ナイトメアの迷宮
【無敵の宿屋】
《食堂》
「………だいたいの事は理解しました。サニカ先生ご苦労様でしたな」
「コレからアジサイ達にも一応この島の結界の状態を確認して貰うけどね」
サニカは白虎たちに人造悪魔たちの処理をさせ、3年生たちによって少しずつ 少しずつ壊されていた結界の修復をしていたのであった。
クレイバール島に戻ってきた大人組と話し合いをしていた。
「所でサニカ」
「…ラビリア帰ってなかったんだね…」
「まだ帰らないわよ、こんな風に人が少なく情勢が安定している所はなかなか無いもの。
貴女、キグルミ着てなくて大丈夫なの?それにいつもよりお喋りだし」
「ここで聞くか…ラビリア」
その場にいた大人組は?としていた。
サニカはなんとも言えぬの雰囲気を出していた。
「あぁ、お前達は異世界でのサニカの本来の姿を知らないんだったな」
「何かあるんですか?」
「お前たちに関しては生まれた時からが知ってるからコミュニケーションがちゃんと取れるんだが……全く知らない世界に行くとサニカは【犬のキグルミ】をずっと着て慣れるまでは無口で過ごしてるんだ」
「えっ」
「慣れると今みたいにキグルミを脱いで喋るんだが」
「へぇ」
「…………………」
「サニカ先生にはそんな一面があるんですねぇ」
「お前たちが居ると最初から異世界でも普通に喋るけどな」
「でもなんとなくわかる気がする」
「……サニカ先生、子供達に関して本当にありがとうございました。では我々もこの島に残っている子供達の手伝いに行ってきます」
「……………うん」
それだけ言うと大人組は無敵の宿屋から出て行った。
「………さて、ルウカさんや」
「なんだ?サニカよ」
「君は「親しき仲にも礼儀あり」って言葉を知ってる?」
「あぁ、知ってるぞ」
「知ってるわりには良くもまぁ…」
「あら気にしてたのね」
「本当の事だろ?それにもう一つの事は言わなかったんだから許してくれよ」
「…………………」
俺達が島の清掃や修復をキユク達としているとクレイバールの本物の島民たちがやって来て合流し急ピッチでゴーレムを召喚して建物の修復が進められ夜の8時までには作業が終わりその日は終わった。
そしてクレイバールでのいつもの日常が戻って来た。
そして次の日。
【クレイバール学校】
《高等科1ー1の教室》
「お前ら学校を卒業したらどうするか決めたか?」
「僕は更に勉強して知識を蓄えながら研究したいテーマを探す事です」
「家業を継ぐにしてもやらなきゃ行けないことがあるので地球に赴き医者の国家資格を取る為に勉強だヨ。
そして地球で経験を積んでくるヨ」
「まぁ確かにラタムはそうだな」
「自分は一人旅がしたいと思っているよ。見聞を広めるために」
「アタイもだよ」
「白虎はどうするんだ?」
「俺も旅したいがフルーレ達みたいには鍛えても強くなれなかったからな」
「そこに関しては種族としてのステータスの差でしょうか?」
ワイワイと教室で話し込んでいるとガラガラと教室のドアを開けジュナーテがやって来た。
「あら、揃って居るわね」
「ジュナーテか」
ジュナーテは遂に成長期が終わり大人の妖精になったが、相変わらず小さい子供サイズの方が過ごしやすいからと言って子供サイズで行動している。
なので見た目は幼いが喋り方も達者になっている。
「やりたい事とか見つかったの?」
「今、皆で話し合ってたところさ」
「一時期だけどここに居る半分がクレイバール島から出そうで寂しくなりそうね」
「一度は外の世界を巡りたいから」
「まだ時間はあるからゆっくり決めるんだぞ」
「はーい」
「白虎はコレからどうするんだ?オイラ達と勉強するか?」
「いや、コレから先生と話があるから無理」
「…そう。ではまた明日」
「あぁ」
「キユク、フィリム、フルーレ、シェルフィナ、ラタム、ジュナーテは夜遅くまで学校に残らないで帰るんだぞ?」
「わかってるよ。ルウカ先生」
「白虎はさっさと行ってやれ」
「はい」
