200年の変化
【クレイバール島】
《カフェ・ド・ラブリー》
「全快と卒業おめでとさん、白虎」
「うっうん。フルーレ?だよな。ありがと」
俺を待っていたクラスメイトたちと共にひと足早くクレイバール島での卒業式が開かれ今日、卒業した。
そして卒業した祝としてラブナシカさんのカフェでお祝いすることにした。
そして俺はカウンターテーブル席に座っているが、俺の左側にはガタイが良くなったワイルドイケメンのフルーレが座っている。
「…………………………」
「おや?白虎がだまってしまったね」
黙るわ…フィリムなんて美丈夫になりやがった。
「そりゃそうでしょうヨ」
「ラタムはそこまで変わってないから安心だ」
「…ホントにこいつら変わり過ぎだよネ。地球から戻って来たときにビックリだヨ」
ラタムは特に変化なくほぼ眠る前の姿のままで一安心である。
「ラタムの場合はビーストモードとの差なんでしょう」
「学生の頃のビーストモードはそこまでデカくなかったが今は物凄くデカいもんな」
「解せなイ…」
「まぁラタムが言うように図体だけはデカくなったからね」
俺の右側にいるのは背が伸びグラマーになったシェルフィナでボン・キュッ・ボンではなくドン・キュッ・ボンの麗しき美貌の女性となった。
「………シェルフィーも変わりましたよ」
「何いってんだい、キユクも変わったじゃないか」
「何処がですか!僕も昔のちんちくりんのまんまですよ!」
「魔力の質も上がってるし変わったじゃないか」
「それはそうですが……何だかはぐらかされたような気がします…」
「キユク、アタイのお胸を揉むか?」
ブフォッとその場に居た俺を含めた男児(ラブナシカさんとアスチル以外)は全員むせた。
「励ましになってません!」
「シェルフィナ、ココはスナックじゃないわよ?」
「ツッコミがズレてる…」
そのシェルフィナの隣には高校の時より数センチぐらい伸びたであろうキユクがちょこんと座っている。
「シェルフィーはドン・キュッ・ボンになりましたけど僕は背が伸びたぐらいですからね!」
「キユクはまずこれ飲んで落ち着きなさい」
相変わらずの赤いフリフリのエスロンを着たラブナシカさんがヤレヤレといった感じで飲み物を作りキユクに出していた。
「ラブ先生も何か言ってくださいよ」
「んー…特に言うのとはないわ。体の成長は人それぞれだしキユクの家系はスレンダーが多いから」
「くっ」
「ラブナシカ、果物の材料がなくなったので父さんと母さんの所に行ってきます」
「待ってアスチル。気をつけて行って来るのよ?」
「わかってますよ」
アスチルはラブナシカから抱擁を受けて元気よく店から出て行った。
「全く、アスチルに関して本当に過保護だな」
「当たり前じゃない。あの子が死んだらアタシ狂うわよ」
「なにをいってるんだい、アスチルはラブ先生の寵愛の使徒になったから半永久的に生きるじゃないのさ」
「そうだけど、いつまでも一緒にいたいのよ」
「しつこいと逃げられるよ?」
「ちょっフィリムたら失礼ね。そんなことはないわよ」
「どうだか?」
「貴方たちもいずれ伴侶を持てばわかるようになるわよ〜」
クレイバール島の同級生たちと話し合いをしているといつの間にか深夜になっていた。
そして報告があると言われ内容を聞いた。
旅に出ていた工務店の次男【ヴィレルドさん】が異世界からお嫁さんを連れて帰って来たが報告して直ぐに新婚旅行と言ってお嫁さんを連れて旅に出た。
工務店の長男【アヴィレーンさん】はとある異世界に残り相手の方の婿に入ったそうである。
俺は関わり合いがなかったから知らない人だがヴィレルドさんは陽気な人なので直ぐに仲良くなれるんじゃないかとフルーレから説明があった。
