旅と異世界で暮らす事の意味
【ソルスノース王国】
《太陽の時計塔》
「ここがこの国の名物の時計塔か…」
「俺がここに来た時は王位継承争いで国が荒れてたが落ち着いたみたいだな…この時計塔の針はフレアタイトと呼ばれる太陽の様に輝き高温を持っている鉱石を使っている」
「……フレアタイトだと?……その鉱石は太陽の様に照らす時もあるが扱いを間違えると太陽の炎が燃やし尽くすと言われている鉱石だぞ」
「だからこの国の昼を告げる時間が近くなると全国民が身構えるんだ、今日はどの様なハプニングが発動するのかと」
「えっ」
俺は周囲を確認すると時計塔の近くにいる子連れの主婦やカップル達が少し前までは穏やかな表情をしていたが子供までもがギンギンに目を開き身構えていた。
「そろそろ来るな」
「大丈夫なのか?」
「対処法は知ってるから問題ない」
「時計塔の鐘の音がなったぞ!」
遂にその時は来た。時計塔の鐘の音が昼の時間を告げた。
どうやら今日は【大ハズレ】の日のようである。
時計塔が巨大な魔法陣が描かれると、どこからともなく【クリムゾンフレア】が発動されると街全体にアナウンスが入り、そこから炎の矢が空高く上がりそして城を含めて全ての場所に降り注いだ。
「きゃー!今日は【クリムゾンフレア】の日よー!」
「くっそ!何で彼女にプロポーズ大作戦を決行する日に限って【クリムゾンフレア】何だよっ!」
「ママ〜…早く帰らないとお気に入りの服が燃えちゃうよ〜」
「はっ!干しっぱなし!」
すると早速女性が子供を抱えて全力で走っていった。
「だっ大丈夫なのか!」
「エリエル、俺から離れるなよ」
俺はこの時計塔がある広場に来る前に既にこの火の魔法の対策を既に仕込んでいた。
周りの人々も俺と同じ様に魔法をほぼ同時に発動させた。
「こっコレは…」
街全体に水属性の魔法が所狭しと現れ炎の矢を相殺しようとしていたが所々で相殺が出来なかった所もある様だった。
「広場の辺りは成功したみたいだな」
「凄いな…この国の人々は…」
「だろう?ここに来れば恋人の本性がわかると有名だからな」
「どう言うことだ?」
「エリエル、周りを見てみろ」
エリエルは周りを見ると恋人を置いて建物に避難した相手がいる何組かのカップルが揉めていた、そして女性にビンタされて呆れられていた。
プロポーズ大作戦を決行すると言っていた人は恋人をギリギリのラインだったが守りきり、ほんの少し燃えてしまった薔薇の花束を彼女と思われる女性に差し出していた。
プロポーズを受けた女性は花が燃えたのは仕方ないの雰囲気を出したが「喜んで」と赤い薔薇の花束を受け取りプロポーズを受けたようだった。
その様子を見ていたギャラリーは拍手して祝福していた。
「この国の者は逞しいな」
「元々は湿原だった場所に国が建てられたらしいから水には困らないらしい」
「それであんなに大規模な魔法を使えるのか」
「そうみたいだな」
「俺たちもこのままデートして明日の朝には次の場所に向かおう」
「わかった」
この国の名所に向かいデートを楽しみ宿屋に泊まった。
朝の明朝の宿屋の周りで何かガサゴソとしている感じがしたので、俺は寝ているエリエルを静かに起こした。
「エリエル、すまない」
「大丈夫だ…どうした?」
「この宿の周辺で何か良からぬ魔力を感じてな…巻き込まれれば厄介になるから宿を出よう」
「ふむ…了解した」
テキパキと旅支度をして宿の受付にチェックアウトした。
「つけられてるな…」
「攻撃を仕掛てこないだけ良いんじゃないか?」
「そうだな…エリエルここの石壁を飛んで出るぞ」
「ん?」
俺はエリエルを姫様抱っこして走り防護魔法を使い足場を作りこの国の石壁を飛び越えて国から出た。
エリエルはまだ眠そうにしていたせいなのか…何が起きたのか全く理解してないようであった。
