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元勇者の転生人生記録  作者: 冬こもり
【最後の使命】
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番外編 思惑が交錯するホワイトデー

【クレイバール学校】


《調理室》



「全員揃ったね。ホワイトデーのお菓子作りを始めるよ」


「………何で俺が呼ばれているんだ?なんかデジャヴを見ているようだ」

「デジャヴではなく人を差し替えてのバレンタインデーの時と同じお菓子作りですよ」



そうエプロン姿のハノンが言った。



「………」

「だよな」



フルーレとフィルムは俺の方を見た。



「そのへんはやっぱりナナヤさんと同じく料理が出来るんか」

「レシピを見みて材料もあれば普通に作れるだろ?」

「それをしないんだよね。ここの島の女子は」

「ホントですよね〜学生の頃に教えているのに」

「フィルムとフルーレは作れるんか?」

「普通の料理なら作れるぞ。普通の料理ならな」

「ラタムは来ないんだな」

「今日はマジェリルカちゃんと秘薬作ってるからね」



忙しそうで何よりだな



「話し込んでたら作業が出来ないのでさっさと始めてしまいましょう。今年はどのような菓子を作るのです?」

「去年はナッツのパウンドケーキを作って好評でリピートされたけど今年はプリンアラモードにしたいなと」

「サニカ先生、欲望が出てるぞ」

「それだと簡単だし良いのでは?どうせ校庭に集まってまた食べることになるでしょうし」

「……それじゃ始めるか」




調理が開始されたが何事もなくつつがなく進み3時間後には大量のプリンが出来た。

そして味見タイムがやって来た。



「ふむ……普通に美味しいな」

「これなら問題なさそうですね」

「先生、そのバケツプリンはどうしたんだ?」

「今年作るお菓子に入れてくれとアスチルから渡された物を入れて作ったラブ専用の大きなプリンさ」



俺たちはバケツから出された大きなプリンから溢れる怪しい雰囲気をびんびん感じたが特に気にしないことにした。

ラブナシカさんなら大丈夫だろうと。



「何を入れたのですか?」



ハノンがそう聞いた。



「わからん」

「サニカ先生、調べなかったんか」

「…ラブなら大丈夫でしょ。何か盛られたとしても」

「アスチルからなら喜んで食べるんじゃね」

「だろうね」

「所でフィリム。お前はそのバケツプリンに何を塗ってんだ」

「情熱的な隠し味さ」



あの真っ赤な液体は……カプサイシン系統の奴だな。



「例の物を取りに来ましたよ」



アスチルが調理室のドアを叩きガラガラと調理室のドアを開けてやって来た。



「アスチル、もう少し待ってくれる?もう少しで終わるから」

「フィルムさんまたですか?毎年懲りずに凄いですね」

「お前は一体何と戦ってんだ」

「ラブ先生から参ったって言わせたいけど一度も言われたことないから、参ったと言うまでやり続けるのさ」



フィリムが赤い液体をプリンに塗り終えるとアスチルに手渡した。



「はい、サニカ先生が味付けしたからそこまで変にはなってないと思うから」

「今年はプリンなのですね、確かに受け取りました。では後は飾り付けするだけですね」



アスチルは大きなプリンを受け取るとそのまま帰っていった。



「あっ…なんの秘薬を入れたか聞きそびれた」



※皆は絶対に真似しないでください。ちゃんとした違法性のないちゃんとしたお菓子を贈り合おうね!




