休日のはずが……
【クレイバール島】
《山頂》
「………………ここは静かでいい」
俺は休日なので夜が開ける前に島の全貌が見える山頂に来ていた。
暫くすると水平線から島を照らす光が差し込んだ。
海の方を眺めているとクレイバール島の唯一の漁師が近海の漁から帰って来ているのが見えた。
……なんかいつも見て思うが海賊の見たいだな。
今日は図書館に行って勉強でもするか。
俺は自身に身体能力強化の魔法を掛けてゆっくりと図書館が開く時間に合わせて下山した。
何やら後が騒がしいが気にせずケイドロ訓練の時の様に撒いてやった。
そして10時〜15時までこの島の歴史や先祖……曾祖父さんの生まれ育った世界の歴史を読み漁った。
この図書館にある向こうの世界の歴史は正歴史で全てが書かれている。
サニカ先生とルウカ先生が観測者としての役目を終える時までだが。
ここ最近の世界の流れと書かれているが、曾祖父さんがこの世界に来た時代の向こうの世界の歴史は書かれてないがどうしたのだろうか。
(もう、こんな時間か……無敵の宿屋に戻るとするか…)
俺は調べていた資料を元の場所に戻し図書館から出た、1度実家に戻ったが、まだ人形がウロウロしていたのが窓から見えていたので引き換えし結局、無敵の宿屋に向かった。
【無敵の宿屋】
《食堂》
「はい、軽食」
「……これは」
「本に夢中になるのは構わないけど、今はまだ成長期なんだから食事を抜かない」
「……助かる」
宿屋にある食堂には人があまり来てないようだったがサニカ先生は大量の料理を作り出来立てのまま保管できる冷蔵庫にしまっていた。
そしてサニカ先生が俺の居るテーブルにやって来て座った。
「そう言えば君から一人暮らしの申請が来てたけど…ロルスは何か言ってた?」
「人形とかの事もあるから一人暮らしをしたいのは分かるけど、もう少しだけ一緒にいて欲しいと言われた」
「さみしがり屋め」
「それでも俺はすぐにでも一人暮らししたい。父さんには悪いと思うけど」
「距離的にも離れ離れになる訳じゃないのにね。
一人暮らしは別に悪いことじゃないよ。
この島には空き家がいっぱいあるし、ナナヤはルールを守っていかがわしい事をしないだろうからコチラとしては許可したいんだけどね」
「いかがわしいは余計だ」
「本当にそう言ういかがわしいのは20歳を超えてからね」
「わかってる」
サニカ先生とやり取りしていると同級生と年下組が集まり温泉に入りに来たようだった。
「ナナヤ、ここに居たでござるか(なんかファンシーな上着を着てるでござる…ギャップがヤバ過ぎでござるー)」
「図書館で資料を漁ってたんだが休憩するために家に戻ったが帰れなくてな」
「ハロウィンの余韻ですネ(ナナヤさんがファンシーな上着を着てル…)」
「昔は人形使いが5人とか居たらしいけど今はロルスさんだけだもんな(あれ?あんな服ナナヤは持ってたか?)」
「今は時間を潰してるんですね(ファンシーな上着…ロルスさんの手作りでしょうか?)」
「あぁ」
「サニカ先生も同じテーブルに居るけど何の話をしてたノ?」
「プライベートの話さ」
「またそうやってはぐらかすんだから」
「あれ?中二病たちは居ないのかい?」
「いま罠を仕掛けに【星あかりの森】に行ってますよ」
「罠を使いまくったからとも言ってましタ」
「そうかい、島の強化をしてくれていると思うことに………ナナヤ例の話はロルスを交えて今日の夜には話そう」
「いきなりだな」
「思い立ったが吉日さ」
俺のクラスメイトたちと年下組は頭に?と浮かべていた。
「ナナヤさんも一緒に温泉に行きませんか?」
「俺は家で風呂に入るから大丈夫だ」
「そうですカ…また今度、男子の皆で入りましょウ」
「わかった」
「良くやったラタム、言質を取ったな」
「…そういえば、あんまりナナヤと温泉に入ってないな」
「確かにそうですネ」
「家の風呂で過ごしてたからな」
「勿体ないぜ」
「ほらほら、温泉に入るなら行ってきな。あと1時間もすれば大人組が来るよー」
「えっマジか」
「マジマジ」
サニカ先生の話を聞いて男子はそそくさと宿にある温泉に向かった。
「それではまた」
「ナナヤ〜今日こそゆ「ナリノさん行きますよー」
ナリノはキユクに引きずられて温泉に向かった。
「ナオハルさんはここまでじゃないのにネ」
「サキュバスだから仕方ないですよ〜」
さらっと少々の毒を吐いてピリアとメルファは温泉に向かった。
「おやニヴァ。秘薬は完成したのかい?」
マコトたちが温泉に向かって直ぐにルニスの姉であるニヴァ姉さんがやって来た。
「えぇ、ようやく……3年も掛かりましたわ…お祖母様からの宿題が終わったしコレで…見習い魔女を卒業よ」
「…修行場所を紹介しようか?」
「必要ないですわ。馴れた場所であり安全な修行場所があるクレイバール島から離れませんわ。
サニカ先生、季節のフルーツタルト貰ってもよろしくて?」
「ふふっ…わかった」
サニカ先生がキッチンに向かって行った。ニヴァ姉さんはそのまま俺の席に座った。
