自力で帰った担任
【クレイバール高等学校】
《高等科1ー1》
「……と言うことだからな」
「うわっ明日人狼ゲームかよっ!」
「しかも町を使った奴ですか……ひぇ〜」
「絶対にろくな事にならない気がします」
「それ本当にやるのルウカ先生?」
「おう、やるぞ」
「………最悪じゃないか」
「俺とサニカは今回は審判に回るから前みたいにはならんだろうな」
「そうなったらそれこそトラウマが増えるよ」
「どんなタスクが来るか戦慄します」
「そこまで身構えなくても良いだろうに」
「先生たちの作るタスクは身構えとかないと身が持たないんだよ」
「そうか楽しみにしておけ」
「先生たちの作ったルールの人狼ゲームした後は絶対に人間不信になるから楽しみじゃないよー」
「一皮剥けたと思えば良いと思うんだが」
「一皮どころじゃないから」
「ルウカ先生ー」
「ん?どうしたフィリム」
「自分たちを不快にさせたからルウカ先生の昔話をきかせてよ」
「……確かに気になりますね。あんまりそういった話はしてくれませんからね」
「んー……オレとしては話すのは良いが、サニカからはあんまりベラベラ喋るなと言われているんだ」
「確か過去の記憶から真名や弱点とかが特定とかされるからでしたよね?」
「そうだがたまには良いだろう、確か…バスの中でカラオケ大会が開かれていた時だったな」
〜ルウカの回想〜
「魔王様!勇者に対抗してくれると我々の呼び出しに答えてくれた者たちが現れましたぞ!」
「それは本当か!」
オレとクラスメイトとバスの運転手と先生が魔族の宰相に案内されてその世界の魔王と初対面させられたんだ。
「おぉ!魔力も順分な優秀な子供達ではないか!宰相良くやった!」
「今魔王って言ったか?」
「そうだったな、まずは自己紹介からいこうではないか。
我が名は魔王デスボイーストだ」
その時のクラスメイトの一人がこう言ったぞ「えっ俺たち勇者じゃないの?」ってな。
そして始まるノンストップ話。
「今、この国は人間の国から羨ましいと言う理由で攻められている。勇者に対抗できるのはソナタ等ぐらいなのだ。
どうか我々に力を貸してくれないか?」
オレはそこで「それを10歳そこらのガキに言うのか?」って言っちゃったよな。
そしたら魔王が「そうだ、その様な幼子に頭を下げなければ行けないぐらいにコチラも困っておるのだ」と言った。
そこからオレたちは一応魔王たちに協力すると言って訓練を始めた。
魔王はかなりオレたちに対してかなりケアをしてくれてしかも魔王の部下や魔王が治める街の人達もオレたちに良くしてくれて申し訳ないと良く言っていたぞ。
そして初陣の時が来た時にひと悶着が起きたんだ。
「やっぱり俺は本物の勇者になりてぇええ!」と叫び魔王軍を裏切り勇者を召喚していた王国軍に寝返りやがったんだ。
「ルウカ先生、何人裏切ったん?」
「オレのクラスメイトは29人居たんだがその中で9人がごっそりと離反しやがったぞ。残った20人の内9人がやられて地球に強制送還になって残りが11人になった」
「そこでいきなり11人かい」
「だがそこはオレの機転でどうにかなったがな」
「負けたのですか?」
「結果で言うと両者とも痛み分けの引き分けだな」
「残ったクラスメイトたち含めて魔王たちの元に戻るの怖くなかったの?」
「引き分けたあとに魔王たちがオレたちの元にやって来て良く頑張った、お前たちはとても勇敢であったと励ましのお言葉を掛けたな」
「器がかなり大きな魔王じゃないか」
「そうだな、そして裏切ったクラスメイトたちについては仕方ないと言って残ったオレとクラスメイトとバスの運転手さんと先生には裏切り者が出たとしても待遇を変えるつもりはないと言ったしな」
「お人好し過ぎて怖いなその魔王様、また裏切り者が出るんじゃないかと普通は厳しくなると思うんだけど…」
「魔王はそんな事してこなかったぞ?魔王の部下や街の人達もな」
「…確かにお人好し過ぎて逆に怖いね」
「オレは何かして来なければそれで良いと思っていたがな」
