狙われた魂のレコードとこの世界での至竜の誕生
【澄谷家】
《リビング》
「なぁ…ルウカ」
「ん?」
「何か最近サニカが荒れてないか?」
「荒れてるぞ。今更ながら【反抗期】という奴だろう。まぁ体が子供だから【大人の心】が追い付かなくなったのだろうさ。
大人になって反抗期が訪れるとヤバいらしいから今の内に荒れて良いんじゃないか?」
「その割にはルウカには反抗期がないのね?」
「俺に関してはかなり大昔にそういう言った事は卒業したからな」
「そうなの…」
「アイツは記憶の持ち越しが始まる前から育った環境が特殊だったからな。溜まりに溜まった鬱憤が出たんだろう。
今は見守るしかないから見守ってくれ」
「ルウカは良く家から追い出されないな」
「その辺の理性は働いているんだろう。この島のご老人と大人たちは今のサニカを生暖かい眼差しで見守ってるだろ?」
「確かにそうだけど…」
「それに今回はサニカに呼ばれて来たんだろ?」
「うん、急に話さないと行けないことがあるって言ってきたな。ルヴェルも一緒に来てとも」
「アタシも呼ばれてるわよ~」
「ラブ様もなのね」
今現在、澄谷家にはオレとルヴェルとラブナシカ様とキリエストちゃんとカーウェンのじっちゃんとマジェリルカちゃんとエンロウさんと母さんが呼ばれていた。
「それにしても用事とはなんでしょうか?」
「サニカ様が呼ぶときはルウカ様より事態が重いことが多いので身構えてしまいますよ」
「あたしも呼ばれていることに恐怖を感じるのう」
「ホントにのう」
そこにサニカが現れた。
「呼んだ人物は揃ってるね」
「サニカ様、我々を呼び出しとは何事ですかな?」
「時間がないから単刀直入に言うよ。ビワトの【魂】について話したいことがあってね」
「え…?」
「サニカ!それは!」
「白理たちがどうしてかわからないけど、この世界に入り込もうとしてきて居て本来ならもう少し後でやろうとして思っていたんだけどやらないとグチャグチャのまま終えて遺恨が残りそうなのが見えたんだよ」
サニカは一体何を?
「それなら島の人たちが!」
「ルヴェル、大丈夫。この結界は白理たちがこの世界に入ってこようともそう簡単に壊せない。
壊したとしてもこちらは準備万端の状態で向き合えるから」
「サニカ様、ビワトのもう片方の魂は見つかったのですか?」
「母さん?何を言ってるんだ?」
「今から魂の状態を覗くその手伝いをして欲しいから術式に強い人たちを呼んだんだよ。今の私たちだけだと出来ないから」
「何か策が見つかったのですかな?」
「いいや、見つかってないけど今なら出来るみたいだからやるつもり。ルヴェルはビワトの伴侶だから見ていてほしい」
「だから何を見るの?聞くの?」
「これから【調停の秘術】を使って特殊な場所に向かって君が生まれた時に【魂の分裂】という出来事が起きて大きな騒ぎになった時の事を話すんだよ。
本来なら君の分裂した魂を見つけてから行う予定だったのだけどどうやら白理たちがそれを嗅ぎ取った見たいでね」
「どうして…」
オレは自分に今現在起きていることが理解できない。
今理解できるのはオレの魂が分裂したと言うことらしい。
「君が【向こうの世界】で重要な歴代の現地の勇者たちの魂のレコードの持ち主だったからだね。本当に急で悪いんだけど」
「あー…だからでしたか。今からやるのはかなりヤバめの魔法だから町の皆を魔法で眠らせていたのですね」
「白理たちは…ビワトのもつ歴代の現地の勇者の魂のレコードを喰らい力を蓄えようとしいるし…本当に私がやることに関してはいつも急で嫌になるよ。ビワトも意識だけになるけどその辺の話とかちゃんと聞かせるから付いてきて【メモリアル・ブレイブ・ゲート・メモリー】発動」
【魂のレ※ード□書○】
《記録の※※※》
『初めまして勇者の魂のレコードの保持者よ』
「ここは…?」
『この場所は世界の記録を※※※する場所でございます。他の皆様はもう既に《※※※の部屋》に来ておりますのでそこまでご案内いたしましょう』
発光している丸い生物に案内されリビングにいた人たちが居るらしい場所に案内された。
するとサニカとルウカとラブナシカ様以外はお通夜のように暗かった。
「ビワト!大丈夫だったの!」
ルヴェルが駆け寄ってきた。
「特になにもないよ。サニカたちも話してくれるんだろ?何がどうしてこうなっているのか」
「うん、ビワトもルヴェルも席に座るといい」
オレとルヴェルは用意されている席に座った。
「マジでやるかコレを」
「レコードを喰われて力試しと島民……移転してきた世界で全滅エンドは回避したいからね」
「アタシの魂の記録を見たら怒るから見ちゃダメよ?」
「誰も見ませんよ。貴女様のとても長くエグい神生の記録をね」
「話を脱線させないでください…では話をなさってくださいな」
そこからサニカは話し出した。
「まず話すことは…ビワトの魂が分裂した事についてからだね。
…ビワトが生まれた今から20年前の日に向こうの世界で時空間を弄っていたお馬鹿さんがいた。
そのお馬鹿さんが興味本意で時空間にある【時の記憶】から1つ【世界の記録】を抜き取った事で世界の意志により定められていた【勇者の記録】に亀裂が入ってしまった事で向こうの世界での勇者の存在意義が消えてしまいビワトは魂が欠損した状態で生まれてしまった。
その場にいた私とルウカの二人で長年溜め込んでいた【妖精の力】と【天使の力】を【奇跡】に変えて留めることが出来たが、ビワトの体に定着したのが【悲しみの記憶】の魂の方だった」
オレの中の魂は2つに別れた中でも悲しみの記憶を持った方?
