クルッポー
【六月一日家】
《リビング》
「白虎って生活魔法の適正が凄いですね…」
「そうか?その代わり攻撃魔法に関しての才能はからっきしだから複雑な感じだけどな」
「僕からしたら羨ましいです」
「そんなもんか?」
「はい、そんなもんです」
「キユク、それよりも研究室に行かなくて良いのか?」
「はい、生物を扱う研究はしてないので今日だけは久し振りにゆっくりさせて貰います」
特注のソファーに座ってお茶を飲んでいるキユクの元にホットケーキを持っていった。
「ありがとうございます」
「………………」
「……どうかしました?」
「いや、俺たちホントに結婚して夫婦になったんだなって」
「…そうです、僕たちは夫婦です。白虎に装着させられた結婚指輪もありますよ?」
それぞれの左手の薬指には指輪がはめられている。
「これからだんだんと賑やかになっていきます。それが楽しみですね」
「そっそうだな」
二人で少し遅めの朝食を取りいちゃつこうとしたときにトントンとドアを叩く音がした。
「出たほうが良いのか?」
「まぁ…時間的にも朝の10時半過ぎにわざわざ時間をずらして来てますからね」
俺が玄関に向かいドアを開けようとしたが先生に貰った結婚祝いの品の木彫りのフクロウが動き出すとドアを開けれなくした。
「え」
『開けちゃダメよ〜…ダメダメ〜…』
「……ネタが古い気が…」
「流暢に喋りました…その木彫りフクロウ…」
キユクもいつの間にかソファーから立ち上がり俺の隣に来ていた。
『今日は1000年に一度の天体ショーが訪れた日の二日目だけど星が動くときは良いときもあるけど悪いのも動くから注意するんよ〜』
「今日はその悪いのもが動いているのですか?」
『そう感じたのよ〜…信じるも信じないも好きにするよ〜』
「どうしますか?」
「食料に関しては新婚さんだもんねとアスチルやハルディオラさん夫妻にコレでもかと言うくらい結婚祝いとして貰ったから…買い物とか必要ないから今日は大事を取って籠もるか」
「わかりました、今日はずっと家で過ごしましょう。
サニカ先生から借りた本も溜まりに溜まってますし、この家からも天体ショーは見られますから」
無視を決め込みドアから離れキユクは自身の書斎から大量の本を持ち出し読み始めー
「おぃい!このひとでなし新婚夫妻!無視しないで開けんかいいい!」
家のドアを破壊し侵入者がひとり入ってきた。
「何しに来たんですか?レフィさん」
「ミーの!ミーのすいかちゃん知らないか!?」
「すいかちゃん?………あれ?何か……」
「ミーの大切な人なんだよ」
「アイドル以外で生身の女性に興味があるとは驚きです。この島に連れてきたのですか?」
「連れてきたんだけど迷子になってしまったみたいなんだ」
そういえば……ルウカ先生がコソコソしながらどっちかの宿屋にフィギュアを隠してたような…。
もしかして…大切な人ってフィギュアの事か…?
何かこの人は仕出かしたのだろうか…フィギュアの事は黙っていよう。
「白虎どうした…そんな可愛そうな人を見る目でミーを見ないでよ」
「……この家には俺とキユク以外はいない」
「…確かにそのようだ…邪魔したね、新婚夫妻その5!」
ドタバタと壊したドアから出て行った。
「…………………」
『直せるから直すクルッポー』
「えっ」
するとフクロウが壊れたドアを元の位置に戻すとクチバシと足を使い器用にドアを直した。
『家事手伝いとかするクルッポーよ』
「無理にクルッポーって言わなくても…」
『そうするんよ〜…』
「悪いのこの家に入ってないよね?」
『大丈夫、入ってないよ〜』
こうして俺とキユクは本を読んだり好きな事をしたりイチャイチャして過ごした。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
【クレイバール島】
《?????》
「サニカー!今日までに侵入者を8人も捕まえましたよ」
「ハノン、ご苦労さま。この侵入はクレイバール島の若い子が結婚ラッシュになると起きる毎回の事だからね」
「それにしてもホントに懲りないですね」
「そりゃそうだ。この島の子供が良質な血統を保持しているのは有名だからな」
捕虜その1がそういった。
「その良質なこの島のそれぞれの家の血統が全て流出してるけどまだ狙ってくるのが最悪だよね?」
「圧を掛けたとしても俺たちは末端だから意味ないぜ?」
「どれだけの戦力があるのかも探っているんだろうけどさ…いい加減にしないと歩く天災をこの島から解き放つよ?」
「……………………」
その場に居た捕虜その1とその他の捕虜が真顔になった。
「伴侶を得たけど歩く天災の奇行を見たその伴侶に最近、距離を置かれて溜まりに溜まったりしているみたいでね」
「それになんか最近…浮気してやるぅ!て伴侶に向かって言い放ち外に出て信者を増やそうって意気込んでましたよ」
すると捕虜たちはガタガタと震えだした。
「そっそれは本当なのか…?」
「うん…」
そういったサニカと頷いたハノンは捕虜たちから目線を外し明後日の方向を向いた。
「他の侵入者たちが何人いるかわからないのですが……確保出来たのがアナタたちだけなんです」
「島の子供たちに関しては私たちと育ててきたから多少の良心で手を出さなから島をウロウロさせても良いんだけどね」
その時、野太い悲鳴が聞こえた「ギャァァァ!やっヤメテェエエ」と。
「ひっ!」
「…あぁ…遂に犠牲者が出てしまいましたか…」
「この島の子供の悲鳴なんじゃないのか?!」
「島の子供の悲鳴ではないよ。自慢じゃないけど私たちの島の男前たちはイケボの集まりだから悲鳴もここまで野太くないのさ」
「……………」
「捕まえた皆様に関しては手続きした後に【時空裁判所】に連結させていただきますので…それまではごゆるりとココで過ごしくださいね」
「ぇ…」
「悪いけど誘拐犯たちを世話する理由はないからさ……その…頑張ってね」
「何を!?」
サニカとハノンと入れ替わる形で独特な足音をならす真っ赤なエプロンを来たナニカが侵入者の仲間数名を骨抜きにして引きずりながらやって来た。
その様子を見た捕まった侵入者たちは円陣を組む形で縛られていたがこのときに限り息のあった動きで立ち上がり捕まらないように逃げようとしたが、現れたラブナシカによって男としての機能を封じられるだけで済んだ男たちは迎えが来るまで抜け殻状態になっていたそうである。