結婚前夜
【クレイバール島】
《ビワトの家》
「晴れて今日、ビワトが成人を迎えたわね!」
「あぁ!コレでオレたちは結婚出来る!」
「結婚式に向けての準備を始めよう!」
「えぇ!」
「やっぱりこうなってましたね」
「あら!ノエル!」
「サニカたちにいつまでもイチャイチャしているだろうから呼んできてくれって頼まれたのですよ?結婚式についての話をするのでしょ?」
「それじゃ早速向かいましょう!」
家の戸締まりをしてサニカたちの元に向かった。
【澄谷家】
《リビング》
「ようやく来たね?ようやくこの日が来たから分からなくは無いけど」
「ふふっごめんなさい」
「ではどうする?結婚の日にちは何時にする?」
「結婚は直ぐにしたい」
「おぉ…勢いがいいな。わかった、なるべく早く出来るように準備をするぞ」
「ありがとう!」
「良いんだよ。ビワトの結婚に関しては俺たちも楽しみにしていたからな」
「早めに準備をしても3日は掛かるね。盛大にしたいから」
「…はぁ…心臓がドクドク動いて落ち着かないわ!」
「二人の衣装に関してはもうだいぶ完成しているから楽しみにしていてね。ほらほら二人とも仕事に行ってきなさい」
ルヴェルとはサニカ家の前で別れ…ずに居るとそれぞれの職場仲間が現れ引き剥がされ職場所に連行された。
【裁縫師の仕事場】
《共同の作業場》
「全く、いつまでもイチャイチャしてんじゃねぇ、浮かれているのはわかるけど仕・事・しろ」
「すまん、マウル」
「クレイバール警備組合の服を今より頑丈にするために試作品をたくさん作って忙しいんだからしっかりしろよ?警備組合に所属するルヴェルを守ることにも繋がるんだからな?」
「だからこそ、昨日からデザイン案を考えていくつかこれから作るよ」
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
「幸せそうね~ビワトちゃん」
「うん、幸せそすぎて怖い」
「ピンクのオーラがこちらにも来ていてお腹いっぱいだ」
「うふふっ…それにしても前の服よりこちらの方が動きやすそうね。これなら敵の技とか避けやすいかも」
「実際に作って試してみましょうか」
「そうだな」
「5年もすればオイラもビワトもばあちゃんたち見たいに多少出来るようになったもんだな~」
「ほんと、高速裁縫をしながら話せるようになったものね」
「確かに」
緩~い話をしながら無事に1日が終わったと思っていたら遂に独身最後の日が来た。
【ビワトの家】
《玄関》
「今日はそれぞれ独身最後の男女別れて過ごす日が来たわね。…ビワト、そんな顔をしないのよ」
「離れたくねぇー」
「もう、ビワトたら~」
トントンとドアを叩く音が響くとノエルとサニカがルヴェルを迎えに来た。
「ビワト、ルヴェルから離れなさい」
「今日はルヴェルを含めての女子会なのです」
「この家に若い男がこの後ワラワラやって来るのだから最後の独身の日を楽しむんだよ?」
「…ビワト、明日の結婚式でね?」
「おう!」
ルヴェルはサニカたちと共にサニカの家に向かって行った。
入れ違う様にルウカが一番乗りでやって来た。
「おっ俺が最初に到着したんだな」
「うん」
「明日には正式な夫婦になるんだ…っておまっ目がギンギンじゃねぇか!怖っ!」
「えっ」
急にルウカは笑い出した。
「くっふふふふ……おっ俺を笑わせないですれ…やっべ…必死過ぎでやばいなっ!がっははは!」
「ちょっ!笑わないでくれよ!」
「ルウカさん!なんで笑ってるんだ?」
「くっくく……ビワトの目を見てみぃ…!…俺は笑いのツボに入った!わっはははは!」
「うん?」
次にやって来たヤライがオレの顔を凝視してくるとコイツも笑い出した。
「がっははは!目が血走ってギンギンだぁ!ドンだけだよ!嬉しいのは分かるけど落ち着けよ!」
次々にオレの家に若い野郎が集まってきた。
「……………ぷっ」
「ふふふふっ」
「……………………」
「わっはははは!」
「ひぃー!腹痛い!笑いすぎてお腹痛い!」
「昨日ちゃんと寝たの?」
「ちゃんと寝た」
「なのに充血してるぜぇー……いひひひ!」
オレはヤライが結婚するときオレと同じ状況になったら笑ってやるんだ。
「笑いすぎで…ござるよ」
「ナハトも笑いを堪えていないでコイツらみたいに盛大に笑えば良いだろう?」
「今日はビワトを無理やりでも寝かせた方が良さそうだねー」
「フィンもそう思うよな。ヤライたち笑いすぎだぞ?明日の花婿に失礼じゃん」
すると突然、ルウカ、ヤライが静かになったと思ったら倒れると空から紙が降ってきた。
【誰だってこうなる可能性はあるんだから笑うんじゃないよ。おだまり!】と書いてあった。
「……サニカさんだろうね」
「目覚めた時は大人しくなっているでござるよ。そしてビワト、悪かったでござる」
「いいよ、別に。目が血走っているのは本当だろうから」
「元々ルヴェルと婚約していたから結婚は早いだろうなーって思っていたけど…」
「まぁ、今日は話したり楽しくやろう」
「そうだな…あれ?エクルはどうしたんだ?」
「エクルは用があるから来れないって言ってたでござる」
「そうか」
それからマウルが行った通りに目覚めたルウカとヤライは大人しくなっていた。
そこからこの世界に来てから楽しかったことや苦労したことを話をしたりしているといつの間にか遅い時間になっていた。
オレはヤライたちをそれぞれの家に返しても落ち着かなかったから【星の泉】に向かったらそこにエクルが居た。
《星の泉》
「どうした?眠れないのか?」
「少し落ち着かなくてな…用は終わったのか?」
「あぁ…遂にお前たちが望みが叶う日だろ」
「…それでもやっぱり緊張するときはするんだよ」
「ははっ、お前ほどの男でも緊張するのか」
「お前の方はどうしてるんだ?」
「我はまだ、相手はいるわけないだろう。これから先の人生は長いからな、いつかきっと出会えるだろう」
「………向こうにいるクラスメイトたちは元気でやってるかな?」
「アイツらは大丈夫だろう、結構しぶといからな」
「だと良いのだが……サニカから聞いた話だとオレたちシルトの住人は向こうの世界に行くとヤバいみたいだな。至竜の魔力を浴びて育ったシルトの住人は特に悪意の影響を受けると」
「我やヤライ、ノエルやナハトは行けるが向こうに渡る気はないからな。自らの死に行くつもりはない」
「向こうの世界に行けるのはこれからこの世界で生まれる子供は行けるらしいし」
「だからそこ、サニカやルウカ、カーウェン殿が張り切っていたな。次の世代の子供たちが望むなら鍛え抜いてやるとな」
「……まだ年的に感傷に浸るのは早いはずなんだがなー」
「それだけ濃厚な日々だったと言うことだ……そろそろ時間的にも休んだ方が良いぞ?」
「だな……じゃあな。また明日」
「あぁ、また明日」
オレは寄り道せずに家に帰っていった。
最後まで残ったエクルはちいさな声で呟いた。
「………幸せになれよ」




