の心がポキっと折れたのと同時にけたたましい咆哮が当たりに響くとアンヤオーガ2体が怯んで玖寿を離した。


そこに現れたのはサニカの従魔である【海馬のメフィリーネ】で玖寿の服を噛んで掴むと【アンヤオーガ】から引き離しラローネル達の側に置いた。



「………ぅ……メ…フィ………」

『やはりタヌ治郎とエルシィローにサニカ達を託しここに来て正解だったようだな……譜月と翡翠、子供らを守れてないではないか』




『面目ないのじゃ…』

『にゃ……』

『……だか特殊個体のオーガ2体か…コレばかりは劇的に弱くなった貴殿らでは荷が重いか』



メフィリーネがオーガ達の前に立ち塞がると二匹の【アンヤオーガ】は巨大な刃物を振り回しながら向かって来て子供たちに向けて巨大な刃物を投げたがメフィリーネが瞬時に作った防壁によって防がれた。



『知能もあるようだが甘いわ!!我が雷槌を食らうがいいわ!!【ライトニングレイザー】!』


空からいくつもの赤い雷が【アンヤオーガ】に降り注ぐとチリ1つ残さず真っ黒い地面だけがその場に出来ていた。

玖寿はその光景を見てから意識を手放した。



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