帰還とそれから
【クレイバール島】
《カフェ・ド・ラブリー》
『……と言うことで2つの家族が移住してくるから用意してくれるかい?』
「わかったわ。ちょうどここにアジサイちゃんたちも来てて二度手間にならなくて良かったわね?」
『全くだよ』
「それにしてもあの千太郎ちゃんがねぇ…【あの地球】だって結構な年月が経ってたみたいだし……ね」
『だと思うことにするよ』
「サニカは大雑把に見えて結構繊細で面倒よねぇ。精神を落ち込ませるんじゃないわよ?」
『余計なお世話です』
「とにかく、いつでも来れるようにして置くから早めに来るなら来なさいよ〜」
『了解』
するとサニカからの通信が切れた。
「人が減ったから良いんじゃないか?サニカ先生がそれでいいと言うならば」
「人が少なくなったから少しは活気づくでしょ」
「さてと動きますかね」
「久し振りの全空き家の掃除じゃ」
その場にいたクレイバール島に残っている全大人たちはカフェ・ド・ラブリーからぞろぞろと移住者を受け入れるために動き出した。
「私も行きます」
「アスチル待ってちょうだい?」
「え?」
「はいこれ」
アスチルはラブナシカからモザイク処理された物を受け取った。
「なんですかコレ?モザイク処理されているじゃないですか」
「それはア・タ・シの※「入りませんので返却ですね」」
アスチルはラブナシカにモザイク処理された物をそのまま物理的に返却した。
「ラブナシカ、私は暫く実家に帰ります。私に献身的にしているつもりでしょうが流石にコレは無理です。
私に貴方の性癖を押し付けないでください、私にそんな趣味はありません」
「コレがあれば何でも魔法が使えるしアナタの負担になることを取り除きたかったのぉ〜!」
「健康なので必要ありません」
「アスチル〜!」
アスチルは足を掴んで離さないラブナシカに亀甲縛りをしてカフェの中心に吊ってから同棲しているカフェ・ド・ラブリーから出て行った。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
【クレイバール島】
《大広場》
「…それでも懲りずにラブナシカはさらに仕出かしたんだね」
「はい、だからここに喋れぬようにしてから吊るしました」
「この島のオカマさんはクレイジーだな…」
「こういう景色に関しては3ヶ月も住めば慣れますよ」
「なるべくなら慣れたくないぞ…」
あれからもう一晩だけあの地球で過ごしてから宿屋ごと俺たちが過ごしてきた地球と俺たちが暮している世界との道を封鎖してからクレイバール島に帰ってきた。
そして隆太郎と唯糸の家族が家選びしているところでラブナシカさんが亀甲縛りで吊るされているのを目撃したのでアスチルに聞いたのである。
……ラブナシカさんの………ナンデモナイデス。
「なぜなのでしょうか…最近増えてるんです」
「発情期なんじゃないか?昔は男漁りしに異世界のオカマ神たちと良く男狩りに行ってたし…お前の前世と出会う前までだがな。
それかお前の前世に出会ってからラブナシカなりに抑えていたのが今解放されて出ているのかもな」
「理由がそうであればため息を付きたくなりますね。前世の私に操を立てずに独身なのだから程よく発散すれば良いものを…全く」
「アスチルを様々な事から絶対に守らなきゃとならなければマトモなんだけどね…」
「そうなんですよねぇ……皆様、気にせず行ってください」
「あっはい」
俺たちはクレイバール大農場から離れた唯糸と隆太郎は真顔になりながら。
そして途中からこのままじゃ全部の空き家を見るのに夕方になると譜月や先生が契約を交わしている他の魔物を召喚してそのモンスターの背に乗って移動して3時間して全部の空き家を回って気に入った家がそれぞれの家庭で見つかった。
善和一家はクレイバール中央地区(商店街と言うか日用品店が多い島の中央にある場所)に決まり土屋一家はクレイバール西地区(農場とか自然が多い場所)に決まった。
こうしてクレイバール島に移住しそれぞれの家族は生活を新たにスタートさせた。
そして半年後。
【無敵の宿屋】
《食堂のカウンター席》
「ラブさんまじやべーな」
「今日もアスチルさんにストーカー行為して引かれてたぞ」
お前らも1年過ごしてすっかり馴染んじまったな…。
「それでどうですか?ここでの生活と大学生活は」
「楽しいぜ。特に日の出と夜の景色は特にキレイだし」
「うん、うん」
「相変わらずラブナシカ殿は不変だよね〜」
「仙人さんも最近ちょくちょく来るようになったな」
明けの仙人さんも最近ちょくちょく現れるようになって愚痴をこぼしに来ている。
「最近まで暇だったのになんか呼び出しを食らうんだよね…【特別な地球】に関してについてだけど」
