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元勇者の転生人生記録  作者: 冬こもり
【3度目の人生編】
221/556

鍋祭と祖先達

【クレイバール学校】


《校庭》



「…全員揃ってましたね」

「そうだな」

「ふたりともおかえりなさい」



心配だったのかマコトは校門の前で待っていた。



「姉さん」

「怪我とかはありませんか?」

「僕は大丈夫です」

「俺も平気だ」

「そうですか…ならサニカ先生に物を渡して来てくだい。キユクも報告が終わり次第大鍋の方に来てくださいね」

「わかりました」



俺達は秘薬が置かれていたテーブルの所にいるサニカ先生の元に向かった。



「先生、ただいま戻りました」

「ふたりともご苦労さま。怪我とかない?」

「大丈夫です」

「そうかい…それで人狼は?」

「それが…」



さっきあった事を伝えた。



「人狼が砂になった?……その砂はあるかい?」

「一応採取して持ってきた」

 


アイテムボックスから砂の入った瓶をサニカ先生に渡した。

サニカ先生は太陽に瓶をかざし中身を揺らした。



「コレはまた………」

「何かあるのですか?その瓶の中の砂が」

「取り敢えず先にそれぞれの大鍋の方に向かって食材を渡しに向かいなさい。

この砂の事は鍋が出来たらちゃんと皆の前で話をするから」

「はーい」

「わかった」



ナナヤとキユクがそれぞれ大鍋の方に向かって行くのを見守りながら瓶に入った砂を見てため息を付いた。













《男子の大鍋》



「イーヒッヒッヒ!イーヒッヒッヒ!」



大鍋に大量の水を入れ火を付け大鍋を奇声を上げながらかき混ぜるルニスがいた。


「……………」

「ナナヤさん、おかえりなさい」

「あぁ」

「ルニスさんって昔から大鍋を見る役を必ずやって、かき混ぜる時に奇声を上げますよネ」

「永遠の幼な魔女の愛弟子であ「………………(ナナヤが持ってきた食材をくれる?)」

「そうだな、俺が採取して来たのは…」



アイテムボックスから野菜や果物や泳いでいる時に捕まえた魚を渡した。



「おぉ………大量……」

「流石ナナヤさんですネ!」

「ここの男子の中で一番戦闘力が高いだけはある」

「我が同士「そこの中二病モドキはナリノさんと同じく野草しか持ってきてないし」…だって怖かったんだもん!」

「だもんて……」

「次に凄かったのはオイラだな!」



フルーレもアイテムボックスから既に処置が施された鳥×3を取り出した。



「鳥肉………」

「それも3羽」

「既に下処理は出来てるなら捌くだけ」

「それにしても良く捕まえられましたネ」

「凄いだろ?」

「まぁ…うん…凄ね……透明化の秘薬を使ってのだよね?」

「………ナナヤさん見たいに生身で挑む勇気はねえ」

「臆病者とは呼ばないよ(自分は校門を出て直ぐの野草と木の実しか取れなかったし)」

「…大鍋の前で奇声を上げてる人の為にも捌いて大鍋に入れてあげないと。いつまでもお湯だけを混ぜ混ぜさせてるわけには行かないからさ」

「そうですネ」



男子達によるレッツクッキングタイム!サニカとラブナシカによって幼い頃から仕込まれた調理法を使うぞ!と言った意気込みで調理を始めた。








一方《女子の大鍋》では。 




「それでは始めるでござるよ」

「鍋奉が行きたワ」

「……食材はどれから入れていくのですか?」

「まずはー」



ナリノの指示により効率的に野菜やキノコや魚という鍋の具材が入れられ煮込まれてゆく。



「後は煮込み過ぎないように様子を見て火を止めるでござりまする」

「火の取り扱いはアタシとキユクでやる」

「わかりました。頼みましたよ」



残りの女子はナリノが採取した野草の仕分けを始めた。



「あー…いい匂いが漂ってくる〜」

「ピリアは野草の仕分けをしてください」

「わかってます〜」



賢者の石で出来ている島なので普通の雑草は生えないので島

のご老人や魔女様に何か持って来いと言われると、身近にある錬金の材料になるその辺の草を持ってくれば何も言われないので子供たちは何か採取しなければいけない時に必ずその辺の草を採取するのである。


