放課後
【クレイバール島】
《無敵の宿屋……食堂》
「…やっぱりここが落ち着くよな」
「レディーたちはラブ先生のカフェだけどな」
「………」
「ルニス…うちらは男だと言いたいノ?」
「イヤ、そんな事ないが言い方が悪かったなら謝る」
「皆さんが集まるのはカフェか宿屋の食堂ですもんね」
宿屋の食堂に部活帰りに寄ったのは俺とソウビとルニスとメルファとキユクの5人でグダグダと会話して過していた所に店主が現れた。
「その当たりは昔から変わらないね。君たちの親も祖父母も君たちぐらいの頃からこの場所でグダグダとしてたよ……はい、ハーブティーのおかわり」
「ありがとうございます。サニカ先生」
「先生、プリン・アラモードある…?」
「うん、プリンがさっき出来上がったから出来るよ」
「プリン・アラモード1つ……」
「あっそれなら僕もください」
「うちもプリン・アラモード1ツ」
「合計でプリン・アラモード3つね」
「良く食えるな…夕食の定食で充分だぜ」
「ルニスは大盛り頼んでるからヨ」
「俺はおかわりのハーブティーだけで良い」
「わかった」
注文を聞いてサニカは厨房に入って行った。
「…それで決まったノ?」
「……行かない」
「あー……オレもクレイバールに残る」
「何か嫌なものでも見たか?」
「今さっき何度も占ったんだが女性関係で揉めるって出たから止めとく」
「先祖の生まれた世界がどんな所なのか気になりますが…大人たちに聞くと何とも言えない表情をしますよね」
「確かにな」
「向こうの世界の情勢に詳しいのは向こう島よね」
「小学校の時に交流したキリだからな」
「【イルミナット島】の生徒に対して先生方が激おこになったもんなーアレは今でもオレですら覚えてるぞ」
「…………交流会の時にボクも含めて……トラウマをね……」
「僕も未だに許せない出来事があります」
幼少の頃に起きた【事件】で交流会はしないし交易もしないからと島長であるソウビのお婆さんであるアジサイ婆さまが言い切った。
ルウカ先生とカーウェン先生の額には青筋が立っていたのを俺は見ていた。
だからと言ってサニカ先生とルウカ先生は自身で作ったもう一つの島である【イルミナット島】を取り上げずこの世界から追放しないで放置しているのは何でだろうか?
「向こうは変化を受け入れ異世界の人間を取り込むのが上手く人の行き交いの管理が出来ていて、こちらの島を標的にさせないためのデコイとしているからだよ」
「うおっ!」
「はい、プリン・アラモード3つ持ってきたよ」
「……普通に持ってきてください」
「考えが読まれた…」
「…確かに、この島は外とあんまり交流を持ちませんよね?」
「あのアジサイが本当に外の者はって怒ったからね…本当は交流を持った方が良いんだろうけどね」
「でもそのお陰で争いは起きないものネー。それでいて新しい物を平然と作ったり使ってるわネ」
「裏の歴史でも争いは起きてなかったのにな」
「まぁ…退屈だと感じだ子供らはこの島から出て異世界で好き勝手やってるからね」
「その割にはその異世界の管理者から責任取れとは言ってこないわよネ?」
「ガチの問題を起こしたらどうなるか分かってるから大きい問題を起こさないんだよ」
サニカ先生から放たれた言葉を聞いて皆「あぁ…」と小さく呟いた。
そして俺たちが居る席に何食わぬ顔で座った。
「それにこの島の子供らを外に出しても恥ずかしくないように教えてるつもりだよ…それに私やルウカもこの島の子供らを信頼してるからさ」
「へぇ〜」
「…家に帰ったら親の体験談を聞かないとか」
「うちは両親が居ないからサニカ先生から親が書いた日記を渡されてるわヨ」
「……それで何て書いてある?」
「最初は普通に書いてあったんだけど、途中から砂砂砂砂砂とか大きく一面に砂って書いてあって恐怖しか無いワ」
「あー……メルファのお父さんのメーミルが砂漠を冒険していた時の奴だね」
「……何か余計に怖くなってきました」
「小さい頃に母ちゃんから聞いたことあるけど荒廃している所が多いって言ってたな…世界が滅びに向かってるように見えたとも言ってたぞ」
「本来ならもっと早くに向こうの世界は破壊されていたのを私たち…シルトの村の子らと共に遅らせていたからね」
「確かこの島の以前の遠い祖先の頃の話だよな?」
「うん……それに本音は課外活動はまだしたくないんだよね」
「ならしなくても良いんじゃないノ?」
「それとこれはまた話が別なのさ」
「先生たちも複雑………」
「コレばかりは…この狭い世界だけを見て育つのではなく広い世界も見て欲しいからね」
サニカ先生は椅子から立ち上がると「星の泉には暫く立ち入らないでね?時空間が乱れているから」と言った。
「えっ何か起きたのですか?」
「この島を守る封印の魔法陣の一部が消されていて、特定の場所の時空が捻じ曲げられているんだよ」
「……………そうだったんだ(だから父さんたちが慌て)」
「犯人に付いては調査中だからね?…不審な輩を見かけても追跡せずに必ず私やルウカに知らせてね?」
「わかった」
「もし何かあるようならこの宿に泊まりに来るんだよ?」
「わかったワ」
それだけいうと今日の寄合所の管理の担当者と寄合所に居る老人たちに頼まれた料理を持って行くと言って宿から出て行った。
「……んー何かキナ臭いですね」
「サニカ先生とルウカ先生はオレたちを信頼してくれているので良いんだよな?…俺たちでも解決出来そうなのは少ないけど情報をポロッと流してくれるよな」
「……もしかしてアンエルタ」
「さっきから2時間も待ってるけド、こちらに来てないワ」
「……僕たち自身が行くのではなく相棒たちに様子を見てきてもらいますか?」
「サニカ先生は俺たちが行くのはダメだが相棒が行っては行けないと言ってないな」
「それだな」
「では」
俺たちはサニカ先生お手製のアクセサリーの中に居る相棒を呼んだ。
アクセサリーの中から犬型の魔物が現れた。
それぞれの犬の毛の色はソウビが薄茶色、メルファは白い毛の中に茶色のブチ柄、ルニスは黒、キユクも黒で俺の所は白が主体の三毛犬である。
「リンデ頼んだぞ」
リンデはコクンと頷くと宿から出て行った。
「ドアをガチャって器用に開けるよな」
「そして器用にドアを閉めるわネ」
「後は帰ってくるまでのんびりしてるしかないですね」
「……………眠い」
「帰ってくるまで宿題でもやるか…ソウビは耐えるんだ」
「賛成です」
「そうだな」
「あー…カバンに入っていた宿題ネ」
「…………………(眠いけどボクもやろう)」