「悪いけど前世の話は出来ないからね。その頃の日記やらを既に【時空維持】系列に渡してるし」
「そんなことはわかってるって。でも最近は特別扱いしてたけど悪目立ちしてるからどうよって話が多くなっててねー」
「………その【特別な地球】って何が凄いのですか?」
「キユクたちには教えてないから知らないんのか」
「はい、教わってないですよ」
「教えてやれば良いのに」
「んー……そうだね。時間的にもあるし…良いか…」
先生はざっくりと話してくれた。
【特別な地球】と呼ばれている地球系列の世界は何故か他の地球に比べてなぜか異世界に召喚される確率が高く魔王として召喚されたり勇者として召喚される頻度が他の地球系列で高いらしい。
そして元勇者とか元魔王しちゃったとかが魔法と科学をごちゃまぜにしたことで文明がかなり進んでいるんだそうである。
本来ならそういった事で地球系列世界に有るまじき事はあってはならないと取り除かれていたがその地球の影響は他の地球に影響が及ばないと言うことで黙認されているらしい。
ただ最近、他の地球に赴いてそこの人類に茶々を入れて来るので元地球出身の方強者たちを使って押し込めようとかの話が出始めているんだと。
「力を持ちすぎて調子乗ってるんですかね?」
「多分そう「仙人殿ー!」って最近ぼくの方の地球の日本の政府がどうしようって相談を持かけてきてるからコチラも困ってる。あんまし介入したくないんだよね…面倒だから」
「へえ」
「流石に目に余るようなら牽制はするけどもね」
仙人さんの話を聞いていると宿屋の扉が開き白衣姿のラタムがやって来た。
「隆太郎、唯糸」
「ラタム君、遂に…来たのか?」
「……早く来てくれル?」
「白虎、また」
「あぁ」
ふたりは急いでクレイバール病院に走っていった。
「………遂にですか」
「そうだろうな…」
「ぼくもできる限りのことはしたけど…良く頑張った方だよ」
明けの仙人さんが唯糸たちの家族を元に戻すにあたって本来なら既にルウカ先生たちによって発見された時には瀕死のキメラとなっていたが。
家族を元に戻すにあたって隆太郎と唯糸の中に眠る希少な異種族の血脈を無くすというのを代償に延命して生きられる様にしてから分離された。
そして今日、その期限が来たようだった。
「ぼくも今日はここに泊まって葬列に参加して落ち着いたら帰ろう。それくらいは大丈夫だよね…ぼくの暮らす地球…」
「大丈夫でしょ。【時空維持】が監視してくれてるから」
そして唯糸や隆太郎から亡くなった事が伝えられた。
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【クレイバール教会】
《教会前広場》
「汝らの魂に祝福あれ〜!」
笑ってはいけないのに我が世界におられる受肉しているオカマの神様の気の抜けた声のおかげでヤバい。
よく見ると隆太郎や唯糸ですら泣きながら笑いを堪えるのに震えている。
ラブナシカさんも真剣にやってるから余計なんだよ。
腰とかフリフリ振っるのを頼むやめてくれないだろうか。
なぜフリフリするんだ…これ以上は耐えられないっ!
よく見ると参列している皆、震えとる。
あぁ…遂に限界が来て隆太郎たちも泣きながらバレないように笑いだしたぞ。
「ぐっすっ………ふふぅ……ゔっ…………」
「うぅ……ゔっふ…………」
「さて最後の仕上げ行くわよー!」
その場にいた先生とルウカ先生以外の島に残っている島民と明けの仙人が「え”」と言ってラブナシカさんを見た。
するとラブナシカさんの体が輝き光の柱が隆太郎と唯糸の両親が入っている棺を照らすと頭上から笑い声が聞こえた。
『ガハハハ!この島の島民たちと息子がオカマの神様を見て笑いをこらえてらー!ぷふぉっ!』
隆太郎の父上がジュリアナダンスしているラブナシカさんを指差して笑っていたがラブナシカさんはパチンと扇子をしまうと【ゴットハンド】と言いながら隆太郎の父上をビンタした。
「親父が現れたと思ったら昇天させられた」
「コレで問題ないわ」
「それじゃ始めるか」
「了解」
この場には濃密な魔力が満たされていて夜空を見ると魂らしき物が4つ浮かんでいる。
「「定められし時の定めを外されし我らとほぼ同郷の魂を新たに受け入れ先に導きたまえ、そして新たな旅路に祝福があらんことを」」
するとどこからかゴツい天使が現れ4つの魂を丁重に抱きかかえると純白の翼で羽ばたいてこの世界から消えていった。
「コレで良し」
「どの世界に転生するのかな…」
「転生者並びにオレたちみたいな輩に生を無理やり歪められたからそれぞれ本人たちが望む世界に融通を利かせたから行けるだろう。
さて今日はコレで終わりだ。それぞれの帰路に着きゆっくり休め」
朝から始まった葬儀が終わりを迎え、また明日が来る。