年上の女子たちは野草を仕分けしながら話をしていた。



「……流石のうちもウリボーに変身はビビったワ」

「そりゃ…ウリボーになってたら命の危機を感じるんじゃないの?ヤバそうな人狼がいたし」

「それもそうだけド……速度アップの秘薬が無ければ食われてたわヨ。多めに貰っておいて正解だったワ」

「シェルフィナも行きたがってましたが今回は留守番させて正解でしたね」

「本当にそう思うワ」

「確かに、あたしたちが見知っている学校の周辺なのにいつもと何か違うものね」

「サニカ先生もそこまで強制しなかったもノ」



だいぶ煮えたとキユクが合図した。



「では野草の仕分けはここまでにして大鍋の元に向かいましょうか」

「そうネ」

「鍋が待ち遠しいわ〜」

「先程仕分けした香草も一応持っていきましょう」





こうして二組の大鍋が出来上がった。







【クレイバール学校】


《校庭》



「二組の大鍋は出来たかい?」

「バッチリ出来ましたよ」

「では1時過ぎたけど食事を始めようか。まずは男子チームの鍋からだね」

「では」



サニカ先生が指を鳴らすと校庭にテーブルや椅子か現れ並べられテーブルの上には俺たちが作った鍋がそれぞれの丼ぶりに盛られていた。



「それぞれの席に付いていただこう」



全員が席に付いていただきますと言って食事が始まった。



「はぁ〜…温まりますね……それに美味しいです」

「寄せ鍋ね……温まる」

「肉と魚からの出汁が出ててうめぇ~!」

「んーっ旨いっ!」

「コレはなかなかネ」

「……………………(美味しい)」



山の幸をふんだんに使った鍋はやはり旨いな、頑張ったかいはあった皆も満足しているみたいだ。


そして皆が食べ終わり女子チームの作った鍋を食べることになった。



「コレは…シチュー?」

「はい、学校の冷蔵庫に保管されている牛乳を使いトロミを付けるのに米粉を使いました」

「シチューか…ならパンも必要だね」

「先生?」



先生はアイテムボックスから湯気が出ているまるパン×2を取り出しそれぞれに配って行った。



「女子チームの鍋もいただこうか」



そこからがまた早かった。

まるパンにシチューを付けて食べるとまたまた絶品で数名がまるパンをお代わりしていた。


サニカ先生は食べている様子を見て楽しそうにしていた。



「はー……美味しかった〜」

「満足です」

「ワン!」


残った鍋は俺たちのアクセサリーの中に居る相棒達にも振るわれとてつもない程の速度で完食していた。

少しの食休めが入り落ち着いた。



「サニカ先生、あの砂に付いては?」

「キユクやナナヤが言ってた物のことか」



サニカは少し何もと言えぬ表情をしたが話しだした。



「皆も落ち着いたみたいだし話すよ。

…あの砂は【錬金砂】と呼ばれる特殊な場所でしか手に入らない土を使い、そこから更に錬金術によって錬成された砂で元はこの島で育ち、変化のないクレイバールから出たいと言って出てて行ったアルオスと言う人物しか作れなかった砂だよ」

