番外編 日本で過ごすクリスマスと島の様子
【蓬田旅館】
《林檎の間》
「あー…それで戻ってきたんだね…早く」
「サニカ先生…この世界線の地球、怖いです」
「何者かに追われてたけど、この町に向かいだしたら追ってこなかったな。先生達がなんかしたんか?」
「この土地自体が少々特殊だから滅多に一般人が近づかないだけだよ。日本の政府もガチで何かが起こらない限り絶対に手は出して来ないよ」
「へェ…」
「何事もなく良かった、良かった」
「…でもエンターテインメントは流石ですよネ…日本。カルチャーショック受けましたヨ」
「でもクレイバール島での暮らしが一番よネ。どんなに便利であろうと島の暮しとはやっぱり違うワ」
「それに…島の家の設備が日本の家の設備を基準にしてたからそこまで困ることはないな……でもなんかこう……な」
「ふふ…クレイバール島に帰るかい?」
「えっ」
「クレイバール島と日本でのクリスマスの過ごし方は変わらないし、今ならまだ戻るから戻るなら今だよ」
「サニカ先生……こっ怖い事を言わないでくれよ…」
「火天の宿屋を六月一日家とは3件ほど離した空き地に設置してあるけど…いっそこと火天の宿屋の方に移動する?」
「えっ良いのか?」
「うん、良いよ。なんか嫌な予感するし」
「………………………」
「そう言えばさ…さっきからフルーレが静かなんだけど」
「………コレは何かありますね…」
「さっさとチェックアウトしちゃいましょウ」
サニカは5人を引き連れて旅館を後にした。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
【火天の宿屋】
《玄関前》
「旅館てそっちの旅館か」
「宿屋も旅館もそんなに変わらんだろ、昼間に比べてやけに静かだかららなんかな。安心して飲み食いするならここだろ」
「……サニカちゃんは怒らないか?」
「…少しぐらいなら大丈夫だ。それにこの世界の地球に来たときにサニカからもしなにか感じたら【火天の宿屋】を用意して置くからと言われてたからな。
それにサニカも子供らを引き連れてやって来てるみたいだぞ」
「……………ホントだな」
「俺たちは椅子とかテーブルをいくらか退かしてリビングでそのまま寝られるようにして置くか」
「相変わらずテキパキと…」
ルウカはサニカから渡されているメンバーズキーを使い【火天の宿屋】の中に入って行った。
そしてサニカ秘蔵の酒や作り置きされている料理やツマミを取り出して積もる話を始めた。
そして30分後にサニカ達は火天の宿屋にやって来た。
「こっコレは…」
「うわー……どれだけ騒いだんだ?」
「樽酒を2つ開けてます…」
「……なんかエルフの男性がパンイチで転がってるワ」
「野球拳でもしたんですかネ?」
「…酒が飲めない癖に飲むとは…ホントに変わらないね…」
「サニカ先生、クリスマスパーティーするんですか?」
「うん、作り置きしてある料理は食べられてるみたいだね…時間もあるしクリスマス料理でも作ろうか」
「それで何を作るんですカ?」
「まずは鳥の丸焼きを仕込んどかないとだね」
「お手伝いします」
「ありがと、マコト」
「ウチも手伝うワ」
「メルファもありがと。ルニスとフルーレとラタムは嫌かもしれないけどそこのパンイチを西側のリビングに服を着させてその辺に転がしておいてくれる?」
「わかった」
「そしたら冷蔵庫にある飲み物とかの用意して置いて」
「了解でス」
「ケーキに関しては【や〇〇か〇の〇〇〇〇ケ〇キ】と言う手頃で安くて便利な美味しいのがあるから生クリームとかフルーツを切り分けたのとか用意するからそれぞれ作ろうね」
「はーい」
「それとなにか食べたい料理とかある?」
「それならサニカ先生特製のサンドイッチが食べたいです」
「わかった」
魔法を駆使しながら料理を作っていると「雪が降ってきた」と楽しそうに男子3人が騒ぎ始めた。
最初はワイワイしていたが「なんか雪が降りすぎじゃね?」と今度は不安な様子で騒ぎ始めた。
