囲まれた朽ちた教会
【朽ちた教会】
《礼拝堂》
「……ぅう…」
「……ぁぁ…」
「良かった、お目覚めのご様子で」
隆太郎?がオレの声に反応してコチラを見ると「どうして置いていきやがった、この人でなし!」と言われたようだった。
「そのことに関しては悪かったって、まさか隆太郎がそんな姿になってるなんて思わなかったんだから」
「…ううぅ!」
「お前とは絶交だっ!」と言われた気がした。
「ぁぁ…!」
「唯糸も悪かった。唯糸に関しては申し訳ない。スライディングタックルして悪かった」
唯糸には「アレはマジで痛かったんだけど?」と言われた気がした。
「唯糸、コレでお前にふざけた拍子に股間への攻撃でEDになりかけたことに関してはチャラにする」
「……ぁ」
「そういえばそんなこと…あったなぁ」とサラリと言われた気がした。
「隆太郎、唯糸、お前たちの両親や弟や妹さんたちはどうなったかわかるか?お前たちは家族ごと行方不明になっているんだ」
「「……………………」」
ふたりは黙り込んでしまった。
「今、先生たちが捜索してしてくれてるけど…何か知ってると良いんだがな。それと元の世界は3年もの時が経ってるぞ」
「「!」」
俺の言葉を聞いた隆太郎たちがコチラを見たて立ち上がろうとしたが、先生がふたりが飛び出して行かないように動けないようにしていた。
「唯糸、隆太郎。体を少しだけ動かして窓から外を見てみろ。面白いのが見れるぞ」
俺の感情の籠もってない声を聞いてふたりはゆっくりだがそれぞれの右と左を振り向いた。
「ぁぁ…!」
「ぅう!」
ふたりして「うわっ!何だアレは!」と言った気がした。
「ヤバイよな?外はゾンビみたいな奴がいっぱい集まってきてるし、何か某アクションゲームに出てくる敵みたいな奴も居るしな」
そう、俺たちは絶賛ピンチ中である。
ゾンビみたいな奴に囲まれているからな。
だからといって俺に動けと言われても無理だ、俺は強くないからな。一般人よりは少し身体能力が高いだけだから。
「ここにいれば…大丈夫なのはわかるけどさ…教会を囲む周りがな……女神みたいなのもあるしここって礼拝堂か…」
オレは女神像らしき像の近くまで寄り祈るポーズを取った。
………何を祈るか…隆太郎と唯糸が元の人間の姿に戻りますようにするかな…それともゾンビみたいな奴らを浄化してもらおうか?……両方やっとくか?
俺が祈ると自然と天使の翼が現れ女神像らしき像が光輝き、周辺を光が包んだ。
俺は目を開けると沢山いた筈のゾンビが消えた。
「……凄えな…あの姿で一生過ごすのかと思っていたのに」
「……素肌にマントか……どこぞの変態なんだぞ…」
俺は振り向けずに「「「…………」」」と3人して無言となっていたが隆太郎が痺れを切らし口を開いた。
「白虎、今回のことはコレでチャラにしてやる」
「……」
「そもそも白虎に見分けろって言う方が酷だし」
「そうだぞ」
「悪かったな。父さんと違って見分けられなくって」
「大丈夫、そこまで期待してないからな」
「良く毒を吐くなぁ」
「それくらいの嫌味は言うぞ」
「それでどうやって外に出るんだ?今がチャンスじゃないか?ゾンビが光によって消えたし」
「お前らそもそも歩けー」
俺は振り返りふたりを見たが何とも言えぬ姿をしていた。
「…………………」
「どうしたんだ?白虎が黙るなんて」
「…………………」
「唯糸まで黙るなんてどうしたんだ?……………ぷっ……お前、唯糸だよな?体は元通りなのに頭部が蜘蛛になってる」
「隆太郎に関しては頭部が花で目と口と鼻とかがある不思議な生物になってるぞ」
「………」
「昔の白虎なら驚くと思ったけど今は驚かないんだな」
「俺も異世界に染まったんだなって思う。おじさんやおばさん達はどうしたんだ?」
「えっ?白虎なにを言ってるんだぞ?両親と弟はこの場所に来てないぞ?」
「えっ?どういうことだ?俺や先生たちは喫茶店のマスターからそう聞いて来たんだぞ?」
「こっちのほうがハテナだぜ?俺と唯糸はそれぞれの親に俺たちが行方不明くらました?所に行けと言われてこんな風になったんだ」
一時の沈黙が訪れた。
「…元いた地球の隆太郎の実家の農場や唯糸の所の店が一身上の都合によりって紙が貼ってあって閉まってたんだ」