「このままだと絶対に歪みが出てしまうと思った私たちは残っていた本来の力を使い悲しみの記憶がビワトを絶望の方に引きずり込まないように記憶を裏返して隠すように縫ってまっさらな魂とした」
「それだけの事をしたならば簡単に死なないと思っていた二人が「今から10年たったら消えるから」といい放ちますね」
「それって…二人はまだ長生き出来てたって事だよな」
「…ルウカは別として私は元々【向こうの世界】では【イレギュラー】な存在だったからね」
「イレギュラー?…サニカ先生は転生なさっておりましたよね?」
「私の魂は地球で生まれた魂だから…【平然と受け入れる事が出来る世界】も多数あるけど【向こうの世界】は異物を弾こうとする性質が強い世界だったんだ」
「えっでも異世界から迷い混む人たちが多いですよね?矛盾していませんか?」
「そう、エンロウが言うように矛盾しているんだよ。
だからこそ根本的な部分の解明を進めたいと思ってたけど向こうの世界では私はやはり異物で【※※※※※】には行くことが出来たんだけど」
アレ?聞こえないようになってる?
「サニカ様、どこに行けたのか聞こえませんでしたが…」
「私が行った場所は世界の中でも【シークレットorシークレット】な場所だから聞こえないんだろうさ。
そこで私は【※※※※】に勝つことが出来たがこの世界の根本には弾かれてさっさと現実に戻されたよ」
「何だか異次元の会話を聞いているみたいですね」
「シアレ、異次元の会話そのものですが…イレギュラーでもその場所に向かいたどり着き勝てるのですね」
「【※※※※】に提示される問はその人が求めている答えだから答えられるんだよ」
「何れ私もたどり着きたいものです」
「ろくな答えじゃなかったからあんまりお勧めは出来ないよ」
「サニカ、話が脱線してるぞ」
「…悪かった。私では弾かれて調べられなかった所までは話したよね?
…この世界が有益な世界だと異界の者たちに思われたのはこの世界で至竜が生まれた事が始まりだった」
「その至竜って結局の所どういう存在なの?」
「……私とルウカが出した答は【至竜とは叡智へ至り世界の枠を越えて次元に干渉できる存在】であり【世界の仕組みから弾かれた存在である】至竜に至りし者は死の概念が無いし慈悲と無慈悲を持ったいつ消滅するか分からずに数多の次元を渡り続けるか悠久の眠りに着いたりしている。
至竜については様々な意見があって答えだしたら止めらなくなるから今のところは私たちの意見で無理やり納得しておいてくれるとありがたい」
暫くの沈黙した。
「えぇと…どこまで話したっけ?」
「異界の人たちがなんちゃらで至竜が生まれた辺り?」
「あっそうだった……至竜の力は異次元に干渉できるだけの力を持つことで数多の世界の神は恐れたが実際に事が起きてしまった。
向こうの世界に誕生した至竜は自らの世界を広げるために時空を越えての旅をしていたがとある世界で神々の怠慢に堪えられぬと反逆した人間が表れた。
軽い気持ちで力をその人間に与えた、するその人間は神殺しを成してしまった。
それを見た至竜は「私は何て事をしてしまったのだと」叡智があるゆえに犯してはいけない領域を犯したと悟った。
それが【向こうの世界】に誕生した至竜が犯した最初の罪。
その至竜は力を与えた人間から力を取り返そうとしたが力を与えた人間は神を葬った事で有頂天となり至竜を倒して更に力を得ようとしたがそれは叶わなかった。
力を与えた人間を倒し力を取り戻した至竜は自身が生まれた世界に戻ってきたが既に自世界の理と自身の理が交わることが出来なくなっていた。
至竜は自身が生まれた世界に戻れないのは嫌だと強く願ってしまったことで理が歪んで向こうの世界は様々な世界の魂が迷い混むようになってしまった。
コレが至竜の罪の2つ目であり最後でもある」
あっコレで様々な世界から来るようになったと繋がった。