すると突然宿屋のドアが開きルウカがキユクと白虎を六月一日家から連れて来たようだった。
「やはり火天の宿屋に来たか」
「ルウカ先生とおふたりさんだな」
「家族で過ごしているクリスマスパーティーに突撃するな」
「だって楽しそうしてたから」
「………春兎達は許可したの?白虎」
「なんか嫌な感じがしたからふたりは荷物を持って火天の宿屋の方で過ごせと言われた。
食事に関してはしてきたから大丈夫だ」
「迎えに来てくれてちょうど良かったと言われたぞ?」
「わかった、ふたりは適当に寛いでて。…ルウカ、君はまず片付けをしようね?ルニス、フルーレ、ラタムは潰した本人が戻って来たからテーブルのセッティングだけで良いや。ルウカは千太郎をどうにかしてね?」
「はい…(サニカ少し怒ってるな)」
こうしてクレイバール島で行われるクリスマスパーティーと変わらぬパーティーが始まったが少しして気疲れしたのか子供らはリビングに適当に寝転がり布団に包まりそのまま寝てしまった。
サニカは戸締まりをルウカと共におこなってから子供らにさらに毛布を掛けて火天の宿屋の暖炉や囲炉裏の火種を調節してからその辺に寝そべって寝た。
そして白虎は深夜?時にふと目が覚めると……。
今何時だ?と近くのスマホを取り画面に表示させたが示された時間は本来ならあり得ないだろう時間を映していた。
(えっ………53時8294分…?…俺は寝ぼけているのか?)
俺は体を起き上がらせ東側のリビングの窓側に向い外を見ようとしたらどこを見ても真っ白で何も見えなかった。
この宿にあるテレビのリモコンのスイッチを入れても反応しなかった。
俺がキョロキョロしていると後ろから声を掛けられた。
「白虎、起きたん?」
「先生か…」
「温室に溜め込んである薪を持てるだけ持って来てくれる?」
「わかった」
「私は先に持って来た薪で囲炉裏の火を強火にしてるから」
先生は東側のリビングにある囲炉裏に向い種火を探してアイテムボックスから取り出し薪を入れて火力を上げている。
俺は宿屋の中にある温室に向いアイテムボックスに薪をたくさん入れた。
温室から宿屋の1階の受付ロビー周辺に戻って西側のリビングにある暖炉の側に薪をたくさん置いた。
東側のリビングで先生は囲炉裏の自在鉤に鍋を引っ掛けてホットミルクを作っていた。
「白虎、おかえり。ホットミルク飲む?」
「うん…いただきます。…なんか部屋が少し寒い」
「そうだね。…まだ寝ている人達は布団や毛布に包まったままで放置しときなさい。」
「それが良いかも」
俺は囲炉裏の側に向い先生からホットミルクが入ったアルミカップを受け取った。
「先生、もしかしてだけど……」
「見事に今年も入り込んだよ。でもこの宿屋いれば安心だから事が済むまで外に出ないようにしようね」
「……うん」
「外からはこの宿屋の中は見られないから何が起ころうと平然としてれば良い」
……ドシン…ドシン…と振動が起きてる。
「ここはもうアレらの縄張りだから振動やらが凄いね」
「……コレが例の不思議な事か」
「…ルウカも起きてたんかい」
「あぁ、暖炉の火は付けておいた」
「ありがと」
「オレもホットミルク飲んでいいか?」
「好きなだけ飲んでいいよ」
「……いつの間に起きてる。音を立てずに来た」
「こんな状況に起きてるとは…白虎は耐性があるのか?」
「小さな頃から経験してるから耐性はあるよ」
「そうか……オレたちが過ごしていた時はこんな事は起きなかったよな?」
「実際は各地で起きていたのかも知れないね」
「こういうのは目の前で起きている問題を解決しないと出られないんじゃないのか?」
「今現在起きている件に関しては手を出さない方が良いのさ。明日のこの時間まで大人しくしていれば何事も無かったのように元に戻れるから」
「そうなのか?」
「毎年恒例だな…俺の実家に行っても皆、石になってるから。出るだけ危険な目にあうから出ない方がいい」
