ミストルとシェリナの秘密
「うぅ…頭痛い…僕は霧が見せた幻影に…!」
僕の目の前にテスの顔があった……どうしてこうなった…はわわわわ!
「テス…起きてる?」
「………………」
「寝てる…の?」
寝息を立てて寝ているみたい…どうして腕枕されてるんだろう?…起き上がりテスと距離を取りセルクシアたちの側に行った。
『ミストル起きましたか?』
「セルクシアどうして僕はテスに腕枕されてたの?」
『私がするように言いました』
「君が言ったのか…あれから僕はどうなったの?」
『霧に呑まれ、吸血鬼の血が暴走しましたよ』
「!……僕の頭が痛いのに関係ありそうだね」
『そこはティルクスに聞いてください』
「セルクシアは話してくれないんだね」
『…ミストルの頭痛の原因を作った本人に聞いてください』
「それに僕何か言ってた?」
『いいえ、特に言ってませんよ』
(そうか…なら良いや)
『ミストルあの霧の中で何を見たのですか?』
「…ティルクスが皆に祝福されて幸せそうに元魔王と結婚式している所を僕が見守ってるのとそれから僕たちの旅が終わって村の修復も終わって宴していたところに魔神教に襲われた場面だったよ」
『…そうですか』
「例のハゲたちが魔神教に入信して可笑しくなって、テスの妻になった魔王をを拐って何処かの丘に来いと言われたテスを見送って…人間やめたハゲたちにさすがのテスでも勝てなくって僕が着いたときには死んでいた場面で終わったんだ」
『ミストル』
「僕もまだまだだね…サニカさんとルトラウスさんに鍛えられたといえ、霧が見せた幻影に僕は負けたなんて」
『ミストルあなたは幾つですか?』
「えっ……十八だけど…ってセルクシア知ってるよね?」
『知っていますが…良いじゃないですか、あなたはまだ若いのです…ティルクスについてもこれからです。魔王についてはこれから対策をやっていけば良いのです…あなたはティルクスに追い付くために努力してきたのですから』
「でも勝てないよ…いつまでたってもテスに」
『旅立ちの前日あなたはティルクスに勝ちましたよ、お忘れですか?』
「そうだけど…セルクシア僕はどうしたら…」
『ティルクスはチート野郎です。前回の記憶を持ちさらに鍛えているのですから…あなたはそんなチート野郎に果敢に挑んでいるのです何度も何度も』
「確かに……ね」
『どうしたのですか、ミストル』
「僕は…テスに力を見せつけられてたよね?ついさっき」
『はい、一応』
「今回確実にテスに負けたんだよね?」
『ですね』
「どうやって負けたか僕は覚えてないけど…今回の事で確定しちゃったみたい」
『まさか!』
「うん……」
『イシェーラさんは笑い…アルーヴさんが大暴れしますよ絶対…サニカ様とルトラウス様は考え込みますね…ついにやっちまったかと…くっ』
「ほんとにね…どうしよう…それにシェリナはなりたがっていたからね…」
『ワッハハハハ!』
『そこはどうにかボスにバレるまではやり込めるしかないな…私も協力させて貰うが…面白いなミストルとシェリナは』
「僕に取っては最悪だよ!」
『と言うことはシェリナ本人も了解済みの変化が起きたって事か…突然娘が息子になるってどんな気分だろうな?』
「今頃父さん達パニックになってるだろうね」
『ガッハハハ!…ひぃ…マジだ!…あんまりティルクスにくっつかない方が良いですよ…ぷっ…ミストル?』
「笑い事じゃないからね?セルクシア」
『本来なら双子として生まれるはずが九年と言う期間をイシェーラさんのお腹に魔法を使って留まっていたシェリナですからね』
『ルトラウス殿達が説得してようやく生まれてきたと言ってたからな』
「シェリナの嗜好は少し変だから、しかも肉食系だし」
『これからはお風呂にしても順番にしないとですね』
『まぁ…ボスは鈍感だからなそこまで気付かないだろう』
『双子吸血鬼だけに現れる性質をシェリナは容赦なく使うとは末恐ろしい、いも…弟か』
「シェリナ後で覚えていなよ」
大昔の吸血鬼の一族は混血化が進み純血の吸血鬼が生まれなくなり種族が滅ぶ!と焦った先祖たちは魔物に体を変化させ、近親婚をして何代も掛けてようやく純血の吸血鬼の誕生させることが出来た。
だが男しか生まれなかったり女しか生まれなかったりしたことで種の存続自体が危険になったが、片方を別の性別に変えてしまえばいいと片方を別の性別に変えその場を乗り切った事で名残として残り双子として生まれる吸血鬼は体が出来上がるまでは性別が安定しない特性を持つようになったとお爺様は言っていた。
シェリナはこの時を待っていたんだろう…僕がテスに完敗する時を…僕はもう戻れないセルクシアとラセスには事情を話していた。いざという時のために僕とシェリナは本来なら双子として生まれるはずだったがシェリナがまさかの生まれるのを拒否し僕だけが先に誕生した。
サニカさんとルトラウスさんはシェリナが母ち…母さんのお腹に居る事を認識していたが、無理に誕生させると絶対に町ひとつ滅ぼすぐらいのヤバい吸血鬼が生まれると確信していた為にシェリナは一旦放置された。
シェリナがお腹に留まるために魔法を使っていた事からそこまで母さんに影響がないと言うことで放置したら九年経っていた事でいい加減に誕生させないとヤベェとお爺様を呼んでの説得大会が僕の家で行われていたがテスはその時、村の外で探索にハマっていた為に知らなかった。
そしてシェリナが九年越しに誕生した。
双子として生まれる予定だったシェリナはどうやって見聞きしたかわからないけど、七歳の時に「もしかしたら使えるんじゃない?」と性別逆転の特性を使い僕も実は一度だけ性別が変わっていた時期があったがテスにはバレなかった。
男になったシェリナは好きだったリシア姉さんに告白したが断られて落ち込み今度は僕が特性を使い元に戻った事で双子として生まれるはずの特性が残っていた事がわかり使用禁止になった。
それから僕はシェリナに常に隠れて特性を使われても平気なように鍛えていたが今回の意識を失っている時に特性を使われ変わっていた…サニカさんによると十八歳になって変わったらもう性別を戻せないらしく僕はもう戻れないんだろうか。
『でも性別を変えることが出来るアイテムがあるとルトラウス殿が言っていたな』
「!」
『でもかなり危ない場所にあるらしいけどな』
「ラセス!セルクシア!何処にあるのそれ!」
『怖いですミストル』
『確か…』
『ラセス言っては行けません!ミストル行く気満々ですよ!』
「当たり前だよ!」
『カフロルト王国はどうするのですか!』
「少し待ってと手紙送るよ!」
『やることやってからじゃないとダメですよ!』
「僕に取って死活問題なんだよ!」
「ラセスもし教えてくれたら君がお嫁さんにしたいと言っていた可愛いペガサスを連れてきてあげるよ」
『マジか!桃色神殿跡にある祭壇のゴブレットの水を飲むと性別逆転が行えるといってたぞ』
『ちょっラセス!』
「桃色神殿跡か…行ってくる!」
僕は魔法を使い手紙を書きカフロルト王国の女王に手紙を出してテスにも書き残して…そう言えばルトラウスさんとサニカさんに危ないから行っちゃダメだよっと言われた桃色神殿跡に全速疾走で向かった。