俺は近くの森に入り大丈夫な場所まで逃げ、次の目的に向かうための準備を始めた。
「結局、アレは何だったんだ…翼とか隠してたが…」
「多分だが翼とかではないな。エリエルがあまりにも美しいから攫うために王族が裏組織を動かしたんじゃないか?」
「………詳しいな」
「エリエル、俺はあの国が王位継承争いをしていた時に来たことがあると言ってただろ?」
「そうだな」
「保守派の第1王子と夜遊びが酷い第2王子が居たんだが…面識はないが王位継承争いをしている王子ふたりを見たことがあってな…貴族の男に婚約者を奪われたと教会に駆け込む一般男が大勢来たことがあったんだ」
「来たことがあった?」
「教会のシスターにあの国の歴史を教えてもらったお礼として懺悔部屋の聞き手などの手伝いをしていたんだ」
「それでか…」
「あまりにも多かったからな…シスターと俺とで教会の礼拝堂に男連中を呼んで話を聞いたら全員が婚約者やら妻やらを王族に寝取られた話だったんだ」
「…………」
「当時のシスターは何とも言えない表情をしていたが婚約者や妻に関しては諦めろと男たちを言いくるめてこの国から出た場所で新たな出逢いを求めろと言ったんだ」
「それで…出たのか?国を」
「あぁ、男が大勢でパーティーを組んで国から出て行った。
だからあの国の若者の大半が現国王の庶子の可能性がある」
「えっ!」
「この世界の国がどうなっているか見せたかったし、俺が絶対に守りきれると踏んだから【ソルスノース王国】に来た」
「……もしかして結構な身の危険性があったのか?」
「あぁ、気分を悪くしたならすまない…」
「まずはその危険性とやらを教えて欲しい」
「……【ソルスノース王国】は美しい景観を使い旅人を呼び寄せ外に逃さない…別名【旅人食いの国】と呼ばれている国だ」
エリエルは「やはりか」と呟いた。
だか薄々デートをしている時に気づいているようだった。
「…暫くは手を繋ぐ行為禁止とする」
「……承知した」
「それでその他の国は大丈夫なのか?」
「それが…」
「…もしかして何かあるのか?」
「あれでも【ソルスノース王国】は割とまだマトモな国と呼ばれている国の一つだ」
「何だと!他の国もあんな国ばっかなのか!」
「あぁ」
エリエルは引き取った表情をした。
「マトモな者達は何処で暮らしているのだ?」
「エリエルのように山奥でひっそりと暮らしていたり、深い森で隠れ住んでいたりしている」
「…何ということだ…こんなにもこの世界が…俗にまみれているなど…」
「新婚旅行で安全に旅をするなら秘境巡りの旅となる」
「……だからサニカ殿もあんな場所でひっそりと隠れるように暮らしているのか」
「そうだ、もしかしたらマトモになっている国もあるかも知れないが……どの様な旅をするか決めたいんだが」
「秘境巡りの旅だ」
エリエルが即決で決めた。
「……安全を考慮した結果だ」
「わかった、それなら俺が旅をしてきた安全なルートを巡ろう」
こうしてふたりで秘境を巡っていると何故か鉢合うハーレム勇者の修羅場の現場を複数回見ながら世界一周の旅をした。
そして特にこの世界では何故か何ごとにも巻き込まれず問題なく過ごしエリエルとゆっくりと過ごしていた。
だが…勇者が魔王を倒したと世界中が歓喜に包まれていたがその勇者が暗殺されたと情報が入った。
【自宅】
《リビング》
「ナナヤ、今この世界で何が起きているんだ?」
「………わからない、だが先生の情報だと最近になって勇者として呼ばれた転生者や異世界からの転移者が殺されているみたいだな」
「……ナナヤ」
「何があろうと俺は二人を守る…もしもの場合については先生にも話してあ」
エリエルと話し合っている所に何かヤバいのがこの家に近付いてきているのを感じ取った。
「何者かが侵入してきたか」
「ナナヤ、ふたりで逃げよう」