「……そうでしたか」
「理が歪んでしまったからイレギュラーでも【※※※※※※】に行けてしまうんだ。
それに魔導師や魔法使いはそもそも理に触れるから気になって調べて禁忌に触れちゃうよね」
「触れちゃうよねじゃないから」
「そもそもどうして至竜の話が出るのですか?」
「白理たちの事を話すとなると説明しておかないといけないからな」
「どのような繋がりが?」
「……白理たちはとても強いだろ?」
「そうですね。1度ですが手合わせしていただいた時がありましたが秒で負けました」
「白理たちは人間としての概念を越えた存在なのだ」
「人間としての概念を越えた存在?」
サニカが重々しく口を開いた。
「…極稀に【とある力】を得て自身が存在する世界の理の壁を超えると【至竜への進化】と呼ばれる権限を得る時があり白理たちはその権限を使い至竜に至ろうとしたんだ。
でも白理たちは至竜へ進化することが出来なかった」
「…【至竜への進化】に関しては失敗すると【堕ちた竜】と呼ばれる存在になるのではないのですか?」
「その現象は【亜竜】が至竜へ進化しようとして失敗すると成る姿だな。
人間や天使、妖精や魔族と言った竜以外の種族が至竜へ進化しようとして失敗しても【堕ちた竜】には不思議な事にならないんだ」
「え、それて不公平なんじゃないの?」
「その辺に関しては…竜は他の種族より遥かに優れて強く志し半ばで殺されれば怨念が凄いだろ?
だからその反動とか諸々があるらしいし、その辺は良くわからん」
「…それで人間が至竜へ進化に失敗するとどうなるのですか?」
「中途半端な力を持ち、常に体から魔力が流れ回りに悪影響を及ぼす【中途半端な不老不死】になって、自信で不老不死の魔法を掛けること出来ない中途半端に進化した【超人】となる」
「中途半端な超人?」
「365年に1度だけ1年年分の年を取り老化現象が進み最後には骨すら残らず消える」
「え」
「更にはハイ・ヒューマンに進化しステータスが向上するけどそこで成長が止まり強くなれない」
「それは…それは…なんとも微妙な進化ですね」
「ならどうして【転生者狩り】をするんだ?」
こちらの世界での【転生者】の役割とは【世界を永らく安定させ世界を末永く存続させる歯車】なんだ。
白理たちはそんな特殊な状況下で生きる転生者たちが持つ特別な能力を奪い自らに取り込み強くなろうとしているんだ。
【外側の観測者】たちを屠る為にな」
そうか、サニカに関してはどんな存在であろうと破壊することができない【無敵の宿屋シリーズ】を所持しているから欲しいと思うだろうな。
「そもそも【外側の観測者】とはどういう存在なのですか?」
「宇宙論的な事が出てくるからパス」
「【今いるこの世界】や【ビワト達が生まれ育った世界】が所属するこの宇宙で好き勝手に生きている人たちの事?だよ……自分でも何を言ってるんだ…?」
「言った本人が混乱してるし」
「あっ…これなら簡単。死の概念が無く、一人で【世界】を破壊出来るぐらい強く、魔法を使わずにこの次元を越えて全く関係ない違う次元に遊びに行ったりする種族だよ?」
「最後のはてなマーク…規格外な存在ってことだな」
「どうして白理さんたちはその外側の観測者たちを屠りたいんですか?」
ルウカから意外な返答が返ってきた。
「感情論だろうな。自分より強い相手が許せずに憎いとか好き勝手自由にやってるのが許せないとかのくだらない理由だろう。
自分より弱いと思っている俺とサニカを待て見下していた所もあったしな」
ルウカの発言に皆が一斉に「ん?」と反応した。
「弱いと思っている?…ルウカどういう事だ?」
「…言うぞ?サニカ」
「お好きにどうぞ」
「俺とサニカはつい先日、白理たちが嫌っているその【理※※外れ※※】に進化するための手続きをして現在、進行中だ」
その場の空気が固まった。




