乙男たちの会話
【裁縫師の作業場】
《共同の作業場》
「オイラたち記憶がここ3日ほど無いんだけど…婆ちゃんたちに聞いても熱を出して寝込んで居たからじゃね?なんて言うんだぜ?」
「そうなんだよね、オレっちも記憶ないし…」
「オレもそんなもんだよ」
「婆ちゃんたちは知ってるみたいだからなー」
実は澄谷家で儀式が行われていた時間、島の島民たちも儀式の影響で平然としていた組と倒れていた組で別れていたらしい。
「……ルヴェルとの結婚生活はどうなんだ?」
「人間と竜の価値観の差が出てきてるけど、そのギャップが堪らない」
「あー…ごちそうさまです」
「いえいえ、お粗末様です」
「他人行儀みたいで怖い怖い」
「それよりお前たちはどうなんだ?誰か居ないのか?」
「んー…リリンにアプローチしているのですか中々返事は聞けませんねー」
「フィンは既にアプローチしてた」
「最近、ノエルからアプローチを受けるんだ」
「受けてんのかい!」
「あー…オレっちはリリンにアプローチしてるから無理って言ったらマウルに標的を変えたよねー」
「はは…(女って怖い)」
「マウル兄さんもミナオ姉さん狙ってるから無理って断ればいいのにね」
「え」
「良いだろ別に…年の差婚はシルトでは当たり前だったんだし、それにミナオ姉さんは…昔から憧れてたし…」
「ミナオ姉さんに付いてだが…」
「えっ何かあるのか?」
「ソグルおじさんが狙ってるってルヴェルが言ってたぞ」
「…マジか?」
「ルヴェルから聞いた話だとな…近々告るとも言ってたような?」
するとマウルがガタッと椅子から立ち上がるとちょっと行ってくる!と作業場から飛び出して行った。
「ぷっ…ビワトも中々エグい事をやるねぇ」
「ミナオ姉さんに対してのマウルの態度はバレバレだからな、それにミナオ姉さんもそろそろ恋人作らないと見合いさせられるらしいから」
「ミナオ姉さんのご両親は厳しい人たちだからなー見合い相手は【工務店】の職人のタム兄さんか八百屋の跡取りのランド兄さんだよな」
ミナオ姉さんは花屋の3姉妹の長女でハーフエルフである。
ミナオ姉さんの下の妹である次女のクルン姉さんと末娘のコナル姉さんでこの二人もハーフエルフだ。
「だからって焚き付けなくても良かったんじゃない?」
「実は澄谷家でミキヲさんが愚痴をこぼしてたんだよ。本当は見合いなんてさせたくないけどオレが結婚した事で少し焦りだしたみたい」
「ミナオ姉さんたちハーフエルフだから別にまだ平気だと思うんだけどな」
「確かにオレたちと時間の立ち方が違うからな」
「そこなんだよね〜…カーウェン爺さんたち見たいに魔法で寿命を伸ばしても良いんだけど…ね」
「そこなんだよなぁ」
「オレっちはその辺は心配ないけど」
フィンと話し込んでいると興奮した気味のマウルが戻ってきた。
「あっ戻ってきた」
「どうだったんだ?」
「………断られたよぉ!実は嫁入りが1週間前には決まってたらしいし!」
「「えっ」」
「それもソグルじゃぁ!!ビワトが言ってたのは数週間前前の話じゃ!」
「うわーおじさんから呼び捨てに呼び方が変わった」
「それじゃ今作っている純白シリーズは…」
「そうだよ!二人の結婚式で使う奴だってさ!」
「ソグルさんも長生き組の方だからあんしんするのかもね」
「ウキィィ!オイラは2度と恋なんてしない!絶対にだ!」
マウルは物凄い速度で【ソグル○ね】とたくさん刺繍してあるレースのハンカチを作っていた。
そこにルクリス婆ちゃんがやって来て祝い事に使う物に怨みの念を込めるなと叱られていた。
そして品が完成した翌週にマウル抜きで作り上げた物を使って慎ましやかに結婚式が行われたようだった。
【裁縫師の作業場】
《共同の作業場》
「○ば良いのに♪」
「ソグルさんを殺すな」
「そう言えば鮮魚店が移転オープンしたのですよね?」
「うん、ミナオ姉さんの実家の近くにらしいな」
「ソノミ婆ちゃんはヤスバ親方に店舗があった場所に自身で鮮魚店2号店をオープンさせたぞ」
「早速、ミナオ姉さんと揉めたのかな?」
「揉めてはないけど海の近くが良いとソノミ婆ちゃんの方がワガママを言ったみたいだよ」
「それで結局ノエルとはどうしたんだ?マウル」
「中途半端な気持ちでは付き合えないと断った。こんな気持ちで付き合うのは失礼だからな。
例えノエルが他の男と付き合っても断ったのはオイラだから文句は言えない」
「へぇー」
「オレっちの方はまだまだ掛かりそうだよ、外堀も埋め始めないとだし」
「フィンは囲い込みか」
「うん、リリンに逃げられないように頑張るよ」
「何かストーカーみたいで怖いんだけど(オイラの片割れが犯罪に手を染める前に何とかしなきゃ)」
「犯罪行為に手を染めないよーソグルオジさんじゃないんだからちゃんと手順を行使するよ〜」
「今酷い事を言ったぞ」
「さてさっさと今日の作る予定の服を仕上げて帰ろう」
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【裁縫師の作業場】
《共同の作業場…前》
「リリンが羨ましいです」
「それとコレとは話が別じゃない?…何かフィンがドンドンヤバい方向に進んでないよね?」
「確かに重いわね…どうしたのかしらね?それよりノエルはどうなの?」
「どうとは?」
「マウルに断られた件だけど」
「それならマウルの気持ちの整理が付くまで待ちますよ?シルトの男は1度でも伴侶になる人物に惚れたら絶対に突き通すと有名ですし…それに惚れた弱みと言うやつです。
わたしは少しずつですがアプローチを続ける所存です」
「言うねぇ〜ノエルは…ウチはもう少しフィンの様子を見ながらかな?」
「……そろそろ警備隊の仕事に移るわよ?」
「分かってますです」