大筋を変えたこの地球の日本の歴史
【火天の宿屋】
《客間》
「喫茶店のマスターが何でここに…」
「久し振りですね白虎君。元気そうで良かった」
「…至楽。総理の仕事はどうしたんだ?」
「えっ」
俺はルウカを凝視した後に店長を見た。
「喫茶店のマスターが総理……えっ」
「ははっ、白虎君には言ってなかったね。悪い悪い」
「………………………」
俺はフリーズした。
「春兎は言ってなかったんだね。
ボクは前世の記憶を持った転生者でこの地球でハーフドラゴンとして生まれ長生きだからバレないように何回か名前を変えて日本の政治を回してるのさ。そして東京で首相官邸にいるのはボクの写身さ」
「…………………」
「白虎君は今までの関わり方でよろしくね」
何がなんやら理解したくないす。
「だから僕たちクレイバール島で習う地球とは違う道筋を進んだ地球なんですね」
「おや、澄谷ツインズはこちらの地球ではない方の地球の知識を広めたんだね」
「うん、こっちの地球は特殊すぎるからね。とある方法じゃないと行けない地球だから」
「だから俺はクレイバール島で習う日本史に違和感があったんだ」
「ふたりが創造した世界で教えている地球の歴史は日本が負けた本筋の歴史だからね。
そう思うとやっぱり色々と変え過ぎちゃったなぁ、少し話をしようか?」
喫茶店のマスターによると【この地球の日本】は転生者たちが世界を巻き込んだ戦いが起きる前である戦前に大勢生まれたらしく本来とは大きく歴史の流れを変えてしまった世界線の地球ゆえに特殊である方法からじゃないと来れない…俺はそんな地球で生まれたのか。
先生とルウカ先生は喫茶店のマスターがこの地球に転生する前の違う地球の生まれだそうで社会人の時に【例の宿屋】に泊まってからの知り合い。
そして喫茶店のマスターはその地球ではちゃんと寿命で亡くなりこの地球に転生して戦前の日本でぶらぶら歩きしている先生たちと再開したそうである。
そして戦争を回避したいな〜と思っていたら他の転生者たちと出逢い歴史の流れを大筋を変えてしまったそう。
「本来なら世界規模の戦いに参戦するはずだったけどボクや他の転生者たちと共に日本軍を掌握して戦に参加しなかったんだよ。参戦したら負けるのは知ってたからね」
「へぇ」
「それでこの世界線の日本はどのようなことになっているのですか?」
地球に同行したキユクが聞いた。
「ボクたちは中立であることにしたんですよ。
そして中立の立場をとっていても他国が侵攻してくるかもとボクたちは領土を守ることに集中したんです」
「それで結局はどうなったのですか?」
「日本を囲む周辺の国や海を越えた大国が日本に向けて宣戦布告してきましたが、こちらには未来の技術者が大勢転生してきていたから【そういった物】を作って防衛に当たったから逆に「何だ!その兵器は!」と言われて直ぐにそれぞれの国の重要な場所も未来で知っていたので兵器と言っても非人道的な兵器は使わずに拠点をその日の内に制圧し、侵攻して来た国を黙らせ無条件降伏させてました」
「………」
「だからこの世界の日本は海外からの影響は受けてないけど、未来の技術者の転生者たちのおかげて西洋と東洋が混ざったような建物が昔からあるのです。
そして降伏させた国の領土を取っても面倒になるから侵攻して来た国に関しては今後いっさい日本に関わらせない事を条件に取らなかったんです」
「そんな日本があるとはやはり地球系列は面白いですね」
キユクは喫茶店のマスターの話を聞いて興味津々としていた。
「それで外の国はどうなってるんですか?やはりスパイとか入ってきて技術が奪われたりしてますか?」
「その辺も問題ないですよ。
今でもこの世界の日本は遥か先の未来の防衛システムのおかげてスパイを弾いてるし、日本に来るためには船か飛行機で入るしかないからそう簡単に来れないのでね」
「凄いですね」
「えぇ、知識は凄いですよね。スパイを送り込んだ国には平和条約の時に組み入れたスパイ禁止法に基づき強制送還し送り込んだ国に罰金をさせてます」
「平和的解決ですね」
キユク、ツッコミがズレてる…。
「よくタイムパラドックスが起きませんね?」
「タイムパラドックスの影響を受けているではないですか」
「「「えっ」」」
「白虎君は昔から様々な事に巻き込まれているでしょう?それがタイムパラドックスの影響です。白虎君たち以外にも巻き込まれている猛者が居ますけどね」
「アレか!マスターたちが犯人だったんかい!先生は知ってたな!?」
「残念ながら初耳だよ」
それだけ言うと先生はルウカ先生を見ている。
「あれ?オレ話してなかったけ?」
「……亀稲の感は当たってたと言うことだね。亀稲の感を信じてよかった」
「どういうこと?先生」
「白虎だけは私とルウカと同じ世界で宿り生まれているんだよ」
「「えっ」」
えってマスターもか。
「昔、亀稲に言われて白虎だけは私たちが生まれた世界で誕生させたいと言われてね。春兎と美鶴を私たちが確実に生まれた地球にしれっと送り込んだんだよ」
「………だから白虎君だけは巻き込まれても瀕死になると現実世界に強制送還されるのですね」
「至楽たちからして都合の悪いことがあるのかい?」
「いいえ、都合の悪いことなどありませんよ?……さてそろそろボクも首相として東京に戻らなければ。
澄谷ツインズあとのことはよろしくお願いします」
「「あぁ」」
喫茶店のマスターは歩きながら手を振り外に出ると黒塗りの高級車が停まっていてマスターが乗り込むと去って行った。
「先生、俺ってこの世界では異質な存在だったの?」
「異質ではないよ。この世界が異質なんだよ」
「ハッキリと言いますね。サニカ先生は」
「それはそれさ。白虎の家族もこの地球の生まれではないよ、世界情勢が落ち着いてる地球系列を選んで暮らしバレそうになったら移動してたのさ」
「おっふ」
「時空がとかの影響はないから安心してね」
「…うん。それで隆太郎たちについて話してくれるんだろ?」
「そうだね、まずはどこから話そうか…」
先生の口から地球で起きた3年間の話を聞いて俺は心臓がドクドクと脈を打ち落ち着かなくなった。
「先生、隆太郎たちが家族ごと行方不明になったて本当なのか?」
「そう至楽から聞いて、行方不明になった場所に行って調べたからね」
「場所は?」
「白虎を連れていけば確実にその空間に入れるだろうからその場所まで案内するよ」
「先生!」
「そこに行くまでにやりたいことがある。軽くこの火天の宿屋でパルクールアクションを慣らしておきたいんだよ」
「どうしてパルクールアクション?」
「私と悠珂でその場所に向かったんだけど一筋縄で行かなそうなのがしたから、皆が同じ場所に飛ばされるかはわからないし白虎ひとりでも活動できるようにしてもらいたいんだよ」
「!」
「命を捨てさせに行くわけには行かないからね」
「僕も着いていきます」
「ありがとキユク。多分だけど今回は譜月たちの力は借りられない確率が高いからキユクもパルクールの練習をして地球での体を鳴らして欲しい」
「はーい」
「ルウカもだからね?」
「わかってる」
「それじゃ始めようか」
それぞれの部屋で動きやすい服に着替えてから【火天の宿屋】にあるパルクールが出来る部屋に向かい体を慣らし練習をした。
先生からコレだけ出来れば大丈夫とお墨付きを貰い、サイドバックを渡され装着させられてからその場所に向かうと深い霧に包まれるとそこはもう元いた地球ではなくなっていた。