「………何世代前だ?」

「5世代前だね」

「となると…約1000年前か」

「5世代前で約1000年前…」

「確か5世代前の島民たちは特に仲が良かったから今は異世界で第二の人生を楽しんでるよな?」

「え…生きてるの?5世代前の島民たち」



モーリンは少し驚いていた。

…死んだとは言ってなかったから驚くのも当たり前か。



「5世代前の先祖たちはオレたちがコレから向かうモーリン先生の生まれた世界の方の何処かの火山地帯でひっそり暮らしてるはず」

「…………」

「他のオイラたちの先祖の長生き組はこの島の生活に飽きるとこの世界から出てそっちの方で暮らしてるぞ。

一部を除いてだけど」

「……だからこの島に本当に年老いた隠居たちが居ないし年若い祖父母が居るのね」

「フリーダムな人達だから」

「……村だった頃はそんな隠居は居なかったわよね?」

「時代と共に変化するものさ。村だった頃に居た隠居達はある程度になると天空島の【天の島】で生活してたから」

「あっ……そうだったわ」

「向こうの世界に移り住んでる数世代前の子供達は子供達で上手くやってる。

そっちの方でも数世代前であろうと肉体は若いから子供も生まれてるみたいだよ。

この島から出て本格的に独り立ちした子供たちの世話をいつまでも焼くのは……ね」

「何で向こうの世界が今もしぶとく残って居るのかわかった気がするわ……それにしても子供たちは良いの?」

「何がですカ?」

「知らない所で親戚が増えてるのよ?良いの?」

「別に構いワ。そうよネ?」

「親戚と行っても血の繋がりが多少あるくらいですからネ」

「それに代を重ねてわたし達の中に流れる血脈とは全く違うものだからね〜それに生殖機能がある生物となれば自然とそうなるわよ〜」




………この子たち精神力がタフネス過ぎるわとモーリンは心の底で思った。




「その時代の島民がどうして仕掛けてきたのでしょうか?」

「まぁ……本人じゃなくてもその子孫がやった可能性もあるわけだから」

「確かに……サニカ先生、それで捕まえきれなかった土人形はどうするんです?」

「ナナヤとキユクのおかげで土人形の正体がわかったからね、今から私が捕まえに行くよ」

「逃げられるんじゃ…?」

「逃げられたって良いんだよ。この瓶の中に入っている砂の魔力を辿ってこの島の賢者の石の成分とは違っている場所を狙えば良いから」



それだけ言うとサニカは椅子から立ち上がると「大鍋の片付けは良いから、私がどの様に動くか見たければ屋上に向かいなさい」とだけ残し校門に向かって歩き出した。


俺たち生徒は全員で屋上に向かった。







《クレイバール学校…屋上》



「…サニカ先生かいる所は…俺たちの畑か」

「あそこって土人形からしたら良い隠れ家になるよな」

「動き出したワ」



サニカは土人形の居場所を特定するとその場所を凍らせた。



「あれくらいなら僕達でも出来ます。凍らせた土を容れ物に入れて封じるんですよね?」

「そうだよなー」

「キユク、フルーレさん」

「何ですか?」

「二人共、良く見ておきなさい。どうしてサニカ先生が今回わたし達を土人形の元に向かわせなかったのか」




視線を外していたが視線をサニカの方に戻すと凍ったはずの土がマグマの様に変化し溶け出した。

そしてそこから大きな人型の土人形に変化したのだった。

そのマグマの様になった土人形はキユク達ですら追えない速度でサニカに襲い掛かった。



「オイラ達が見た奴と動きから違うぞ」

「……小さいオジサンや人狼は土人形が力を分散した分身だったのですね」

「そうです、あの土人形はキユク達に対して本気を出してなかったのですよ。

そしてサニカ先生も言いましたが、あの土人形は元島民の方かその子孫が作り出した物だとしたらあんなレベルで済むわけがないんです」

「…高度な知能を持つ魔物だったと言うことだ」

「我々は舐められてたと言うことか…」

「舐められて無ければ結構な怪我を追ってました」

「もしあのまま食べられていたらどうなってたんだろう?」

「たとえ直ぐに助け出されたとしても大ヤケドでは済まなかったですヨ。生死を彷徨うことになるでしょウ」

「…だよな」



