罪人ルストの幸運と覚醒
氷極の牢獄
「俺は…このまま…凍え死ぬのか?……助けて……まだ死に…たくない…」
震えが止まらねえ…足と腕の感覚がない…無理矢理の延命によって生きながらえさせられている…どうして…こうなったんだ……勇者に選ばれて…それから…
「本当に居ましたよ…」
「誰…だ…?」
「私は魔神教会の司祭をしている者です…あなたを救いに来ました」
「!」
「私たちの仲間になってくださるのならここから救って上げましょう」
「……俺は…」
「どうしまー
『【クリムゾン・ウィプス】』
「この魔法は!?」
『よう変態元気にしてたか?』
「麓の村の狂犬だと!」
『お前たちの邪魔をするにはもってこいな人選だろ?こいつらは使わせないよ?』
「どうしてバレた!」
『危険を知らせてくれた後輩がいてね…その他にも後輩たちの中でも実力派を他の場所に送っておいたから好きなだけ暴れると良いよ』
「この者を連れていかないと顔向けが出来ませんが…仕方ないですね」
『いい加減諦めなよ…異界から追放された外の神を輪の中に入れるなんて』
「この世界は停滞している…観測者どものせいでな」
『サニカたちは関係ないよ…文明が滅ぼうが栄えようがただ観測しているだけなんだから』
「そのせいで私の国は滅んだ!」
『言ってることが滅茶苦茶だね。助けなければお前たちは悪だと言って助ければ停滞させてると批難して…自分勝手な人たちだねぇ』
「貴様に何が!」
『忘れたとは言わせないよ?外から来たトカゲどもを君たちが輪の中に入れた事で我が物顔で蹂躙された時代をね』
「!」
『流石にキレたサニカたちが半分以上駆逐したけど…もし止められなかったら今の時代はどうなっていただろうね?』
「くっ!」
『ホント迷惑だよ』
「今回は無理そうです…期待させてすみませんでした」
魔神教の司祭と名のる者は居なくなった。
『酷いねぇ~期待させておいて置いてきぼりだってさ…後追いはするなと言われてるからしないけど』
「……おれ…は…」
『ボクは助けないよ…魔神教の邪魔をするためだけに来ただけだから…でもとある事を誓えば救ってくれるてさ』
「何だ…と…!」
『マクスウェルはかなり渋っていたけど、シェイルーン教を作った創設者に頼まれたから断りきれなかったみたいだけどね』
「創設者…だと」
『失礼の無いようにね?……僕は帰るよルーミリア』
ルーミリアと言われる桃色の髪を持つ少女がかまくらの中から出てきた。
「ルノカ、ありがとうございました」
「どうして…俺を…?」
「あなたが略奪した村は魔神教の信者の家族が暮らす村だったのですよ…わたしたちでもなかなか見つけられないのにピンポイントで見つけるからですかね…2度と普通の生活は出来ませんがそれでも良ければわたし達に着いてきますか?」
「!」
「わたしの家族であるティルクスたちに何か嫌がらせしたら許しませんけどね?」
「あいつらか…」
珍しい魔物を連れていた旅人だよな…弱いと思って向かったらコテンパンにされて俺をハゲにした奴らの事かそれに発情期のハゲ猿とも言ってたな………確かにそうだな…背の高い方には片方の玉を潰されたけど俺に取ってはお高い授業料になった。
「わたしたちはルトラ父様とサニカ母様に育てられた家族なんです」
「……俺は……許され…るのか?」
「人の命を奪うことは最悪ですが…一度は勇者に選ばれた身、だから欲に呑まれなければ強くなれるのですよ…それにあなたは変な所が素直ですね」
「他の…奴等は…?」
「あの子たちは縁を切っておきながら裏でこそこそ動いている親族がいるから無理です。もう一度大罪を犯しますよ今度は家族ごとね」
「俺は…本当に…捨てら…れたの…か…家族に」
「ですがあなたを助けて欲しいととある子から懇願されたから来たのです……出てきなさいと後ちゃんと喋れるように一部だけを温かく…【ホットエリア】」
「ルスト!」
「!…ナルエラ」
俺が酷いこと言って捨てた幼なじみがどうしてここに!
