きゃー!ケダモノに襲われるっ!
【クレイバール学校】
《芽吹きの森……北東にある畑》
『ナナヤさん、その辺りは人狼たちはまだ居ませんので食材を探しても大丈夫かト』
「了解」
『次はフルーレのいる方を見ますネ』
「頼んだ」
俺たちのチームはラタムとルニスが校庭に残り見張りと探知をしている。
残りが採取しに向い俺が向かったのは学生たち専用の畑である。
……今の時期に実っているのはアケビや柿やブドウに栗やカボチャにサツマイモ…秋に旬を迎える果物や野菜ばかりだな。
女子チームは来てないのか。
どの辺が熟れた実があるかな…。
俺は取り過ぎないように注意しながら収穫し栗を拾おうとして何かの気配を感じた。
「……………何か……来る」
俺は体を正し腰に掛けてある刀の鞘を利き手で握った。
「来る」
俺はコチラに来た何かを斬りつけたがかわされた。
『ひぃい!!オバケぇえ!!』
「置物っ!」
『ぎゃぁぁぁ!殺されるぅう!!物騒なの持ってるぅ!』
俺はまた近付いてきた置物を今度は真っ二つにするとちっさいオッサンが出て来て距離を詰めて『怨めしぃい!』と今にも襲い掛かって来ようとしたが俺は厚い手袋をしたままなのを生かして毬栗を足で蹴り上げ掴み投げつけた。
『痛っ!何これ!痛っ!』
俺はここぞとばかりに毬栗を投げて距離を取り刀を抜き斬りつけた。
『ぎゃぁぁぁ!何で!何で刀が通るの⁉すり抜けるんじゃないのかよー!』
「滅せ」
『誰が滅せられるか!…ここは一旦ドロンとしますか!
』
モクモクと煙がちっさいオッサンを包み込むといつの間にか消えた。
その直後にルニスから通信が飛んできた。
『ナナヤ、大丈夫か!』
「大丈夫だ」
『連絡を入れられず悪かった。お前が襲われるなんてな』
「こちらは対応が出来たから大丈夫だ。それよりソウビたちは大丈夫なのか?」
『アンエルタは学校周辺に仕掛けた罠を上手く使いイレギュラーの一体の【泥人形】から上手く逃げ切って校庭に戻って来た。
フィリムは校門近くで野草採取してるから平気みたいだ。
ソウビはそもそも校庭から出ないで校庭の遊び場の周辺に生えてる木の実を拾ってやがる。
それよりナナヤは何と遭遇した?』
「俺は置物に入っていたちっさいオッサンと遭遇した」
『置物…ちっさいオッサン…』
「俺の刀で置物は切れたが中身に逃げられた。あと「何で刀が通るの?すり抜けるんじゃないのかよ」と言ってた」
『了解、女子チームにもこの情報を共有しておく』
「頼んだ」
通信が切れた。
あれくらいなら俺でも対応出来そうだ。
ここから近いのは川だな魚でも釣るか。
《芽吹きの森…清水の小川》
「…………ナリノ、大丈夫か?」
「あら、ナナヤでござりまするか」
「どうしてこうなった」
「人狼に追い掛けられアンエルタたちが仕掛けた罠に嵌まったでござる。木に吊るされた拙者を見て人狼はそのままスルーしていったでござるよ〜」
ナリノが木から吊るされていた。
「大丈夫だったのか」
「あの人狼、メスでござりまする」
「突然どうした」
「拙者の感がそう訴えてるでござる」
…俺はナリノの罠を解いて解放した。
「助かったでござる。ナナヤはコレから何をするでござりますか?」
「釣りを嗜もうかと」
「サニカ先生は協力しちゃ駄目とは言ってなかっでござるな……ナナヤ、向かい側を宜しいか?」
「別に構わない」
俺とナリノは釣り糸を垂らし魚釣りを始めたが周辺から「ぎゃぁぁぁ!」とか「ちっさいオッサンがぁあ!」とか「イヤァァァ!」とか悲鳴が聞こえた。
「騒がしいでござる…魚…」
「…ナリノ竿が引いてるぞ」
ナリノも手慣れたものでヤマメを釣り上げた。
「おぉ…結構な大物でござる」
「ホントだな」
「こうしてると小さな頃を思い出すでござりまする」
「良く休みに釣りとか夏はルウカ先生同伴の川遊びとかしてたからな」
「そうでござりまっ」
俺は背後に気配を感じナリノと共に制服のまま川に飛び込だ。水面まで上がると俺の居た場所に泥人形が立っていた。
「ぎりぎりのラインだったな」
「………あの泥人形…大口を開けてるでござる」
「俺を頭から食らうつもりだったのか」
泥人形は俺たちを見て口をぎりぎりさせているのはなんとなくわかった。