そして【星の泉】に植えてあった命樹だがその大樹から生まれた妖精である島を飛び回っていた古妖精のジュナーテが「この島で蓄えた生命の力を必要とする世界へ」と自信の分身である命樹を妖精の魔法を使い引っこ抜き大樹を持っての旅立っていったそうである。
島が静かになったと寂しそうにラブナシカさんが言った。
そして先生が懲りずに今度は結晶樹の苗を植え、どんな結晶樹に育つか楽しみにしているそうである。
そして島の大人たちは子供から手が離れた為に夫の旅に同行しに向かったり、夫婦で異世界の旅行を楽しんでいるそう。
俺の先祖のロルスさんはロッカさんを探しに旅に出たそうである。
そして話は終わりに近づきラタムとキユク以外は明日から時空を越えてさらに経験を積むために異世界に旅に出ると言ったので家に帰っていった。
今日はコレでお開きにすると言いそれぞれが家路についた。
今日は先生から許可を取って居るので夜ふかししても怒られないので俺は火天の宿屋に戻り男湯に向かった。
体を洗い湯船に入りボーとしていると混浴風呂から先生とルウカ先生の話し声が聞こえた。
俺は聞き入ることにした。
「数多の世界の魔法使いが至り時空を越えられるようになると最初に探す世界があるなんてな……俺は初めて聞いたが」
「ルウカは魔法に関してそこまでじゃないからね、それにこういった話はあんまりしないから余計かも」
「【大いなる始まりの魔法使い】など聞いたことないな」
「魔法を極め至らない限りは存在すら気付かないからねぇ…【大いなる始まりの魔法使い】に関しては」
「そんなのが居たのか…知らなかったな」
「魔法を極めないとそもそも知れないからね」
「まぁ…オレはそこまでじゃないからな」
何だか難しい話をしてるな、途中から聞いた話だからよくわからん。
「その【大いなる始まりの魔法使い】は生涯を終えてさらに魔法を極めるために数多の世界に転生しているって話さ」
「サニカはその【大いなる始まりの魔法使い】が生まれた世界に行ったことがあるのか?」
「うん」
「なに!」
ザバァと風呂から勢いよく立ち上がる音がした。
「迫って来ないでくれる?」
「水着を着て入ってるぞ?」
「そのまま着水してくれる?そうしないとこの話はここまでにするけど?」
直ぐに風呂に入った音がした。
「それでお前はその世界に何をしに向かったんだ?」
「【大いなる始まりの魔法使い】の墓標に花を手向けてきた、それだけだよ」
「どうやって見つけ出したんだ?」
「魔法を極め至れば簡単な道がわかるようになるだけだね」
「最近か?」
「残念ながらナナヤとハノンの3人で旅してた時には行ってないよ。魔法を極め至った次の日くらいに向かった」
「………だとするとかなり前だな。今でも行われているのか?」
「どうだろう、私が行ったのはかなり前だからね。結構前だと蒼たちも手向けてきたと言ってたね」
「蒼もなのか」
「今の私に行けと言われても無理だから。魔法を一度は極め至ったけどその魔法は全部返しちゃったし。
今使っている魔法はあの時の【至竜】が私にもう一度だけだとチャンスを与えてくれて私が作ったオリジナルの魔法だからね?」
「守護していた世界がどうにもならなくて【堕竜】になってしまった【至竜】を100人で討伐した時か…オレもオリジナルの術式を使っているが…極める気はないな」
「それが良いよ。魔法を極め至る一歩手前までは良いけど。
今はもうそこら辺の記憶も無くなっているけど思い出そうとすると嫌な感じしかしないから」
「そうか……それであちらの地球に行くのか?」
「うん、白虎を連れて帰る約束だからね。明日に備えて先に出るからね」
先生が出たであろう音が響いた。
「……オレもサニカに着いていこうか。レシェットとハノンは今回は留守番だな」
…………ぽつと言った言葉を聞いて俺も明日に備えて風呂を出て部屋に向かい寝た。