元魔王の悲劇or喜劇
「おはようラセスとセルクシア…ミストルは?」
『このバカが余計なこと言ってサニカ殿とルトラウス殿が危険だと言っていた桃色神殿跡に向かいました全速疾走で』
「マジか!なんでだ…危なくないか!あそこはヤバい魔物が出るってばあちゃんとじいちゃんが!」
『すまんボス…』
「オレたちも向かうぞ!ラセスの反省会は後でな」
その時ピューーと空から魔王が降ってきたとさ。
「ティルクス!見つけたぞ!」
「今は忙しいから帰れ!」
「いきなり妻になる者に対して酷くないか!……そう言えば銀髪の生意気な小僧が居ないが…もしかしてケンカしたのか?」
「何んでか知らないが突然桃色神殿跡に向かったんだ」
「なんじゃと!桃色神殿跡だと!…そうはさせんぞ!」
元魔王も急に飛び出して行った。
「突然来たと思ったら急に飛び出してどうした」
『ボス私たちも向かうぞ』
「カフロルトの女王には悪いがミストルが居ないことには意味がないみたいだからな、向かうぞ!」
ラセスの背に乗って風魔法を使いMAXのスピードで向かった。
桃色山頂上
桃色神殿跡の外
「ここが桃色神殿跡か…」
『ショッキングピンクだらけでキモいです』
「この中にミストルと元魔王が居るんだよな」
『そうだな…』
「ミストルと元魔王も無事で居てくれ」
オレ達は神殿の祭壇に向かって歩き出した。
「あらあら~随分強そうな子が入っていったわね~ふふふ楽しみね~オネエサマ達を呼びましょ!」
神殿内部
「なんなんだよ、この中!筋肉まみれじゃねえか!」
『イヤァアア!オカマンイーターも居る!ドラゴンの天敵!』
『オェ…気持ち悪くなってきた』
ラセスたちもブレスを吐いたり突進したり前足でどついたりしていたが筋肉だらけで物理が効きにくい!
「どうやって進んだんだ?ミストルと元魔王は!」
『魔法を使うのです!ティルクス!』
「無詠唱で行くぞ!【トルネード・ジャベリン】【アクエリ・ウェーブ】【フレイム・サン】【アース・スペール】!」
風、水、炎、土魔法を連続で使い押し流したが妙にタフ過ぎる!そして強い!ミストルと確保出来たら元魔王を見つけたらさっさととんずらするぞ!オレにはまだこのダンジョンクリア出来ん!
「うぉおおお!ミストル!元魔王!どこだぁあ!!」
と探していたらいつの間にか祭壇にたどり着いた、ふたりはゴブレットを取り合っていて止めるためにオレも側に向かった。
「離さんか!これはソナタが使って良いものではないわ!」
「これを使わないと僕は死活問題なんだよ!」
「女になろうとしているのだろう!」
「そんなわけないだろ!僕は男に戻りたいんだ!」
ん?ミストル男に戻りたいと言ったのか?どういう事だ?
「そんなのは言い訳じゃろう!」
「テスと僕は結ばれないよ!」
「だったら離さんか!」
「嫌だ!」
「ミストル!どういう事だ!」
「何でテスがここに!」
すると力が少し抜けたらしくミストルからゴブレットを奪った元魔王カフェルネが「これで何も出来んわ!」と言った瞬間にバランスを崩しゴブレットごと落下した。
「「「あっ!」」」
元魔王はゴブレットに汲んであった水を顔に被りピカッと光ったすると。
「危ないところだったぞ!」
「元魔王なのか?」
「ティルクス!これで我輩達の邪魔をするのは居なくなった!結婚しろ!」
「無理だ!男になったお前とは結婚出来るわけないだろう!オレはノーマルだ!」
「なんだと!我輩が男だと?何を言っているんだ!………そう言えば胸の辺りが軽いな…って全裸になってる!しかも何か生えてる!?」
「僕が使うはずだったのに!」
「えっ」
「最高のショーじゃない!」
突然祭壇の入り口に筋肉もりもりの女装をした男達がぞろぞろ出てきた。
「惜しかったわね~」
「誰だこの変態どもは!」
「元魔王さんたら怖いわ~」
「怒ったお顔もす・て・き♥️」
「貴様らのような変態が我輩の事を知っている!?」
「それはね?」
カツンカツンと足音をならしながらとても豊かな胸を持った高貴な服を着た同じ年位の女性が現れた。
「叔母様…じゃなかった叔父様これでわたくしはあなたと結婚できますわ!」
「ウィリア!どうしてここにいる!魔王の仕事はどうした!」
「お父様に代わって貰ってますの」
「姪とは結婚出来るわけないだろ!兄上は許さないだろ!」
「関係ありませんわ!わたくしは母様と同じサキュバスなのです…あぁ…やはりわたくしの目に狂いはなかった!」
元魔王…立派なもの持ってるもんな…何がとは言わないけど。
「魔王様…後であたしもいただいても宜しいでしょうか?」
「あなたの思いつきのお陰で出来たことですからね…わたくしの後なら一度だけ良いでしょう」
「ありがとうございます、魔王様」
「どうしてここにフォンスレスが居るんだ!」
「…あなたに仕えていた時から男になったら最高の物を持つでしょうと考えていたのです!」
なんか残念な会話をしているが…仕えていた時から慕っていたのか。
「貴様は男だろ!」
「あたしは男が好きなの!!」
こんな所でカミングアウト止めろ!元魔王に精神ダメージが!
