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元勇者の転生人生記録  作者: 冬こもり
【クレイバール島の日々】
285/555

救出と帰還

【ナントークーゼ島】


《????》


「サニカ先生…霧が深くなってきましたね」

「うん、始めてきた時はこんなんじゃなかったんだけどねぇ……クーナは大丈夫?」

「悔しいわ、大人になると小回りがきかない!翼を隠す魔法のお陰でそっちには被害はないけど…」

「クーナの背の高さはユウコに似て長身だからこういった小回りのパルクールはキツイかもね」

「うきぃ〜!」

「悔しがる感じは白虎君の方の血かしらね?キユクやユウコたちはドジを踏むと黙り込んですんっていう表情になるものね」

「………ふたりして呑気に話してないで助けて!」



サニカは短剣でクーナを縛り上げている蔦を切った。



「今度は捕まらないようにね」

「次はヘマしないわ!」

「ピナ」

「わかってるわ………次は左の方かしら。サニカ先生は?」

「こういうときの勘はピナので良いよ」

「ピナちゃんはエルフの血筋だから森の地理にかんしては凄いのね……でもクレイバールでは森に囲まれてるのにいつも水田にダイブしてるわね?」

「今はそういうの言わなくていいの」



ピナが先頭に立ち歩き始めた。



「先導していくわね」



ピナはそう言うと木で出来た剣を取り出し振り回しながら歩いている。

それから直ぐに霧が晴れ目指していた場所にたどり着いた。



「あら?結構歩いていたと思ったけど、その感覚は間違ってなかったわね」

「今までの霧は何だったのよ!」

「自然に発生した霧ではないことは確かじゃない?」



今回のサニカ側での探索で損をしたのはクーナだけであった。



「どうやら男達の方もほぼ同時に来れたみたいだね」

「ホントねぇ」

「えっ」



すると東側から服がボロボロ剥がれた男達がキリッとした雰囲気を醸し出しながらやって来た。



「前の時よりは平気そうだね…カイリ」

「エロいハプニングはあんまし起きなかったですよ」

「そのわりにはイオンが人一倍ボロボロだけど」

「イオンは歩くことをサボって浮かんでいたから捕まったんだよ…蔦と蔓に」

「タヌ治郎もクート少しだけ服が破けてるじゃない」

「蔓のムチを食らったから…」

「ここまではどうやって来たの?」

「タヌ治郎に案内してもらったんです」

「野生の勘っ言うやつさ、案内していて油断してこのザマだけどね。それよりもサニカ、大樹の色が真っ黒だね」

「それと大樹の中から感じたくない魔力を3つ感じるんだよね…エルシィを召喚できないし」

「……………えっ…だとしても変じゃない?だって船に残ってるわよね?」

「船で何かあったってことですかね?」

「多分」



その場に揃った全員で巨大な真っ黒い大樹を見上げた。



「どうしようか…生態系調べに来ただけなのに」

「そもそも平和だった島がこんなことになってるなんて思わないもんね」

「それでどうやって取り出すんですか」

「どうやって取り出すかって?そんなの簡単だよ。皆でリレー式で斧を使ってある程度まで伐るんだよ」

「この巨大な大樹を…?」

「最初はボクから行くよ」



タヌ治郎は人型の姿のままサニカから儀式用の厳かな斧を受け取るのと、大樹は何かを悟りタヌ太郎に攻撃を仕掛け始めたがヒョイヒョイと避け大樹に近づき「よっこらしょ!」と大樹にファーストアタックを見事に決めた。



