巨大な海蛇と不老不死
【クレイバール島】
《大広場》
「あー…遂に来る日が来たな」
「……本当に何を仕出かしたんですか…モーリン殿は」
「この島の結界があるから侵入されてないが、モーリンが作ったであろうモンスターがこの海域に住み着いた」
「討伐するのです?」
「それにしてもデカすぎません?」
既にクレイバール島の結界ギリギリのラインで巨大なモンスターがこちらを見据えている。
「多分だけど元は毒蛇だから血が海に溶け込むと暫く海の幸が食べられなくなるから討伐は見送りだよ」
「ホントに何を作ったんだあの人は」
「向こうの島の人たちは今どうなってるんだろう…」
「荒れている事はわかる」
「ここはもうワタシとノエルが竜化して戦った方が早い気がするわ」
「それは推奨しない、現状からして部下を危険に晒すわけには行かない」
『だから我が水面でも動きやすくルクリス様たちに魔改造されたのですね!』
「魔改造言うな」
『我なら結界を壊さず外に出られますよ!』
「自動で動かしても良いが…せっかくだ誰かこの広場から操作してみないか?」
「えっそんな事も出来るの?」
「シューゴはこの島の島民の魔力を浴びてるからな。このコントローラーがあれば島民なら操作出来るぞ」
『いつの間にかそんなの作ってたのですか』
「普段は使えないから安心しろ、シューゴ」
『我が得意とする技は光暗のブレスと尻尾で叩きつけ攻撃と噛みつく攻撃の筈です』
「最初は俺が手本を見せよう」
ルウカはとても生き生きとコントローラーと呼ばれる媒体をピコピコと押し始めた。
シューゴはルウカの操作で島の結界を越えて島を睨みつける巨大な海蛇にそのままタックルをかました。
『島長!いきなり現れてタックルを入れるなんて酷いですよ!やりすぎです!』
「そんなことないぞ、巨大な海蛇が竦んでいる」
『そもそも敵意を感じないんですが』
「ほう」
『それならご心配には及びません、我が常に巨大な海蛇の監視をします。何か異変があったら警戒音を鳴らします』
「ならそうするか。解sー」
ルウカが解散と言いかけ、丁度そこにゲートが開き金髪の美丈夫と空の様にきれいな蒼い髪を持つ女性が現れた。
「よぉ!小僧と小娘!元気にしてたか!」
「うげっ!銀と蒼!」
「ガッハッハ!相変わらずの反応だな!ル✕△ア!」
「俺の前前前世の名前を言うな!今はその名前じゃねぇ」
「貴女も元気そうで何よりです」
「お久し振りです。銀斗さん、蒼さん」
「サニカとルウカの知り合い…」
「この人たちは物凄い長生きしている異世界の退役勇者さんたちだよ」
「え」
「俺たちみたいなのを見るのは初めてか?」
「えーと…はい」
「サニカとルウカ、聞きましたよ。無茶したそうですね」
「ちっ、ラブの奴が告げ口しやがったか…!」
「……大昔から思ってくれていた人に助けられました」
「そうでしたか…貴方たちは数少ない割とマトモな転生者ですから、あんまり変な理由で失いたくないのです」
「え、コレでもマトモなんですか?」
「エンロウ…お前な」
「えぇ、長生きしている人間としては割とマトモな方です」
長生きしている人たちは本当にぶっ飛んだ人たちなのか。
それも頭のネジが飛んだような。
「では改めまして、自己紹介を。
立場から本来の名を名乗れないのは申し訳ありませんが、わたくしの事は蒼、隣りにいるデカいのは銀斗とお呼び下さいませ」
「何しに来たんだよ」
「お前たちも遂に俺たちみたいになると決めたんだろ?そのための試験を受けさせに来たんだよ」
「そんなのがあるのですか?」
「あぁ、こいつ等は特に【至龍】や【超人種】、【理から外れた者】や【外側の観測者】と交流をした事があるから余計なんだ」
「わたくしや銀斗はそれぞれの自世界でほぼ引きこもってますし…そういった方と交流を持ちませんから」