「なんだと…我輩をじろじろ見ていたのはスタイルが良かったからじゃないのか!」
「違いますよ…この神殿は大昔からある神殿…ここをお作りになった神は全てを愛す至高の方!あたしも目覚めたのです!そしてこの場所は新たな道を開いてくれたのです!」
「ゴブレットに水を汲まねば!」
「無駄ですよ?叔父様」
「「えっ?」」
「ゴブレットの水が神聖な水に変わるまではざっと百年掛かりますから」
「性別が戻る前に夫になる者が死んでしまう!」
「そんな……!」
ミストルは気が抜けたのか祭壇から落ちオレは急いでミストルを受け止めに行って受け止めた…なんか軽くなったな。
元魔王に女装をした男達がにじり寄っている。
「あなたはどうなされますか?」
「どうするとは?」
「新たな道を歩きますか?」
「あっ必要ないです」
「そう…あなたなら素敵な方になれたのに断念ね~」
「あらあら残念…」
「どうしてこの者達は強引に入れようとしない!」
元魔王止めろ!オレたちを巻き込むな!
「この方たちを襲ったら【賢刹の天使】と【一刀両断の妖精】と狂犬に襲われますわ…それにバルセイルに怒られますの」
「オレたちの事を知ってたのか」
「魔王になるとあの村の事は教えられますから…手を出すなと、それに賢者ルトラウスの子供の証を持っているではありませんか」
『賢明な判断だな』
『私たちの目的は果たされました、帰りましょう!早く!』
「帰るか」
「ティルクス!我輩を見捨てないでくれ!」
元魔王が助けを求めてきたどうしよう。
「…元魔王助けたら何をしてくれる?」
「我輩が聞けて出来ることだけならソナタの話を聞こう!」
「魔王さんや」
「はい、何でしょう?」
「もし魔王を連れて逃げたら何か仕掛けてくるか?」
「今は退きますが、あなた達の村には手を出しませんけど叔父様がいる限り追います地の果てまでも」
「そうか…なら先に退かせて貰う【転移】」
オレは今回は逃げ切れると確信して元魔王ごと取り敢えず隠れ里ファイズマに転移した。
「魔王様…転移魔法使いましたよ」
「我々ですら使えない魔法をいとも容易く」
「麓の村はやはり凄いですわね…バルセイルの育った村で三千年前の生きる英雄がいる場所」
「先代を使いあの青年を仲間に引き入れた方が宜しかったのでは?」
「…カフェルネ叔母様は魔族にとって必要な人なの簡単に渡せないわ、魔族の中の魔神教のスパイを全員引っ捕らえ革命を起こそうとしていたのを鎮圧したのだから、これでひとまずどうにかなったけど、今のところは殺される心配はなくなったからね、わたくし達も帰りましょう…オネエサマ達助かりました」
「報酬は革命を起こそうとした貴族と魔神教の子達を貰っていくわね?」
「煮るなり焼くなり好きにしてください」
「楽しみね~魔族なんて何百年ぶりかしら~」
「ではこれで」
「またのご利用を…ご贔屓にね?」
魔王たちもバルセイルに渡されたアイテムを使い引き上げて行った。
「さてと…あたしたちもお姉さまの元に魔神教どもを連れていきましょう…それから魔族のイケメンたちと遊びましょ!」
そして桃色神殿跡の祭壇は静かになった。