「「えっ」」
「コレはマジだからな?先生たちと一応唯糸の両親が経営している店や隆太郎の実家の農場がどうなってるか見てから来たからな」
ふたりは黙り込んだ。
そこに足音が近づいてくる音がして俺たちは咄嗟に女神像の後ろにちょうど良い場所がありそこに隠れた。
朽ちた教会にぴしっと決めたスーツ姿の人がやって来た。
「澄谷ツインズ様からここに居ると言われたのですが何かあって移動なされたかいないですね…どこに居るのでしょうか?」
隠れた場所から出ようとしたが体が何故か動かなかった。
「あの厄介なふたりとオマケが手こずっている間に連れ帰りたかったのですが…ね」
手こずっているっているのは先生たちの事か?それに連れ帰る?……何やらキナ臭い話が出てきたぞ。
なんかよく見ると顔に仮面も付けてるし。
「少々、予定通りに行かないので苛立ってきました」
スーツ姿の人が手を軽く振ると朽ちた教会の壁が乱切りされ女神像までもがゴトッと落下した音が響くと建物が崩れ、俺たちは瓦礫に呑まれたが場所が良いのかそこまで危険はなさそうである。
隙間から外の様子が見えそうだ、それに先生に渡された腕輪がほのかに光っている…。
「何してんだお前は…」
「仕方ないじゃないですか。目標が居ないのですから」
「…この建物に張られた結界を壊したと思ったら建物まで破壊しやがって」
「あれくらいの結界なら簡単に壊せますよ。異世界を行ったり来たりしている割にね。本当はあのふたりは弱いんじゃないですか?あの方が恐れる理由がわかりません」
「確かにこれだけの結界だと弱いよな」
謎の二人組がこの場所から離れようとした時にルウカ先生が現れた。
「おや…コレはどうなっているんだ?」
「もう戻ってきましたか、あなたたちの作った結界簡単に壊せましたよ」
「サニカが作ったのは異形特化の結界だからお前たちであろうと簡単に壊せたんただろ」
「暇なら我らと遊ば――」
仮面を付けたスーツ姿の人たちが動こうとしたがそれより先にルウカ先生の方が動い………えっ。
「お前たちと遊んでいる暇はない」
ちょっ…ルウカ先生が両手に頭部らしき物体を持って………モザイク処理が施されたスーツ姿の人たちの体がバタッとその場に倒れたが首から出血はしてないようである。
「殺しはしないがナメられぱなしって言うのもなんか癪だからこれくらいはさせてくれるよな?」
「私の首が!体が!」
「………動きが見えなかったな」
「お前たちとは違ってな比べられないくらい場数を踏んでいるものだからこれくらいの芸は出来る。
まだ死んでないから安心しろ」
「全く、お前のせいでオレまで巻き込まれた……上司に言われていたというのに」
「あっあぁ…!」
「攻撃魔法に関してはもうすでに極めてる2000年もの時間でな」
「オレだけでもいいんで元に戻してくれません?」
「冷静だな。今回の事に関してお前ら側の情報をくれたら直ぐに戻してやるが?」
「話したら消されるから無理だ。この仮面で様々な事を管理されちまってるから勘弁してくれ」
ルウカ先生は頭部を瓦礫の上に置いた。
「そうか、でも殺しはしないから自力でくっつけろや、サニカの作った物を感知できないんじゃまだまだだな。
白虎たちは壊れた女神像の隅で丸まってないで出てこい、この場から移動するぞ」
ルウカ先生が俺たちが居る場所の瓦礫を浮かべると通りやすくなったので本物だなと思った俺は隠れた場所から出た。
隆太郎と唯糸も信頼出来そうだと思ったのか俺の後から出てきた。
「ゾンビみたいなのが来る前にくっつけろよ?調子こかずに結界を壊さずに朽ちた教会に入ってくれば良かったものの」
「そのようだ」
「拘束魔法は解いたから頑張って自身の体を操作するといい。出血で死なないように戻すまで魔法で固定はしといてやるから」
すると体が頭部の元に向かうべく立ち上がろうとし始めた。
「それともう一つ、今回の件でお前たちに従わないと決めた者は既にこの地球から脱出したと言っとけ。
お前ら下手こいたなともな」
ルウカ先生がそれだけ言うと俺たちを引き連れて外に用意されていた車に乗せた。
教会から出る前にちらりと頭部を見たがモザイクがかかっていたので表情はわからなかったが黒いオーラが見えていた。