「まぁ、俺たちもたまに今みたいに気分転換に異世界に渡ったりするけどな」
「その試験は今日しか出来ないのか?」
「あぁ、お前たちも俺たちの忙しさを知ってるだろう?…その辺は※※※ちゃんの方が素直さがまだ残ってるな」
「今はその名前じゃありません」
「銀斗、それ以上は駄目ですよ?わかってますよね?」
「大丈夫だよ」
エンロウさんは銀斗さんと蒼さんの事を観察している。
確かにこの二人から溢れる魔力は恐ろしい程にとても澄みきっているのは俺でもわかる。
「さてお前たちに聞く、我々と同じ道を歩むのかと」
「あぁ、前は長寿な種族ゆえに混血で長い時を生きていたが今この人間の体で長生きすると決めた」
「私も同じく、今のこの肉体で長生きすると決めた」
「その覚悟が本物か試させて貰おう。蒼!」
「了解してます。では試しの試験開始します!」
するとルウカとサニカは一瞬で消えた。
「一瞬で居なくなった」
「あいつらなら大丈夫だろう」
「かれこれ5年は戻って来れないですが」
「え!」
「あいつらの肉体は不安定化していたからな。中途半端な転生をしやがって…いつか肉体の崩壊が起きてたぞ」
「そんな事は言ってませんでしたけど」
「重要な記憶が不自然にいくつか抜き取られていた見たいですから本人たちですら気付いてなかった見たいですね」
銀斗さんが言うには「結構前から良いように使われていたって事だろう、まぁ野良で強くなった者にはよくある事だ。
俺たち見たいな成果勇者はその世界の神やらの依頼で世界を救い、こうなるから使われるって事がない」との事である。
「それでルウカとサニカはどうなってるのですか?」
「あの二人が今、置かれている現状は肉体をちゃんとした地球人として作り直されているわ。
それから試験を受けることになるでしょうね」
「それで5年か…」
その場にいた島民たちは二人が居なくてもこの島を守ってみせると気合を入れていた。
「さて蒼、役目は終わったし帰るぞ」
「そうですね」
「帰るの早っ」
「見守らなくても大丈夫なんですか?」
「大丈夫です。失敗しても特に何も悪いことは起きませんから」
それだけ言うと銀斗さんと蒼さんはさっさと帰って行った。
それから本当に5年後にサニカとルウカは戻ってきた。
少し憔悴しているように見えたがいつもの二人であった。
二人の体の特徴が少し変わっていて所々にメッシュが入っていた筈の髪では無くなりルウカとサニカは日本人らしい黒髪になっていた。
これで記憶を持ったままの転生も本当にコレが最後だと言っていた。
名前もまたまた変わったらしいが前のルウカとサニカのままで良いと言った本当の名を隠すには丁度いいんじゃないか?と言って。
そして帰ってきて直ぐにサニカとルウカは5年経ってもまだ島を囲んでいる巨大なモンスターを二人で魔法を使い持ち上げ巨大な魔法陣が上空に現れるとそこへ放り投げた。
すると巨大なモンスターは魔法陣に吸い取られどこかへ消えていった。
「あー…せっかく飼い慣らそうとしたのに」
「お前たちでは無理だから止めとけ」
「アレはお前たちでも飼い慣らすのは無理だったよ」
「えっ」
「…と言いますと?」
「モーリンはリヴァイアサンを人工で作りやがったんだよ」
「え」
「サニカ先生とルウカ先生ならリヴァイアサンを飼いならせるんじゃないですか?」
「前前世の私たちならね。今の私たちでは無理だよ」
「不老不死になったとしても肉体や魔力の質が前の時とは違うからな。今の俺とサニカは魔力のない異世界である【地球】生まれの人間で今はまだ研鑽の最中だからな」
「まぁ…今から1000年〜2000年もすれば契約出来るようになるかも知れないね」
「なんか果てしないわね」
「長く生きる者に取っては一瞬の出来事じゃよ」
「カーウェンのじっちゃんの言葉は重いな」
「ほっほほ…お前たちは今を楽しかったと思えるように生きることじゃよ」
「うん」