「わっ!結構な抉れ方したぞ!」

「こんなのまだまだ序の口だよ。次は誰が行く?」

「はい!はい!次はオレっちが行くよ!」



クートが挙手をしてタヌ治郎から斧を受け取った。



「そーいえばさ、なんか木こりの歌だっけで与作の歌なかった?」

「歌じゃなくってゲームの方だよ」

「あっそっちか」

「随分とコアなゲーム知ってるわね…」

「レトロなゲーム集めるの趣味なのが生まれて買い漁って図書館に保存されてるからね」



クートは背に生える翼を魔法で隠すと斧で迫ってくる枝を切り落としながらタヌ治郎がファーストアタックを決めた場所に向かい追い打ちを仕掛けた。

少々のダメージを与えただけそこまで効いてない様子であるが捕まらないようにさっさと元の位置に戻った。



「あんまし効果なかったな!…悔しいなぁ!」

「コレばかりは経験値の差かしら…クート、斧をコチラに」

「わかった!」



ピナはクートから斧を渡された。



「さて今度はわたしの番よ」



それだけ言うとピナは風を自身に纏うとかなり高くジャンプして魔法で斧にさらに風の魔力を纏わせ巨大化させて兜割りを仕掛けた。



「わたしの孫を返してもらうわよ!これぞクレイバール秘伝の兜割りぃ!」



大量の枝がピナに向かって来たがピナが纏う風に防がれ逆に枝が粉々にスライスされていた。

ピナが放った兜割りで縦に切れ込みが出来た。



「すっ凄い……」

「ボクが横から斬った意味がなくなったような気がする…」

「木の伐採は個人差によるからね」

「さすがはピナさんですね…見事な兜割りです」

「あっ!サニカ先生!ルニカと玖寿とエルシィが!」 



大樹がパックリ割れた事で捕まった3人が剥き出しになった。



「うわぁ…」

「「はわわわ…!」」

「この大樹って変態だね」

「えぇ…」



ルフェルニカとエルシィローは漫画とかで捕虜が捕まって縛られるような縛り方をされていたが。



「なんか玖寿だけ亀甲縛りされてるんだけど……それに魔力を吸われてる感じが…ボクの気のせいかな?」

「気のせいじゃないよ。魔力の量で言ったらエルシィローの方が濃密で量もあるのになぜか玖寿だけ吸われてるね」

「冷静に分析してないで助けないと!」



カイリは直ぐに動き出し「うぉおお!!待っていろ!ルフェルニカ達ィ!!」と叫びながら捕まった三人のもとへ向かった。

カイリが避けることをやめたのを確認したサニカは大樹の前につく頃にはパンツ一丁の姿になると判断したカイリに向かってモザイクを掛けた。



「カイリは見た目に合わぬ…B「ファムロスが作った探検服がボロボロ剥がるとは…帰ったらさらなる探検服の強度を上げないとだね」

「でもそれだと動きにくかったりするのよ」

「そのへんは試作して試してを繰り返すしかない」

「……カイリ君もよく登れるわね…命綱なしで登ってるわ」

「さてと、私も回収作業手伝ってくる」



サニカも蔓や蔦を避けたり切ったりして大樹の元に向かいたどり着くとカイリが「もうこの短剣使えなくなった」とか言っていた。



「だったら魔法の剣は?」

「それが魔法の剣を作ったのですが効果ないんですよー」

「効果がないのであれば一旦降りてきて服を着てからまた直ぐに活動しなさい。

作業中に目が覚めたルフェルニカに今の姿見られたら「この変態ッ!!っ」てフィリムみたいにいわれるよ」

「それもそうですね」




カイリは20メートルから飛び降り見事に降り立った。



「サニカ先生、失礼します」



カイリはサニカから服を渡された早着替えをした。



「他に何か短剣ありませんか?」

「取り敢えず鋼とアダマンタイトとミスリルとオリハルコンの短剣をそれぞれ渡すから試してみて」

「わかりました」

「私も確認のために魔法で作った剣を試してみるよ」




すると右と左で別れ大樹に素手で登り捕まった子供たちから救出作業に取り掛かった。



「相変わらず凄いわねぇ。カイリ君はまた命綱なしで登ってるわ」

「サニカもだね」

「そもそも命綱を掛ける場所がないぞな」

「ちょっ!皆!呑気に話してないで蔓が来たわよ!」



クーナの合図を聞いた瞬間にピナはイオンを小脇に抱えタヌ治郎はピナの背後に立ちクーナとクートは迫ってきた蔦と蔓をぎりぎりで避け、タヌ治郎がピナとイオンに蔓が行かないように愛用している短剣で蔓を切り裂いた。



「皆、この島からクレイバールに帰るよ」



そう言いながらシュタッとサニカは玖寿を小脇に抱えて降りてきた。



「生態系調べは?」

「しなくていいよ。後でルウカと巻き添えをこの島に寄越してさらに深い場所に向かわせるから。

今回は安全だとたかを括って子供たちを連れてきたからね」

「安全性が認められなくなったから帰るんだね」

「そう」

「私の船で帰れそうですかね?」



カイリもルフェルニカを小脇に抱えて降りてきた。



「無理にでも船に乗って帰るさ。あとエルシィローがこの島にいるのは危険だと判断してグリフォンたちを早々に帰らせたみたいだから、船で帰る以外はないね」

「サニカ先生、秘技強制送還では帰れないの?」

「あの大樹が魔法封じの霧を発生させてるから無理だね」

「それじゃ物理攻撃繰り返しながら船に向かうの?」

「うん」







◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇







どうにか船までたどり着き巨大なイソギンチャクが現れることなく出港し【クレイバールの砂浜】にたどり着いたら物珍しく島長のポーリアとアジサイとファムロスが待っていた。

そしてクレイバール大広場にたどり着くとそこには…。




【クレイバール大広場】



「………ヤバい島から帰還したのは良いけども今度は何があってこうなったんだい?」

「長くなるから安全な宿屋で話さない?サニカ先生」

「島の者全員で宿屋に避難してますぞ」

「ナントークーゼ島から帰還したサニカ先生を含んだ探検家達がボロボロ状態だしな」

「そうだね」




ナントークーゼ島からどうにかこうにか帰還した探検家達は一息つくヒマもなく大広場からでも見える変貌を遂げたクレイバール学校を見て「今度は何が起きたんだ?」と思ったが今はとにかく疲れを癒やしたいと【無敵の宿屋】に向かったのであった。




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