「わたしは!」
「どうしてここに居るんだ!家はどうした!」
「家なら妹に押し付けて来たわ!わたしはルストを救う代わりにわたしの人生をルーミリア様に捧げたの!」
「何でそんな事をしたんだ!俺はお前を捨てたんだぞ!」
「そんな事は気にしないで、ルストここを出ましょ?」
「俺は出ない」
「どうして!」
「俺は死んだんだ」
「生きているじゃない!」
「俺は…許されない…!」
泣かないでくれ…ナルエラ…俺見たいなクズの為に頼むから!
「少しだけでも反省しているみたいですね…ルスト・グランファルスに問います…許されないと言っていますが何を基準に許されないのです」
「俺は勇者として選ばれて活動した…勇者と言えば何でも許された人間を殺そうが、俺に近いて来た奴等と組んで楽に稼げると知ってそして欲に目が眩み村を襲った…」
「その答え合わせを教えましょう、あなたは本物の勇者ではありません」
何だと…本物の俺は勇者じゃないだと?
「驚いた表情していますね。あなたは利用されていたのですよ、魔神教によってね。最初は魔神教の奴等も扱いやすかったのはいいのですが、あなたが略奪しに行くとこは全て魔神教の拠点で逆に被害がでて最悪だったみたいですよ」
利用していたのはずの俺は逆に俺を操って居た側に被害を与えていたのか。
「魔神教はあなたを切り捨てるためにフロクセア村を襲わせたのでしょうね」
「俺の家族が払った金額は魔神教に渡ったのか」
「いいえ、マクスウェルのふと…シェイルーン教会全体の懐に入りました」
やべぇ…こいつら鬼だ!取るだけ取って懐に入れやがった!
「グランファルス家の溜め込んだお金をがっぽり貰ったわ」
「笑ってんじゃねえよ!親父たちに返せよ!」
「おや…上司になる者に対しての態度ですか…それに別に良いじゃないですか…あなたが勇者になったことでグランファルス家は数多の国からバンバンお金を貰ったんですから」
「今なんて言った?」
「あら…聞いてなかったのですか?」
「あんの親父!ババア!兄貴まで!旅立ち資金で俺に金貨十枚しかくれなかったのにか!支援しろと言っても金がねぇから銀貨十枚しかくれなかったは嘘だったのか!」
「あらあら…面白い家族ね」
「面白くねぇよ!あんの家族!贅沢な暮らしをしていたのはそう言うことだったのか!」
「気付かなかったのね…ルスト…そこまでされても気付かなかったのね…!」
「なんか無性にイライラしてきた!利用されるだけされた人生だったのかよ!」
「グランファルス家にしろ他の勇者を出した名門貴族たちもまだまだたくさん溜め込んでそうですね」
「許さねぇぞ!親父!ババア!兄貴!」
「なんかルストが生き生きしてきたわ」
「覚えていやがれ!」
「わたしたちと来ます?」
「俺もあんたの元に下る!アイツらには手を出さないと誓う!俺を操っていた奴等に報いを受けさせてやるわ!」
「暴走気味ですが、わたしが責任とルストの歯止め役になります」
「あなたは本当に根性あるものね…わかったわ、制約を結ぶけど良いかしら?」
「あぁ!やってくれ」
【汝の誓いわたしの家族に手を出さない事を条件にわたしの従者としての役目を与えましょう、その誓いの印は生を終える時に返還されあなたは自由になるでしょう】
こうして後に起きる大きな戦いの準備資金調達のプロとしてまたは魔神教会から恐れられる者として覚醒し影の立役者となる、その傍らには常にひとりの女性が居た。
後に貴族たちから恐れられるシェイルーン教会の財政政策の財務大臣の地位まで上り詰め罪人から公明正大の人と呼ばれるようになり成り上がりの物語としてまたは戒めの物語として後世に語られるようになるのだった。