人造悪魔が現れた
【クレイバール学校】
《講堂》
「それで怨霊樹を作ったのは誰なんです?サニカ先生」
「フィリムは誰だと思う?」
「質問に質問で返すのは卑怯じゃない?」
「フィリムの方が正論か……は」
先生が話しかけている最中にハノンが急いでやってきた。
「サニカ!子供達!」
「ハノンどうしたんだ?そんなに急いで」
「3年生達が!」
「姉貴達がどうしたんだい?」
「宝物庫から【怨念の珠宝】を使い、ルウカを人質に取って広場で暴れてるんです!!」
「えっ」
その場の空気が凍った。
「アジサイ達は?」
「【怨念の珠宝】の力が町に影響が及ぼないように結界を張ってます!それで影響を受けないレシェットが力を開放して3年生達と力の削り合いをしてます!」
「3年生達全員がやっているのかい?」
「いいえ!」
「姉さんっ!」
キユクは動揺して手に持っていた本を落とした。そして直ぐに教室から俺以外のクラスメイト達がドタバタと講堂から出た。
「白虎は場合によっては宿の方に今から戻すよ」
「いや、付いてくよ」
「ならコレを腕に装着して置いて。私でも守り切れなかった時の為に役に立つから」
「先生…」
「何だか最近になって起こりすぎてる。…忙しくなりそうで嫌になる」
「先生は急がないのか?」
「…急ぎ足で行くよ」
先生が先頭で急ぎ足で走り俺はその後ろから付いて行ってハノンが俺の後ろから付いてきている。
学校の門を通り抜け島の東の地区を抜けて中央地区に向い広場近くまで付くと島長様のアジサイ一家が結界を張って踏ん張っていた。
キユク達も結界の外側から広場で行われている戦闘を見ていた。
「アジサイ、どうなってる?」
「何が何やらわからんですわ。突然3年生達が体自体が変化したのですぞ」
結界が張られている内側で俺には見えないが激しい戦闘が行われているみたいである。
「アレは最上位の人造悪魔だね」
「人造悪魔?」
「そう、人造悪魔。人が作り出した悪魔だよ」
「サニカ先生!」
「焦らない。人造悪魔に本物の最上位の悪魔が負けるとは思いたくないけど一応用意しておこう。
子供達、【ひかりの矢】の作り方は知ってるね?レシェットから結界を解いていいと合図が出たら一斉に矢を当てなさい」
「本当に効くのですか?」
「もしコレが効かないようなら……手遅れだよ」
手遅れだと先生が言った瞬間に空気がかなり重くなった。
それから数分の時間が経つとレシェットから合図があったらしくアジサイさんが「今から解くからね!」と大きな声を出すと結界が無くなった。
結界が無くなると黒いスリット入りのドレス姿の漆黒の角が生えた女性が人造悪魔らしき者達を縛り上げ、取られていたと思われる真っ黒いオーラを放つ宝珠を手に持っていた。
そして一斉にひかりの矢が放たれたがレシェットと呼ばれている女性はスルリと縛り上げていた場所から離れルウカを確保すると距離を取り先生の元に向かった様である。
俺からすると瞬間移動にしか見えない。
そして放たれた矢が人造悪魔達に次々と当たりそこから煙がモクモクと出て少しずつ 少しずつ3年生達に戻って行った。
キユク達含めてそれぞれの家族が3年生達の元に向かいすぐさま病院に向かった。
「賀実、この宝珠は今回の件の足止め料としていただきましてよ?」
「君が飼いならせるならね。もし君から瘴気が流れるようなら取り出すからね?」
「構いませんわ」
それだけ言うと宝珠を飲み込んだ。
「……所でトエルレジア。君がここにもう留まる必要はないのになぜここに留まっているんだい?」
「…………悠珂に関しては直ぐに目が覚めるでしょう。わたくしはコレでまた眠りにつきましてよ」
先生の質問に答えることなくさっさと眠りに入っていった。
そしていつものレシェットと呼ばれているメイド服を着た機械人形の姿になった。