昼が過ぎると島の独身の女性たちが集まり既婚者は誰一人と来なかった……と言うよりもクレイバール島の大人組は殆どが外の世界に飛び出して居るために少ないのであった。

大人組の仲間入りしたシェルフィナたち独身の若い人と早くに結婚した島民のみである。






【クレイバール島】



《校庭》



「島に残っている既婚者はホワイトデーは来ないですよ。

夫側が昨日のうちに学校の調理室で作った料理で妻側をもてなしてるので来ないんです」

「そういうことなのね」

「だから独身の女性、もしくは独身の男しか来ないね」

「その割には大量にプリンが生産されたけど」

「それは…サニカの好みの問題だな…うまっ」



いつの間にかルウカ先生がテーブルと椅子を取り出して俺たちが作った大量のプリンを既に食べていた。



「もう勝手に食ってるし」

「相変わらず可愛いだよな〜ルウカ先生のこういうところ」

「この調子なら残らなそうだねえ」

「サニカ先生その両手に持ってる物は?」

「バケツプリンで作った巨大なプリンアラモードと巨大なプリンパフェだよ」

「プリン尽くし…」

「他にもマドレーヌとか作ってますので置いときますよ〜」

「相変わらず地球のレシピで作るお菓子は美味いですの」



ハノンとレシェットの両手で持ったバケットハットからマドレーヌなどのいい匂いが。

レシェットはマドレーヌを食べながら来た。



「それじゃテーブルと椅子とかも用意したし食べようか」



いつの間にかさらにテーブルや椅子が用意されていた椅子に皆思い思いの席に座った。

そして各々の近況を話し夜になるまで話し込んだ。





「夜になるとどの学校も雰囲気が出るよなー」

「学校は様々な物が集まりやすいからね」

「先生たち今から学校の屋上で過ごしていいか?」

「いいよ。ちゃんと戸締まりしてね」




先生たちはそう言い残すと鍵をキユクに渡して学校から去って自宅兼任の宿屋に向かったようである。






【クレイバール学校】


《屋上》



「大人になって見る景色って変わるもんだね」

「確かにシェルフィーの言うとおりですね」



前に見たときに比べると明かりを灯す家が少なくなり島の住宅地の方を見ると何とも言えない雰囲気ではあるが夜になると光りだす植物が在るためにそれはそれで風情がある。



「異世界を渡り様々な出会いもありますが…最近は転生者や移転者を拒否する世界が増えてきてますし」

「だな…転生者たちが「俺って最強じゃね?」って調子こいて世界を半分破壊したり悪さが目立ってるのもあるからな。

逆に剪定したり調停して整えたパターンもあってそういう世界ではその世界のルールに従えば過ごさせてくれるしな」



過ごさせてくれる世界にいる転生者はかなり強いらしく配下にも慕われていてかなり器が大きいらしい。

ハーレム作ってる輩もいるとの事である。



「お互いに話せる程度で話したら盛り上がって楽しかったですよ。この島は地球出身者が作り上げましたからね」

「それも異世界での醍醐味だな〜地球系列の転生者と話すのもな。話が通じない輩も居るけど」

「確かにな」

「世界は広いよ。世界の壁を越えられることを知っていると尚更ね」

「旅してると故郷が恋しくなるんだよな。フィリムはまた行くのか?」

「えぇ、いずれは家業を継ぐつもりですが」

「それでアンタたちは出逢いはあるのかい?」



シェルフィナが猥談の話に持ってきた。



「……確かに僕たちもそういう時期に入ってきますが…シェルフィナはもしかして?」

「あたいはもう既に幼少の頃から狙ってるのが居る」



シェルフィナは猛獣の様にふへへへとオーラを出している。



「あ〜……御愁傷様です。カイリさん」

「えっシェルフィナって昔から独身貴族のカイリさんを狙ってんの?」

「そうだぜ。幼女の頃からアタックしてたりしてたが相手にされてなかったもんな」

「それで進展はあった?」

「最近、あたいを見かけると逃げるんだよ。海の上であろうと物凄い速さでね」

「ふふっ…その光景が浮かびますね……皆さん知ってます?」

「何がだ?」

「ラタム、コレが居るみたいですよ」



その場にいた者たちは戦慄した。



「何だとっ!」

「地球人か?」

「どうでしょうか?ラタム本人から紹介されない限りはそういう色ごとを突くの禁止令がありますからね」

「最近付き合いが悪いと思ったら…そうだったのか」

「へぇ…」

「フィリム、駄目だからね?」

「わかってるさ(ちっ)」



今コイツ心の中で舌打ちしたろと皆思ったに違いない。



「ポーリア姉さんやヒペリカ姉さんたちは平気でしょうか」

「ありがた迷惑ですわ。キユク」



屋上の入り口の方を向くとポーリアさんやヒペリカさんが来ていた。



「出先から帰ってきたんだね」

「えぇ」

「ありがた迷惑って事はもしかして?」



ニヤニヤしながらフィリムがそう聞いた。



「昔からのフィリムってこうよねぇ。赤ん坊の頃はちょー可愛かったのに」

「やめてくれる?そういうことを言うの」

「なら言わないことですわよ?フィリム」

「くっ」

「ニヴァが言うにはあと十数年もすれば子供がワチャワチャしだすのが見えたらしいから」

「……ニヴァ姉さんの水晶占いはよく当たるからな」

「そうなったらそうなったで良いんじゃねぇか?」

「十数年もすれば母さんたちみたいになる可能性もあるのか…考え深いですね」

「あっそっか。もうそういう時期なんか」

「のわりにはお祖母様は元気なのよねぇ」

「確かに」

「そろそろお開きにしますか。時間も深夜を回ったし」




時計を見たフィリムがそう言い現地解散となり帰路に着きホワイトデーが終わった。









































【クレイバール教会】



《礼拝堂》



「おや、誰かな?こんな時間にやってくるなんて」

「――はサニカ先生が担当の日しか来れない」

「普段いる神父役のルウカには言えんか」

「言えない」

「ふふっ、それで今日は何しに来たんだい?懺悔ではなさそうだけど」

「実は――――――――のことなんだけど」

「…流石にこの話は神父役をやらせているルウカと花畑の妖精と呼ばれ始めたカーウェンには言えないねぇ。

わかった、コレばかりは私が引き受けよう」

「ありがとう」

「そうか…もうそんな時間が経ったんだね」

「サニカ先生、なんかお祖母ちゃんみたいだぞ?」

「かれこれもう三千年は生きてるから余計かもね。そろそろ家に帰って寝なさい。明日がキツイぞ」

「うん」



とある人物がクレイバール教会から出たのを確認すると隅に隠れていたハノンがやって来た。



「もうこの時期が来ましたか」

「そうだね」

「ここの住民たちは地球の人々とは違いとてもゆっくりと年を取りますがなんだか感傷に浸りたくなります」

「わかる」

「………そろそろボクも恋のキューピッドに」

「やめなさい」

「えー」

「子供たちの色ごとに首を突っ込まないの」

「誰と誰がくっつくか気になるじゃないですか」

「今回は島民同士でくっつくことはないだろうねー」

「白虎も外から連れてくるんですか?」

「白虎はもともとこの島で育ってないし生まれも育ちも地球人に分類されるから島民同士の婚姻に含まれないよ」

「なんですと……!ボクはてっきり含まれると思ってました」

「白虎から渡されたナイトメアの迷宮のヌシからの手紙通りなら結ばれる相手は決まってるけどね」

「えっ誰ですか!」

「気づかないのであればそのまま見守ってなさい。今回は確実に結ばれないと次がないみたいだから責任重大だねぇ」

「それこそ恋のキューピッドを!」

「後に生まれる子供を抱っこしたければやめなさい。抱かせてくれなくなるよ」

「はい。やめます」






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