「…ここは世界の狭間のようなものか」
呑気にホットミルクを飲んでると宿屋の窓に巨大な目玉がギョロリと写りこちらを見ていた。
「……こっち見てる。先生、毎年聞いてるけどホントに向こうは見えてないんですよね?」
「うん、コチラ側しか見えてないよ」
「妙に目が合う…」
「なんか宿屋が囲まれてないか?」
「なんか目立つみたいで目を付けられてるんだよ。その分、私達以外の迷い込んでしまっている人の助けになってるみたいだけどね」
すると火天の宿屋は巨大な触手に絡まれたり巨大な足に踏まれたりしているが全く効いてないのである。
「…相変わらずチートだな…この宿屋は」
「見慣れたものでしょ?」
「だな」
「………本当にふたりは長いのか?」
「あぁ、長いぞ。転生した分を含めればな。……かれこれ1万年は一緒に居るんじゃないか?」
「いっ1万年…」
「あの時からだもんね……長い――」
先生が何かを言い掛けるとふたりしてゴホッと口から血を吐き、顔に複数の傷が浮かび上がりそこからも血が溢れた。
「!?」
「………コレは……また」
「……あの世界はダメだったね」
「何の話をしてるん?それに血が…」
「私とルウカで子供達を向かわせても平気かどうか写身を使って数多の異世界に下見に行ってるんだよ」
「この様子だと……その写身がやられたってこと?」
「あぁ。写身が死んだ時に記憶と何があったか引き継ぐ形になっているからな」
「……あの世界に行った写身は少々特異点に関わりすぎたね」
「そうみたいだな」
「少し寝て来ようかな」
「寝て解決する問題じゃないと思うけど……写身からSOSとか来る時ってあるの?」
「極稀にあるぞ。発展途上の世界や世界の主導権をとる戦いなんかに巻き込まれてオレ達の世界に影響が来る場合な」
「あるんだ…」
「ここ最近は無いが」
「暫くは大人しくしてた方が良さそうだね…」
「あぁ」
朝の時間に他の子供達も起きて外の異常な雪の降り方や振動で何が起きているかなんとなく察した。
火天の宿屋で各々の時間を好きに過ごしていたが途中でゲームを交代でやったり現実世界に戻るまで過ごした。
時間が経過して現実世界に戻ると外で食事をしたり夜空を眺めたりして過ごしたが、少ししてルウカとサニカによってボロボロ状態のレフィは発見され「ミーはやりきったぞ……あっ…お正月まで残るから…」と言葉を残し爆睡を始めた。
キユクとレフィ以外の子供達は早めにクレイバール島に戻ると言ってクレイバール島に戻った。
そして島に残った子供達は……。
【クレイバール島】
【無敵の宿屋】
《リビング》
「ラブ先生!何したらこうなるんだい!」
「えへへ〜わかんなーい♥」
「わかんなーい♥…じゃないわっ!ブラックサンタが窓にくっついてラブ先生を凝視ししてるんですけど!?」
「えーホントに何もしてないわよ?」
「もうこの際だからラブ先生を外に放り出さない?」
「フィリムって酷いことを平然と言うわよね?」
「ラブ先生ならきっと大丈夫さ」
フィリムはハハッと笑いながら言った。
「彼に関してはそのままにしておけば大丈夫よ〜。それよりもクリスマスパーティーを楽しみましょうよっ!」
キャッキャッと子供達はラブナシカと共に騒いでいるが島の大人達はラブナシカをなんとも言えない表情で見ていた。
「ブラックサンタは悪ガキの所に来るんだよな……まぁ…うん…やっちまったもんな。今年」
「そうですね…」
「サニカ先生はなんとなく察してたみたいだけどな」
「ルウカ先生は見て見ぬ振りをしたからねぇ…」
「誰であろうと上手く生きる為のスルースキルだにょ〜」
「カイリ、酔ってんだろ?」
「?」
「酔ってるな……酒に弱いのに何で飲むのか」
「あっ…」
「どうしたんだ?ハルディオラ」
「金棒を持ったブラックサンタさんと目が合っちゃって…こっちをめっちゃ見てくるんだ」
「気にすんな」
こちらも少々刺激的なクリスマスを過ごしているようである。