番外編 新年にて
バンッドカッパンッ
「いってぇ!」
「へぶはっ!」
「ぐはっ」
「危なかったです…」
唯糸と隆太郎と俺は譜月の背中から鏡に向けて勢いある状態で投げ出されたが鏡に入るどころか入ることなくそのまま全身で叩きつけられ、キユクは機転を気かけてスッと避けた。
「譜月……帰れないんだが…?」
『ふむ…その様じゃ…確実に帰れると踏んでおったが何か邪魔が入ったようじゃな。
……仕方ないが敵の本拠地に向かわねば行かぬのかもしれんのう』
「敵の本拠地…?」
『お主らが全力で逃げてきた社じゃよ』
「えぇ!」
『そこらな確実に出入り口用の鏡があるはずじゃ』
「俺と隆太郎と唯糸も護身術は習ってるけどキユクの用には行かないが?」
『わかっておる、場合によってはこの空間を破壊してでもソナタらを連れ出す所存じゃよ』
「…逃げ切れなかった方々はどうなるのでしょうか?」
「さぁ…逃げ切れなかった人達はどうやらフワット神社の敷地に連れ戻されているみたいだからフワット神社に戻って確認して見る?」
「それも一つの選択だよなぁ」
『我の背に乗って確認してみても良いかもしれぬな』
俺たちは譜月の背に乗って鬼のお面を付けた輩を蹴散らしながらフワット神社の入口付近に戻り譜月から降りて周囲を確認した。
神社の名称が俺達の知る【フワット神社】ではなく【ブワット神社】となっていた。
「フの所に濁点が付いとるわ」
「……ブワット神社ってなんだろうねぇ?」
さらに呑気に周囲を調べていると神社の内部からドッカーンと爆発音が響き渡った。
「なっ何が起こったんだっ!」
『………こっこの魔力』
「さっサニカ先生……」
「「「えっ」」」
ブワット神社の敷地内から先生がニコニコしながら司祭の格好をして現れた。
「子供達、お迎えに来たよ」
「おっふ……よく見たら服に血が付いとるやん」
『あー…辺り一帯を浄化する気満々じゃな』
「えっ出来るの?」
『やっちゃえる』
「このままここにいれば万事解決って事か」
「……ですね」
先生は好きなだけ暴れまるといつの間にか俺たちは元の【フワット神社】の外に追い返されていた。
司祭の格好をしている先生は目立っていた。
先生は気にする事なく「帰るよー」とだけ言って俺たちを先生の自家用車に乗せて【火天の宿屋】に戻った。
【火天の宿屋】
《客間》
「……先生アレは一体何だったんだ?」
「ん?……あぁ…アレね…アレはとあるイタズラ好きのとんでもない輩があの神社にいた参拝客を多量に異界に送ったんだよ、神社に居る土地神に嫌がらせするんでね。
鬼のお面を付けた輩は久し振りの獲物が来たと便乗したんだろうさ、でもまぁ捕まった人達に関してはとあるお方に助っ人を頼んだから大丈夫だと思うよ」
「とあるお方?」
「君たちは知らなくて良いことさ」
「えー」
「本格的に魔導師を目指すなら知れる時が来るとだけは言っておくよ」
「そっち系か」
「今頃、仕組んだ輩は様々なお方にとっちめられてるだろうから暫くは不思議な出来事は起きないから隆太郎や唯糸も安心して過ごしなさい」
「ほぇ~」
「それで白虎とキユクさんを連れてそろそろ帰るのですか?」
「うん、出掛けている二人が帰って来たらね」
「そっかー……今度はゴールデンウィークの時にでも遊びに来なよ?」
「来れたら」
「オレも白虎見たいに先生さんの暮らしている世界に行ってみたいなぁ」
「本当に島での生活で大海なの?」
「本当に島での暮らしだし、周りは波ひとつない大海が広がってて夜になると月の様な天体が夜空に3つあってその光が島や海を照らして海の水鏡に映る星々やらがすっごい綺麗だよ」
「んー想像するだけできれいな景色って分かるよねぇ」
「困ったさん達も居ますけどね」
「あー…確かキユクさん達が暮らしている島とは別の島の人達だったけか?」
「はい」
「他にも襲撃もあったぞ」
「「え”」」
「島民の方々が追い出したけど」
「ぶっ無事だったんだな?」
「あぁ、それと地球にはない植物とかもあって楽しいし」
「……食べ物とかってどうなってるの?」
「地球で食べてるのと変わりわせん。魚料理が多いのと肉料理はたまにしか食べません。動物も島で育ててますが食肉用では無いですからね」
「そうなのねぇ」
「そうなんですよ」
のほほ~んと皆で過ごしていると外がドタバタと騒がしい音が2つほど聞こえた。
そして直ぐにバタンっ!と宿屋の扉が開いた。
「サニカっ!イダルベールが!」
「イダルベールがどうしたん?」
「ベール姉さんが出産したって!」
「おや、それはめでたいじゃないか」
「お前は至って冷静だな。出産したんだぞ?」
「今騒いだら産後の疲れやらでストレスになるでしょうが。
それにしても全く気づかなかったね…どこの当たりの祖先の力が働いたかね?」
「そっそうだけど…」
「何か手土産に買っていこうかな…手土産買って島に帰るか」
「二人が帰って来たら戻るんでしたっけ?」
「そっか、またな二人とも」
「うん、白虎もキユクさん元気でねぇ」
「ゴールデンウィーク来れたら来いよ?」
「うん。美鈴にまたなと言っといてくれ」
「はいよ」
先生が手土産を買いに出掛けたついでに唯糸と隆太郎をそれぞれの家に送りイダルベールさんや島の皆に手土産を買ってから島に帰った。