「先生、続き宜しくー」
初陣から数年後に王国から指名手配を受けたサニカと王国軍を撤退させた時に再会した……3人の奴隷を従えてな。
「「「ん?」」」
「ルウカ先生、今なんて言いました?」
「王国から指名手配を受けたサニカと再開したと言ったが」
「その後です」
「3人の奴隷を従えた」
「えっ?」
「……サニカの弁解をするとサニカはその世界では勇者ではなく奴隷商人が職業で、それが原因で王国から追放され指名手配になったそうだ。
そして追放されてから1週間後に王国兵に襲われたらしくてな、人質として3人の有望な若い騎士を引き抜いたそうだ」
「……サニカ先生って時にえげつない事をさらってやるよね」
「奴隷……」
「その3人の騎士とは戦場やこの後から行われる謀略で協力し合う関係になるんだけどな」
「恐ろしい事をするもんだね〜」
「それが生死を掛けた戦いってもんだ」
「それはそうだけど…」
再会した時に魔王とサニカが話し合いをしていたんだがいつの間にかテーブルに付いて交渉し始めた。
そして王国をどうやって崩していくかと策略の話になりそして数分後には握手して手を組んでいた。
そして国を落とす為に作戦が開始され王国側にいるサニカのクラスメイトたちを人間不信にして更にはサニカのクラスメイトたちを疑心暗鬼にして仲間割れとかを始めたのを見て愉快だったぞ。
「……ルウカ先生はなんの職業だったん?」
「オレか?オレの職業は道化師…ピエロだな」
「ピエロ!」
「あー…なんとなく分かる気がするわ」
「奴隷商人は駄目でピエロは良いんかい」
「結構楽しかったぞ?人がパニックになるの見ていてな」
「鬼がおる」
「続きを話すか」
王国側の勇者たちが居なくなったり王国から人が居なくなるのと同じタイミングでオレもトンズラしたよ。
その頃にはサニカと魔王が共同で作った町がかなり栄えて勇者を召喚した国以外は魔王と和平を結び始め、そこから更に時は流れ異世界生活が40年目となった時に事態は動いた。
遂に和平を結ぶと勇者を召喚した王国から使者が来た怪しい手紙付きでな、和平を結ぶためのメンバーとしてオレは同行した。
王国側との交渉の場に着くとバカ正直に行動に移してきたから直ぐに王様や貴族を抑え込んで国を乗っ取って無理やり和平を結ぶことになった。
「まさかの力ずくか…」
「そう言えば…ルウカ先生の残った11人のクラスメイトはどうなったの?」
「オレが勇者を召喚した王国に潜伏している時になんか仲違いが起きて強制送還になったぞ」
「……もしかしてルウカ先生見てた?」
「水晶から覗いて見てたぞ。だか全くもってくだらない理由だから聞かなくていいぞ?」
「えー」
「なんとなく分かるような分からないような」
「それとオレのクラスを乗せたバスの運転手さんはその世界に残ったぞ」
「残った?」
「あぁ、現地の人と結婚してな」
「まさかの結婚」
「オレの担任は王国と和平を結んだのを見届けて自力で帰った」
「先生は自力で帰れるんかい!」
「オレの担任は違う世界で勇者として活動していた時があったらしくてな」
「元勇者だったんかい!」
「その世界では不老不死は断ったらしいんだがな」
「おぉう…」
「だか今回呼ばれ、和平を結ばせた報酬で不老不死になったそうだ」
「……なんかもうメチャクチャになりましたね」
「オレが転生させられた地球には不老不死の人たちがガチの隠れ里を作って暮らしている場所があるからな」
「ふふっ…地球系列世界でもそういうのあるんだー…」
「そんなこんなで和平を結びオレとサニカがその世界での勇者として認定されて地球に返されたんだ」
「はぁ…もう少し詳しく聞きたいのですが駄目ですよね?」
「悪いがここまでだな」
「…ルウカ先生、もう3時半過ぎたけど?」
「おっホントだな。今日の授業はここまでだ、部活に向かう時間だな」
「それじゃルウカ先生、部活動で」
「おう」
帰り支度をしてクラスの子供らは教室からバタバタとそれぞれの部活動に向かっていった。