俺は皆に挨拶して火天の宿屋の方に戻ったが先生は散歩中看板をドアに掛けていて居なかった。
先生が来るまで地球の方の高校の宿題や課題を書いて待っていた。
暫くして先生がやって来て俺が座っているテーブルの表面側の椅子に座った。
「先生、それで話ってなんだ?」
「最近悪夢を良く見ると言ってたでしょ?」
「言ったな…うん」
「原因をファムロスとナオハルの協力のもと調べて貰ったら慣れない土地での生活で精神がすり減っているからだって」
「そうなのか」
「本当にキツイようなら皆に説明して今すぐにでも地球に戻るかい?」
「…いや、戻らない」
「わかった、地球に強制送還はしないけど無理しないでね」
「うん」
「あと何かある?」
「……一つだけある」
「何か聞きづらそうにしてるけど?」
「先生とルウカ先生は地球人だよな?」
「そうだね」
「俺も地球人だけど先生達はどうして地球人なのに強いの?ある程度この世界でレベルが上がったって言われてもそこまで変化ないし…少し気になって」
「…そういうことか……理由はいくつかあってまずは不老不死となってそこらに居る人間とは違い永く生きて体や心を研鑚していたし。
さらに前提として私とルウカは何回か転生していてその人生経験やその人生で魔法をある一定まで極めてから魔力やらを引き継いでいるからだね」
「そもそも普通に生活している地球人ともともと立っている場所から違うんだな」
「うん」
「それと研鑚していたってどういうこと?」
「これ以上やったら【本物のバケモン】って呼ばれるようになっちゃうから抑えてるんだよ。まぁ魔法に関しては精度を高めたり今も鍛えているけどね」
「それくらいはな」
先生と雑談して過ごし寝る時間となったから部屋に併設されている風呂に入ってベットに入って寝た。
【※※ト※※の迷※】
《無※と虚※※※る街》
「ここは何処だ?」
俺がそう呟いても誰も返事はない。
「この町並みは何なんだろう?どこかに似てるんだけど…」
パジャマ姿でウロウロしている場所はヨーロッパの町並みに似ている場所だが、どこか違い深い霧が掛かっている。
周りを見渡すと場違いな様々な時代の服を着た人が皆とても嬉しそうに生活をしている。
「ヨーロッパの町並みに十二単かい、なんでやねん」
この場で生活している人は俺を見ても特に気にすることなく自身の生活をしている。
襲われることはないようで安心だ。
「ホントにここは何処なんだろうな…夢にしては頬を抓ると痛いしな」
俺は途方もなく歩き続けてもこの街の出口は何処にもない。
途方に暮れていると会った事もないのに何だか懐かしいと思える女性が現れ俺を見て驚いていた。
「………まさか…な……あぁ、本当に懐かしい……どうして彼が?……いや、我も彼も本来なら既に生まれ変わっている筈なのに…まさか我の自我が何かの力で呼び出されたのか?……いや、それはあり得ぬはずだ…それにココは…」
「さっきから何を言っているんだ?」
「あぁ、すまない。本当に懐かしくてな。ソナタ、ここにはどのような理由でやってきたのだ?」
「…………ただ寝たらここにって感じだ」
「そうか、偶然にも迷い込んでしまったのか」
「何か知っているのか?」
「あぁ、まずは自己紹介をしないか?……我の名はカ…ェ…ネと言う」
「ん?良く聞こえない…」
「………だとすればやはり偶然にも入り込んでしまったか。我の事は偽名だがカベルネと呼ぶが良い。貴公の名を聞かせてもらおう」
「俺は白と呼んでくれ。偽名を使うって事はここでは実名は不味いみたいだから」
「あぁ、それが良かろう」
「カベルネ。ここは何処なんだ?」
「ここは数多の次元と空間と時間が混じり合う【ナイトメアの迷宮】と呼ばれる【次元の強者】ですら簡単には入る事が出来ぬ【全ての世界の夢と妄念が集まる次元の狭間】だ」
「………何かヤバそうなんだが」
「この【ナイトメアの迷宮】は下手な事をしなければ大丈夫だ。だが抜け出すにはとてつもない程の工程を挟まなければならない厄介な場であるがな」