「…あの様子だとナリノに執着されてる見たいですわね」
「探検服を作り直す時に俺の半裸を見てからだな」
「ナナヤはいかにも凄ごそうって言うのはありますものね…それにしてもサキュバスとしての欲情が長いですわね。
ご家族はどうして放置しているのでしょう?」
「多分だけど…サキュバスの力の制御のやり方を覚えさせようとしているのかも知れないね」
サニカはフルーツタルトと紅茶をニヴァ姉さんの元に置き俺の座っているテーブルの椅子に座った。
「…確かにそうかも知れませんわね」
「親世代の時はどうだったんだ?」
「ナオハルは夢魔だから性欲とかは普通だったよ」
「夢魔は似てるようで似てませんもの」
「サキュバスは夢の中や現実で精力やらを欲しがるけど夢魔は他の人の悪夢や普通の夢を食べれば充分だからね」
「それだと祖父母の時がヤバかったんじゃ」
「…ナクモはとにかく堅かったよ。ナクモは母を反面教師にしてたから。
でも無理やり自身を抑え込んでいたから余計にキャパオーバーになると反動がね」
「なんか凄そうですわね」
「ナクモの時はキャパオーバーで女子すら襲ったから」
……発散しないとそこまで行くのか…。
「コチラも対策を取らないとガチでナナヤの童貞が奪われるかも」
「「え」」
「トランス状態みたいだから」
「ナクモさんの時との違いは?」
「ナリノがナナヤを付け狙うのはナナヤを使って多少の発散をしてたからと、この島での成人の年齢をナリノは越えたから少々抑えが効かなくなってるかも知れない。
まっコチラも伊達にサキュバスの一族と共存共栄してきた仲だから対策を練れるよ」
「…………………」
一抹の不安を抱えながらのんびりしていると宿屋のドアが開くとルウカ先生とボロボロのレフィが現れた。
「ルウカとレフィは今まで何処に行ってたんだい?」
「少々、厄介な事に巻き込まれてな」と言ってルウカ先生はサニカ先生の元に来て肩を掴んだ。
「何?」
「悪いが後は任せた」
「えっ」
するとサニカ先生が光りに包まれた。
俺はそれを見て椅子から立ち上がったら俺の足を椅子の脚に引っ掛け光りに包まれたサニカ先生に触れてしまった。
「「あっ」」
俺はサニカ先生と共に何処かに飛ばされていった。
その場にいたご老人たちがお茶を一斉に吐いた。
「なっ!」
「えぇー!」
「なっナナヤが!!」
「ルウカ先生!」
「まさかナナヤが立ち上がって足を椅子の脚に引っ掛けるとは…少々厄介な事になったかもしれん」
「ナナヤは直ぐに帰ってこれるのですか!?」
「…………暫くは帰ってこれん」
「何故ですか!?」
「オレがサニカに触れたのは時空を管理しているお偉いさんからサニカにやらせなければいけない事があると言われ触れたんだが……どの時代に飛ばされたかオレでも測れん」
「なっ!」
「ロルスにどう説明するのよ!」
そこに突然何かを落とした音が響いた。
物を落としたのはナナヤの父親でロルスだった。
「…ナナヤがどうのこうのと言っていたが何があったんだ?」
「………説明するかこっちに来てくれ」
「………………」
ロルスは無言の重圧をルウカに向けて放ちながら何が起きたか聞いた。
「………そうですか……ルウカ先生」
「何だ?」
「…本当はこのまま直ぐにでも先生であろうと殴りたいですが今は抑えておく事にします。
サニカ先生とナナヤが無事に帰ってきたら何もしませんが何か怪我をした状態で帰ってきたらおれは貴方を許しませんよ?」
「そうなったらオレを煮るなり焼くなりするが良い。
それとどうしてサニカが消えたかは二人が帰ってきて話す」
しばらくの間、クレイバール島はとても重苦しい空気がながれる事になった。
そして数日後の【カフェ・ド・ラブリー】では。
「レフィはルウカ先生に巻き込まれて先生の生まれた地球で5年過ごしてたノ!?」
「あぁ、だから皆より少し年上になっちゃったよ。帰ってくるに当たって居なくなってから2週間ぐらいのこの世界に飛ぶように設定して戻ってきたのも遅くなった要因だな」
「……アタシの知らない所で大人になるなんて…レフィの親不孝者っ!」
「ミーはラブ先生の子供じゃありません」
「冗談よ……ナナヤに関してはサニカが一緒なんだからきっと大丈夫よ。気長に待ちましょ」
「それにしても無敵の宿屋が無くならないのはどうしてかしらね?」
「推測だが飛ばされた先では【火天の宿屋】の方を使っているんだろう。
あの宿屋シリーズは特殊だから次元や時空を越えても効果は発揮するからな」
「……先生、それで授業はどうなるんですか?」
そうキユクは聞いた。
「少ししたら…お前たちには向こうの世界の調査を始めてもらおうと考えている」
「この時期にやりますか?」
「あぁ。その代わりオレの写し身を同伴させるけどな」
「アタシ達も付いてくからそこの所ヨロシクね?」
「……先生たちが同伴か」
「それくらいしないと親たちか納得しないよね」
「まずは班を決める……まずは―」