オカマ、子供を拐い光源氏計画を立てるが失敗した
【クレイバール島】
《無敵の宿屋のエントランスラウンジ(右)》
「……なるほど、ラブがイダルベールとハルディオラの子供を見て直ぐに生まれたばかりの子供を拐って行方をくらましたと」
「そうなんです……」
「島民全員で島中を何度も何度も隅々まで調べたのですが…見つからなかったんです。
アジサイ様やマジェリルカ様も水晶等で調べても全く気配すら無くって…」
「お祖母様の感だとこの世界から出てないだろうとの事です」
「生まれてまもなくイダルベールが動けていると言うことは生まれた子はハーフドライアドか?」
「はい、陣痛が始まったと思ったらスルッと生まれましたしアジサイ様がそう確認しました」
「それで行方をくらまして何時間経った?」
「10時間ちょっとです」
「……………ラブが居そうな場所に行ってみるか」
「ルウカ先生、居場所がわかってるんですか?!」
「もしかしたらと言う感覚はある。イダルベールとハルディオラも来るといい。一応サニカも付いてきてくれ」
ルウカはすっと立ち上がると3人を連れて宿屋から去ろうとした時に島に帰って来ていてテーブルに体を預けている俺とキユクとその場に居合わせたフィリムに向けて言った。
「お前たち、悪いがこの宿屋にアシュクラフト家を呼んでおいてくれ」
「わかりました…」
「他の島民たちは?ルウカ先生」
「話が纏まったら話すぞ」
「あー…結構厄介になる系ですか」
「だろうな…」
ルウカは明々後日の方向を向いていたがそれだけ言って何処かに向かっていった。
「キユクと白虎は休んでて良いよ。自分が呼んでくるから」
「良いんですか?」
「いいよ、地球で何か巻き込まれた後なんだろうから」
「やっぱり分かりますか?」
「キユクが普段よりぐったりしてるから」
「流石、幼馴染み達だ」
フィリムはそれだけ聞くとニッコリと笑い宿屋から出て行った。
俺とキユクは宿屋のテーブルに体を預けていたらいつの間にか寝ていた様である。
いつの間にかそれぞれソファーに寝かされていて目が覚めて起き上がると島の全大人達が頭を抱えてテーブルに座っていたのが見えた。
そして周りを見渡すと例のオカマの神様が様々な色の鎖に繋がされていて赤ちゃんは無事に親元に返されたようだった。
その赤ちゃんを見ると人の赤ちゃんだとわかるが体の一部から蔦が生えていたり頭の所に小さな花が咲いていた。
「おっ白虎、起きたか」
「フルーレか」
「おう」
「二人とも大変だったね」
「あぁ…シェルフィナとラタムも居たのか。それと今どんな話し合いが行われてるん?」
「それはおれが話すヨ」
ラタムは淡々と話しだした。
事の始まりはイダルベールさんが急に「なんかお腹痛いわ」と言い出し病院に向かうと陣痛が始まっていたらしく、その場にいた大人達は大パニック。
だが段々と冷静を取り戻し陣痛から3時間後には生まれた。
そして子供の様子を先生とルウカ先生の変わりに様子を見に来たラブナシカさんが生まれたばかりの子供を見た瞬間に(この子はっ!!)となり子供を拐った。
…ラブナシカさんにとっては数万年待っての【運命の人】がようやく生まれ変わってこの世界に転生して来たと有頂天になり拐いし、更には自分好みに育てたいと魔が差しクレイバール島から逃走。
クレイバール島の近隣の島に潜んでいたが夫妻の説得やルウカ先生の説得にも応じなかった為に先生とルウカ先生の二人で協力魔法を使い確保した。
クレイバール島に戻り赤ちゃんの健康状態を調べ特に異変は無いとされ無敵の宿屋でそのまま家族会議となり赤ちゃんの魂を調べるとラブナシカさんが待ち望んだ方の生まれ変わりと断定された。
そして先生達からラブナシカさんと待ち望んだ方の遠い約束の話を聞いてアシュクラフト家の方々は呆然としていたそうである。
その遠い約束とは大昔、先生が普通の人間だった頃であり、ルウカ先生が魔族の元王様だった頃まで遡る。
ラブナシカさんがまだ【歩く厄災】と呼ばれていた時代のとある教会の神父をその道に引きずり込もうとしていた時にとある男性冒険者がその協会に現れその冒険者に本気の一目惚れしたそうである。
その冒険者はムキムキマッチョで真っ赤なフリフリドレス姿のラブナシカさんを見ても嫌悪感を出す事なく普通に話をしてくれる人柄であった。
その冒険者の境遇が少々特殊で父親二人に育てられてそうでラブナシカさんを見ても特に気にならなかった。
ラブナシカさんはその冒険者に猛烈にアタックしたが 「自分には相応しくない」と言うだけで完全に拒否ることは無かったんだそう。
その冒険者は母親役をやってくれた方の病気を治すために【流星の大峡谷】と言う場所にのみ生える【月雫草】を探しに向かったが何日経ってもその冒険者が所属していたギルドに帰って来ないものだから探しに行こうとした矢先に血だらけで戻って来た。
手には【月雫草】を持っていてギルドマスターが奪ったそう。そして母親役をしてくれていた方が病気したと言うのは嘘でそのギルドのマスターがコイツならと無茶難題をさせた。
ラブナシカはその冒険者をギルドから連れ出し神族としての力を使ったけど手遅れだった。
そしてその冒険者はラブナシカにこう言い残した「貴女との出会いは本当に衝撃的だったけど…楽しかった。神族と人間では身分が違い過ぎるから相応しくないと思って断っていた。
自分も……一目惚れだったのかも知れない」と衝撃発言をした。
ラブナシカさんはまさかそんな事を言われるとは……とその場で一瞬フリーズしたが「アタシもアンタに本当に一目惚れしたの」と言った。
その冒険者は最後に「もしまた生まれ変わって出会えたら…次こそは…」と言い残して息絶えた。
ラブナシカさんは「コレで最後よ。彼とまた出会うまではお預けよ〜!」とだけ言ってその冒険者に嘘を吹き込んだ【月雫草】の件に関わっていた者達を以下自主規制。
そしてその話をした本人含む全大人達が頭を抱えて居る状態になっているそうである。
「まさかラブ先生を受け入れてくれる人が居たなんて…とコチラも混乱してるよ」
「……光源氏計画か…オカマの神様が邪悪な…そもそも性格をどうこうという邪念を抱いてやがる」
「ホントだよネ」
拘束されているのに飽きたのかラブナシカは物理で魔法の鎖を破壊して大人達が集まっているテーブルの空いている椅子に座った。
「イダルベールやハルディオラに悪いと思うけどアタシは生まれたこの子を過保護に育てるわよ」
「両親から親権を奪おうとするな。場合によってはお前を神族達の世界の現主神様に回収してもらうからな」
「えー」
「生まれた子がラブナシカが待ち望んだ者の生まれ変わりであろうと同じようになるとはわからないんだからね?君と彼は魂の約束をやってないんだから」
「暫くハルディオラ一家に関わるの禁止、それを破ったら回収して貰って一時期だが強制送還するからな?」
「もう、ルウカもサニカも目くじらを立てないのよ〜」
「立てるに決まってるだろ、実際に親元から引き離そうとしたんだからな」
「わかったわよ〜」
こうして一旦、話し合いは終わったが。
ラブナシカさんは直ぐに「ダメ~アタシ耐えられない」と決まり事を破りラブナシカさんが所属している所の神族の高位の方がやって来て引き取られていった。