うわーマジかーと言う表情をしているとカベルネは笑った。
「相変わらず、大なり小なり巻き込まれているようだな」
「なんか変な感じがする。カベルネは俺の事を知ってる感じだし」
「それは……まずはナイトメアの迷宮から抜け出す為の作戦を立てないか?」
「ひとまず協力する。あんたからは嫌な感じがしないから」
「ありがとう、まずはこの街からは離れるぞ。この迷宮を管理している厄介なのに見つかると面倒だからな」
俺はカベルネに案内され霧の街を出ると近くに村があった。
その村は日本の建築物が建っていて異世界の村の筈なのに違和感バリバリである。
そして村の中心にある家に吸い込まれて行くように入っていったのを俺は追いかけると家の中には妖艶な魔女の格好をした女性が居た。
【異界の※※※フォ※ス※村】
《とある一軒家》
「あら、カ…ェ…ネじゃない………こんな所で……どうしたの?」
「スマンがカベルネと名乗る様にしているからそう呼んでくれミリー……で合ってるか?」
「うふふ……正解よ……わかったわ……わたしの同士」
そしてカベルネからミリーさんの説明が入った。
「彼女はミリー。凄腕のハイエルフの魔女だ」
「始めましてね……まさか……とは思うけど………こんな事が起きるのね……ふふふ………物好きで死した後に自らこのナイトメアの迷宮に永い時、入り浸っている魔女よ……」
「本当に大丈夫なのか?そこの女性」
「あぁ、大丈夫だ」
「ふたりして本当に面白いわ…………カベルネの元……としても………カベルネはどこまで覚えているの?……わたしの魔力を辿って来たみたいだけど……?」
「すまないがあまり思い出せん。我自体がここ限定で作られた紛い物だからかもしれんから」
「そう……」
そう聞いたミリーさんは少し悲しげだった。
そしてカベルネがこれまでの出逢いとこのナイトメアの迷宮から出たいと話した。
「…そう……わかったわ……協力するわ…そうしないとあの人たちに怒られそうだし……この迷宮からすぐに出るならこの迷宮のボスである【夢魔王フォルモフォス】を倒せば出れるけどオススメはしないわ……強さの次元が違うから……」
「でしょうね」
「もう一つは……時間が掛かるけど安全に出られる方法が一つ………この迷宮を1から巡ること……この迷宮に囚われている者を見たとしてもそれを嗜める事なく……達観的に巡るの」
「それなら俺でも出来そうだ」
「人の生を傍観して見るのも結構キツイものよ?……それが悲しみに囚われている者達を見る時は特に……早く目覚めたいなら直ぐにでも巡りなさい…カベルネはお目つき役として付いていって……カベルネが呼ばれたってことは多分だけど……そういう事だから……」
そのカベルネは複雑そうにミリーさんを見ていたが。
「ふふふ………でも今のアナタを見てわたしは安心してこの迷宮でまだまだ過ごせそうよ……」
俺はミリーさんからこの迷宮を出るために必要な物を受け取り俺はカベルネを引き連れて一つ目の場所に向かった。
『ミリー、彼に対してあの程度の挨拶で良かったのかい?』
「えぇ……わたし達は既に肉体の檻から解放され別々の道を選んでいるから……わたし自身もあの人の運命を狂わせた人物の生まれ変わりだったから……死してから離れて良かったわ……でも貴方も意地が悪いわね………フォルモフォス……わたしにあんな事を言わせて1番大変な巡りをさせるなんて………あの人達に怒られるの嫌なのだけど……?」
『いい加減、あのふたりの絡み過ぎた【運命の糸】を解き本来あるべき道に紡ぐためだよ。
因果も元【観測者】によって綺麗にされているし始まりの頃の様にはならないよ。
それに僕が管理しているこの次元のナイトメアの迷宮は少々特殊だから……大丈夫さ。
何かあれば手助けするよ、ここの主である僕がね』
「だといいんどけど……」
『それより、僕と永久にここに囚われる件について考えてくれたかい?』
「その事について………答えは出たわ………」
『それで?どうなんだい?』
「答えはー」