土人形についての意見を出し合い話しているとソウビが突然「終わった」と言った。



「サニカ先生、もう土人形を捕まえたの?」

「うん……」

「襲い掛かって来た土人形に対して闇属性の鎖を地面の中から出してそのまま縛り上げて土人形の魔力を搾りその魔力をサニカ先生の相棒の譜月フウゲツに食わせたでござる」

「そしたら砂になった……」

「相変わらず手際が良いな」

「あたし達もどんな属性の鎖でも良いから作れるようならないとですねー」

「このメンバーの中で鎖を作れるのはナナヤとキユクとマコトとメルファとラタムだもんな。何かコツでもあるのか?」

「イメージですね」

「イメージを働かせるしかないワ」

「魔法の鎖を作れる奴らのセリフがコレだもんな」

「早く作れるようになりたいものですわ〜」 






◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇








【クレイバール学校】


《校庭》


「コレでもう大丈夫だね。安心して学校周辺をウロウロすると良いよ」

「残りの時間はどうするんですか?」

「……つい先程、ラブ先生から元【ピンク島】…現在は【インクグート島】と呼ばれる島に封印された重要な人物が何処にいるか見つかったらしく回収してきてくれと連絡があった」

「インクグート島って500年前にラブ先生が手放した島…」

「この世界からイルミナットの島民やインクグート島の島民を追い出してしまえば良いのに…」

「シェルフィーから黒い感情が溢れ出てまス」

「もし本当に馬鹿をやるもんなら問答無用で叩き出されると向こうの島民達はわかってるから手出ししてこないでしょ?」

「…そうですね」

「それに…そういった悪さを積み重ねて【イルミナットの悲劇】が起きたんだからね」




【イルミナット島の悲劇】は必然的に起きたことだった。


500年前の【イルミナット島】の島民達は突然なにを思ったのか「この世界を自分達の物に出来るのではないか?」と急に野心が芽生え私達から主権を奪い自分達の好きなようにすると。


まずラブの義娘達が今の人生を卒業すると言って輪廻の輪に戻りピンク島をラブの代わりに代行をしていたキトリエスとその部下のフリルデーモン達しか残っていたかった。


当時のイルミナット島の島長がイルミナット島に住み着いた魔道士と共にキトリエスと部下を【聖域封印】で封印し島を手にした。


ラブもその一部始終を見ていたがキトリエスからの最後の連絡を聞いてニチャァと不敵に微笑んでいたのを覚えてる。

ラブは教えてくれなかったがキトリエスは一旦、封印されて良いとの事だったのでそのまま放置すると言った。


それから直ぐにイルミナット島の島民達が攻めて来ると思われたが【ピンク島】に住み始めた人たちがショッキングピンク色の景色に精神に異常が現れ攻める所ではなかった。


【ピンク島】から【インクグート島】と直ぐに名前を変えたがショッキングピンク色が抜けるまで420年も掛かった。

当時の魔道士の血筋は今も残っているが、最近になって怪しい動きをしているのでマークしている。



「……その悲劇って大人たちは教えてくれないよな」

「無理よ。あんなの絶対に話せないし見せたくないわ」

「なに、モーリンは見たのかい」

「あんな△☆○✕な映像は子供たちにも一般人にも見せられないわよ!」

「規制音が入った…」

「サニカは見てないの?」

「予想は出来るから見たくもない。大昔にあったとある邪教徒の地下施設で行われてたピーーーーーな事が起きていたんだろうからね」

「先生たちは一体何を見たんだ…」

「サニカも見てるんじゃないの…そういの」

「冒険者ともなればそういうのは見ちゃう時があるからね。そんなのはフィクションで嗜むぐらいが良い、リアルで見るもんじゃない」



サニカはそう言って話を無理やり終わらせた。



「さて、残りの授業の時間は動ける子で早速だけど【インクグート島】へ潜入とラブが求める人物の奪還と行こうか。

ルウカが作った仮面と特級裁縫師が作った服も学校にあるし」




「…へっ?」とその場に居た全生徒がそう発した。





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