天体観測、最終日
【クレイバール島】
《クレイバール島の山頂》
「うわぁ!……家の中から見る景色とやはり違いますね!」
「そうだな…普段の夜空とは全く違うな…」
俺たちは世紀の天体ショーの最終日の夜にクレイバール島の山頂に赴き前に来ていた島民たちが用意した天体観測の道具を使いながら観ている。
「本当に贅沢よね〜…昨日は我が家の木彫りのカラスに邪魔をされて家から出なかったのよ〜」
「イダルベールさんの所もそうだったんですね」
「あら〜キユクたちの所もそうだったの?」
「はい、僕たちの所は木彫りのフクロウですが忠告されたので籠もりました」
「サニカ先生から結婚祝いの品として送られた木彫りの置物が喋った時は驚いたよ。流暢に喋って本当に何か起きてるときは警告してくれるし」
「家が大破する可能性がある場合は自らが宿屋の扉と繋いでくれるのよ?」
「へぇ…僕たちはまだそういう経験はないですからね」
「本当はない方が良いのよね」
うん、うんとハルディオラさんと共に頷いているとそこにアスチルがやって来た。
「父さん、母さんに白虎とキユクも来てたんですね」
「アスチルも来たのか」
「はい、サニカ先生とルウカ先生がラブナシカの相手をしてくれる方を連れてきてくれたので」
「それは良かったですね」
「はい。夜食にとお弁当と飲み物を持ってきたのですが……山頂にある石造りの机が大渋滞を起こしてますね」
「俺たちもアスチルのように持ってきたからな」
「考えることは一緒ですね」
「うふふ、そうね」
2つの家族で天体観測をしているとレシェットも山道を歩いてやって山頂まで来た。
「家に居ないと思ったらここに居たのね」
「あらレシェット〜何かあったの〜?」
「何もないから大丈夫ですのよ」
「そう?」
「はい」
レシェットは迷うことなく俺たちが作った弁当やお菓子が置いてある机に直行して弁当やお菓子を食べ始めた。
「相変わらずレシェットは花より団子だな」
「うふふ…そうね」
「……1000年に一度の天体ショー…流石の迫力ですね」
「…………………」
幾万の星の煌めきは言葉に出来ないほど本当に美しく絶景である。
「流れ星に願いをすると叶うという迷おまじないがあるんだっけか」
「昔、先生に言われたことがあるな」
「教育を施した子供たち全員に言ってますよね」
「そうそう、オラもそれを聞いて必死に願ったなー。島のお転婆な娘たちが大人しくなりますようにと」
「ディッ君たらそんなことを願った時があったの?」
「当時の島の子供で男はオラしか居なかったからな」
「その逆も叱りパターンもあったらしいですね」
「確か島唯一の女の子がオタサーの姫化して島がカオスだったらしいわね〜」
「ラブ先生に喧嘩を売って伝説化した娘ですね」
「そんなことがあったのか、この島で」
「あったんだそうです。ラブ先生の前で今でもその話をすると当時の光景がフラッシュバックしてストレス発散の為にどこかに消えるので話すのは禁止となってます」
「………神様も嫉妬とかするんだな」
「ラブ先生も神様だけど受肉して生きてるからね〜」
話も弾み話し込んでいると天体ショーが最大となる時間になりより一層、流星群が流れた。
(キユクとこれからもっと末永く共に居られますように…)
そう俺は流星群がピークとなった今そう願った。
「白虎は今、何を願ったのですか?」
「何を願っただろうな?」
「教えてくれてもいいではないですか〜」
「キユクが何を願ったか俺に教えてくれたら教えるよ」
「良いですよ」
「えっ」
キユクは俺に耳打ちをしてこういった「もし子供が出来たら僕と白虎の血が良い具合に混ざりあった子が欲しい」とおっしゃった。
「白虎、顔が赤いですよ……ですが僕が願った願いは生命に冒涜的な願いなので…あまり良い願いではありませんが…」
「地球基準ではそうかもな……キユクも顔が赤いな………俺の願いは」
俺もキユクと同じように耳打ちをして「キユクとこれからもっと末永く共に居られますように」と言う願いをしたと言ったらキユクが顔をもっと赤くしアワアワし始めたが俺はそのまま妻を後ろから抱きしめた。
「熱いわね〜こっちまでドキドキしてきたわ♡」
「ベール…」
「うふふふ〜…」
「……目の前のカップルたちを見ていると羨ましいですね」
「どうした?アスチル。何かラブ先生や自身の事で悩みでもあるのか?」
「……ラブナシカは私に異常なほど執着していますが……それは遠い約束をしたからなのでしょうか…」
「「それはない」わ」
「えっ」
「もし執着から来ているならわたしはラブ先生であろうと絶対にアスチルを渡さないし、サニカ先生とルウカ先生から預かっている【絶対的存在から身を護る権利】を使って同じ場所で暮らしていても逢えないようにするわ」
「例えこの世界に受肉してくれている神様であろうともな」
「母さん…父さん…」
「でも一度、見直すのもありかも知れませんね」
「アスチルの魂はラブ先生との遠い昔の約束を果たしたとマジェリルカちゃんやとある御方にも言われて実際はもう好きにして良いって言われているからな」
「そんなことが出来るのですか?」
「出来るのよ〜」
するとイダルベールはどこからか取り出した紙を燃やすと島の一部に光が射した。
ここぞの時に着る真っ赤なエプロンを着たラブさんがその光に吸い込まれて行くのは流星群が流れている中で行われた為になんとも言えぬ光景となった。
「…光に吸い込まれて行きおったぞ」
「……なにかオマケが付いてませんでした?」
「あぁ……オマケが付いてたな」
「ふふふふ……アスチルも少しラブ先生と距離を取って考えてみるといいわ」
「………………そうさせて貰ます」
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
【クレイバール島】
《クレイバール学校の校庭》
「「「ガハハハ!!遂にやったぜ!」」」
「………………」
「どうしたの?サニカ先生」
「いやなに……今回は随分と素直に吸い込まれていったなぁって思っただけさ」
「そういえば……いつも呼び出しをくらうと「イャァア」とか「行きたくないー!」って叫んでるな」
「……それどころか不敵に笑ってたわな」
「かっ母さん……大丈夫なのだろうか?」
「……別に悪い予感はしないから大丈夫じゃろうて」
「何か思惑があったのかしら」
「…まぁ…その…島に侵入者した輩を全員持っていってくれたみたいだからさ、帰ってきたら感謝しないとね!」
「時空裁判所の役員に連絡しておかないとだね……動向については【神眼の巫女】さんに頼んで様子を見てどうなってるか報告をしてもらおうか」
クレイバール学校の校庭で星の巡りを見ていたクレイバール島の魔法使いたちはラブナシカが騒がず大人しく連れて行かれたことの不穏な空気に警戒しながらも天体観測をするのであった。
そして1週間もしないうちにラブナシカは帰ってきた。そして頬には血が付いていたのを見たルウカたちは。
「神域の神々から血文字付きの手紙が来たよ」
「…だろうな。内容は?」
「今のラブナシカは自分たちでは手に負えないって」
「……ラブナシカは要観察だな」
「うん」