「今さっきの事を問いかけるといつも無視されるんよね」
「…悪魔ってもっとこう…高圧的だったり偉ぶってたりしてそうなのに眠りについている悪魔は違うんだな」
「元魔王だというのにね…」
「えっ」
「さて、そろそろ私達も3年生達の様子を見に行こうか」
先生はルウカ先生をその場に放置……することなく一応アイテムボックスからベットを取り出し浮かべるかたちでそのベットに運んで寝かせた。
そして3年生やその家族がいる場所に向かった。
元に戻ったのはいいが3年生の様子を見ていたこの島の医者でラタムとメルファ先輩の祖父のファムロスさんがなんとも言えぬ表情をしていた。
「体に異常はないガ…意識が何をやっても戻らぬナ」
「ファムロスさん!」
「慌てるナ。慌ててもなるようにしかならン」
「眠りから覚めないかい?」
「サニカ先生の方でも見てもらっていいですかナ?」
「わかった」
先生は3年生達の体に手を当てて調べていたがコチラも特に異常はないと判断した。
「呪いやらとかは特にない。本当にただ寝ているだけだね」
「……頬を引っ叩いたら起きるか?」
「刺激与えても無駄じゃナ。意識自体が深い所に入り込んでしまっているからのウ」
「目覚めるまで待てと言うことか?」
「そうじゃろうナ。まっ目覚める時は直ぐに目覚めるサ」
と余裕な態度をしている時にメルファ先輩とルニス先輩が目覚めた。
「いっ……て……あれ?オレは何を…」
「ルニス、目覚めたの?!」
「なんだよ…母ちゃんかよ」
「ファムロスさんっ!ルニスが目覚めたよっ!」
「コッチもじゃヨ」
「……何で全島民が集まってるのヨ…」
「お前達が何者かによって人造悪魔の姿にさせらレ、ルウカ先生を人質に取られていたからダ」
「えッ……そうなノ?」
「メルファ、ルニス。目覚めたばかりで悪いけど何があったか思い出せる範囲で教えてくれる?」
「えート……確カ…」
午後の授業がルウカ先生による基礎体力の底上げ授業だった為に休み時間からメルファ先輩、ルニス先輩、レフィ先輩、ナリノ先輩、アンエルタ先輩の5人で先に【クレイバールの浜辺】に来て砂浜に何らかの仕掛けが仕掛けられてないか調べていた。
特に何もなく授業が始まりルウカ先生も来たところでマコト先輩、ピリア先輩、ソウビ先輩だけがいつまで経っても現れず、何かあったのかとざわめ居ていた時に黒いオーラに包まれた3人が現れた。
そして直後にメルファ先輩達に攻撃を仕掛けてきて逃げようとしたが内側から結界を張られ逃げられなくされ6人で取り押さえようとしたが、ありえない程の力で返り討ちに遭いそこから意識が飛んで今の場面になったとの事である。
「ルウカ先生が居てこの結果だったってことかい」
「そうなるね」
「……んー…学校の大樹もモンスターに変化させられていたし何かこの島で起きてるのは確かだね……目覚めさせたいなら方法はあるよ」
「あるのですか!?」
「うん、厄介なの呼ぶことになるけども」
「どういう意味で厄介なのです?」
「呼ぼうとしている輩は実子が100人以上いる魔女さ」
「えっ」
「渡り歩く異世界で男とー」
先生が何かを言おうとしていたがルウカ先生がその口を封じた。
「その魔女はビッチではないと思いたいが。気に入る男が見つかるとその世界で100年過ごし子供をポンポコ儲けて気に入った男が天命を終えるまで過ごし、産んだ子供に関しては自分の秘密を話してから異世界を出てを繰り返してるから子供が沢山いるのだよ」
「復活した…」
「ルウカ先生達とは逆なんですね…」
「だからといって手当り次第手を出すことはないから呼ぶとしても大丈夫だと思いたい」
「……なら呼びましょう」
「全員いるし一応確認する。呼んで良いと思う人」
俺以外の全島民は手を上げた。
「なら呼ぶか」