「そうしたいが…どうやら相手は逃してくれるような雰囲気ではないみたいだ。
エリエル、先生たちの所に行けるか?」
「まさかとは思うがひとりで立ち向かうつもりではなのいか?そうだとしたら許さんぞ」
「今ならまだ間に合うから先生の元に向かうんだ…絶対に俺も【火天の宿屋】に行くから待っていてくれ」
「………どうして……」
エリエルは俯いたが頷いた。
俺は先生から貰っていた保護魔法が掛けられているマントをエリエルに着させて【幻影の魔法】を掛けて裏口かエリエルと俺の相棒であるリンデを逃した。
リンデは何かを察知していたが身重のエリエルを気遣い乗せて俺の顔を表面から見てから駆けていった。
俺はリビングにあるソファーで寛いで居たらトントンとノックの音がなり直ぐに殺されないと確信を得て俺は敢えてドアを開け俺の元にやって来た人物を招き入れた。
「……まさか招き入れられるとは思いませんでした」
「それで何をしに来た」
「貴方を殺しに来ました。私は【異端殺し】と呼ばれる世界の秩序を守る者です」
「そうか…今まで存在しなかったのに今頃現れたのか」
「……………先の異世界の勇者がやりすぎたのです」
「まっ確かにお上が動くのはわかる気がする。
異世界の知識や技術は恩恵になったりするが時に世界にとって猛毒になるからな」
「そうです」
「…妻はどうなる」
「…………………」
「……なら全力で抵抗させて貰う」
俺は…身構えた…時間を稼ぐ為に。
【火天の宿屋】
《宿屋のドア前》
「どうして向かわせてくれないのですか!」
「ハノン、私たちでどうこう出来る問題じゃなくなった、世界のあり方が変わったんだろうね。
私たちは今回、この世界のルールに従うと決めたんだ、大人しくここでどちらかが来るまで待っていよう」
サニカは目の前に現れた何人目かになる【異端殺し】を斬った刀をしまった。
そしてハノンは瀕死になってる斬られた【異端殺し】たちが積み上げられている場所にまた積み上げた。
「宿に籠もればどうにでもなるけど…ナナヤから送られた救難信号を受け取ったからには外で待ってないとね」
「それにしてもバッサバッサと凄いですね」
「君たちも中々に強いよ、流石だね」
「嫌味にしか聞こえないんですけど?」
「経験と実績の差だよ」
エリエルを乗せたリンデが現れるとハノンが全力でリンデの元に向かった。
【異端殺し】がエリエルとリンデを襲おうとしたが、襲おうとした人物の足を斬りつけ動けなくしてリンデからボロボロになっているエリエルを預かり魔法で所々に弓矢を受けたリンデを回収した。
ハノンは襲いかかって来た【異端殺し】を本気の魔力を排出して怖気させた。
「邪魔だ……ですよ?」
「ひっ!」
「なっ何なんだこの人形は!本当にただの人形なのか!」
「……普通の人形ではない事は教えるよ。
それとこの線から先に入ったら斬ると言ったよね?」
サニカは刀を鞘から抜くと斬撃だけで空と大地を抉った。
「こんなの勝てないよー!どう見てもバケモンだよ!」
「くっ!」
「ハノン、私の溜め込んだ魔力を使って良いから…エリエルとリンデの回復を頼んだよ」
「了解です」
「私はコレから…ナナヤを迎えに行く」
【ナナヤとエリエルの自宅があった跡地】
「…………良くぞここまで持ったね」
「先生、エリエルと……リンデは……?」
「大丈夫、一応間に合った…ハノンが治療してる」
「そうか………良……かった」
「さて【異端殺し】さん、悪いけど私の生徒をこのまま回収させてもらうよ」
「………好きにすると…良いです……」
「それともう一つだけ、君の上司に伝えてくれるかい?「明日の朝にはこの世界から出て行くから安心すると良い」とね」
サニカはそれだけ言うと血だらけで片腕を失ったナナヤをサニカの相棒の譜月の背中に乗せてこの場から霧のように消えた。