そして泥人形は形を変えて俺の姿になった。
「「!」」
「こんなものか…」
俺に化けた泥人形が嫌らしい顔で声真似して笑った。
「変身したでござる!」
「ルニス!ラタム!」
俺は直ぐに通信を繋げた。
『どうしましたカ?ナナヤさん』
「泥人形が俺の姿に化けた!それと本物の俺はナリノと行動し服が濡れていることも皆に知らせてくれ!」
『わかりましタ!ナナヤさんとナリノさんは大丈夫なのですカ!』
「俺とナリノはこのまま川を下って野いちごの群生地から一旦、校庭に戻る」
『了解しましタ!どうか怪我なく帰ってきてくださイ!皆さんにはナナヤさんかナリノさんあったら逃げるように伝えておきまス!』
「頼んだ」
ラタムは通信を切った。
「ナリノ、このまま川を下って校庭に戻るぞ」
「その前に寄りたい場所があったでござりまする」
「寄り道は出来ないぞ」
「野いちごの藪から行ける場所から校庭に戻る道にあるから大丈夫でござる」
俺とナリノは泳いで川を下だり浅瀬に着くと野いちごの群生地へ向かった。
《芽吹きの森……きのこ群生地》
『キユク、気を付けてくださいね』
「了解しました」
マコトからの通信が終わり周囲を見渡した。
「泥人形が変身ですか…なかなか厄介そうですね。僕も校庭に戻りましょう…キノコもだいぶ集まりましたし」
『そうネ』
「……違和感が凄いですね」
『变化の薬を飲んだらこの姿だったワ』
メルファは变化の薬を飲んだ。
すると可愛いミニマムなウリボーに変化したのだった。
そしてその特性を活かしキノコ狩りや地面に埋まっている食材を採取しながらキノコの群生地に向かいそこでキユクと合流したのである。
『ふんふん………嗅いだことのない匂いがするから二手に分かれた方が良いかもしれないワ』
「僕の方が動きやすいので裏から学校の校庭に戻ります」
『ウチはこのまま正面突破して帰るワ』
「大丈夫ですか?」
『大丈夫ヨー』
「では」
ここからメルファとキユクは二手に分かれ行動開始した。
…メルファさんが人狼に見つからなければいいですが……人狼に捕まったら丸焼きにされてそうで怖いです。
そろそろ野いちごの群生地に着きそうですね。ついでに野いちごが実っていたら収穫しましょう。
キユクは野いちごの群生地にあと一歩で付きそうな時に「こっこの!」と怒鳴り声が聞こえた。
この声はナナヤさんですよね?どうしたのでしょうか、向かった方が良さそうですね。
キユクはガサガサと細い枝をかき分けながら野いちごの群生地にたどり着いた。
「意外と力が」
「可愛いボーイねっ!人間の癖に力があるじゃないの!」
キユクが見たのはナナヤが人狼に組み敷かれそうになっている光景であった。
「人狼っ」
「本当に可愛いじゃない〜!食べちゃいたいわっ!」
ナナヤは鞘に入った刀を使いなら組み敷かれない様に抵抗していた。
キユクは自身のアイテムボックスから刺股を取り出し人狼の横脇に勢い良く当てて力一杯に押すと人狼は刺股に押され地面に押し付けられた。
「キャウ!」
「…………助かった。ありがとう」
「どういたしまして。…そう言えば一緒に行動していたはずのナリノさんは何処に?」
「人狼と遭遇した時に逃した」
「それでこうなったのですか」
そこにマコトからの通信が入った。
『良かった。ナナヤさん無事でしたか』
「どうにか」
「姉さん、どうしたんですか?」
『コレだけは早めにと思い連絡を取った次第です。つい先程ですがナリノさんがその辺の草を持って帰ってきましたので安心してください』
「そうか」
『それとサニカ先生が刺股で捕まえた人狼をその辺の蔦で縛り上げ連れてきてくれとの事です』
「了解しました」
『校庭まであと少しですが気を付けて戻ってきてくださいね』
「了解」
『ではまた後で』
通信が切れ俺とキユクは刺股で捕まえた人狼の方を向いたが人狼の姿が無くなり大量の砂の上に刺股が刺さっているだけになっていた。
「これは」
「砂だな。…一応この砂を持っていこう」
「そうですね」
ナナヤはアイテムボックスから空き瓶を取り出し砂を入れた。
キユクも刺股をアイテムボックスにしまい校庭まで気を抜かずに校庭まで戻っていった。